ロゼウル同居設定。
付き合って半年。
一回経験済み。
ある日の昼下がり、街中から少し離れたウルリカのアトリエでは、どよんとした空気が流れていた。
(「なんで!!なんでなのよ!!」)
苛立ちまぎれに、乳鉢の中の燃える砂を力任せにすりつぶす。
(「絶対あいつ、私のことナメてるわ!!」)
怒りの矛先は、今モンスターの盗伐の依頼で留守にしているロゼだ。
二人がつきあってから半年。
それから間もなく、ロゼに押し切られる形で体を重ねたのだが、その後二人の間には全く何もない。
キスどころか、抱き合うことも、寄り添ってソファーに座ることもない。
寂しくなったウルリカから、ソファーに座っているロゼの隣にぴったりくっつくと、びっくりした顔をしたと思うとその後無表情になり、立ち上がってその場を離れるのだ。
(「まぁ、少しは私が悪いのかもしれないけど」)
一度経験してからというもの、ロゼはウルリカに四六時中抱きつくようになっていた。
アトリエでも、食堂でも洗面所でも、ぺペロンやうりゅの目の前だろうと気にしない。
それが何だか気恥ずかしくて、顔面にパンチをして昏倒させて以来、まったくウルリカに触れてこようとしない。
(「別に触れられるのが、嫌なわけじゃないのにな。」)
誰がいるかもわからない、皆の共同スペースで抱きつかれたり、キスをされるのが恥ずかしいだけで。
考え込みながらロウをまぜ、導火線をつけた割には、あっさりフラムは出来上がった。
もうすでに外は真っ暗で、酒場に行ってもごろつきしかいない。
20歳前とはいえ、女の身であるウルリカには、危険な時間だ。
「あーあ。ロゼ帰ってこないかなあ。」
そうすれば、酒場にもついて来てもらえるし。何だったら出迎えでハグをしてあげてもいい。
「何だ。そんなに俺が待ちどおしかったか?」
その言葉と共に、ろぜが背中から抱きつかれた。
「きゃーきゃー!!」
いきなり起きたことに頭がついていかなかった。
手足がバタバタさせて、全力で暴れる。
しかし、ウルリカの暴れるのに慣れているロゼは、少しだけ体を離してその反応を微笑みながら様子を見つめているだけだ。
「ロゼ!!急に抱きつくなんて、びっくりするじゃない!!」
「悪いな。ちょっとあまりにもかわいかったもんで。ただいま」
ロゼは抱きついたまま、瞼や頬にキスをする。
「おかえりなさい。ってちょっと!!昨日まで私のこと避けてたのに、どうして??」
ついさっき、自分から抱き締めてみようと思っていたものの、急に積極的になったロゼに、ウルリカは成すすべもない。
「避けてたわけじゃないんだが。教えてほしいか?ウルリカ。」
そう言うと、モンスター退治で鍛えられた腕で、手早くウルリカを抱えあげる。
流れる様な動作で、ウルリカをソファーの上へと下ろした。
そのままゆっくりと、ロゼも覆いかぶさる。
「ちょっと!!」
ロゼの男性にしては、細くて長い二本の指で、ウルリカの朱色の唇をなぞる。
「お前の近くにいると、いつでもこんなことしたくなるからだ。」
ウルリカは頬を真っ赤にして、ワナワナと震えている。
ロゼは薄い唇で、にんまりと微笑んだ。
そして3か月分の我慢をした、ウルリカ成分補給のために、濃厚なキスをした。
(「嫌味男じゃなくて、ムッツリじゃないのよ〜!!」)
ウルリカのその不満は、キスで邪魔をされて、伝わらなかった様だった。