カスターニェとザールブルグを結ぶ街道。エリーのザールブルグへの帰途、護衛として  
雇われたルーウェンは盗賊と切り結びながら逃げていた。  
相手はすでにあと二人にまで減っていたが、ルーウェンもそれ相応のダメージを  
負っていた。もう一人の護衛であるはずのマリーが、忘れ物を取りに行くといって  
戻ったまま、まだ追いついてこないことがもどかしい。2人で行くのは危険だと、  
ルーウェンは反対したのだが帰り道だから大丈夫とエリーに押し切られた結果が  
今の事態だ。  
エリーは盗賊に何かアイテムを使おうとする…が、失敗したらしく相手には  
何の変化も現れない。  
複数を同時に相手にすれば怪我は避けられない。ルーウェンは目線で逃げ込む場所を  
伝えながら、エリーに叫ぶ。  
「一気に走りぬけるぞ!」  
逃げても追ってくるしつこい相手と少しでも有利な場所で戦うために、ルーウェンは  
エリーがうなづくのを確認し、タイミングを合わせて走り出した。  
 
が直後、エリーは突然何もないところで転び、路肩の斜面を転がり落ちた。  
勢いをつけて踏み出していたのと、たまったダメージのために、一瞬ルーウェンの  
反応が遅れる。  
その隙を盗賊は見逃さなかった。盗賊の方が一瞬早く、路肩を滑り降りてエリーを  
とらえる。  
「きゃあああぁっ」  
「エリー!」  
「おっと動くな…こっちの可愛いお嬢ちゃんがどうなってもいいのか?」  
盗賊は素早くエリーの腕をねじりあげ、その首に蛮刀を押し当ててルーウェンを脅す。  
「剣を捨てろ…余計なこと考えるなよ、このお嬢ちゃんの命が惜しいならな」  
首に食い込む冷たい刃の感触に恐怖しながらもエリーは叫ぶ。  
「だめ、ルーウェン逃げて!!」  
「うるせえ! 殺されたいのかてめえっ!!」エリーの腕をさらに力をこめてねじり  
ながら男はだみ声で怒鳴り、もう一人の盗賊に指図する。  
「お前、ぼさっとしてネエでそっちの男を縛れ」  
 
どうやっても反撃に出る目がないと判断して剣を捨てたルーウェンにもう一人の  
盗賊が近づき、抜け目無く警戒しながらも鎧を外してめぼしいアイテムを取った後、  
彼を荒縄で縛り上げ、猿轡をかませる。  
殺されることを覚悟していたルーウェンはいぶかしく思いながらも、この状態を  
打開する方法をひたすら考えながらなりゆきを慎重に見守る。  
 
「さてと、お嬢ちゃん…これがどういうことかわかってるよなァ?」  
盗賊はエリーの腕と首に押し当てていた刃を離す。あまり手入れが良くないらしく、  
エリーの首には赤く跡が残ったのみで、出血はなかった。  
「お金はこれだけ…あと売れる物なんてこれぐらいです」  
ねじり上げられていた腕を急に放されて投げ出される格好になったエリーは、  
震えながらもポシェットとイヤリングを差し出す。  
「女はいろいろ隠すところがあるっていうからなァ?  
俺に脱がせてもらいたいか? それとも自分で脱ぐか?」  
言いながら男がもう一人にあごをしゃくって指図すると、心得ているらしい相方は  
ルーウェンの首に蛮刀を突きつけ、じわりと引くそぶりをみせる。  
 
「…自分でできます! だから、彼を離して!!」  
エリーは叫んだ。  
「それにはまずおめえが言うことを聞くかどうかだなァ」  
エリーは震える手で身につけた物を外し、その場に積み上げる。  
自分の判断ミス、そして失敗でルーウェンの命を危険にさらしていることで  
エリーの頭はいっぱいで、他のことは考えられない。  
下着姿になったエリーに盗賊はさらに命じる。  
「それもだ。全部脱げ」  
体に触れる外気の感触にだんだんと恐怖をかきたてられながらも、エリーには  
逆らうことはできなかった。  
がくがくと震えて思うように動かない手足を無理矢理動かして、エリーは裸身になる。  
「さ、さあ、もういいでしょう? 解放してください…」  
エリーはか細い声で言い切る。  
「そいつはできねえ相談だな!」にやにやと愉しんでいた盗賊はやおらエリーに  
つかみかかり、後ろ手に縄で縛る。  
 
「いやあっ!!!」エリーはルーウェンのことも忘れてしゃにむに抵抗するが、  
難なくそこらの木にくくり付けられてしまう。男はこういったことには慣れている  
ようで、巧みに”やりやすく”エリーを固定する。  
「おい、こっちのはもう片づけてもいいかよ?」  
もうひとりの男がルーウェンに突きつけた刃をじりじりと動かす。  
「わかってんだろ、こっちが済んでからだ。俺は恋人の前で女を犯るってのが  
イイんだからよ」  
「や…約束が…!」男は殺すという言外の含みに気づいたエリーは蒼白になる。  
それに二人は恋人ではない。が、今はそんなことはこの場の全員にとって  
どうでもよいことだった。  
「そんな約束、してねえヨ! なあ?」  
げらげらと盗賊たちは声をそろえて笑った。  
「さーてと、おしゃべりはここまでだ。声を聞くのも好きなんだが、こういう  
気の強え女は舌噛んだりしやがるからな…」  
エリーの口に布のカタマリが押し込まれる。  
「!!」悲鳴をあげようしたエリーはむせこむ。  
 
「よーく見とけよ、お前もおっ立てたら今生の名残にお裾分けぐらいしてもらえる  
かもしれネエぜ!!」ルーウェンについた方の盗賊が彼の頬をべちべちと  
軽侮するように軽く叩きながら言った。  
ルーウェンは盗賊の言葉などはなから聞く気はなく、歯を食いしばり、目を閉ざして  
いたが、耳をふさぐことだけはできなかった。  
盗賊は、男のことより早く自分も女にありつきたい思いで一杯だったので、  
それ以上彼に無理強いしてまで見せようとはしなかった。  
 
見知らぬ男の手と唇がエリーの体を這い回る。  
ダグラスに無理やりされた経験もあったが、それでもダグラスは身勝手ながらも  
エリーを求めてのことだったし、エリーも少なくとも友達以上の好意は持っていた  
けれど、今目の前にいる男たちはエリーをただの獲物としか見ていない。全く種類の  
異なる恐怖でエリーは恐慌状態になる。  
エリーのくぐもった声にならぬうめきは狂ったように拒否の響きをあげ続ける。  
が、それさえも男を喜ばせるだけだった。  
無理矢理にエリーの秘裂にぶこつな指を突っ込んで、その感触に男は感嘆の声をあげる。  
 
「こいつぁ上物だ。なるべくお前も傷つけんなよ、こいつら大して金は持っちゃ  
いなかったがこりゃ高く売れるぜ!!」  
男はそこをくじりまくり、エリーの体が自分自身を守るために愛液を流し始めるのを  
待った。すぐにも女を引き裂き、めちゃくちゃに壊したい残虐な欲望を未来の  
金のために我慢する。  
やがてエリーの体は彼女の心を裏切り、ぴちゃぴちゃと水音を立て始める。  
 
「へへ…こいつ、感じてやがる…感度もばっちりってわけだ」  
エリーは悔し涙を流す。視線で殺せるものならば、という目で男をにらむ。  
「どうだ? そろそろ挿れて欲しいか? んん?」  
エリーは必死でかぶりを振る。そんなことで容赦してくれる相手ではないことは  
わかっていても。  
(助けて!! いや! いやーっ!! )声を限りに助けを呼ぼうとしても、  
エリーの息が余計に苦しくなるだけだった。  
 
が、突然、ごつっと鈍い音がして、エリーの上から男の姿が消えた。  
エリーにのしかかっていた男は何の予告もなく殴り飛ばされた。  
男が倒れたあたりに、すでにもう一人の男ものびていた。  
「な…お前、どうやって…」今しもエリーを犯そうとしていた男は信じられないものを  
見る目でルーウェンを見た。  
すかさず全身で怒りを叩きつけるような女の声が響いた。  
「メガフラムッッ!!!」その声に続いてまばゆい光が辺りを包み込み、激烈な爆発が  
まき起こり…土煙が去った後には、ルーウェンとエリー、そしてマリーだけが残った…。  
 
「エルフィール! けがはない?」  
マリーがエリーに走り寄り、彼女の口から布きれを取り出し、拘束をほどく。  
「なんとか…」エリーは咳き込みながら答える。  
服が無事だったのは幸いだった。縛られていたため手がしびれた様子で、服を着込む  
手つきがたどたどしいエリーをマリーが手伝う。  
「こわかった…」エリーは震えていた。  
「もう大丈夫だよ、エルフィール!」マリーはエリーの震える体を母親のように  
抱きしめる。エリーはマリーの胸に顔をうずめて弱弱しく安堵のため息をつく。  
 
が。直後なぜか、エリーは突然マリーの大きく開いた胸元をちろりとなめた。  
「なな何? どうしたのよ、エルフィール!?」  
そおいう趣味だっけ?、というより、こういう状況下でそんな気分になるはずがない、  
とマリーは思った。何かが、おかしい。  
 
ルーウェンもその様子を遠巻きに見守っていて、不審に感じた。  
「ごめんなさい…なんか、私、変…ですね」  
エリーはマリーの体に腕を回して体をすり寄せていた自分に気づいて、体を離して  
自分を抱きしめた。  
「なんか…胸が…苦しくて…でも、大丈夫です…」  
そう告げるエリーの声は熱っぽかった。  
ぱっとエリーの額に手を当てたマリーはすぐに手を放し、考えながら言った。  
「エルフィールあんた、魅了の粉かなんかかぶったわね…?」  
思わずルーウェンは驚きの声をあげる。  
「今時の盗賊はそんなアイテム持ち歩いてるのか!?」  
エリーは情けない声で事実を明かす。  
「い、いえ、私が相手に使おうとして…失敗しちゃったんです」  
逃走に失敗したのも、妙に盗賊を喜ばせてしまった過剰な体の反応も、品質Eクラス、  
効力Sクラスといういびつな自作アイテムをエリーが自分でかぶってしまった  
結果だった。しかも、緊張の糸が解けて急激に効き出している。  
 
マリーは頭を抱えた。  
「まあ、あたしもやったことあるけどさ…」苦々しげに言う。  
「マリーはその時はどうした? どうすりゃ治るんだ?」  
ルーウェンはマリーを問いつめる。マリーはエリーの方に答えを言う。  
「あたしは解毒薬使ってもらった。エルフィール、持ってる?」  
エリーは首を振る。  
「じゃあ睡眠薬は? 眠っちゃえば、朝には治ると思うけど」  
エリーは力無く首を振る。  
「マリーは持ってないのか? そういうの」  
ルーウェンが尋ねるとマリーは肩をすくめた。  
「…あたしがそういうアイテム持ち歩いてると思う?」  
ルーウェンは思わずマリーを見た。  
爆弾娘の通り名は、その風体のことだけを指しているわけではないことは、  
ルーウェンも重々承知していたが。  
 
「どっちも持ってない…ってわけか…」  
「まあ一晩したら治るわよ、たぶん。今日は眠れなくてつらいだろうけど。あとは  
そーねー、あそこに大きな木があるでしょ、あの根方のあたりにちょっとした泉が  
あるの。そこで水浴びでもしたら少しは楽になるかも…それでなくてもあんな目に  
あっちゃって水浴びはしたいでしょうし」  
「じゃあ決まりだ、そこまで行くぞ、マリー」  
「勘弁してよ〜。あたしもう動けないよ」  
「何でだよ。マリーは馬車で来たんだろ?」  
「そうよ、馬車よ…でもついうとうとしてる間にあんた達追い越しちゃってさ〜、  
気がついたら行き過ぎちゃってて、ゆうに2日分は戻ってきたところで、  
”メガフラム!”、よ……。も、限界〜」  
確かにマリーは疲労しきった様子だった。  
「ルーウェンがおぶってってくれるなら、あたしも水浴びしたいのはやまやま  
なんだけどな〜」マリーは上目遣いにルーウェンを見る。  
 
「…さすがに二人は無理だなぁ」ルーウェンは動けそうにないエリーを見やる。  
「だよね。ふわぁ…じゃ、あたしはここで姿消して寝てるから、後はルーウェン  
よろしく〜」  
あくび混じりに言い捨てて、すぐにマリーの姿はルーウェンの視界から消えた。  
マリーは宣言通りさっさと寝入ってしまったらしかった。  
 
ルーウェンは肩をすくめてエリーに話しかけた。「仕方がない、二人で行こう」  
「…いえ、いいです…私、大丈、夫、です…」エリーは体を支配する疼きと  
戦いながらかぶりを振った。先ほどよりもつらそうになっているエリーは  
ルーウェンにはとても大丈夫そうには見えなかった。  
(やむを得ないか…)ルーウェンは有無を言わさずエリーを抱き上げ、マリーの  
言った泉に向かう。  
エリーは彼の腕の中で、ルーウェンに抱きつきそうになる自分の腕をいましめるように  
自分の体を抱きしめたりしながら、荒くなる息を必死で抑えていた。  
さきほど盗賊に犯されそうになった恐怖もいかばかりであったかというのに、  
媚薬の効果によって、体だけはまるでその続きを求めているかのような反応を  
してしまうエリーのその様子は、ルーウェンにとっては扇情的というよりむしろ  
痛々しくてならなかった。  
 
ほどなく、マリーに聞いた泉に到着し、ルーウェンはエリーを降ろす。  
「俺はあの木のあたりで周りを見張ってるからさ、終わったら声かけてくれ」  
エリーはこくん、とうなずいた。  
 
しばらくして。薄暗かった辺りが完全に暗くなった頃になって、ルーウェンは  
不安になってきた。  
(遅すぎやしないか?)  
立つこともやっとの状態だったエリーを一人で置いてきたことは果たして  
適切だったのか? ルーウェンの心に疑念が巻き起こる。  
(やっぱりひきずってでもマリーを連れて来るんだった…)  
激しく後悔しながら、ルーウェンはエリーがいるはずの方角に声をかける。  
「エリー? そっち行っても大丈夫か?」  
待っても返事はなかった。  
 
「おいまさか、溺れてるんじゃないだろうな?」不安をうち消したくて、大声で  
呼びながらルーウェンはエリーの姿を探す。  
と、エリーの裸体は死人のように水面に浮かんでいる、ように見えた。  
「! エリー!!」一瞬息をのんだルーウェンは走り寄り、服のままざぶざぶと  
水を蹴たてて泉に踏み込む。近づいてみると意外に浅いところに横たわっていた  
だけだったが、明らかに様子がおかしかったのでルーウェンはエリーを抱き起こした。  
「…だれ…?」エリーの目はうつろだった。見れば…ルーウェンは見たくはなかったが…彼女の両手は秘所に置かれ…自分を慰めていた…。  
自分の愛液にまみれた手を洗いもせずに、エリーはルーウェンの首に手を回した。  
「だれでもいいや…たすけて…」  
ルーウェンの唇に唇をかさねて、そしてその手はルーウェンの局部をまさぐる。  
媚薬の効果はエリーの体を蝕み続け、その意識までも支配していた。  
涙に濡れた、光を失った瞳はただ一つの快楽への渇望で苦痛に満ちていた。  
 
羞恥のためでなく強すぎる欲望のために彼女の手は震え、ルーウェンの鎧や衣服を  
はぎ取ろうとしては失敗を重ねる。  
「はやく…たすけ、て…」男の腕の中にいてさえ求める物が与えられないことに  
絶望したように、エリーの手は再び自分を慰める。  
ルーウェンはその手を払いのけて、彼女を強く抱きしめた。エリーの手は彼の  
背中に回る。こうしていれば、もう彼女はあさましいことをしなくて済む。  
そのまま抱き上げて岸辺に運び、軽く体を拭いてやる。  
エリーの苦しみに満ちた痴態を見るルーウェンに欲望はなかった。  
だが…このまま朝までもがき苦しみ助けを求める姿を見守り続けることと、エリーの  
求める物を与えてやること…どちらが正しいかではなく、どちらがエリーの望み  
なのか…エリーの意識が混濁してしまった今となっては、ルーウェンには  
彼女の意志を確認する方法はなかった。  
わからないまま、ただ彼は近くの木に寄りかかって座り、エリーのなすがままに  
任せた。卑怯かもしれない、と思いながら。  
 
エリーは彼の衣服をすべてはぎ取ることはあきらめ、あちこち中途半端に脱がそうと  
したままほったらかして局部だけを露出させると、彼のモノを口に含んだ。  
異常なほどの熱心さで彼のモノに奉仕するエリーの白い体が夜の中でうごめく。  
直接的な刺激を送り込まれて、彼のモノは彼の意志に関わりなく勃起する。  
ある程度の硬度を得るとすぐに、エリーは彼の上にまたがり、腰を沈める。  
自ら乳房をもてあそび、秘所に手を添え…みだらな姿で彼の上を上下し、  
あられもない声をあげてよがる。  
エリーは媚薬の効果で瞬く間に頂点に達したが、その欲望は2度3度と達しても  
おさまらず、エリーはまた腰を使いながら懇願するような瞳でルーウェンを見つめる。  
何度目かに達した後、汗と涙と涎にまみれながらエリーはぐったりとルーウェンの  
首にしがみつくが、その顔にはまだ苦悶の表情が刻まれていた。  
もうエリーの体は疲労で動けないのに、その秘所はさらなる快感を求めて  
魔物のようにうごめき続けていた。  
 
このままでもエリーを汚さないことにはならないうえに、彼女の苦しみは  
むしろいや増していることに気づかされ、ルーウェンは意を決する。  
彼女の体を支え、彼女を下から突き上げる。白い頼りない乳房にくちづけ、背筋を  
掃くように撫でる。やっと、自分の動きによるものでない快楽を得て、彼女の声は  
甘くせつない響きをまして高まっていく。  
ルーウェンは先ほどまでの彼女の動きで自分の限界が思ったより近くに迫ってきて  
しまっていることを悟って、必死にこらえながら彼女を責めることに集中する。  
エリーはいくつかの軽い絶頂を経て、ひときわ高いところへのぼりつめてゆく。  
だが…、(もう、限界だ…!!)射精感をこらえられなくなってルーウェンは絶望した。  
「…エリー…!!」  
しかしその時、声にならない叫びと共にエリーの全身ががくがくと震え、尽きる  
ことはないかのようだった欲望の果てが訪れ、一瞬正気を取り戻したような  
至福の表情をたたえてエリーは崩れ落ちる。  
崩れ落ちる彼女から彼のモノが抜け出たその瞬間、ルーウェンもまた限界まで  
こらえていたものに押し流され、幾度も幾度も白濁液が噴き出すにまかせながら、  
彼はきつく目を閉じた……。  
 
抗えぬ快楽の波が去り呼吸が整うとすぐに、ルーウェンは自分の身支度もそこそこに、  
まずエリーの顔と体を拭き清め、覚えている限り元通りに衣服を整えてやった。  
それから自分も体を清める。  
(意識を取り戻したとき、夢でも見たと思ってくれれば…その方が、エリーには  
いいだろう…)  
彼女が正気に戻れるのかどうかさえ心のどこかで危ぶみながら、ルーウェンは  
祈るような思いと共に、一見安らかに眠るエリーを抱えてマリーがいるはずの場所に  
戻り、彼女を横たえて毛布を掛ける。  
ルーウェンはそのそばで眠らずにそのまま朝を迎えた。  
 
 
「マルローネさーん、早く早く〜」今日も周りをきょろきょろしながら旅をする  
エリーは、一人でしょっちゅう街道から外れてしまう。  
「エルフィールぅ…勘弁してよぉー、ほんっとにあたし、疲れてんのよぉ?」  
「だってだって、これ見てくださいよ! 見たことない植物ですよ!!」  
「え! 本当?」マリーも途端に目を輝かせて走ってゆく。  
自分の腕とマリーの爆弾があれば大抵のことは切り抜けられるので、  
ルーウェンは周囲を警戒しながらも、エリーがふらふらすることは止めなかった。  
(エリー、本当に忘れちまったんだな…)  
ルーウェンの心をかすかな寂寥がよぎる。  
だが、まだ終わりの見えない旅をする自分の身を振り返り、ふっと心にわきあがった  
思いを封じ込める。  
これでよかったのだろう、と……。  
 
 
-おしまい-  

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