ダグラスに、してもらいたいことがある。  
エリーは工房の隅に椅子を置き、調合の最中に何度も考えてしまっている「それ」を  
また思い浮かべながら、大きなため息をついていた。  
 
「はぁ〜……してもらいたい、って素直に言えばいいのかな。でも……はずかしい、よね」  
 
相手はダグラスがいい。  
どうしてもそう。  
ダグラス以外は考えられないのだ。  
 
だって。  
城門に立っているダグラスを見てそうしてほしいと思ったのだから。  
 
 
「でも、言ったら呆れられないかな。きっと、ガキが何言いだすんだって怒るよね」  
 
 
あのたくましい腕で。  
ぐいと抱あげられて。  
宙に浮かぶような思いを味わいたい……なんて。  
 
「ああ――やっぱり言えないよ」  
 
エリーは真っ赤になって頬を手で抑える。  
子供じみた願い。  
 
 
「『高い高い』して? ……なんて」  
 
 
 
エルフィール・トラウム。15歳。  
昨日、街の子供に懐かれているダグラス・マクレインを目撃したばかり。  
 

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