「チッ、顔を見られたか?」  
男は自分の迂闊さを呪いながら床下に横たわる若い女を見下ろした。  
普段ならこの時間には、アカデミーのショップに人など居る訳が無かった。  
かつて自分が通っていた母校である。勝手はよく知っているし、余裕をもって物色出来る筈であった。  
盗む物も(希少品とはいえ)一見して高価な物は避け、原材料に留めておくつもりだったから  
ちょっとした細工を施すだけで、後は月末の棚卸まで盗難が発覚しないようにすることも可能だった。  
男はこう見えても将来を嘱望される錬金術師だったこともあるのだ。  
ところがいざ目的を果たして脱出しようとしたその時になって、この女があわただしく駆け込んで来たのだった。  
とっさに当身をして眠らせはしたが、目を覚まされたら厄介なことになるのは間違いない。  
それにこの女の顔には見覚えがあった。確か・・・名前はルイーゼ・ローレンシウムといったか?  
直接の面識は無いから、自分の事を知っているかは分からないが、だからといって楽観できる気にはならない。  
どうしたものか・・・男は途方にくれてルイーゼの姿を眺めていたが、その視線がある一点で止まった。  
グリーンのスリップドレスの大きく開いた胸元から、こぼれんばかりの豊かな乳房。その深い谷間からムッとした色香が匂い立つ。  
「・・・そうか。女の口を封じる一番いい方法があったじゃないか」  
男は口元に悪魔の微笑を湛え、彼女の胸の膨らみに手を伸ばした。むにっとした、充分過ぎるほどの手ごたえが返ってくる。  
「これはこれは・・・凄いモノをお持ちでいらっしゃる」  
とろけそうな柔らかさと、若々しい張り。その絶妙のブレンドに男の股間が熱く首をもたげてきた。  
「せっかくこのお嬢さんの方から来たんだ、ちょうどいい。新しい薬の実験台になってもらおうか」  
 
「・・・あ・・・ン・・・」  
墨を流したような暗闇の中で目覚めたとき、ルイーゼは自分がどこにいるのかわからなかった。  
彼女は普段、眠るときにはちいさな灯りをつけている。だが今はまるで物質化したかのような重苦しい暗黒の中だ。  
いや、重苦しいのは部屋が暗いせいだけではない。なにかこう、言葉にしがたい、えもいえぬ違和感が、彼女を包んでいた・  
腹部には鈍痛がかすかに残っている。身体中が熱く、けだるく力が入らない。  
何か・・・変・・・だわ・・・。上体を起こそうとしてルイーゼは決定的な異変に気が付いた。  
自分が横たわっているのは、暖かい自室のベッドなどではなく硬い木の床であり、その上で両手を後ろで縛られている。  
そして手首に纏わりつくこのおぞましい感触は・・・『生きている縄』!  
「・・・ひ・・・何?これ!」  
自由の効かない身体をよじってルイーゼはうろたえた。そこへ氷のように冷たい、男の声が聞こえてきた。  
「クククッ、お目覚めですか?美しいお嬢さん」  
わざとらしいまでに慇懃無礼な口調の底に、ぞっとするような悪意が感じられた。  
「!?誰?・・・ですか?ここは・・・何処?どうして真っ暗なんですか?灯りを・・・灯りをつけてください!」  
「ここですか?貴女のお仕事場ですよ、正確に言うならば控え室ですね。フフフ  
ちなみに灯りはさっきからついていますよ。その証拠に貴女の素晴らしいスタイルがよく見える。ククッ」  
ねちっこい声が蛇のようにルイーゼの全身をいやらしく這い回る。  
そうだ。確かわたしは忘れ物をとりにショップまでやってきて、そこで見知らぬ人影に出くわして・・・  
ルイーゼはやっと自分の置かれた状況を飲み込んだ。この人、泥棒だ!わたし・・・どうなるの?  
「ね、ねえあなた、助けてください。この縄をほどいてください!」  
かつて体験したことのない恐怖にルイーゼは小鳥のように身を震わせた。  
 
「心配はいりません、すぐにほどいてあげましょう。別に危害を加えるつもりもありませんし。  
それに辺りが暗いのも、もう5〜6時間の辛抱です。貴方に飲ませた薬の効き目はそれくらいですからね」  
「・・・『ぬばたまの帳』?」  
思わずルイーゼはある薬の名を口にした。それを服用すると一時的に視力を失うという。  
「ほほう?よくご存知でいらっしゃる。正解です、まあべつにたいした副作用もありませんから安心していいですよ?」  
そこまで言ってから、男の声が一段と底意地の悪い響きを帯びる。  
「『ぬばたまの帳』だけならね、クククッ」  
「どういう意味ですか?ほ、他になにか・・・」  
「お嬢さん、貴女は美しいだけでなく、なかなか聡明でいらっしゃる。当ててごらんなさい。  
ヒントを差し上げましょうか?先程からあなたのそのセクシーな身体が、どこか変じゃありませんか?」  
そういえば・・・目覚めたときに感じた熱っぽさが強くなっている。それも単純に体温が高くなっているのとは違う。  
何だろう?身体の奥底から湧き上がってくるこの熱い火照りは・・・?  
「なに・・・これ、身体が、あつい・・・ねえ、なにをしたんですか?」  
「フフ、分かりませんか?思い当たらないのも無理はありません。よろしい、正解を教えてあげましょう。  
これは禁じられた錬金術の秘薬『夢魔の誘惑』またの名を『インキュバス(淫魔)』!  
『夢魔の誘惑』・・・確か『魅了の粉』を主成分とした、強力な催淫薬の名前である。  
これを飲むと、どんな貞淑な女性でも性欲が高まり、最も淫らな娼婦のように男を求めてよがり狂うという。  
古に禁じられた秘薬中の秘薬であり、製法はおろか、その名を知るものすら稀なのだ。  
このおぞましい薬を使いこなすような男が只者であろうはずがなく、それを自分に飲ませたとなると、目的はひとつしかない。  
「い・・・いやぁああああああああああっ!」  
 
犯される!!これまでたいせつに守ってきた純潔が、このような卑劣極まりない男に、最悪のかたちで汚される。  
「何をそんなに嫌がってるんですか?これから私は貴女を天国へと導いてあげるのですよ、フフ」  
「わ・・・わたしは負けません。あなたのような卑怯な人を、求めたりなんかはしませんっ!」  
見えない瞳に涙をいっぱいに溜めて、ルイーゼは声のするほうをきっと睨みつけた・  
「そうかも知れませんね、私もこの薬を使うのは初めてなものですから。どれだけの効果があるのかは存じませんのでね。  
しかしお嬢さん。ひとつお尋ね致しますが、先程からあなたの魅力的なふとももがモジモジと動いてるのは、いったいどういう事でしょう?」  
男の言葉にルイーゼは、自分が両脚を落ち着き無くこすりあわせている事に気がついた。  
「・・・ぁ・・・こんな・・・これは、これは違うんですう!そんなんじゃありませんっ」  
嫌だ・・・わたし、もよおしちゃってる・・・。見知らぬ男の前で淫らに腰を動かしている自分が信じられない。  
しかし、誰も見ていなくて両手が自由であれば、熱く潤った蜜壺に指を入れて、狂ったように掻き廻してしまいたい。その衝動に耐え切れるだろうか?  
「あぁぁぁ・・・駄目ぇ・・・こんな、こんなのわたしじゃない・・・」  
懸命に否定しても淫靡な情欲は昂ぶるばかりだ。  
「わた、わたし負けません・・・たとえ身体は奪えても、心までは自由にできませんよっ!」  
「結構結構、ごりっぱです。しかしどうやら『女』としての貴女はそうじゃないらしい」  
男がパチン、と指を鳴らすと、彼女の両手首を縛っていた忌々しい毒蛇のような『生きている縄』がゾクリとする甘い感触を残してほどけた。  
「さあ、遠慮はいりませんよ?出口は貴女の右側です。勝手知ったるご自分の仕事場、眼が見えなくたって帰る方向くらいはわかるでしょう?  
どうぞ、わたしはお邪魔しませんのでお逃げなさい。逃げられるものなら、ね?」  
不意に与えられた逃亡のチャンス。男の真意は判りかねるが、こうしている間にも恐るべき性感は高まっていくばかりだ。  
あれほどまでに嫌悪感を抱いていた男の声が、ややもすると美しい悪魔の、危険で甘美な囁きに思えてくるのだ。  
 
だが、ルイーゼは残された僅かな理性と勇気を振り絞り身体を起こそうとして・・・バランスを崩した  
両脚に力が入らない。やむなく膝を立て両手をついて出口とおぼしき方角へ這い出していった。  
それは、ちょっとした見ものだった。アカデミーの男子学生の憧れを一身に集めるルイーゼ・ローレンシウムが、犬のように四つんばいにして床を這っているのだ。  
エメラルド・グリーンのスリップドレスを汗でびっしょりと濡らして全身貼り付かせ、優美な曲線を描くボディラインを際立たせている。  
彼女がゆっくりと歩を進める度、大きく開いた胸元から、たわわに実った豊かな乳房がゆさっ、と揺れる。  
あまりにエロチックな光景に、男はごくり、と喉を鳴らした。  
「・・・ああっ!」  
汗に濡れた掌が滑るのか、狂おしいまでの性の昂ぶりに力尽きたか、ルイーゼは不意に転倒した。  
「ハア・・・うっ、く・・・」  
懸命に起きようとするのだが、どうしても腕に力が入らない。上半身を持ち上げたところで、そのまま横向きの姿勢で崩れ落ちてしまった。  
澄んだ宝石のような瞳から大粒の涙が溢れ出し、頬をつたい、床に流れ落ちた。  
「・・・フフフ、どうやらここまでのようですね?」  
興奮を隠す為か、つとめて丁寧な口調を崩さないが、眼下に横たわるルイーゼの艶めかしい姿にさすがに声がうわずっている。  
「そろそろ楽になっては如何ですか?怖がることはありません。女性に生まれた悦びを教えて差し上げるのですから」  
ルイーゼの傍らに歩みより、剥き出しの肩に手をかける。と、ぐったりとしていた彼女の肢体が、電流に触れたようにビクン、とはねた。  
「ふぁ・・・!」  
「おやおや、肩に触れただけですよ?そんなんじゃその素敵なバストに触ったらどうなるんですかね?」  
ピタリと貼り付いたドレスの胸元の、ぷっくりと浮き出たその頂を指でツン、と突く。  
「や、やめ、あうううううンっ!!」  
誰にも触らせた事の無い乳首を突かれたとき、ルイーゼは両腿のあいだ、秘密の場所に電撃のような快感が疾った。  
 
「フム、胸の大きな女は感じにくいと言うのは俗説に過ぎないようですね。それともこう見えて意外とセックスが大好きでいらっしゃるとか?」  
男性経験のないルイ−ゼにはこの程度の揶揄が酷く屈辱的に響く。  
「ち、ちがいます、わたし男の方なんて・・・」  
平常心を失っているためか、言わずもがなのことを口走りそうになり、あわてて赤面する。  
「ホ〜ウ?すると自分は処女だとおっしゃる?こんなりっぱなバストをお持ちで、しかも半分オッパイが見えそうな服で男を挑発しといてですか?」  
だが、事実ルイーゼは処女であった。露出の多い服にしても、引っ込み思案な性格を直す為と、友人がコーディネイトしてくれたものだ。  
「そんな!本当ですゥ、わたしそんなつもりで・・・」  
「まあまあ、貴女がどうおっしゃっても真実はじきにわかりますからね。そろそろその素敵な胸の膨らみを拝見させていただきましょうか?」  
男は笑うと、ルイーゼのドレスのストラップに手を掛けた。汗ばんだ丸っこい肩をゆっくりとなぞり、美女の上半身が次第に露になっていく。  
「い、いやあああっ、やめてえ・・・」  
力なく抵抗を試みるが、所詮男の力には敵わない。薄い布切れに隠された豊かな半球型の膨らみが徐々に姿をあらわしていき・・・ついに  
プルン、と想像以上に大きな乳房がこぼれ出た。  
「・・・これは・・・なんと素晴しい・・・」  
男は一瞬我を忘れた。透き通るような白い肌がそこだけ急な曲線を描いてはちきれそうに隆起している。  
スイカのような豊かな柔肉の頂には、意外に小さな薄桃色の輪があり、中心に小粒のサクランボを思わせる可憐な乳首が儚げに震えている。  
「驚きましたよ・・・大きさもさることながら、これだけ美しいかたちをしていらっしゃるとは・・・」  
「あ、あううう・・・見ないでぇ・・・」  
誰にも見られたことのない乳房を見知らぬ卑劣漢の眼前に晒す屈辱。それは「ぬばたまの帳」で目隠しをされていることとあいまって、死ぬほどに恥ずかしい。  
「ど〜れ、感触のほどは、と」  
剥き出しの美巨乳に男の指先がムニュッと喰い込む。  
「ヒ、ひイィィィ・・・!」  
「おお!これはなんと・・・柔らかい。まるでとろけるようだ」  
 
なんという甘やかな手触りだろう。そっと力を込めるだけで、フワリとしたマシュマロのような感触が指先を包み込み、  
力を抜くとみずみずしい弾力が掌をはじきかえす。  
これだけ豊かで柔らかな乳房は、横になったらだらしなく形を崩しそうなものだが、  
内部から何かはちきれそうなくらい膨らんでいる為、仰向けになっても、まるでボールのような半球形を保っている。  
男は我を忘れて、鷲掴みみしたルイーゼの双乳を揉みしだき、その都度、甘美な柔肉がその美しい形を変える。  
「あ・・・ふァ・・・」  
視力を奪われた大きな瞳に涙をいっぱいに溜め、ルイーゼは息を荒くする。  
「ああ・・・いい、いいですよ、あなたのオッパイ。最高だ」  
掌からたっぷりはみ出す膨らみの、その頂点にあるごく薄いピンクの乳首を口に含み、軽く吸う。  
「んっ、ンン!」  
「どうです?なかなか感じてらっしゃるじゃないですか」  
小粒の果実のような乳首をそっと噛み、舌で転がす度、ルイーゼの肢体はビクン、と跳ね  
愛らしい唇から愉悦と恥辱の入り混じった喘ぎ声が漏れる。  
「そんなァ・・・あァン!」  
「おや、どうしました?そんなにお尻をモジモジさせて?」  
緩急つけた男の愛撫を受け、身体の奥底から湧き上がってくる疼きを、ルイーゼはどうにも抑えきれないでいた。  
それは彼女自身想像だにしなかった、たまらなく暗く危険な欲望を一瞬ごとに呼び覚ましていく。  
 
「ああ、これは、これは・・・知りませんっ。あ、あなたが変な薬を!」  
「確かに『夢魔の誘惑』は女性の性欲を強くいたしますがね、元々存在しないものを高めることはできません。  
その欲望はね、お嬢さん。貴女が元々隠し持っていらっしゃったものです。フフフ」  
そう言って男はルイ−ゼの硬くなった乳首をつまんで、かるく捻った。  
「ひゃ!あアァン!」  
意思に反して、一秒ごとに強くなってくる暗く、妖しい疼き。なんで・・・なんで自分はこうなっちゃったんだろう?  
股間が疼くたびに、じわり、と身体の奥の方から得体のしれない分泌物が染み出し、蜜壺を濡らしていくのがわかる。  
(ああ、あそこがこんなになっちゃってる・・・わたし・・・女なんだわ・・・」  
熱く濡れはじめた秘所に男性自身を受け入れて、激しく突かれたらどんなに気持ちがいいだろう。それはおぞましくも狂おしい、危険な衝動だった。  
「さあ、あまり待たせてもいけませんね。そろそろ素敵な裸を拝見させていただきましょうか」  
男の手がはだけたルイーゼのドレスをゆっくりと剥ぎ獲っていき、雪のように輝く白い裸身が次第にあらわになっていく。  
「い、いやァ・・・」  
未だかつて他人の眼に晒したことのない裸を、こんな卑劣な男に見られてしまう!その羞恥心がルイーゼに微かな抵抗を命じた。  
「やめて、やめてェ、これ以上見ないでェ・・・」  
ありったけの力を振り絞って身をくねらせ、腰下までずり下げられたドレスを掴む。  
「フウ、全く強情なお嬢さんだ。我慢のし過ぎは身体に毒ですよ?ま、そちらがその気なら」  
男がパチン!と指を鳴らすと、シュッと床を這う音と共に、何か細長いものがルイ−ゼの手首に絡みつき、強引に頭の上の方まで引き上げる。  
「ヒ・・・ヒイイイイッ!」  
『生きている縄』の毒蛇のような動きに、ルイーゼは完全に動きを封じられた。  
 
「あまり無粋な真似はしたくないのですが、仕方ありませんね。あまりに素敵なお身体を隠そうとなさるからいけないんですよ?さあ、続きです」  
「あああ、やめてェ・・・」  
けぶるような金髪を揺らしていやいやをすると、ルイーゼの剥き出しの巨乳がブルルン、と揺れた。  
こんな形で生まれたままの姿を男性の前に晒されるのは耐え難い屈辱であったが、男の手は容赦無く彼女の曲線に富んだ肢体からつややかなスリップドレスを剥ぎ取っていった。  
「・・・おお。なんて綺麗な裸なんだ!・・・」  
透きとおるような白い肌のなかで、激しく揉みしだかれた乳房がほんのりと紅い。  
信じられない程細くくびれたウエストが、小さな純白のショーツに包まれた腰に続き、そこから適度にむっちりとした太腿がまっすぐに伸びている。  
「本当に素敵なカラダだ・・・」  
きつく抱きしめたらポキンと折れてしまいそうな華奢な身体なだけに、豊かに隆起した乳房が男の劣情をそそる。  
「下着も可愛らしい・・・うん?これは・・・」  
細かな刺繍の施された純白のショーツのデルタ地帯が、ごく、うっすらとだが確かに湿っているではないか。  
「いけませんねえ。口では嫌だとおっしゃっていますが、貴女の一番恥ずかしい部分は、もうこんなに濡れてらっしゃいますよ」  
「そんな!う、うそっ」  
「嘘なもんですか、ホラ」  
ふっくらと盛り上がったその部分を男が撫でると、かつて感じたことの無い衝撃がルイーゼの全身を疾った。  
「はうゥッ!!」  
『ぬばたまの帳』に奪われたはずの暗黒の視界が、真紅の稲妻に紅く閃いた。  
「・・・何ですか。はしたない。それでも処女だと言い張るんですか?」  
ルイーゼのあまりに過敏な反応に一瞬呆然とした男だったが、嬉しそうに笑うと滲み出した薄い布から透けるクレヴァスを、中指でゆっくりとなぞった。  
「ククククッ。その純情そうなお顔にすっかり騙されてしまうところでしたよ」  
「ちがーーーんふうっ!・・・そんな・・・あンッ!やめて・・・変になっちゃーーームグンンンンッ!」  
 
薄い布地から透けて見える秘裂を指でそっと撫でられたとき、ルイーゼの全身に未知なる快感が疾った。  
「・・・は・・・くぅっ」  
上質なシルクのような肌から、どっと汗が噴き出し、華奢な肢体が反りかえる。  
貞淑な美女の思わぬ反応に、男は些か驚いたようだった。  
「ホウ、なんというはしたない声を出すんですか?フフ、貴女がいくら否定しても、躰の方はこんなに感じていらっしゃるじゃありませんか」  
云いながら、更に湿り気を増したショーツの上から、男の指が執拗になぞる  
「んンっ!そんな、ひ・・・ひどいこと、ふぁぁっ!」  
セックスの経験どころか、他人に見せたことすらない恥ずかしい部分を、布地越しとはいえいじられ  
そして薬を飲まされているとはいえ、反応してしまっている自分に、ルイーゼは死にたくなる程の羞恥を覚えた  
「さて、と。  
どうやらどれだけ違うと云っても、貴女の大事なここはもう我慢ができなくなっているようですね。  
そこまで求められてはわたしも無碍にできません。そろそろこの邪魔っけな下着を脱がせていただきましょうか」  
最後に残された小さな白いショーツに指をかけ、興奮を隠しくれない声で男は云った  
「だ、駄目ぇぇぇ・・・」  
汗にピタリと張りついたショーツが、完璧な曲線を描くヒップをゆっくりとずり下ろされてゆく  
その白桃を思わせる尻をくねらせ、ルイーゼは精一杯の抵抗を試みた  
 
しかし男の手は容赦なく、ルイーゼに残され最後の一枚を剥ぎとっていく  
 
(ああ、わたし・・・裸を見られてしまう・・・知らない男の人に・・・)  
『ぬばたまの帳』にもたらされた暗闇のなかで、生まれたままの姿を晒していく屈辱  
それが知らず知らずのうちに彼女の肉体を昂ぶらせていく  
スラリとした美しい脚をショーツがゆっくりとすべり、やがて足首から抜き取られた  
それは夢のような光景だった  
やや小柄ではあるが均整のとれた肢体。一点の曇りも見当たらない白磁のような肌  
きつく抱けば折れそうにくびれたウエストと対をなし、グラマラスな曲線を描く腰まわり  
まっすぐ伸びた脚は適度に肉感があり、その付け根にある淡いブロンドの茂みが、恥ずかしそうに息づいている  
だがなんといっても眼をひくのは、華奢な躰に似合わない豊かなふたつの乳房だろう  
あどけなさの残る相貌とはうらはらに、大きく膨らんだやわらかい肉は  
彼女の全身でも一際透き通るような白さで、その頂にちいさな可憐な薄桃いろの蕾が揺れていた  
まさに芸術。いや人の手では古今のどんな名匠でも造り得ない  
いわば神の造形した最も美しいもの  
そんな幻想を抱かせるほど、ルイーゼ・ローレンシウムの裸体は完璧な『美』と『エロス』を兼ね備えていた  
 
「これは・・・美しい・・・」  
ルイーゼの完璧な裸身を見下ろし、男は感嘆のため息を洩らした  
あまりに圧倒的な『美』に、一瞬それを汚してしまうことを怖れたのかもしれない  
「いやぁ・・・」  
だが光を写さぬ瞳に涙をいっぱいに溜め、ルイーゼが羞恥に身悶えたとき  
彼の下半身がズクン、と脈動した  
それは(この女を自分のものにしたい!)という牡としての本能、いやそれだけではない。  
無垢なるものを欲望のままに犯したいという、熱く赤黒い衝動であった  
不意に男は、がばっと彼女の顔に覆いかぶさり、強引に唇をあわせた  
「ンン!むきゅうぅぅぅっ」  
重ねられた見えない目を見開き、ルイーゼは激しくいやいやをした  
無理もない。奥手な彼女にとってはじめてのキス。それがこのような形で奪われようとは  
おとなしく、男性と付き合ったことすらないからこそ、はじめてのくちづけには夢を持っていたかった  
それが怪しげな薬と「生きている縄」で光と抵抗するすべを失ったまま  
卑劣な見も知らぬ男に奪われたのだ。その衝撃は筆舌にしがたい  
「むふっ、むふっ」  
懸命にかぶりをふって理不尽なキスから逃れようとするのだが  
両手で頭と顎をかっちり掴まれ、離すことができない  
そればかりか無理矢理に口を開かされ、舌がおぞましい生きもののように侵入してくる  
(汚したい、この美しく清純な女を、思うがままに蹂躙したい!)  
ルイーゼの口蓋を、呼吸するのも忘れ激しく侵しながら、男は自分の内なる獣性の目覚めをはっきりと自覚した  
 
おぞましい生き物のように、男の舌がルイーゼの愛らしい唇を割り、侵入している。  
ヌラリとした唾液が注ぎこまれ、顎をがっちりと固定された彼女は呼吸もままならず  
否応なく見知らぬ男の唾を飲みこまれていく。  
(くう〜う、この女の唇は、なんて甘い匂いがするんだ)  
自身の舌がルイーゼのそれに触れ、絡みあったとき、彼の股間のイチモツは痛いほどに膨れあがっていた。  
もはや歯止めも余裕も失い、男はルイーゼの豊かな乳房を力任せに鷲掴みにする。  
たっぷりと掌からはみ出す、喩ようもない甘美な柔らかい手応えに、握りしめる指先につい力がこもる。  
「ンン!ムムグゥゥゥッ」  
唇を塞がれたまま、ルイーゼはくぐもった悲鳴をあげた。  
(こ・・・・怖いっ!ああ、わたし、このまま犯されて、きっと殺される)  
強力な媚薬を飲まされても尚、生命の恐怖を覚えてしまうルイーゼであった。  
「プファァッ!」  
さすがに自分も息苦しくなったのか、男は顔を上げて新鮮な空気を吸い込んだ。  
「ハアァッ、・・・・そろそろ、メインディッシュをいただくとしましょうか」  
 
隠しきれない興奮が、荒くなった呼吸からもうかがえる。  
ルイーゼは自分に覆いかぶさった男の身体が急に軽くなったのを感じた。  
依然として見えない視界の向こうから、服を脱ぐ衣擦れの音が、妙にリアルに聞える。  
(え???この人、裸になってる・・・・)  
性的な知識に乏しい彼女ではあるが、その音が意味することは充分にわかっていた。  
(ああ、わたし・・・この人に抱かれるんだわ。こんなかたちでバージンを奪われるなんて・・・・)  
その瞬間、ひどく痛むのだろうか?妊娠したりはしないだろうか?  
いや、それ以前に事が終われば殺されてしまうのだろうか?  
先程感じたその恐怖は勿論消えはしない。  
消えはしないが、同時に股間の奥底から、なにやら熱いものがこみあげてくるのを自覚していた。  
『夢魔の誘惑』による催淫作用が、どうしようもなく、彼女の女としての欲求を高めているのだ。  
人一倍奥手で真面目な性格であるが故、抑圧されてきた性的願望が、いままさに解き放たれようとしているのか  
彼女にはわからなかった。  
確かな事はただひとつ。  
自分の体内に、見も知らぬ男のペニスがこれから侵入し、純潔を汚されるということのみ。  
そのとき自分は一人前の『女』になる。卑劣な暴力と錬金術に屈した身体は、どんな快感を覚えるのであろうか?  
「お待たせいたしましたね、フフ」  
その言葉とともに、衣類を脱ぎ捨て、全裸になった男の身体が再びルイーゼの裸身を覆った。  
思っていたよりはややスリムな、しかし女性とはあきらかに違う硬い身体が、ルイーゼの柔らかな肢体を抱きすくめる。  
「ヒ・・・・いやぁぁぁァ・・・・」  
もはや力なく拒むだけの弱々しい声は、なんの意味もなさず、却って男の劣情を煽るだけ。  
かつて人目に晒したことのない白い内腿に、硬く膨れた肉棒が  
先端からヌラヌラしたものを吐き出しながらこすりつけられている。  
 
「フフ、そんなに怖がらなくてもいいじゃありませんか。  
これからわたしたちは至福の時を迎えるのですから」  
男は、これが同じヒトという生きものとは思えないような、柔らかい肉体の感触に酔い痴れながら囁く。  
それに、いい匂いだ」  
白磁を思わる滑らかな肌を、男の手が舌が、おぞましい虫のようにいやらしく這いまわり汗や唾液の跡をつける。  
それがルイーゼ自身の汗、秘所から染みだす愛液と混じりあい、生々しくも淫媚な薫りを放っていた。  
「あぁぁ、わたし、はじめてなのに、こんなの・・・ウソ。悪い、悪い夢なんだわ」  
これまで真面目に、学問も仕事も、精一杯誠実にとりくんだつもりだった。  
両親も健在で家庭も裕福であったが、家事もすすんでこなし、朝夕の礼拝も欠かさなかった。  
なのに神はこんな仕打ちをするのか。  
「夢なんかじゃありませんよ。それは貴女の身体が一番よくわかってらっしゃる筈ですが?」  
男は冷たく笑うと、ルイーゼの豊かな乳房に鷲掴みにした。ボールのような弾力と、とろけるような柔らかさを兼ね備えた膨らみを  
ゆっくりと捏ね、舌を這わせ、頂きにある可憐な薄桃色の蕾を吸い上げる。  
「ひゃ、あうン!」  
とたんにルイーゼの裸身が、ビクンとはねあがる。  
 
乳首を弄ばれると、強い刺激がまるで股間に飛び火するように沸き上がる。  
それはあたかも、胸の先端から陰核まで神経が直に繋がっているような錯覚を覚えさせた。  
男の愛撫に応えて淫らに反応する身体。  
ルイーゼはこのとき、自らが男とと交わって快楽に溺れる  
女という一個の肉体であることをはっきりと自覚させられた。  
「ほうら、わかりますか?  
オッパイを揉まれて、こんなに腰をモジモジさせていらっしやるのは誰でしょうね?  
恥ずかしいところをこんなに濡らしていらっしやるのは一体誰なんでしょうかね?」  
「ふ、あ、はぅン!こんなの、こんなのって、んクウゥッ!」  
瑞々しい、感じやすい乳房を愛撫されるたびに、すでに充分潤っている筈の割れ目は  
新たな刺激に応えてジワーっと蜜を吐き出す。  
男の指がそれをすくい、硬く尖った肉の芽になすりつけると  
「ぬばたまの帳」に奪われたルイーゼの暗い視界が極彩色に染まり  
みずからのものとはとても信じられない、愉悦に満ちた、まるで獣のような声がほとばしる  
「あっ!ンアァァァァァァァァァァッ!!」  
それはついにルイーゼが、淫鬼の魔力に屈伏した瞬間であった。  
「・・・驚きましたね。なんて声を出すんですか?」  
些か呆然とした声で、男は言った。  
「ンもう駄目えぇ・・・はやく、はやく楽にしてください・・・」  
 

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