「トトリってさ」
「んー?」
「変わらねーよなー」
彼の視線を追って。何処に刺さっているか、確認してから。
「うん。怒っていいかな」
眉間に皺を寄せて、むーっと頬を膨れて見せる。
その仕草を見て、原因を作ったジーノはケラケラ笑った。
「だってよぉ。背だってちっこいまんまだし」
「ジーノ君が大きくなり過ぎなのー。ずるいよ」
「ずるくねーし。肉食え肉」
膨らんだ頬っぺたを摘んで引っ張って。
トトリがじーのくんいひゃいよー、なんて情けない声を上げていた。
それから程なくして、頬を伸ばすのに飽きたジーノからやっと開放されて。
トトリは顔を両手で覆いながら彼を見上げた。
「もう。さっきいっぱい好きにしといて、何でそーいうこと言うかなぁ」
先程、彼が見ていた部分。胸元を隠しながら、口を尖らせる。
『さっき』、何があったか。
この場所が、ジーノの取っている宿屋の、しかもベッドの上で。
二人とも、揃って素っ裸なことから察しろ、という話。
「どうせ、胸ちっちゃいもん……」
「ん? いや、俺好きだけど」
折角隠したのに、ひょいっと手を取り上げられた。
青年の掌に、すっぽり余裕で納まる慎ましやかな乳房。
「これくらいのが丁度いいじゃん?
つっか乳デカいトトリとか想像できねー。ありえねーだろ」
「うー……。何だかとっても失礼なこと言われてる気がする……」
「ホントのことだし。さてと、もっかいするか」
胸を揉んでいた手を、腰に回して引き寄せようとした。
が、それを彼女が止める。
「ダーメ。もう帰らないと。ロロナ先生とメルルちゃんが待ってるもん」
「えー。何だ、つまんねぇな」
首筋に抱き付いて、延長戦を望む彼こそ昔と変わらない。
要望の中身は、様変わりしているが。
「仕方ないなぁ……。じゃあ、口でするから。それで、我慢してね」
「ん……。口かぁ、まあいいけど」
渋々離れたジーノを、ベッドに座らせて。その前にトトリが跪く。
小さな唇に、肉棒を含ませる。
「はふ」
先端を丁寧に舌で舐める。口を大きく開けて、唾液をかけた。
それを指で広げて、口に入りきらない根元の方へ向かわせた。
「んっ、ちゅぅ……む、ぁ……ちゅっ。はぅ、うぅん」
亀頭を弄り、先走りが染み出た辺りで唇をずらして竿へスライド。
舌を巻き付けて、全体的に舐めていく。
「っは……、も、元気になっちゃってる」
「そりゃ、今日は一回しかしてねぇしな」
ピンとそそり立つ男のシンボルを下げた彼は、何故か誇らしげだった。
そんな彼を呆れ気味にトトリは見つめていた。
「もー、ジーノ君と違って、私そんなに体力ないんだからね」
「だらしねぇなー。それでも冒険者かよ」
「もう錬金術一本だよ、私」
「似たようなもんだろ。今だって外行ってるんだし」
「そりゃ、まぁ……」
採取やメルルの引率。その合間に戦闘もこなす。
冒険者だった頃と同じように。
「今度さ、また二人で冒険しようぜ。あ、ミミも呼ばねぇとうるせーかな」
「そうだね。……どうせなら、デートって言って欲しいかな」
小さく付け足した言葉は、ボリュームを絞ったおかげでジーノには聞こえなかった。
「何か言ったか?」
トトリは首を左右に振って、口淫に戻った。
「んはァ……ッ。ん。ふぅっ」
「うぉっ」
喉の奥まで飲み込んで、舌を小刻みに動かす。
指は輪を作って、上下に扱いた。
「あ、んぅう……はっ、ちゅぱぁっ」
硬さを増した陰茎を、口内に咥え込んで。
発射が近い。促すために、軽く噛み付く。
痛みではなく、快楽を与えるために。
「ッ、トトリ……っ」
頭を抱き寄せる。彼女は、視線を上に向けた。
(ジーノ君の、イッちゃう時の顔、可愛いなぁ)
多分、彼にそう言えば怒るだろうから内心に留めていた。
「ん……!」
やがて、口の中に苦味が広がった。
それなりに量が多いせいで、時間がかかったがどうにか全部飲み干す。
「はぁ、ぷは……。ジーノ君、これで満足した……?」
「ちょっとスッキリした」
立ち上がったトトリの手を引く。ジーノは腰を下ろしたままだから、目の高さが少しだけトトリの方が高い。
そのまま、キスをした。最初は触れるだけ。徐々に舌が絡み合う濃厚なものに。
「……ジーノ君、やじゃないの?」
「何が?」
「だって。私の口の中……その、せーし飲んじゃったから」
「あぁ、そういや何時もより苦いな」
「豪快だなぁ……」
「トトリのなんだから、その内甘くなっちまうぜ」
妙な理屈を振りかざす幼馴染に、今度は彼女からキスを贈った。