「っあ、ぁんっ……」
壁際に積まれたコンテナにぶつかった声は、跳ね返って部屋中に響き渡る。
深夜。部屋の隅に置かれたベッドの上で、ヴィオは一人自慰に耽っていた。
秘肉に指を埋めながら、ヴィオは時折ちらりと視線を一点に送る。
ヴィオの視線の先、薄い布の衝立の向こうには、今もバルテルが寝ているハズだった。
「ぁぁっ……気持ち、イイ……よぅっ………」
ヴィオは声を抑えようとはしない。むしろ、聞かせたがっているようにすら見える。
兄が起きはしないか。自分の痴態に欲情はしないか。
そんな事を考えながら、ヴィオはぶるりと身体を震わせた。
「……うぅん……く、うぅっ」
下肢を弄る手を片方離し、胸にも手を伸ばす。
小振りかも知れないが、両親が出ていった三年前から比べれば、確実に膨らみを増した胸。
いつだったか起きたあの事故。あの時のバルテルの視線を思い出し、ヴィオの熱は更に高まる。
「っあ、あ、……お、」
お兄ちゃん。
その台詞が零れる前に、ヴィオは枕に顔を埋めた。
止められない台詞を、柔らかな枕に全て飲み込ませる。
偶然に期待はしても、自分から動く勇気はなかった。
「も……ダメ、イッちゃう……イッちゃうよぉっ………!」
ヴィオの背はしなやかに反り返り、爪先がピンと伸びる。
激しい衝動と軽い喪失感が過ぎ去り、代わりにじわりとした睡魔が襲って来るのを感じながら。
ヴィオは小さな声で一度だけ「お兄ちゃん」と呟いてみた。
「こっちを向いて、よ……」
ヴィオの寝息が聞こえてきたのを確認してから、バルテルはのそりと上体を起こした。
「……情けねー………」
呟き、情けなくも濡れた掌を見つめる。自分の掌から目が離せなかった。
ねっとりと絡み付く白い体液。情欲の証。誰に向けての熱なのか、方向ははっきりしている。
ただ、自分から禁忌を犯すような、そんな勇気はなくて。
「ったく、まだ……まだ、あんなガキのくせに」
幼かった妹。三年で、見違える程に綺麗になった、自分の妹。
黙っていれば、いつかは誰かの物になってしま事くらい判り切っているけれど。
「俺がそっち向いちまったら……」
溜息を付く。一度は引いた衝動と熱が、また身体の奥で燻り出したような気がした。