「ねぇ、今度の私の誕生日、欲しいものがあるんだけど、くれる?」
「うん、おいらがあげられるものなら何でも用意するよ。なんだい?」
「ふっふっふ、それは当日までの秘密」
ウルリカの20歳の誕生日の数日前、確かにそんな約束をした。
そして9月22日深夜。正確には23日午前0時。
「お、おねえさん、これは、どういうことかな……?」
自分の部屋で寝ていたペペロンは胸の上に馬乗りになったウルリカに起こされた。
「誕生日プレゼント、もらいにきたの」
「え?でも今おいら何にも持ってないよ?」
とりあえず、自分の上からどいてもらえないだろうか。
二十歳を迎えたウルリカは、出会ったときよりも肢体が伸び、胸も育ち、なんとも妖艶な体に育っていて、そこにいるだけで世の男どもをとりこにするほどの魅力を持つようになっていた。
もともとの整った顔立ちに翡翠色の大きな瞳が、余計美しさを強調させる。
「それよりもおねえさん、そこをどいてもらえないと動けないんですが」
あまり長く乗っていられると、体がいらない反応をしそうでこわい。
「いいのよ、動けなくて」
しかし案の定却下された。
そして窓から入る月明かりに照らされたウルリカの顔が、いたずらっぽく笑う。
この表情は、16の頃と変わっていない。
「私に、ペペロンをちょうだい」
「はい?」
ちょうだいと言われてもどういうことか分からない。
ペペロンはずっとウルリカの元で働いていて、ある意味とっくにウルリカのものだ。
「私、今日で20歳よね?」
「う、うん」
「20歳といえば、もう大人と認められていい年よね?」
「まぁ、世間一般的には」
質問に答えながらも、ペペロンは嫌な予感がしてきた。
この顔は、絶対なにかよからぬことを考えている。
「ペペロンも、もうとっくに大人よね?」
「まぁ、一応は……」
やばい、逃げないと、大変なことが起きる。
「じゃあ、そろそろ大人の行為をしましょう?」
「…………」
(えーっと、大人の行為って、なんだろう)
あまりにも突拍子も無い言葉に、ペペロンの脳は理解するのを拒否した。
本気でわからないとばかりに首をかしげるペペロンに業を煮やしたウルリカが、ペペロンの服に手をかける。
「もう、めんどくさいわね! こういうことよ!」
短気なところも昔と変わらない。
そのまま思い切り服をひっぱり、ペペロンの一張羅のボタンが弾け飛ぶ。
「ちょ! おねえさん、なにを?!」
「言ったでしょ? あんたを貰いに来たの!!」
人生最大のピンチが、今、ペペロンを襲っていた。
「おねえさん、まず落ち着こう?!」
ウルリカの細い手首を両手で押さえ、ペペロンは組み敷かれたまま必死の抵抗を試みた。
「落ち着いてるわよ、これ以上ないくらい」
「じゃ、じゃあ考え直そう?」
「もう何ヶ月も前から決めてたもの。今更考え直すことなんかないわ」
「じゃ、じゃあ、えーっと……」
「往生際悪いわね! いい加減諦めなさい!!」
ウルリカは捕まれていた腕を下へすばやく引っこ抜き、両手をペペロンの頭の両脇へつくと、まだなにか言い訳を考えようとしているペペロンへ強引にキスした。
「お、おねえさん! 待って!」
「待てない」
一度唇を離し、今度は両手で顔を押さえ込みディープキスをする。
「んんんっ!!」
ウルリカとのキスはこの4年間に何度も経験をしてきた。
そのほとんどがウルリカによる不意打ちだったが、ここまで強引なのは初めてだ。
しつこいほどに舌をからめてこようとするウルリカから逃げ切れず捕まってしまえばもう、応えずには居られない。
ペペロンも目を閉じ、両手を背中に回すと抱きしめ、自らウルリカのやわらかい舌を絡めとり、愛撫する。
(やっぱり、甘い)
いつも思う。
ウルリカの口の中はあまくやわらかい。
何度味わっても飽きないそれは、ペペロンの一番好きなもの。
あっさり誘惑に負け、長い長いキスをかわすと勝手に体が火照り、息が荒くなる。
「もう、3年待ったわ」
初めてキスをしたあの日から、心はずっと決まっていたのに。
「ペペロンは、この先私が違う誰かとこういうことをしてもいいの?」
「えっ?!」
それは嫌だ。
ものすごく嫌だ。
「いいの?」
「嫌、です……」
これは紛れも無く脅しだ。
その気がないと分かっていても、可能性を提示されるだけでペペロンは逆らえない。
「それなら……」
「で、でも! その、先に言っておかなきゃいけないことが……」
実はペペロンは初めてではない。
親にも、村にも捨てられ彷徨っているとき、ある一人の女性に拾われて、夜専用の従者として住まわされていることがあった。
なにしろ体だけは頑丈で大きいし体力も在る。
見た目はともかく快楽を求めるだけならこれ以上の存在は無く、年齢的にはまだ子どもで、世間を知らず追い出されたペペロンは生きる糧を得るために、飽きて捨てられるまでその女性に尽くしたのだ。
「お、おいら、初めてじゃ……ないんだ」
「……そうなの?」
かなりショックだ。
「うん」
「うそ! どこで? だれと?!」
自分以外にペペロンが大切に思う人間が居たなんて、考えたこともなかった。
激しい嫉妬の炎が燃え上がる。が、ペペロンの説明を聞いて一気にその炎はしぼんだ。
「な、なにそれ」
なぜペペロンの話はいつもこんなヘビーなのだろうか。
(生きるためにとか、そこまで困ったことわからないけど)
それにしたって、相手がひどい。
でもそういう場合、どうなのだろうか。
「それで、ペペロンは、その、相手のことをどう思ってたの?」
相変わらず胸の上にまたがったまま不安そうに聞かれ、ペペロンは正直に答えた。
「別に、なにも。もう顔すら覚えてないし。ある意味、それが仕事だったからしただけ、みたいな」
他に行くところも無く構ってくれる人もいない。その頃のペペロンにとって選択肢はなかった。
「好きではなかった?」
「まったく」
好きではなかったが、気に入っては貰いたかった。この矛盾がウルリカにはわかるだろうか。
(でもなんか誤解されそうだし黙っておこう)
生まれてから今まで、心から愛したのはウルリカだけなのは事実なのだから。
しかし、それでもウルリカは顔を曇らせ、落ち込んでしまった。
「ごめん、ペペロン。私、同じことしてる」
「え?」
「嫌がるあんたに、無理やりすることじゃなかったよね。ごめん」
予想外の反応に、ペペロンは焦った。
怒られることがあっても、まさか謝られるとは思っていなかったのだ。
「い、いいいいいい嫌じゃないよ!!!」
嫌じゃない。
これまでだって、我慢して我慢して我慢を重ねてきたのだ。
大切すぎて、傷つけたくなくて逃げてはいたが、体はいつだってその想いに応えてウルリカを欲していた。
「本当に?」
「ほ、ほんと」
(言っちゃった!!!)
流れとはいえ、言ってしまった。
これは、覚悟を決めなくては。
「でもやっぱり、私……」
そのことによってどれだけこの繊細なペペロンが傷ついたかと思うと、自分がしたことも同じような気がしてくる。
「私、ペペロンを、それ以上傷つけたくない」
ずっと前から20歳の誕生日こそひとつに、ペペロンのものになろうと決めていたけれど、それによって過去の傷をえぐるようなら絶対嫌だ。
そう告げると、ペペロンはたまらなくなってウルリカを抱きしめた。
「そんなことない! おねえさんとなら逆に、その傷が埋まると思う」
そこに愛があればそれは至福。
抱きしめたまま今度はペペロンがウルリカに口づけをした。
「んっ……ふ…」
少しでも気持ちが伝わるように、激しく求めた後、自分の額をウルリカの額にくっつけ、勇気を出して言った。
「おいらも、ずっと、おねえさんとしたかったんだ」
人から化け物呼ばわりされる自分と違い、ウルリカはどんどんキレイになっていく。
手の届かないところへいってしまうのだと、寂しくすら感じていたのに、この美しくしなやかな彼女は自ら自分の腕の中に飛び込んできてく
れた。
その愛に応えなくてどうするのだ。
「そしたらもう絶対、離さないわよ?」
「離れたくない」
だから、いっそがんじがらめになって動けなくなるくらい束縛してほしい。
お互いの気持ちを確かめる4度目のキスを、どちらからともなく交わした。
「それじゃ、えーい!」
ウルリカに上機嫌に上着を脱がされ、ペペロンは慌てた。
「え? 待って、攻められるのはおいらなの?!」
普通逆じゃなかろうか。
「だって、その方が楽しいし」
「いやいやいやいや」
ここでまでまだ下に敷かれてというのは、男としていけない気がする。
「おねえさん、ごめんねっ!」
「きゃっ!」
そして、上に乗ったウルリカを抱きかかえると体をあげ、自分と位置を入れ替えた。
「コラ! ペペロン!」
「だめ、じっとしてて」
暴れようとするウルリカの手を慎重に押さえ、額に軽くキスをする。
<うまくできるかわからないけど>
あの退廃した日々を送ったのは何十年も昔だ。
それでも、少しでもウルリカを気持ちよくさせてあげたい。
「おねえさん、好きだよ」
「ペペロン……?」
いつものおちゃらけたりおどおどしたり、困っているペペロンしか知らないウルリカにとって、意外な展開だった。
なにか雰囲気が違う。
自分を見つめる目は真剣で優しい。けれど見たことの無い男の顔。
少し怖くて、そして少し嬉しかった。
「おいらだって、本当はずっとこうしたかったんだ」
耳元で囁き、そのままウルリカの耳たぶを甘噛みする。
「やんっ」
びくっと反応すると同時に漏れた声は今までに聞いたことのないかわいさだった。
「もっと、聞かせて」
そのセリフに思わず顔を真っ赤にしたウルリカは両手を突っ張ってペペロンを遠ざけようとする。
「やだ、だめ! 逆はだめ!」
自分から攻めるのは普段の行動から慣れているが、ペペロンに主導権を握られるという経験は未だ無い。
なので余計に照れるし恥ずかしいし、なんといっても落ち着かない。
しかし、ペペロンも今度ばかりは譲らなかった。
「おいらからプレゼントさせておくれよ」
一応誕生日プレゼントと名を打つからには最初から自分が下というわけにはいかない。
押し戻そうとしている細い両手を片手で掴み顔を寄せると、その手の甲に軽くキスをした。
「ね?」
その仕草が臭いくせに妙にはまっていて余計ウルリカは顔を赤くする。
最初ドキドキさせていたのは自分だったはずなのに今では完全に立場が逆転してしまっていた。
「う……。はい」
初めて接したペペロンの男の部分に魅了され、もう素直に頷くしかなかった。
すっかり観念してぎゅっと目を瞑るウルリカに苦笑すると、ペペロンはもう一度、今度は頬に優しくキスをする。
そしてボタンのない夜着の上着を捲った。
(うわ)
あらわになった形のいいふたつの山は薄闇にも白く、とても綺麗だ。
触れてみればあまりのやわらかさに思わず手を引っ込めてしまうほどだった。
(壊しちゃいそうだ)
感触を試したい欲求よりもそちらの懼れのほうが強く、舌での愛撫に切り替える。
「っ!」
突起を口に含むと、その体が小さく震えた。
いつも強気な彼女のそんな反応がかわいくて、愛したいと思うほどに自然に体が動く。
数回舌先で転がしたあと、口を離し、腹のあたりから一気に上まで舐め上げると、「はあぁぁ」という吐息と共に体が浮き、その瞬間に
ペペロンは片手をウルリカの背中に回して抱き上げた。
そして弓反りになり強調されるように突き出た胸に顔を埋める。
円を描くように舌を這わせ、再び突起を口に含み舌先で弄る。
快感を堪えるように何度も小さな口から吐息が漏れたが、最初のような声は聞けなかった。
抵抗はやめたものの捨てきれない羞恥が硬く目を閉じさせ、声を出すのを我慢させているのだ。
(かわいいなぁもう)
そんなところがまた愛しい。。
胸を口に含んだまま背を支えていた腕を滑らせ腰へ、更にその下へ移動させ太ももを抱えるように持ち、追うように細かくキスを降らせ
ながら頭も下へ移動させる。
スカートを捲り白いショーツを脱がせると、「ちょ、待っ」と言ってウルリカが一瞬で腕の中から足を引き抜き逃げ出した。
「待って、無理。なんていうかやっぱりその、気持ちの準備が、ね?」
何ヶ月も前から今日この日にペペロンとということを決めてはいたし覚悟もしていたがこの展開は予想外なのだ。
本当は最初から最後まで自分がリードするつもりだった。
そのために本からだけとは言え知識を身につけたし、脳内でだけとは言えシュミレートをしてきた。
まさかペペロンが経験者でしかもこんなに手馴れているとはこれっぽっちも考えていなかった。
知らなかったぺぺロンの魅力にぼおっとしてつい受け入れてしまったが、さすがにここまで来ると恥ずかしさが勝って正気に戻ってしまったのだ。
胸の上に丸まった上着をずり下げ前を隠し、すでに脱がされてしまったショーツは諦めてスカートだけを元に戻しベッドの上で後ずさる。
「じゃあ、終わりにするかい?」
正直続けたいが、本人が嫌だと言うのなら従うまでだ。
だがウルリカも終了とするつもりはないようだった。
「終わりじゃない。ペペロン、寝て。下!」
「それは無理です」
ペペロンを指差し必死に上下させて命令をするが、それには従わないとさっき言ったばかりだ。
とにかく、まだその気があるのなら選択肢はひとつしかない。
「おねえさんも往生際が悪いなぁ」
いつもなら主であるウルリカを立ててどんな無茶も聞くペペロンだが、男として譲れないものは譲れない。
膝立ちで一歩、逃げたウルリカに近づき突きつけられた腕を取るとそのまま胸にそっと抱き寄せた。
「も、もうその手には乗らないんだから!」
その手がなんの手のことを言っているのかはわからないが、腕の中の小さな存在は抵抗せず大人しくそこへ収まっている。
ウルリカは顔を真っ赤にしつつ、胸のドキドキと形容しがたい自分でも理解不能な期待で動けない。
(うーん。やっぱり怖いのかな)
そう解釈したペペロンは少しでも安心出来ればと優しく包み込むように抱き締め囁いた。
「大丈夫。痛いことも、泣かせるようなことも絶対しないから」
耳元で囁かれたハスキーボイスとそのセリフに、ウルリカは腰砕けになってしまい、緊張して硬くなっていた体が力を失ってへなへなと崩れる。
「あうぅ」
好きな男の腕に抱かれてそんな風に言われ、逆らえる人間などいるのだろうか。
ウルリカも漏れなくその天然な術中に落ちた。
再びされるがままとなったウルリカの体を丁寧に横たえ、ペペロンは額、そして首筋にキスをしながら手を太ももからスカートの中へ滑り込ませ秘所をさぐる。
覚悟を決めていても恥ずかしいものは恥ずかしい。
ウルリカは我慢できず、腕を顔にかざし、表情を隠した。
「んっ」
一番敏感な場所に触れられ、思わず声が漏れる。
(どこまでしていいんだろう)
自分とウルリカでは体格差が過ぎる。最後までする気はなかった。そんなことをすれば、本当に彼女を壊してしまいかねないし、なにより大切な人の体を確実に傷つけることになる。
(満足、してくれればいいけど)
そう思いながらペペロンはすでに湿り気のあるそこへ、顔を移動させた。
反射的に閉じようとする足を手で押さえ、豊かな髪と同じ金色の茂みに隠された部分へ舌を分け入らせる。
ウルリカは最初、生暖かく柔らかいその感触を奇妙に感じ、それ以上にいらない思考が邪魔をして集中できなかった。
(ちゃんと念入りに洗ったけど、どうしよう)
臭いとか、変な味とかしていないだろうか。
自分が相手のものを舐めるのはタブン全然平気だが、逆はいけない。
しかし、巧みに舐められ、吸われしているうちにすぐにそんな無駄な事は考えられなくなる。
「あ、んっ」
水っぽい音が耳を打ち、淫らな雰囲気が羞恥よりも行為へ集中させた。
そのうち秘部の浅いところを舌が出し入れされ始め、押し寄せる並のように快感が増していく。
(もう、少し……!)
なにかが来る。
未知の快楽を求め両足が突っ張り、その変化に気づいたペペロンの舌の動きがより大胆になる。
「はっ、あぁっ!」
びくんと腰が跳ね、つま先までぴんと伸びた後、満足したように力の抜けたウルリカの体からペペロンはやっと顔をあげた。
口を手の甲で拭い、顔を隠している腕をどかしてその額にキスをする。
「おねえさんは声も反応もかわいいなぁ」
そして笑顔で頭をゆっくりと撫でた。
(このまま寝てくれないかな)
している間にすっかり元気になってしまった自分のものを意識しつつ、悟られないように体を離す。
正直ここで終わらせるのは理性を総動員しても厳しいものがあるが、それは後で一人こっそり処理をすればいい。
「悔しい」
「えっ?」
「次は私の番なんだからっ!!」
「ええぇっ!?」
ウルリカがここで大人しく引くはずがなかった。
上気した顔のままがばっと起き上がり全身を使ってペペロンを横に押し倒し、すばやくその上に跨って座りズボンのベルトに手をかける。
「待った! おねえさんそれはダメだって!」
そうは思っても本気で抵抗することが出来ず、あっさりはずされそのまま下ろされてしまった。
すでにはちきれんばかりになっていたものが自由になり、勢いよく飛び出す。
(でかっ!)
予想はしていたが、ここまで大きいとは。
「お、おねえさん。やっぱり無理だよ。ね?もう十分だろう?」
「ダメ。もう決めたんだから」
なんだかんだ言いつつ、ペペロンも欲しいのだろう。
口では言っても体は逃げようとしていない。
咥えようにも明らかにウルリカの小さな口には入りきらないので、舐めて濡らすことにする。
硬いそれに満遍なく舌を這わせると時々なにかを我慢するようにペペロンが声を上げる。
絶対にここでやめたくないと思った。
(痛いのは最初だけ。これくらい、我慢できるんだから!)
覚悟を決め、生唾を一度飲み込むとウルリカはペペロンの上に跨った。
「いっった……!」
(いたあああああああああい!)
ほんの入り口。
ペペロンのおかげですべりのいいそこにあてがい、少し体を沈めた途端、激痛が走った。
(切れちゃう)
自分のその場所が、無理やり引っ張られ、ピンと張っているのがわかる。
それでもウルリカはなるべく声を出さずにこらえた。
心のままに痛みを訴えたら、もう二度とペペロンは自分に触れてくれない。
「おねえさん、ごめん、やめよう。だめだ」
声を出さずとも表情でペペロンにはウルリカの痛みがわかる。
今、わずかに触れているだけで快感と欲求が理性を凌駕しそうになっている。
これをもう一歩越せば戻れない。自分を抑えられない。たとえウルリカが泣くことになっても止められない。
今が、本当に最後の一線だった。
「これ以上したら、おいら、おねえさんを……」
「私がしたいの! だから―――」
だから、引き下がれない。引き下がりたくない。
結果は同じならと、ウルリカはそのまま一気に腰を落とし、ペペロンのそれを自分の中に受け入れた。
「あああっ!!」
「くっ」
想像以上の痛みに、思わず悲鳴が漏れる。
ぶつっと貫かれる官職がして、ふたりの結合部分から生暖かいものが流れた。血だ。
ペペロンはウルリカの狭い中に思い切り締め付けられ、一瞬こらえるように目を瞑る。
「ううぅ……」
ウルリカは涙目になり、そのままペペロンの上に突っ伏した。
(痛い〜〜〜〜)
これまで戦闘や調合でさんざん怪我をしてきたが、これはそういう痛みとは全然違う。
「お、おねえさん」
動きたい。
ウルリカが一生懸命痛みに耐えているのが分かっていたが、ペペロンは動きたい衝動に駆られていた。
(入ってるだけなのに)
それだけなのに気持ちよすぎる。
愛する人という心の作用もあるのだろうか。
しかも、実はまだ全部納まりきっていない。
それがまたまどろっこしくて焦れる。
「うー。痛い、けど、ちょっと治まった……」
やっと顔を上げるとその目には涙が光っており、ちょっと辛そうに片目を瞑っているのが男の嗜虐心をそそる。
その上、少しでも痛みから逃れようと少し腰を浮かせたのが、ペペロンの欠片だけ残っていた理性を完全に吹き飛ばした。
(もう、無理)
かわいいし、そこまでして一生懸命自分を受け入れようとしてくれているウルリカが愛しすぎる。
ペペロンは無言で上半身を上げると、繋がったままのウルリカを抱きしめ、キスをした。
「んっ?!」
そしてそのまま腰を両手で掴み、ペペロンからしたら綿毛のように軽いウルリカを強く下へ引き寄せる。
「んんんっ!!!」
更に奥へ。
ウルリカはキスをされたまま、その衝撃に呻いた。
「っはぁ、はぁっ」
唇を離し、荒い息をすると、ペペロンはウルリカの腰を掴んだまま上下へ動かす。
「やっ! だめ!」
激しく動かされ、ズッズッと音を立てて中がこすれる。
「やだ! まだ、痛いのっ」
ペペロンの形が分かってしまうほど密着し、ウルリカを刺激する。
「あっ、あっ」
いつもなら少しでもウルリカが嫌がればすぐに引くペペロンも、今だけは止まれなかった。
(気持ちいい!)
動くたびにぎゅうぎゅうと波打つように締め付けられ、奥まで侵入するたびに当たる感触がたまらない。
「やっ、あ、はっ!」
ウルリカのほうは体が上下するたびに少しづつ動きが滑らかになり、相変わらず痛いものの、同時に快感も感じ始めていた。
(なに、これ―――)
痛気持ちいいとでも言うのだろうか。
ペペロンのものが大きすぎて苦しいが、それ以上に強い刺激がウルリカを襲う。
「はぁっ!」
こらえられなくなり、ウルリカはペペロンの太い首に腕を回して抱きついた。
先ほどペペロンに与えられた快楽ともまた違う。比べ物にならない快感だった。
「オレ、もうっ!」
どれくらいの間そうしていたかわからない。
ふたりの激しい呼吸と淫靡な音だけが部屋を支配ししばらく、興奮のあまり昔の話し方に戻ってしまったペペロンが苦しそうに呻く。
「いっ、くっ……」
「んっんっ、はぁんっ!!」
どくんと大きくウルリカの中で脈を打ち、大量の熱いものを吐き出す。
ウルリカはその熱さと苦しさに声を上げた。
そしてぎゅっと抱きしめられたまま、ペペロンの大きな鼓動の音を聞き、ひとつになれた喜びに浸った。
(い、今更痛みが……)
ペペロンの腕枕で横になると、忘れていた破瓜の痛みがぶり返し、ウルリカは顔をしかめた。
「だ、大丈夫かい?」
冷えないようにと掛け布団を引き寄せ、辛そうなウルリカに声をかける。
「ごめんよおねえさん。おいら……」
自分を止めることが出来なかった。
その後悔に表情を曇らせるペペロンの鼻を指で弾いて、ウルリカは笑った。
「謝らないでよ、嬉しかったんだから」
激しく求められたとき、戸惑いもあったけれどなにより嬉しかった。
それだけ欲し、愛されていると感じたからだ。
「ペペロンはもちろん私のものだけど」
そこまで言って頬を染め、暖かい厚い胸板に擦り寄る。
「私も、あなただけのものになりたかった」
「おねえさん……」
かわいすぎる。
心臓を射抜かれ、またむくむくと元気になって来てしまったものに気づかれないように軽く腰を引く。
どうやらその試みは成功したようだ。
「また、しようね」
無邪気な止めの一言に、いつまで自分を抑えられるだろうとペペロンは不安になった。