「アイゼル、何を怒っているの?」  
「怒ってる? 私は全然怒ってなんかいないわよ」  
ノルディスの部屋を訪ねたまではいいけれど、腹が立っていた私は挨拶から先の  
会話を進められなかった。  
「そう? なんだか、機嫌が悪そうに見えるよ」  
機嫌悪いのは誰のせいだと思っているのよ。  
「別に。ただ、ノルディスってエルフィールにはいつも優しいのね、そう思って」  
独り言よりは大きく、あからさまに彼に聞こえよがしにはならない程度の声。  
「エルフィール?」  
何かあったっけ。そうつぶやくと、ノルディスは困ったように宙を見つめる。  
「エルフィールの荷物、持ってあげてたわ」  
「ああ。あれ? 見てたんだ。声をかけてくれれば良かったのに、そうすれば  
 三人でお茶を飲んだりできたかもしれないのにね」  
「お茶なんか……」  
涙が出てしまいそうになって、でも彼の前で泣き崩れるなんて、そんなみっともない  
媚びたような真似はしたくないから、私は言葉の途中で唇を噛んだ。  
「アイゼル?」  
エルフィールが、ダグラスとか言うお城の騎士と付き合っている事は知っている。  
最初はエルフィールに惹かれていたのかもしれないけれど、ノルディスは今では  
私の事を他の誰よりも愛してくれている、それも分かっている。  
 
……分かっている、と思う。そう思い込みたいけれど、自信が無くなる時もある。  
私がじっとうつむいていたら、ノルディスは私の肩を優しく抱きしめてくれた。  
「妬いているの?」  
「だ、誰が」  
否定しようと思って彼を見上げたら、その拍子にぼろぼろ涙がこぼれてしまった。  
「ごめん、今のは冗談だよ。泣かすつもりは無かったんだ、アイゼル」  
私だって泣くつもりなんか無かったのに。嫌だわ、こんなの恥ずかしい。  
「本当にごめん。僕、君を傷つけてしまったみたいだね」  
ノルディスは誰にでも優しい。だから私は不安になってしまう。だからって、  
『私以外に優しくしないで』なんて事を言って彼を困らせる程、私は我が儘じゃない。  
我が儘じゃないとは思いたいけど、じっと黙ってただ泣いてる私は、すでに  
十分すぎる程に彼を困らせている。  
「どうしたら泣きやんでもらえる? どうしたら、君に許してもらえるかな」  
ノルディスの前で泣いてしまったのは情けないけれど、涙を拭いて笑顔を作って、  
『もう気にしてないわ』って言えば、それで何事もなかったように仲直りできる。  
そうしようと思って口を開きかけたけれど、私の顔をのぞき込むノルディスの表情は  
本当に、心から私を心配してくれているように見えた。彼のそんな顔を見てしまったら、  
いつもみたいに薄っぺらな虚勢を張ろうとしている自分の方がよっぽど馬鹿なんじゃ  
ないかって、そんな気がした。  
「……私に優しくして。誰にするよりも優しくして。私の事が一番だ、って言って」  
だから、思い切ってそう言ったら、ノルディスがほんの少し驚いたような顔をしたから、  
私はそんな事を口に出してはいけなかったのかしら、ってとても不安になった。  
 
「アイゼル」  
でも、私の名を呼ぶ彼の声は輝くように嬉しそうで、その声を聞いただけで私の身体は  
芯から溶けてしまいそうだった。ノルディスは私を抱きしめ、何度もキスを繰り返す。  
「ノル……ディス?」  
「ああ、急にごめん」  
彼のキスは熱っぽくて、その熱に当てられて私も頭がぼうっとしてしまう。  
「君が、僕に甘えてくれるみたいな事を言ってくれたのが嬉しくて」  
そう言って、彼は私の前髪を指先でよけ、額にもキスをしてくれた。  
「アイゼル、いつも独りで頑張ってしまうみたいな所があるから。たまに、  
 僕なんかいらないんじゃないか、ってそんな風に思ってしまう事があるんだ」  
「私、そんな……! 私、ノルディスがそばにいてくれなきゃ嫌だわ」  
とっさに答えてしまい、言った後で頬が熱くなる。  
「うん、ありがとう。君にそう言ってもらえると、本当に嬉しいよ」  
ノルディスは改めて、しっかりと私の身体を抱きしめる。何度も唇を合わせ、  
その度にキスは濃厚になっていく。  
「う……ん」  
背中に回された手が、ゆったりと上下に這い回る。私の身体に当たっている彼の中心が、  
ゆっくり、だんだんと固くなっていくのが分かる。  
「ええと、アイゼル……、いいかな?」  
身体を合わせる前には、ノルディスはいつも私にそう尋ねる。私の気持ちと体調を  
尊重してくれる彼の気持ちは分かっているけれど、たまには強引に奪って欲しい、  
なんて考えてしまう事もある。  
でも、もちろんそんな事は口に出せないから、私はただ黙って小さく頷いた。  
 
服を脱ぎ、彼に抱かれながらベッドに横たわる。  
以前はそんな風に思わなかったのだけれど、私を支えるノルディスの手はだんだんに  
力強くなってきたように感じる。この手でエルフィールの荷物を運んであげたのね、  
そんな考えが頭に浮かんでしまったけれど、目を閉じてその嫉妬心を追い払った。  
片手で肩を抱いてもらって、もう一方の手で頭をなでてもらうと、とても安心する。  
彼のキスが、唇から、胸の方へと下りていく。ちろり、と舌先が私の肌をくすぐる。  
「あっ……、ああっ、ノルディス、好き」  
ノルディスの頭をなで、彼の耳元に手のひらを当てる。彼は顔を傾けて私の手に頬を  
押し当ててから、それから丁寧に私の指に唇を這わせる。  
「それ、ノルディス、くすぐった……いわ」  
指の先から、付け根。手のひらの表と裏。手が終わると、手首から肘の方、それから  
もっと上の肩の方まで、それからもう片方の腕。それからもう一度胸に戻って、  
お腹から太もも、今度は脚の方へと彼の唇が下りていく。  
「んっ、くうっ」  
膝から、ふくらはぎ、足首から足の指。  
「ねぇノルディス、そんな所、舐めちゃいやよ」  
私が身体をよじっても、優しい唇は私の全身を隅から隅まで包んでいく。足の指  
一本一本を口に含み、爪の根元をそっと歯で噛んで、指の股まで舐められてしまう。  
「ううっ……、くぅ」  
ゆっくりと時間を掛けた、丁寧な愛撫。丁寧すぎて身体が辛くなってしまう時も  
あるけれど、彼の愛情を全身で感じられると思うととても嬉しい。  
 
一番最後に、私の一番恥ずかしい場所に指を伸ばす。彼を待ちわびているそこは  
触れられる前からトロトロになってしまっていて、彼の指は簡単に滑ってしまう。  
「アイゼル、膝を立てて」  
ノルディスの手が私の膝に触れ、脚を大きく開かされる。中心に顔を近付けると、  
今まで以上に念入りに、そこを舌と指で愛される。  
「あっ、そこ、だめ……恥ずかしい」  
いつもはこのまま舌でいかせてくれるけれど、今日は彼と早くつながりたい、って  
そんな気持ちになってしまう。  
「ね、ねえ、もう、いいかしら」  
私の脚の間に顔を埋めているノルディスの頭に手を当て、そっと引き寄せる。  
「私……、こんな事言ってごめんなさい、でも、ノルディスが欲しいの」  
「うん」  
私の身体の上に覆い被さったノルディスに、もっと大きく脚を開かされてしまう。  
肩を抱かれ、私も彼の肩にしっかりとしがみつく。  
「入れるよ。痛くないように、ゆっくりするからね」  
そう言って本当に少しずつしか入れてくれないノルディス。そんな風にされると、  
焦らされて、意地悪されているような気持ちになってしまう。  
「いや……、ねえ、もっと、もっと」  
奥まで、一番奥までノルディスを感じたくて、自分からも腰を動かしてしまう。  
「何だか、今日は積極的だね」  
下から腰を押し付けている私。やっぱり、はしたなかったかしら。  
「ご、ごめんなさい」  
「ううん、いいんだよ。感じて、気持ちよくなってくれてるアイゼル、ものすごく  
 可愛いから。もっと、もっと気持ちよくしてあげるからね」  
 
ノルディスはきつく私を抱きしめると、口づけながら身体を前後させる。  
「ああっ、あ……!」  
いつもより熱く感じてしまう彼が、私の中に出入りしている。  
「好き、ノルディス、好き」  
「僕も……、アイゼル、アイゼル」  
彼を受け入れている場所から、いやらしい水音が響く。その音が耳に入ると、もっと  
身体が熱くなってしまう。  
「アイゼル、好き……だよ」  
そうつぶやきながら、彼が私の中で果てる。ノルディスに抱きしめられる私は彼に  
包みこまれていて、同時に私も彼を包みこんでいる。そう思うと、嬉しくて嬉しくて  
勝手に涙が滲んできた。  
 
「あのさ、アイゼル」  
けだるい心地よさを感じながら、手をつないで二人でベッドにあおむけになっている。  
「エルフィールの事なんだけど」  
……何も、こんな時にエルフィールの話しを持ち出す事ないじゃない。  
むっとして口をつぐんでいると、ノルディスはそのまま話を続ける。  
「親切にするのはさ、アカデミーの友達だからって言うのもあるけど」  
あるけど、何なのよ。  
「エルフィールは、君の親友だから。僕の一番大好きなアイゼルの大事な友達だから。  
 君の大切なものは僕も大切にしなきゃ、って、そう思って」  
ノルディスの顔を見て、この人は不器用なのか器用なのか、良く分からないと思った。  
「エルフィールは……」  
親友なんかじゃない、そう言いそうになってしまったけれど、私はノルディスの  
前では強がって見せる必要なんかは無いんだって思い直して、素直に頷いた。  
「ええ、ありがとう。さっき、誰にするよりも優しくして、なんて言って  
 しまったけれど、ノルディスは本当にいつも私に優しくしてくれているわ」  
ぎゅっ、と抱き付いたら、ノルディスは照れたように笑ってくれた。  
 

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