年も押し迫ったある日・・・ダグラスが工房にやってきた。  
「エリー、いるか?」  
ちょうどエルフィールは部屋にいた。次の調合に取り掛かる準備をしていたのだ。  
「なあに?」  
エルフィールはダグラスの正面に立った。そしてダグラスの顔を覗きこむ。  
「エリー、大事な話があるんだ。」  
いつになく真剣な表情のダグラスに、エルフィールはごくりと息を飲む。  
「エリー・・・俺は・・・今度の武闘大会で優勝してみせる。」  
「うん・・・それで?」  
「それで・・・お前に言っておきたい。優勝したら、俺と・・・結婚してほしい!」  
いきなりの告白に、エルフィールは頭の中が真っ白になった。  
「そ、そんないきなり・・・」  
「嫌か?」  
「・・・・・・ううん。嫌じゃない。でも、急にそんなこと言いだすから、びっくりしちゃった。」  
「ほっ・・・よかった。お前に拒否されるんじゃないかって、ひやひやしたぜ。」  
エルフィールは少し潤んだ瞳でダグラスを見つめた。  
「でも、どうしても武闘大会で優勝しなきゃダメなの?優勝しなくても、あたし・・・ダグラスのこと・・・」  
「いいや!これは俺のけじめの問題だ。優勝できなければ、お前を守る資格などない。」  
「・・・・・・わかった。そこまで言うなら・・・あたし、一生懸命応援する。だから、優勝して。」  
「・・・・・・ああ・・・・・・」  
ダグラスはそのまま、エルフィールの体を抱き寄せた。そして、みずみずしく潤んだエルフィールの唇にそっと・・・  
 
しかし、二人の横からじっと二人を見つめる視線に気づくと、ダグラスはとっさにエルフィールの体を離した。  
すぐ隣で、マルローネがにやにやしながら見ていた。  
「ふふっ、やっぱ青春よね〜♪」  
「のわっ!な、何であんたがっ!?」  
「何でって・・・ここはあたしたち二人の工房よ。あたしもいるに決まってるじゃない。」  
狼狽するダグラスを見て、マルローネはますます顔をにやつかせる。  
「こりゃみんなに言うっきゃないわよねえ〜♪ダグラスが、ついにエリーにプロポーズしたってね。」  
ダグラスは顔を真っ赤にした。  
「なっ・・・!」  
「何怒ってるのよ?せっかくあたしたちが二人の純粋な愛を成就させてあげようと思ってるのに。」  
「で、でも・・・」  
「うっふふ〜♪当日はあたしとエリーの知り合いみんなでダグラス応援団を結成して応援に行くから、がんばんなさいよっ!」  
「あ、ああ・・・」  
「さてと、そうと決まったら、さっそく準備開始!じゃあ、行ってくるわね〜♪」  
「マリーさん!・・・・・・もう・・・・・・。」  
工房を出ていくマルローネの後ろ姿を、エルフィールとダグラスは恥ずかしそうに見ていた。  
 
「シア、いるー?」  
マルローネがさっそく訪れたのは、シアの屋敷だった。  
「実はね・・・」  
「まあ!それは面白そうね。わかったわ。私も参加させてもらうわね。」  
こんな調子で、マルローネはいろいろな人に声をかけてゆく・・・  
 
 
「ダグラスよ。」  
「は、はい!隊長!」  
「お前、エルフィールに告白したそうだな。」  
一段と厳しい目で、エンデルクはダグラスを見た。  
「だが、私も誇りある騎士だ。その名誉にかけて、決して手は抜かん。わかっているな?」  
「はい、隊長。俺は・・・必ず、勝ちます・・・!」  
「面白い。では私も全力で行く。覚悟はよいな?」  
 
 
「さあ、みんな!もう時間がないからね!急いで仕上げるわよっ!」  
「は〜いっ!」  
工房にマルローネの声が響くと、シア、アイゼル、ノルディス、クライスその他のマルローネやエルフィールの友人、  
そして何とイングリド先生やヘルミーナ先生、果てはドルニエ校長先生までもが、元気に返事をした。  
そしてみんなは一斉に何かを作り出す・・・。  
エルフィールはマルローネに近づいた。  
「あ、あの、マリーさん、あたしも手伝います。」  
すると途端にマルローネの怒鳴り声が飛んだ。  
「ダメッ!エリーは、手伝わなくていいの!!!この依頼は、特別なものなんだから!」  
そしてアイゼルもエルフィールに言った。  
「エリーは手伝わなくていいから、赤ちゃん達の面倒を見てなさいよ。」  
工房に集まった錬金術士達の喧騒の隅っこで、エルフィールは仕方なく赤ちゃんの世話を始めた。  
二人の赤ちゃん。  
(かわいいな・・・)  
アイゼルとマルローネの子供。アイゼルの子供の方がやや先に産まれたので、少し大きい。  
(恋のキューピッドT&V参照w)  
「は〜い、坊やたち、ミルクでちゅよ〜」  
エルフィールは哺乳瓶を手に取り、赤ん坊にミルクをやる。  
(かわいいな・・・vあたしもいつか、ダグラスと・・・)  
エルフィールはダグラスのことを想い、ほんのり顔を赤くした。  
(でも、何を作っているんだろう・・・?)  
振りかえると、錬金術士達は、何やらたくさんの布を作っているようだった。  
(あれは・・・国宝布!?)  
 
「エルフィール!」  
「は、はい!」  
突然のイングリド先生の怒鳴り声に、エルフィールは背を伸ばした。  
「見たらダメって言ってるでしょ!」  
「は、はい・・・」  
そしてエルフィールは、すごすごと再び赤ちゃんのほうを向いた。  
このような喧騒の中でも、赤ん坊達はすやすやと眠っている・・・。  
(あたしもいつか・・・ダグラスと・・・)  
そしてエルフィールは股間を押さえた。  
(や、やだっ!濡れてきちゃったじゃないっ!)  
 
喧騒は幾日か続いた。  
マルローネは最後まで、何を作っていたのか教えてくれなかった。  
(いったい何を作ったんだろう・・・?)  
エルフィールは気になって仕方がない。あの大量の国宝布は・・・?  
 
そして、その翌日、その日は武闘大会の当日だった。  
冬のからっとした天気がすがすがしい。空には雲一つない、まさに快晴だった。  
競技場からは、もう観衆の声が聞こえてくる。  
その控え室に、ダグラスは無言で座っていた。  
「・・・・・・。」  
その緊張度は、試合が近づくにつれ、ますます高まっていく。  
(俺は・・・エリーのために・・・絶対に・・・勝つっ!)  
ダグラスは歯を食いしばった。己の決意を秘めて、立ち上がる・・・。  
 
いよいよダグラスの出番。  
観衆の声が響く舞台・・・その途中の暗い通路に、その人は現れた。  
「エ、エリー!?」  
「ダグラス・・・来ちゃった。」  
「な、何でお前・・・もしや、お前も参加するのか?」  
エルフィールだった。  
「ううん、違うの・・・今日は特別に、中に入れてもらったの。ダグラスに・・・どうしても伝えたいことが  
あって・・・」  
そしてエルフィールはゆっくりとダグラスに近づいた。そして・・・  
「ん・・・」  
二人の唇が一瞬、重なり合った・・・  
「エ、エリー・・・」  
「ダグラス、これはあたしからの、勝利のおまじないだよv」  
ダグラスはそのまま強くエルフィールを抱きしめた。そしてすぐに離すと、そのまま  
闘技場へと歩き出す・・・  
「ダグラス!一番危険な敵は、エンデルク様じゃない!己自身よ。そのことを忘れないで!」  
ダグラスは振り返った。そして強い決意の目で、大きくうなずいた。  
 
「来たかダグラスよ。」  
大きな人がそこに立っている。剣聖エンデルク。  
「隊長・・・俺は、絶対に勝つ!」  
「いいだろう・・・さあ、行くぞ!」  
とてつもなく巨大な存在・・・ダグラスは今、その存在に向かって駆けだした・・・  
 
 
 
一瞬、大地を焼き尽くすかと思うほどの火花が散った。  
「くっ・・・・・・!!!」  
激しいぶつかり合い。しかし、それを制したのは、ダグラスのほうだった。  
「それまで!勝者・ダグラス!」  
一瞬の沈黙の後、歓声が一気に沸き起こる・・・  
「ダグラス!ダグラス!ダグラス!」  
「・・・俺は・・・・・・勝ったのか?」  
ダグラスは立っていた。そして、その目の前にうずくまるエンデルク・・・  
そして次の瞬間、ダグラスの体に何者かが抱きついた。  
「ダグラス!あたし・・・あたし・・・信じてた・・・!」  
「お、おいエリー・・・まいったなあ・・・」  
大観衆の前なのに、抱きついてくるエルフィールに、ダグラスは照れながらも優しい微笑みを返す。  
「ダグラスよ。」  
エンデルクは立ちあがった。そして、ふうっとため息をついた。  
「よくやった。今回も私の負けだ。」  
「隊長・・・」  
そして、エンデルクはそっとエルフィールの頭を撫でる・・・  
「幸せにな。」  
 
エンデルクは控え室に引き上げると、すぐに戻ってきた。  
「ダグラス!陛下のおなりだ。」  
その言葉に、ダグラスは身を低くして頭を下げた。  
そして、ブレドルフ国王が登場した。  
「ダグラスよ、見事だ。」  
「はっ!」  
ブレドルフは、そのままダグラスの肩に手を置いた。  
「ところで、ダグラス、お前、エルフィールに結婚を申し込んだそうだが・・・」  
ダグラスはブレドルフのいきなりの質問に困惑した。  
「えっ・・・?・・・は、はい・・・」  
「そこで、今回は特別に、褒美を授けよう。」  
「へ、陛下!私は、褒美のために戦ったわけではありません!」  
「いや、それはわかっている。だが、この褒美は、私が特別にある者達に依頼しておいたものだ。  
それを渡さなければ、私の面目がたたぬのだ。受け取ってくれるな?」  
「は・・・はい・・・」  
ダグラスは一瞬、考え込んだ・・・  
(褒美って、何だろう・・・?)  
やがて、ブレドルフは立ち上がって、声高に叫んだ。  
「ではこれより、ダグラス・マクレイン、エルフィール・トラウム、両名の結婚式を執り行う!」  
そしてブレドルフは観客席に向かって続けた。  
「ご来賓の皆様、両名は準備のため、しばし時間をいただく。どうかもうしばらくお待ちあれ!」  
そして騎士隊に連れられて、二人は控え室に戻っていった・・・  
 
二人の控え室は、別々だった。  
そして、こちらはダグラスの控え室。そこにはマルローネと他の騎士隊のメンバーがいた。  
「・・・・・・おい。」  
「何?どしたの?」  
「どうして俺の衣裳が、ウェディングドレスなんだ?」  
ダグラスの詰問に、マルローネは逆に堂々と答える。  
「あら、陛下の勅命よ。文句ある?」  
「う、うそつけ!陛下がそのような勅命を出されるわけがないだろう!」  
「はいはい、もう時間がないんだから、さっさと着付けるわよ!みんな、手伝ってちょうだい!」  
「や、やめてくれ・・・!」  
あっという間に、ダグラスはウェディングドレス姿になった。  
「あら、けっこう似合うじゃない♪」  
マルローネの言葉に、ダグラスは顔を真っ赤にした。  
「・・・は、恥ずかしい・・・」  
そして、そこにブレドルフがやってきた。  
「へ、陛下!」  
「おおダグラス、よく似合ってるぞ!さあ、皆様も、ダグラスの勇姿をご覧ください!」  
ダグラスは目を疑った。  
ブレドルフに連れられて入ってきたのは、故郷の家族たち。当然そこには、妹のセシルもいる・・・  
「お兄ちゃん!・・・ぷっ・・・くくく・・・ひゃはははははは!」  
いきなり笑い出す妹に、ダグラスも困惑する。  
「へ、陛下・・・やっぱり俺、この衣裳・・・」  
脱ごうとすると、そばからエンデルクの声が飛ぶ。  
「ダグラス!陛下の勅命なるぞ!」  
「は、ははっ・・・」  
宮仕えの悲しい性だった・・・  
 
「ねえ、そっちはもう準備できた〜!?」  
マルローネが大きな声で隣のエルフィールの控え室に声をかけると、返ってきたのはシアの返事だった。  
「ええ、こっちは準備OKよ。」  
「よし、それでは、花嫁さまのお披露目です〜♪」  
ドアが開くと、純白のウェディングドレスが登場する・・・  
ダグラスは思わず息を飲んだ。  
まるでエルフィールの心のように真っ白な(8割ほどダグラスの思いこみw)ウェディングドレスに包まれた  
エルフィールの姿は、天使のように美しかった・・・  
「どう?ダグラス・・・似合うかな?」  
ダグラスはごくりと生唾を飲み込むと、2,3回首を縦に振った。  
あまりの美しさに、言葉が出なかった。  
しかし、次の瞬間・・・  
「・・・ぷ・・・くくく・・・ひゃはははははは!」  
エルフィールも笑い出した。そこにいるのは、自分と同じ、純白のドレスに身を包んだダグラス。  
「ど、どうしてダグラスも、ウェディングドレスなの〜!?」  
「ほ、ほっといてくれ!」  
ダグラスは顔を真っ赤にした。  
「さあ、そろそろ式が始まるわ。」  
マルローネが促すと、シアは二人の手を取って、お互いに握らせた。  
「では入場よ。がんばってね♪」  
 
闘技場の中央に、教会の机が置かれていた。  
そしてそこには、一人の神父がすでに立っている。  
観客席からは、盛大な拍手と歓声。  
今、二人は手を取りあって、その場に歩き出した・・・  
 
「汝、楽しきときも、苦しきときも、互いに手を取りあい、助け合って、生涯を共に歩みなさい。」  
神父の言葉に、エルフィールは疑問に思った。  
(どうして命令形なんだろう?普通は、誓いますか?じゃないかなあ・・・?)  
その考えを読み取るかのように、神父は口を開いた。  
「陛下の勅命です。」  
 
結婚式が無事に終わると、そのまま二人はその場に待機した。  
そしてエンデルクが観客席に向かって叫んだ。  
「それではこれより、貫通式を執り行う。」  
(貫通式・・・?)  
直後、教会の机が運び出されて、今度は大きなベッドが運び込まれてきた。  
「ベ、ベッド・・・?」  
そしてマルローネが入ってくると、彼女はエルフィールの肩に手をかけた。  
そしてダグラスの肩には、ブレドルフの手が置かれていた。  
「陛下、いっせーのせで、外しますよ?」  
「わかった。」  
「いっせーの、せっ!」  
二人のウェディングドレスの肩についていた一つのボタン。それが外れると、二人のドレスは一気に下に落ちた。  
「うわわわわわっ!!!」  
「きゃあああああああっ!!!」  
二人とも、ドレスの下には何も身につけていなかった。  
直後、観客席からはものすごい歓声があがる。  
そして、ブレドルフは声高に叫んだ。  
「さあ、お前達!思う存分、愛し合うがよい!!!」  
 
 

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