ノルディスってかわいいと思う、  
私アイゼルはそう思う。  
 
あれは最近の事だった、10月の討伐隊が出発する少し前の事、  
私はエリーとノルディスと一緒に少し遠方へ採取に出かける事にした。  
さて、出発だ、という所で門に見慣れた人影が立っていた、  
ダグラスだった、彼とはエリーと採取の際よく護衛に付いてきてもらっている、  
最初は乱暴者という印象があってよくは思っていなかったけれど、  
付き合ってみると意外といい人だった、  
直情的なのは照れを隠すためという、なんともかわいい人だった、  
そんなこともあって、今は彼の事は友人としては好ましく思っている、  
エリーと付き合っていることも知っている。  
 
それで話を戻して、ダグラスはいつもの鎧姿で足元に大きな荷物を持っていた、  
「あれー、ダグラス、こんな所で何をしているの?」  
エリーが無邪気に声を掛けた、  
ダグラスは「やれやれ」と言わんばかりの目で、  
「お前らを待っていたんだよ」  
と答えた。  
「お前らだけじゃ危なっかしい、俺もついて行ってやるから感謝しろよ」  
そう言いながら足元の荷物を肩に背負った。  
「ダグラスさん」  
そこにノルディスが一歩前に出た、明らかに敵意剥き出しで。  
「申し出は有難いのですが結構です」  
「ほう?」  
口元には明らかに馬鹿にするような笑みが浮かんでいた。  
 
「もう討伐隊も出ますし、僕たちも最近は実力がついてきています、  
 だから護衛は必要ありません」  
「はははっ!」  
髪をかきあげながら大声で笑った、  
「何がおかしいのですか!?」  
その態度にノルディスは怒りを表に出していた。  
その様子を見ても相変わらず馬鹿にしたような笑みを浮かべて、  
「お前な、騎士隊がそんなに完璧なものだと思っているのか?  
 人間のやる事だ、絶対なんかそれこそ絶対無い、  
 それは錬金術をやってるお前が一番よくわかっているだろ?」  
と言った、ノルディスは見に覚えがあるのか何も言い返せない、  
最近あれだけ繰り返し、完璧だと言っていた調合を失敗したと言っていた覚えがある。  
そこにダグラスは更に続けた、  
「それにな、魔法が効かない相手が居たらどうするんだ?  
 逃げるのか?お前らは毎回化け物よりに速く走って絶対逃げ切れる自信があるのか?」  
「じゃあ、ダグラスさんは確実にそいつらを倒せる自信があるのですか!?」  
突っかかるノルディスにほぅ、といかにも困ったようにため息をついた。  
「去年の年末の俺の活躍をお前は知らないのか?」  
そうだった、ダグラスはエンデルク隊長を倒し念願の武闘大会の優勝を果たしたのだった、  
火竜を倒したというエンデルク隊長を倒したのだから実力はそれ以上だろう、  
それに最近ダグラスは海竜も倒したと言っていた、  
実質ザールブルグ最強と言っても過言ではない、  
その自信は実力に裏付けされたものであるのだから。  
今度こそ本当に何も言い返せないノルディスの肩をポン、と叩き、  
「市民を守るのも俺たちの仕事だ、気にすんな」  
と勝ち誇るように言った。  
 
そしてダグラスが一行に加わったまま採取に出かけた、  
ダグラスの言う通り討伐隊にも穴があった、  
結構な数で襲い掛かってくる敵に私たちは魔法で応戦したがイマイチ効果は感じられない、  
ダグラスはそんな私たちを尻目に次々と敵を仕留めていった、  
敵は全滅したと思い肩の力を抜いた瞬間隠れていた敵が私に襲い掛かってきた、  
避けられない!そう思いぎゅっと目をつぶったが一向にその瞬間は訪れなかった。  
不思議に思い目を開けると私の前に誰かが立っていた、  
ダグラスだった、  
「ボサッとしてんじゃねえ!」  
そう叫びながら敵を切り捨てた、  
「最後の瞬間まで気を抜くな!」  
振り向いて怒鳴るダグラスの肩からは血が流れていた、  
「ごめんなさい…」  
そう呟く事しか私は出来なかった。  
エリーは傷に気付き「大した事ねぇよ」というダグラスを無視して無理矢理傷薬を塗りこんでいた。  
ノルディスは忌々しげな顔をしてダグラスを見ていた。  
 
そして採取は終わり無事にザールブルグに戻ってきた、  
未だ元気なエリーはダグラスを引きずっていった、  
ダグラスは助けを求めるような視線をしていたが無視する事にした。  
ノルディスは採取の間終始不機嫌だった、  
「送るよ」と言い、寮に向かっている間も不機嫌そうだった。  
私の部屋に付き「お茶でも飲んでいく?」  
と聞くと、無言で頷いた。  
 
お茶の用意をしながら不機嫌な理由を考えた、  
理由は間違いなくダグラスの事だろう、  
せっかくの採取に無理矢理付いて来ておいしい場面を見事に掻っ攫われた、  
だからあんなに不機嫌なんだろう、  
困った…、ノルディスはかわい過ぎる、  
あれは嫉妬だ良い格好を見せられず、他の男に持っていかれて、  
私がそっちに気が行ってしまうのではないかと恐れているに違いない。  
ダグラスはエリーと付き合っているのは知っているはずなのに、  
それでも不安らしい。  
そんな事を恐れなくても私はノルディスが一番なのに、  
言葉にして伝えた事もあるのに、  
それでも不安らしい。  
仕方ないな…、今日はノルディスの好きにさせてあげることにする。  
こんな時はいつもは優しいノルディスも少し乱暴になる、  
でも理由がわかっているので、それがたまらなくかわいく思えるので、  
今日も私はされるがままにしよう。  
…明日の朝は起きるのが大変辛いだろう。  
 

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