べえ、と口から吐き出したそれを試験管にゆっくりと全部たらしてから蓋を閉める。  
そしてハンカチで口元をきれいに拭いて、それから私は呟いた。  
 
「材料は簡単なんだけど、ねえ。」  
 
と、背後から声が掛かる。  
「ん?どういう意味だロロナ。」  
 
「ん?んーん?な、な、なんでもないよ。イクセくん。」  
 
そう、素材自体は簡単なのである。  
素材の劣化が早い事を除けば調合もそんなには難しくないし、  
その素材の劣化についても素材自体をわざわざ遠くまで取りに行く必要が無い。  
 
「まあ、あんまり沢山いてもトトリちゃん、使いこなせないだろうし。」  
呟くと、寝転がっていたイクセくんが汗に塗れた髪をかき上げながら上半身を起こしてこちらを見てきた。  
 
「なあ、ロロナぁ。一つ聞きたいんだけどさ。」  
「なに?」  
 
「何でお前その、それ、試験管に入れるわけ?」  
「え?ん?え?な、何のこと?な、何言ってるのかぜ、ぜ、全然判んないよ。」  
 
「いや、背中向けてようとバレバレだから。なあ、それ、何か錬金術に使うんだよな。だからいつもそうやって」  
「ち、ち、ちち、ち、違うよ。な、何言ってるのかな、イクセくん。」  
 
「何だかなあ。欲しいなら欲しいって言えよ。」  
ばふん。と音を立てながらイクセくんが再度ベッドの上に寝転がる。  
「うえ?」  
「そうやって、こそこそされると気になるつってんだよ。」  
 
後ろ手に隠した試験管をこっそりとベッドの下に隠しながらイクセくんの顔を見る。  
まあ、確かにこそこそである。  
だって普通は口から精液を試験管に垂らしている姿を見られたいなんて思わない。  
 
「錬金術に必要なんだろ。それ。まあ、最初からそうだったもんな。パニクりながら俺の所来て、  
イクセくん、男の人だから、あれだよね。きっとほら、あれがあれだから、わ、わ、わ、私にまかせて!  
・・・って考えてみればまずありえないよな。」  
「う・・・ご、ごめんなさい。」  
 
「で、何に必要なんだよ。」  
「・・・うう・・ほむちゃん作るのに。」  
「ああ、あのちっこいのか。」  
「・・・うん、そうだよ。」  
そう答えるとイクセ君はしばらく考えるようにした後こちらを向いてきた。  
 
「お前、俺以外にしてないだろうな。」  
「えぇっ!?・・・し、してないよ。何言ってるの?」  
 
この答えにはやや罪悪感が無いでもない。  
実際の所、始めてそれを貰ったのはタントさんからだったからだ。  
次がステルクさんでイクセくんは3人目である。  
 
ただしそれを言うときっとイクセくんが怒る気がする、という位には私は世間の事を知った。  
 
「なら良いけどさ。ま、だよな。俺以外にお前相手にこんな事する奴がいるわけ無いしな。」  
「あ、ひどーい。そんな事ないもんきっと。」  
 
これはいつものイクセ君の意地悪と、私が言い返すっていうやり取りだけど、  
実際この答え通り、そんな事は無かった。  
 
初めての時は確かこうだった。  
手元に90コールしかなく、タントさんだけを誘って二人で採取に出かける事になったその夜の事。  
私の寝袋にタントさんが入ってきて、口調は優しげだったけれど半ば強引にタントさんがズボンを脱いで私の口に入れて来た事を覚えている。  
 
最初は怖くて恥ずかしくて抵抗してしまったけれどこれが特別な素材なこと。  
どうすればそれが取れるかって言う事を当時15歳で何も知らなかった私に教えてくれたのはタントさんだ。  
「君はまだ何も知らないだろうから、僕の言う事をきちんと覚えればいい。少しも怖いことは無いよ。」  
そう言いながら手の使い方やどうやって舌を使えばいいかなんて事や  
少し私が上手になってからはどうやって首の振ればいいかなんて事も教えてくれた。  
 
タントさんと二人きりで採取に出かけたのは1〜2回くらいだっただろうか。  
その後はアトリエでタントさんにソファに座ってもらってするようになった。  
(その頃には私は少しずつ上達して、ピュアオイルを口に含みながら首を早く振ったり、  
ハチミツをタントさんのに隅々まで塗ってからそれを舐めとるようにしてみたり(そうすると苦味が薄れた)  
と少しずつ工夫するようにもなっていた。)  
その頃は師匠がいたし、それを使ってホムを作るだけの技術も無かったけれど  
出してもらったそれは冒険に出るだけのお金が無い時に作る中和剤の良い材料になった。  
しかも品質が高いので調合にも重宝する事ができた。  
 
そういえば。と考えて懐かしくなった。  
あの頃、イクセくんと冒険に出る時はよく私はスペシャルミートを作って持っていったものだ。  
何かというと特攻するイクセくんには回復が追いつかないほどで獣のしかばねと調味料、ピュアオイルで作る  
スペシャルミートはイクセくんの回復にぴったりだった。  
あの時のピュアオイルに使う中和剤の材料にはタントさんに貰ったものを良く使っていた。  
あの品質の良いスペシャルミートが無ければ、イクセくんは大怪我をしていたかもしれない。  
 
「また一緒に冒険してみたいね。」  
そう言うとイクセくんはこっちを見て笑った。きっとイクセくんもあの頃の事を思い出しているんだろう。  
「店が暇だったらな。ま、暇な事なんてねーけど。」  
そう、私たちは少し大人になった。  
イクセくんはもう押しも押されもせずに一人で食堂を切り盛りしている料理長だ。  
 
「もう少しここにはいられるんだろ。」  
「うん。トトリちゃんのお母さんを探すのを手伝うことにしたからアトリエにいる事はおおくなるかもしれないと思ってるんだ。」  
 
アトリエの営業が続けられるようになって(私が17歳になった頃だ)  
タントさんとあまり会わなくなってからは私はそれをステルクさんに貰うようになった。  
理由は・・・  
年上だったからだろうか。言いやすかったというのもある。  
なんだかんだといってもステルクさんは私の言うことは真面目に聞いてくれるし、  
イクセくんとは幼馴染だからやはりこういう事を頼むのも気が引けてしまったというのもあるのかもしれない。  
でも相談という形ではじめて頼んだ時のあのステルクさんの顔は、、ちょっと今でも笑ってしまう。  
うろたえるなんてものじゃないくらいの勢いで後ろに後ずさりながら何度も周囲を見回して  
「き、君は何を言っているんだ?」  
とオウムのように私に向かって繰り返していた。  
「いや、ですから、私、困ってるんです。」  
そう言っても  
「ま、まさか、き、き、君はそういう経験があるのか?」  
と繰り返すばかりだった。  
 
最終的には私がステルクさんがくれないなら他の人に貰うようにしますっ。と言った所でステルクさんが折れ、  
口を開けて「あの、ここに出してくれていいですから。」と言った所でステルクさんの目が光った。  
 
処女をあげたのもステルクさんにだ。  
まあ、もちろん、これはステルクさんと私の二人きりの内緒だ。  
 
タントさんは私にいろいろと教えてはくれたけれど私の服を脱がせたりしてくる事はなかった。  
(もちろんそんな事を言われたら断っていたと思うけれど)  
だからそういう事も無かったのだけれど  
(というか当時、私はそれをそういう事とあまり結び付けていなかった。  
おそらくこれはとてもいやらしいことだ、という認識くらいはあったけれど。)  
何度目かのステルクさんとの時、服を脱いで欲しい、と言われたのだ。  
もちろん私は驚いて寧ろ暴れてしまったのだけれど結局は言いくるめられてしまって私は服を脱いだ。  
 
その上ステルスさんはとんでもない事を言ってきた。  
私はその時ピュアオイルと蜂蜜を混ぜたものをステルクさんの下半身全体に塗りつけて舐めていたんだけれど  
ステルクさんも同じようにそうしたいと言ったのだ。  
服を脱げと言われた時の2倍は暴れたけれど結局は言いくるめられてしまった。  
(その後もこれはすごく恥ずかしいからいつも嫌だというのだけれど、結局は毎回言いくるめられてしまう事になった。)  
 
ピュアオイルをべったりと塗られ、舐められた時の衝撃は今でも忘れられない。  
「す、す、ステルクさん、これ変です。変ですよ。おかしいです!変になっちゃいますっ!」  
そう叫んだけれどステルクさんは止めてくれず、結局私は半狂乱になって首を振った挙句、  
最後は口の中で出してもらったステルクさんのものを飲み込んでしまった。  
その後は二人で蜂蜜とピュアオイルでべとべとになりながら  
舌が触れてない所なんて無いくらいにお互いの身体を舐めあって、最後には入れられてしまった。  
ステルクさんは「すまない、すまない」と言いながらとても優しくしてくれたけれど、  
結局私は口に出されたものも飲み込んでしまい、  
それ以外はステルクさんが私の身体の中に出してしまったので目的は果たせず、私は随分と抗議したものだ。  
 
ステルクさんにそれを貰うという関係はステルクさんが王様を探しに旅に出てしまうまで続いた。  
(もちろん私も旅に出ることが多かった。)  
その頃は私もアトリエの仕事が軌道に乗っていたから  
ステルクさんとは毎回そんな風に蜂蜜とピュアオイルをふんだんに使って貰うようにした。  
でもステルクさんには最後まで何かの罪悪感があったようだ。  
終わった後に固い顔で頭を抱え、「すまない、すまない。私は、私は何ていうことを・・・」  
と呟くように言っていたのを見たことがあった。  
私の年齢のことを気にしていたんだと思う。  
だからステルクさんが王様を探しに行くといった時、  
「当分戻らないと思う。」  
そう私に言ったステルクさんはすこしだけほっとした表情をして、  
一緒に冒険をしていた時のような落ち着きを感じさせていた。  
 
最近はまたアーランドに戻る事もあるらしいと聞いたから、  
今度再開する時には昔みたいに話せるといいな、と私は思っている。  
私とくーちゃんとイクセくんとステルクさん。  
昔ながらの仲間同士の決まりきったやり取り。  
そういったのがまた出来たらきっと楽しいと思う。  
 
私は服を着ながらそっとベッドの下から試験管を取り出した。  
「なあ、ロロナ。」  
「なあに?」  
「俺、お前の事が、ガキの頃から好きだったんだぜ。」  
顔が紅くなるのがわかる。イクセくんのこういうストレートな表現は昔からだ。  
もちろん、昔は好きなんて事を言ってくることはなかったけれど。  
「わ、私もイクセくんの事、好き。だよ。」  
イクセくんが笑う。  
「本当は一緒に食堂やりたいけどさ、お前は錬金術師だもんな。  
でもアーランドに戻ってきたら一番に俺の所に顔出せよ。無料で食わせてやるからよ。」  
 
「ありがとう。イクセくん。」  
 
汗まみれの身体をタオルで拭くイクセくんに手を振ってから私は部屋を後にした。  
試験管をポケットの中に入れて。  
うまく作れるだろうか。  
まあ、大抵の事は上手くいくんだってことを私は知っている。  
だって私は錬金術師なのだから。  
まあ、少しおっちょこちょいではあるけれど、でももう大人になって、生徒だっている。  
あの頃の師匠ほどの錬金術師にはなれていないなあ、と思うけれど。  
でも初めてのかわいい生徒の役に立つような、  
そう、トトリちゃんの役に立つような、しかも可愛いホムンクルスが作れればいいなあ、  
とそう思いながら私はアトリエへと急いだ。  
 
了  
 

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