ステルクエンドのその後で、
「ロロナ、今、帰って──うおっ!?」
その日、ステルクがアトリエに帰ってくると、満面の笑みでロロナが出迎え
てくれた。
「ステルクさん! これを見て下さい!! これで完璧ですよ!!」
よく見ればロロナの手には見たことのない小瓶が握られている。
「──ああ、調合に成功したのか、良かったじゃないか。今回は暴発もしてい
ないようだし」
「はい、今夜はこれで完璧です!」
「今夜?」
「……あの、何度か試したけど最後まで出来なかったじゃないですか。だから……」
先ほどの勢いは何処にいったのやら、途端に頬を赤らめてもじもじとし出し
たロロナの態度に、鈍いステルクも理解した。そしてロロナと同じように頬を
赤くしてしまった。
「泡立つ水をメインに、湖底の溜まりとぷにぷに玉、ミルクの樹液を足して
作ってみたんです。そうしたらかなりヌルヌルしてて……これってきっと潤滑
剤として使えると思うんです!」
そんなものを使わなくても俺は──そうステルクは思ったが、目を輝かせる
ロロナを前に言い出せるはずもない。
早く使ってほしいとばかりにロロナはステルクを寝室に連れて行き、小瓶を
渡してきた。
臆病なくせに大胆なロロナの性格に、使わないという選択肢は存在しないら
しいことぐらいはステルクも悟った。
諦めに似た覚悟と共に小瓶の蓋を外し、液体を手の平に落とした。とろりと
流れ落ちたそれを手の平で擦ってみた。
「──ど、どうですか?」
「確かにヌルヌルしているな。だがベトつかない」
「ですよね! それが難しかったんですよ! ヌルヌルしてるのにベトつかな
くするのって!!」
そこがロロナの一押しらしい。前のめりで説明するロロナのあまりの勢いに
ステルクも押されがちだ。
「そ、そうか……じゃあ使ってみるか」
「はい! どうぞよろしくお願いします!!」
ぺこりと勢いよく頭を下げたロロナの愛らしい姿に「その台詞は違うだろう」
と思いつつもステルクは苦笑するだけにした。
血管が浮き出るぐらい漲る自身にたっぷりとその液体を落とし、ステルクは
ゆっくりとロロナの花弁に押し当てた。
先端部分を咥えさせるように押しつけてみる。いつもならばこれだけでもロ
ロナの身体は悲鳴を上げてしまっていた。
「…………どうだ?」
「んっ、変な……感じ……」
「痛みは?」
「平気、です、」
「そうか……では、これは?」
確かに大丈夫そうだともう少しだけ腰を押しつける。泥濘んだ感触はロロナ
のものなのか、それとも液体によるものなのだろうか、判断が付かない。ただ、
驚くほど気持ちがよかった。このままロロナの身体を貪ってしまいそうになる
欲求を抑えつつ、用心深くロロナの様子を窺おうとした時、
「──あっ」
「どうかしたか?」
「──っ、ステルクさんっ! 何か、きちゃう──」
ぎゅっと背中に腕を回し、ロロナは息を詰めた。それと同時に痛いほどの締
め付けがきた。まるで根こそぎ絞りとろうとするような動きに、思わず出そう
になった声を殺し、ステルクは耐えた。
ああ、いったのか──そう理解する。これが潤滑剤の力ならば、もしかする
と別の効果もあるのかもしれない。
ロロナにはムラがある──というエスティ先輩の言葉は確かなのだろう。三
年間の試験結果も善し悪しに酷いムラがあった。聞けばこの試験が始まるでロ
ロナは錬金術というものをアストリッドが教え貰ったことはないというのだか
ら、その能力は未知数とも言えなくない。
ステルクからすれば、放っておけない自分を慕ってくれるドジでおっちょこ
ちょいが玉にキズの可愛らしい少女でしかなかったが。
額に触れるだけのキスをすると、ロロナの頬はみるみるうちに赤くなった。
その赤らんだ頬にもう一度キスをしたいと顔を近づけると、逆にぎゅっと抱き
しめてられてしまった。
「ステルクさん──嬉しい」
耳元で告げられたその言葉に、ステルクのたががはずれたのは言うまでもない。
その潤滑剤は一部の間で爆発的な人気商品となり、ロロナの人気は彼らの中
で専らの評判になったとか。