ホゥホゥ―――ホゥホゥ―――。  
家屋の灯が次々と消え、闇が深まり、フクロウの鳴き声が遠く響く夜の刻。  
宿の一室ではくぐもった声が断続的に生まれていた。  
その部屋のベッドの上でルーウェンはあぐらをかいて座り、  
股の間に座すマリーを、後ろから抱きすくめるような形で愛撫を与えている。  
彼の左手は形の良い乳房を揉みしだき、右手は彼女の股間の中で休みなく踊っていた。  
「やっ……く……はっあ…!」  
ルーウェンの手が動く度に、マリーの口から熱く悩ましげな吐息が漏れる。  
他人の指の感触に酔うという思いが、興奮と羞恥心を導き出していく。  
 
ふと、ルーウェンの手の動きがとまる―――その次の瞬間に、指が女芯の中に突き立てられ、  
親指の腹が膨らんだ肉芽に押し当てられた。  
ほぼ同時に急激な刺激がマリーの体を走り抜け、新たな蜜が溢れ出す。  
「ひゃうっ!? っはっ! あぁ……」  
「マリー……相変わらず感度いいよな…」  
流れ出ずる愛液を絡めとリ、指ごとマリーの目の前に差し出すと、  
ルーウェンは耳元でそう囁いた。  
開かれた指。その間に糸を引いた愛液が、部屋のランプに照らされ妖しく煌めく。  
「やん……そんな恥ずかしい事言わないで、よぉ……」  
聴覚と視覚、その双方で責められ、より顔を紅くするマリー。  
クスリと含み笑いを漏らし、ルーウェンは手を再び股の茂みに添える。  
「でもほら、身体は『もっと気持ちよくなりたい』って言ってるって…」  
ルーウェンの淫らな指摘をマリーは受け入れざるを得ない。  
現に指先が触れるだけで、マリーの腰は理性を振り払い、勝手にくねり始めてしまう。  
「だって、ルーウェンが……あぁっ…」  
背後から加えられるさらなる愛撫。  
耳たぶを軽くかまれ、首筋にキスが舞い、胸部や脇下を手先がなぞる度、  
その一つ一つに身体が反応してゆく。  
自分の意思を離れ、快感を得ようとする身体の動きを止められない、  
切なく漏れる喘ぎ声を止められない―――。  
 
ちゅぷ、ちゅ、くぷっ……。  
ルーウェンの指が生み出す湿った旋律は、部屋の中に響いていた。  
「は、ふっ……んぁ…くぅ…ルーウェン……ルーッ…ウェン……!」  
マリーは既に快感の虜となっており、愛しき相手の名を呼びながらその指の動きに応えている。  
まるでそれが自分に課せられた義務であるかのように。  
 
長く続いた愛撫を止めると、ルーウェンはマリーをこちら側に向かせ、  
そのままベッドに寝かせた。  
「そろそろ、いいかな?」  
ル―ウェンは自らの分身に手を添え、マリーの了解を得ようとする。  
「う、うん……うん…お願い」  
猛々しく反応している男性のそれを、恍惚とした表情で見つめてマリーは小さく頷いた。  
「それじゃ…と」  
マリーの脚を開き、その間に腰を据えると、ルーウェンは身体を押し進めてゆく。  
ズッ、ズズッ……。  
「んぅ、んん……あぁっ!?」  
熱くたぎる塊。それが与えるインパクトに、マリーの感覚はバネのように跳ね上げられた。  
思わず、上にかぶさっているルーウェンの身体にしがみつき、両手の爪先を掴んだ肩口に食い込ませる。  
「アたたったた……あ、あのさ、もうちょっと力を抜けってば」  
「ご、ゴメ…ンッ……そんな、っあ…つもり…じゃ……」  
挿入したまま、しかし動かず、ルーウェンは眼下の女性の髪を撫ぜながら呟く。  
「感じすぎたのか? まぁ、久しぶりだからかもしれないけど……それにしても―――」  
一旦言葉を切って、眉にしわを寄せる。  
そして息をついてから身体をブルッと震わせ、何かに耐えるように言葉を吐き出した。  
「あぁ……マリーの中、やっぱスゲェわ……」  
「バ、バカッ。何言ってん…ン、はぁぁ…」  
恥ずかしさから生まれたマリーの非難の声。  
だが、その語尾は快楽の吐息にかき消された。  
ルーウェンが答えを待たずに腰を動かし始めたからである。  
 
ゆるゆると前後する腰の動き。ルーウェンは決して急かさない。  
柔肉に包まれる快感をたっぷりと味わいながら、  
自分とマリー、双方を愉しませるように行為を重ねていく。  
「あん…はっ……ふぅ……ん……くぅ、ゃん……」  
愛する男が生み出す快いリズムに身体を委ね、マリーの心は甘美に酔いしいれる。  
寄せては引き、引いては寄せてくる官能の波を、ひと時も逃さぬため全身で受け止めようとする。  
初めて身体を重ねた頃の、恥ずかしがる初々しい姿にも惹かれたが、  
既にお互いを認め、隠すこと無く肉体の悦びを表現する姿も別の意味で愛らしい―――  
ルーウェンは身悶えする彼女を見る度に、その思いを強くした。  
 
「ね、ね…ぇ、もう少し、強く中ァ…まで……」  
わきあがる悦びを抑えられなくなったのか、マリーは更なる動きの変化を求めてきた。  
その願いに頷くと、ルーウェンはマリーの腰を持ち、その身を引き上げる。  
そして器用に自らの足をたたみ、向き合った座位の形に変えてみた。  
「あ、はぁっ…!」  
相手が快感に震え、その事で挿入が上手く進んでいる事を確かめてから  
今度はルーウェンの方がベッドに横になる。  
騎乗位としてマリーの方が跨る体勢を取った時、相手の腰を支えていた両手の力をようやく緩めた。  
結果、彼女の身体は自らの重みでスブスブと男根を飲み込んでゆく。  
「!! そっ、そんな! この格好じゃ…ああぁァ?!」  
悲鳴と嬌声―――それらが混同した声を発すると、マリーの身体はガクガクと揺れる。  
「こんなの……入りすぎてるよぅ…っ」  
「それがイイんだろ? あとはマリーの好きなように動いて良いぜ…」  
あえて動きを止め、ルーウェンはマリーの反応を待った。  
その声に力なくコクコクと縦に首を降り、マリーは円を描く動きで腰を回し始めた。  
 
「んっ、んふ、ぁんっ……っつぅ……」  
腰の動きに呼応して、吐息とも、あえぎともつかぬ音が漏れてゆく。  
急に強くなった快楽に抗うため、片手の指数本を口に当て、必要以上に声を出さないようにするマリー。  
しかし、意識の狭間で与えられる女芯への刺激は、僅かに残った理性の牙城を崩しつつある。  
 
……そしてついに観念したのか、口にあてていた手を離し、  
反った身体を支えるようにベッドに手をつけ、マリーは自らの腰の振動に勢いをつけていった。  
 
ルーウェンの上でマリーが揺れる度に、結合された秘部がグチュリ…ヌチュリ…と淫猥な音を立てていく。  
その淫らなリズムに乗るように、彼女の豊かな金髪は奔放に跳ねる。上へ下へ、左へ右へ。  
乱れた幾本かの髪筋が、肌からにじみ出た汗を吸い、身体へと張り付いていった。  
張り付いた髪と桃色に染まった肌とのコントラストは、  
下から見上げるルーウェンからはより美しく映る。  
「わたし……っ…このままだと、ダメ…ッ、イイのぉ!」  
「マリー……今日は激し…うっ!」  
「だって、っね、ね? この感じ…固くて、たまらなくて…っはぁ……  
 わかるでしょ、あなたも……ルーウェ…んンぅ!」  
ルーウェンの言葉一つ一つさえも、もはやマリーの快感を刺激するものの他、何物でもなくなっていた。  
意味を読み取る以前に、外部から与えられるモノ全てが、肉体と精神の快楽へと還元されてゆく。  
そのうち、最初は円を描いていたマリーの動きが、二人を繋げるモノを柱として、  
上下に、そして前後にと単純化されていった。  
 
それとともに、マリーの声は張り詰めていく。  
彼女が達する事が近いと察したルーウェンも、改めて強く下から突き立てる。  
「あっ、あぁぁあっ! もう……もうっ、頭がシビれてっ…くゥん!」  
「く……マリーッ…!」  
互いに与える快感と与えられる快感、それらに翻弄されながら二人は急速に昇り詰めていった。  
そしてルーウェンを包み込んでいた感覚が一気に集束した時、マリーの意識は白く弾けた。  
「ゴメ……、私ぃっ…んんぁぁぁ…――――――ッッ!!」  
身体から力が抜け、ルーウェンの上に前のめりに倒れこむ。  
次いで、ほぼ同時に絶頂に達した肉壁の収縮が、ルーウェンのモノを強く絞り上げる。  
「出…るっ」  
その一瞬後、ルーウェンは自らの全てをマリーの中に吐き出していた。  
「あ……あぁ……あ…」  
ドクッ、ドクッと男の精が刻まれる度に、マリーの身体は倒れたまま軽く震えた。  
 
 
濡れたシーツなどをざっと手ぬぐいなどで拭い、事後の片づけを終えると、  
二人のもとに平等に眠気が襲ってきた。既に夜半過ぎ。生理現象とすれば当然である。  
並んで横寝し毛布を掛け、『おやすみ』と互いに断るとそのまま会話が途切れた。  
その中で先ほどの痴態を思い返し、ルーウェンは呟いた。  
「俺はともかく、マリーも激しかったな。あれじゃ、マリーの方がよっぽど溜まっ…痛でデデデ」  
「……聞こえてるわよ」  
ルーウェンの太ももをつねり上げ、マリーはぼそっと言い返す。  
「っつぅ……ま、ホントのところはどうなんだか」  
「知らない!…………でも―――」  
「…?……ン…」  
拗ねたような返事をしてから、横になったまま身体をゴロリと反転させ、ルーウェンと向き合い唇を交わす。  
再び互いの口が離れたあと、マリーは男の身に寄り添い、小声で付け足した。  
「快(ヨ)かった………私もそれは否定できないなぁ…」  
「―――♪」  
その言葉に満足し、軽くルーウェンが抱きしめた後、二人の意識は急速に夢の中へ落ちていった。  
 
 
その後もしばらく、二人は村に滞在した。  
もともと人見知りしない彼らは、すぐに村の中に馴染み、  
付近の散策の合間に、ルーウェンは子ども達のケンカ武術の面倒、  
マリーは健康に役立つ、ちょっとした薬を作るアドバイスなどをするようにもなっていた。  
……だが、出会いがあれば別れがあるのも道理。  
彼らが村へやってきてから約二週間後、次の都市間連絡馬車がくる日が、  
村を離れる日となった。  
 
「さて、と。おやじさん、おかみさん。世話になったね」  
「おぅ、気にすんな。こちとらコレが商売だからよ。  
 俺たちこそ、村の連中がいろいろ世話になったようで感謝してるぐらいさ」  
荷物をまとめ、ルーウェンが発ち際の挨拶をすると、宿屋の親父は名残惜しそうに応える。  
「もちっと、ここにいてくれてもいいが……まぁしょうがないな」  
「エヘヘ……大抵の立ち寄り先じゃ、みんなそう言ってくれますよ。  
 悪い気は…しないかなぁ」  
照れるマリーに向かい、おかみが頭を下げる。  
「マリーちゃんもねぇ。ウチの姪たちを診てくれて……ありがとうね。  
 またココに寄る事があったら、遠慮なく泊まっていきなよ」  
「ハイ。またその時はお願いしますから」  
会話に区切りがついたのを見計らうと、ルーウェンは互いに別れを促す。  
「じゃあ、行くか」  
「ウン。…じゃ、さようなら!」  
「あぁ、お前さん達こそ達者でな!」  
カラン、カラーン。  
ドアの鈴はいつもと同じような音色を鳴らし、マリーとルーウェンを送り出した。  
 
連絡馬車の寄り合い所は村外れにある。  
そこに向かい二人が村の中道を歩いていると、一組の親子が駆け寄ってきた。  
「おじちゃーん! マリーおね〜ちゃ〜〜ん!」  
「お、おじ…!?!」  
「あら、レミナちゃん」  
予期し得ぬ呼称にその場に固ってしまうルーウェン。  
そんな彼を置き去りに、マリーは声の方へ歩みだすと相手を迎えた。  
レミナ―――先にマリーが診断をした少女は、  
走り寄った勢いのまま、ポフッとマリーのスカートの中に飛び込んできた。  
「あれからどう? 病気はもういいの?」  
「ウン! お姉ちゃんのおクスリ飲んだら治っちゃった。もう元気一杯だよ♪」  
「すいません。念のためにまだベッドに寝てなさいって言ったのに、  
 どうしてももう一度マリーさんに会いたい、って聞かないものですから……」  
遅れて近づいてきた母親は、少し申し訳なさそうに、それでも笑顔をたたえたままマリーに詫びる。  
その顔は前に見せたような不安が払われ、親としての安らかさに満ちていた。  
「先日は本当にありがとうございました。おかげさまでこの通りに……感謝のしようもありません」  
「いえいえ。あれぐらい大した事ないですから……レミナちゃん、元気になってよかったね?」  
マリーにそう呼びかけられると、レミナは彼女の腰に抱きついたまま「エヘヘ…」と嬉しそうに笑う。  
「やっぱり……我が子は健康であるのが一番ですわね。  
 この子が臥していた時、本当に気が気じゃなかったですもの……。  
 …それだけに今の元気な姿を見ると、嬉しく思うし、こちらも元気付けられます」  
娘の頭に手を置くと、母親はしみじみと語った。  
その言葉に、マリーはしばし自らの過去を重ね合わせた。  
 
―――ずっと病に苦しんでいた親友、いつも体調を崩しがちだった親友。  
彼女の病を自らの錬金、薬学の力で癒す事ができた時、  
彼女のベッドの側で、嬉しくて私の方がワンワン泣いたんだっけ…と。  
自分に近しい人が健康を取り戻した時の嬉しさ、  
その点において、レミナの母の気持ちが少しだけわかるような気がする―――。  
 
思いを巡らすマリーを前にして、レミナの母の言葉は続いている。  
「今回の事で改めて気付かされました。  
 いろいろ世話が焼けるものだけど、子どもの笑顔って親にとって、  
 そして……女の我が身にとっても、幸せを与えてくれるものなんですね」  
そう言い結ぶと、彼女はマリーの肩越しにルーウェンの方を見やった。  
「マリーさんも、いずれはあちらの方との間に……?」  
「へ? …や、やぁだぁ、もぉ、何言ってるんですかぁ」  
既に子を持つ親―――そんな人生の先輩からの不意討ちに、マリーは顔を赤くする。  
それでも、自然と緩んでしまう表情の変化を完全に抑える事はできない。  
「ウフフ……お相手が誰になるか存じませんけど、いつかいいご家庭が作れるといいですわね。  
 …さ、レミナ。お姉ちゃん達もそろそろ行かないといけないから、こっちにいらっしゃい?」  
「ハーイ、ママ」  
マリーから親の元へ身を寄せると、レミナは手を振る。  
「マリーお姉ちゃん。バイバイ」  
「バイバイ、レミナちゃん。……では、もう行きますね。お母さんもお元気で」  
「ええ。マリーさん達も良い旅を……」  
 
会話を終えてマリーが戻ると、まだルーウェンは肩を落としたままの姿だった。  
「ルーウェン、なに落ち込んでんのよ?」  
「……だってよ、お前が『お姉さん』なのに、俺は『おぢさん』だぜ?」  
そう言うと、若き剣士は大仰に溜息をつく。  
……彼の体躯は大人のそれだが、顔づくりはやや童顔気味。  
そのため実際の年齢より若く見られる事が多く、長らく悩みのタネとなっている。  
ただ、今回はそれとは全く逆方向のショックだったらしい。  
「いー加減、童顔、童顔って言われるのもイヤだけどさ、  
 まさか一足飛びに『おぢさん』って呼ばれるとはなぁ……」  
「あら、そっちのほうが気に入るかと思ってたのに。  
 それにホラ、少しはオトナっぽい雰囲気が出てきたって事じゃないの?」  
マリーが面白半分・からかい半分にそう言うと、途端にルーウェンは真面目な顔つきになり、  
その言葉を吟味しだした。  
「あ、そーかぁ。そーかもしれないのか。  
 俺もいい加減、男のシブさが身につく時期にきてるのかな??」  
相方の思考の切り替えの早さに、思わずマリーはあきれた顔をする。  
「ふぅ……まったく。人の言う事、すぐ鵜呑みにするんだから…」  
だからまだまだ子どもっぽさが抜けないのよ―――、  
でも、そこがまた、あなたの魅力でもあるんだけど―――。  
……とまでは流石に口に出さず、マリーは空いた方の手をルーウェンの腕に絡ませる。  
「ホラ、さっさと歩く、歩く。馬車の出発に遅れたら、またここに足止め食っちゃうわよ」  
「っとと、あんまり急かすなって!」  
2〜3歩足並みを乱した彼らだが、すぐに併せて歩を進めだした。  
結局、互いが互いにあわせる呼吸を心得ている二人だった。  
 
 
 
マリーとルーウェン。彼らの珍道中はこの先一年半ほど続いていく事になる。  
マリーの中に二人の新たな命が宿る、その日まで。  
 
その間、人々に笑いと話題、そして時に感動を振りまきながら、  
二人の物語はいくつも紡がれていくのだった。  
 
−−−了−−−  
 

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