白夜亭での午後―――――
セシルはエリーの宿泊している部屋に兄がいることを知って、何かちょっかいでも出してやろうとやって来た。
(えへ、お茶いれてきちゃった! あのお兄ちゃんがエリーさんと二人きりだったらどんな顔して話してるんだろ・・・。すっごく、気になるんだよね・・・)
セシルはエリーの部屋のドアのノブに手をかける。
(ちょっとだけ覗かせてもらうからね、お兄ちゃん。うふふっ、後で思いっきりからかってやるんだから、覚悟しなさい!)
「・・・あぁっ・・・ふぁっ・・・」
(・・・えっ!?)
セシルはドアの隙間から漏れてくるエリーの声にあわてて手を引っ込めた。
(・・・や、やだ・・・これって・・・)
セシルの動悸が激しくなった。
自分の予想していた以上のことが、どうやらこの部屋の中で繰り広げられているらしい。
セシルは真っ赤になってしまって、その場を立ち去ろうとするが、まだ自分が経験してない世界がそこにあるかと思うと、どうしても足がそこでとどまってしまう。
そして耳も、全身の神経もドアの向こうへと向いてしまうのだった。
「・・・んはっ・・・ああっ・・・・・。ダ、ダグラ・・・」
セシルはさらにドキドキした。
あのエリーが悩ましい声を漏らしているだけでも刺激的なのに、その澄んだ声が兄を呼ぶ。
しかもそれは途中で何かに遮られ―――――
(・・・キス・・・でもしてるのかな・・・・・・)
セシルはとうとう持ってきたお茶も床に置いてしまい、ドアのノブにもう一度、手を伸ばし、ゆっくりと開ける。
(・・・・・・!!)
こっそり開けたドアの隙間からセシルの視界に入ってきたものは、さらに刺激的なものだった。
おそらく兄に裸にされたエリーが、その兄に後ろから抱えられ、揺さぶられている、という姿態だった。
「・・・あ、あぁんっ・・・、はぁっ・・・」
エリーの喘ぎ声と兄の息づかいと、何よりもそのふたりがつながった部分から、かもし出される潤んだ音がセシルの耳に届く。
しかもそのつながって、揺れている部分がセシルには丸見えで、何も経験のない彼女にはあまりにも衝撃的だった。
セシルは驚きのあまり腰を抜かしそうになりながらも、その場を動く事も、それから目をそらすことも出来ずにいた。
(・・・あ、あのエリーさんがっ・・・お、お兄ちゃんとっ・・・・・・)
セシルは優しい兄の顔しか知らなかったが、そこでエリーを抱いている兄はセシルの知っている兄ではなかった。
熱にうかされたように狂おしく、ひとりの女を抱く青年だった。
(・・・こ、恋人同士なら・・・、これくらい・・・・・・する・・・よね・・・)
セシルは兄がエリーと二人きりでいる時にどんな顔をするのか知りたかったが、ここまで知るつもりは全くなかった。
からかおうにも、それはあまりにセシルが想像した以上に情熱的で、触れてはならない禁忌のようにも思われた。
それよりもセシルはエリーの姿態に衝撃を受けていた。
いつも自分と話してくれる彼女は聡明で、あたたかくて、そんな淫らな声を出す女性だとは思っていなかった。
しかしセシルは同じ女として、それがはしたないとは思わなかった。
セシルだってもう子供ではなかったし、エリーは子供っぽく見えるがセシルよりはずっと年上だ。
こういう経験があっても不思議でない、ということも頭ではわかっていた。
そのエリーが兄に抱かれ、歓喜の吐息とともに、兄を呼びつづけている。
(・・・好きなひとに抱かれる・・・って、・・・あんなふうに・・・なっちゃうの・・・?)
それにセシルは自分でも見たことのない、女の濡れそぼった部分を見て、また衝撃を受けていた。
セシルはその光景を見て、そこから動けなくなってしまった。
食い入るように、その行為を見ているうちにセシルは自分の身体もエリーの熱が乗り移ったかのように、熱くなっていくのを感じていた。
(・・・わ、私も・・・あんなふうに・・・なってるのかな・・・)
セシルは自分のその見えない部分に自然と手を伸ばしていた。
「・・・・・・っ!」
指先に触れたエリーと同じ部分が、同じようにぐっしょり濡れているのにセシルはびっくりした。
「・・・んんっ・・・やぁっ・・・」
エリーと兄の動きがだんだん激しくなり、それを見つめるセシルの身体も熱さを増してゆく。
(・・・わたしも・・・いつか誰かに・・・あんなふうに・・・)
セシルはスカートの中で自然と指を動かしていた。それもエリーと兄の動きに呼応するかのように。
「・・・・・・っ」
知らずにそこをまさぐっていたセシルは瞳を潤ませながらも、それが思わぬ快感をもたらしたので、やめる事ができないでいた。
(・・・私、何やって・・・・・・!)
セシルは自制しようとするが、目に映るエリーの充血し潤んだ箇所が彼女の指を加速させる。
(・・・っ・・・だめ、・・・・・・こんなことっ・・・・・・でも・・・)
「ああぁっ! ・・・ダグ、ダグラスっ・・・!」
そこへエリーの叫びが聞こえ、セシルの頭をより混乱させる。
(・・・だめ・・・、私も身体が・・・熱くて・・・・・・)
セシルはとうとう立っていられなくて、ドアの隙間から目がそらせないまま、その場で四つん這いになる。
彼女の秘所ももう、濡れそぼって下着はびしょびしょだった。
セシルの指が、熱く盛り上がった自身の突起をあふれる熱い蜜で濡らすたび、エリーが感じているであろう感覚がセシルにも伝わってくるような気がする。
(・・・どうしよう・・・とまらない・・・、とまら・・・ない・・・のっ・・・)
セシルは息をつめながら、どうしてもエリーと兄の情事から目をそらせずに、また自身の指もとめることができない。
身体は燃え出すか、というように熱くなり、蜜はセシルの白い太腿をつたうかと思うほどにあふれてくる。
「・・・はぁ、はぁ、・・・・・・んんっ!」
セシルは声を漏らさないように必死になった。
全身が震え、今度は無意識に片手で自身の胸をまさぐっていた。その胸の先端はとがり、触るたびに硬さを増す。
それは目に見えるエリーがされていることと同じことだった。
無意識のうちに、セシルは目に映る光景を真似てしまっていたのだ。
(・・・私も、・・・いつか好きなひとに・・・あんなふうに・・・・・・されてみたい・・・!)
「・・・っ! ・・・・・・っ!!」
そうセシルが心の中で叫んだとき、エリーはそのセシルが初めて切望した絶頂というものを迎えたようで、何か一度叫んでから全身をそらせて足の先まで震わせていた。
セシルはその様子を見ながら、彼女も熱く高まった息を吐く。
「・・・んはぁっ!!」
セシルは初めてそんな行為をして、軽い極みに達してしまった。
「・・・ふ・・・ふぁ・・・・・・っ・・・」
セシルは自分のした破廉恥な行為と後ろめたさと、それと反比例する快楽で涙があふれた。
(は、早くここから立ち去らないとっ・・・・・・!)
セシルは息を切らしながら、急いで完全に冷めてしまったお茶を持って、エリーたちのいる部屋の前から立ち去った。
〜end〜