「あら、そのマフラーどうしたの…?」
ユーディーの首に目をやると、暖かそうなマフラーが巻かれている
「え…? あ、これですか? ほら、最近また冷え込んできてるから」
「アナタにしては随分と高い買い物をしたわね それ、高かったでしょう…?」
錬金術を生業としているせいか、物の目利きには自信がある
ファッションそのものには疎くても、マフラーの材質くらいはわかっているつもりだ
「私が買ったんじゃないですよぅ ラステルから…ほら、メッテルブルグの資産家の…」
「ふぅん…アナタ、そういう物がよかったのね…」
軽く聞き流す…そのつもりでも、どうしても気になってしまう…
「いや…私には釣り合ってないと思いません? 正直に言うと、ちょっと…」
「……??」
「私、もう少しシンプルな物の方が肌に合うみたいで あはは…」
マフラーの端を摘むユーディー その目は、嘘はついてないように見える
「寒くなってきたとはいえ、貰い物しかありませんから…」
「あぁ…マフラー買うお金もないのね…」
「うっ!? 痛い所を突いてくるんですねぇ とほほ…」
「私が何か、暖かくなる物でも作ってあげましょうか…?」
「えっ!? マフラー編めるんですかぁ?」
「誰がマフラーって言ったのよ…『暖かくなる物』よ…」
「えっ…ええぇっ!?」
「ほら、さっさと街に戻るわよ」
「ちょ、ちょっと!? 先に行かないでくださいよ! ヘルミーナさぁん!」
ヘルミーナの顔がどんな表情だったか、後ろを追いかけるユーディーにはわからなかった
とある日の採集先でのお話でした おしまい