「君はそれで寂しく無いのかい?」  
「少しは…」  
「あの女が居なければまだまだ楽しい学園生活ができていたというのになぁ、残念だったね」  
「知らない怖さより知る怖さのほうが辛いんだね」  
暗闇の支配する部屋。  
ヴェインは一人で考え事をしているはずだった。  
「無理して知る必要は無かったんじゃない?自分を責めるのはいただけないなぁ」  
「僕は君みたいに前向きには考えられないよ…」  
「その考えは間違ってるね。君は僕で、僕は君なんだから」  
「君みたいな考えができてたら…」  
彼の問いに答えるのはもう一人の彼。  
「簡単なことだよ、そう望めばきっとなれるはずなんだから。君は思ったことを叶えれるんだから」  
「君みたいになりたいと?」  
「そう、僕みたいになりたいと願えばいいのさ。簡単なことだよ」  
今日イゾルデに資料室に呼び出されたヴェイン達。  
彼は目の前で最愛の友人フィロメールをイゾルデに殺され、そして彼の力で蘇生させた。  
イゾルデは言う、彼がテオフラトゥスの忘れ形見で願いを叶える力を持つマナだと。  
ヴェインはそれまで知らなかった、自分が人ではなくマナだということ…  
そしてテオフラトゥスが死んだのは彼の手によるものだと…  
「君みたいになりたい…君みたいになりたい…君みたいになりたい…」  
その言葉を永遠と繰り返すヴェイン。  
一瞬彼自身が雷に打たれたような衝撃を受ける。  
そしてなんとも言えない清々しい開放感、隆々しい高揚感に彼は満たされていた。  
「これが…」  
「気に入ったかい?それが君が望んだ僕の気分さ」  
「そうだ、こんなところで腐ってる場合じゃない!」  
そう言うとヴェインは勢い良く立ち上がり、自分の部屋の扉を開いた。  
その後を影のように着いて行ったのは彼と同じく部屋の中で闇と化していたサルファ。  
彼はいつもの位置でいつものように体を丸めて眠っていたがヴェインの突然の行動に驚き目を覚ました。  
『おい!どこへ行くんだ?』  
 
「お礼をしにいかなきゃ…きっと彼女は僕を待ってるはずだから」  
問いかけるサルファに見向きもせずに吐き捨てた。  
足早に彼は寮を出て、学園へと向かう。  
彼の声色、考え、表情、行動力全てが普段のヴェインと違うことを後を追うサルファは感じ取っていた。  
 
 
 
夜の校舎は不気味なほどに静まり返りヴェイン達を迎え入れた。  
彼は保健室の前で足を止める。  
時計の短針はすでに12を回っていた。  
彼は扉を抜け、中へ歩み入っていく。  
微かに穏やかな寝息がその耳に届いた。  
普段なら誰一人以内はずの保健室、しかし今日は違っていた。  
奥のベッドから感じる人の気配。  
ヴェイン達と死闘を演じ、敗北の末此処に運ばれた人物。イゾルデが眠っていた。  
「先生、起きてください」  
ベッドの傍らまで来たヴェインはイゾルデを見下ろしながら彼女に告げる。  
未だ眠りについている彼女にはもちろん聞こえるはずがない。  
「せんせ?」  
二度目の呼びかけ。  
一度目とは違い穏やかに問いかけるような雰囲気で彼は言った。  
眠りについていたイゾルデは彼の呼びかけで突然目を覚ました。  
彼女はおぞましいほどの気迫に驚いているようだった。  
イゾルデはぱくぱくと口を動かすが声にはならなかった。  
「先生にはお礼がしたくて…僕のすばらしい力を目覚めさせてくれたのはあなたですから」  
ヴェインはそう言ってにこりと微笑んだ。  
普段のヴェインとは違い清々しいまでに陰りがなく、無邪気な子供を思わせる。  
「な、なに…を…」  
喉の奥から搾り出すようにイゾルデは言葉を発する。  
この青年に対し、今までに感じることの無かった恐怖感に畏怖していた。  
 
「なんでも叶えてあげますよ、先生が望めばですけど…ね」  
ヴェインの異常なまでの笑顔に背筋が凍る。  
イゾルデは大きな渦に巻き込まれた船のように、出口が見つからず彼の調子に呑まれかけていた。  
しかし、気圧されながらも彼女は自分本来の毅然とした態度で彼に接しようと勤める。  
「そう、ありがたい言葉ね。でも今日はもう遅いから明日にしなさい。先生も疲れているのよ」  
事実彼女は今自分の力では指一本動かすことも容易くないほど疲弊していた。  
満身創痍といったところか、精神的にも肉体的にもこうやって目を覚まして会話する力さえ体の中には残っていないように思える。  
「残念ながら僕には時間があまり残っていないんですよ。先生、疲れているんですか?」  
なんだろうか彼の笑顔の奥にあるわだかまりをイゾルデは感じてならなかった。  
入学してから三年弱、彼とは幾度となく接してきたが彼が笑っているところは数えるほどしか見たことが無い。  
陰鬱で常に思案に暮れている、それがイゾルデのヴェインに対しての印象だった。  
「なるほど……」  
ヴェインは一言呟き、眉を寄せ難しい顔を作る。  
「っ!」  
イゾルデは自分の体全体を舐められたような錯覚を感じた。  
不快に感じたのも一瞬のことで、爽快感が体中を満たしていた。  
先程の疲弊困憊はどこ吹く風のように体の中から消え去っている。  
「な、何をしたの?」  
彼女は動揺を隠せずに彼に問いかける。  
「先生の疲れが取れるように願ったんですよ。ただ願っただけです」  
彼はマナなのだ。  
自分が強く願えばその望みが叶うという力を持ったマナ。  
彼女の最愛の人物、テオフラトゥスがその命を懸けて作り上げたマナ。  
イゾルデは再三彼の力を目の当たりにしてきたが力の恩恵を我が身に受けたのは初めてのことだった。  
彼女はベッドの上で上体を起こし、彼を見る。  
さっきまでの状態ではそれすらできなかったが今では満ち溢れる力を放出したい衝動に駆られてしまう。  
それと自分の中に新たなる欲望の火種が燻り始めたことを悟った。  
不謹慎にも彼女は目の前にいるマナに情欲を抱き始めていた。  
それは決してありえるはずのない復讐相手のはずであるヴェインに……  
抑えようとすればするほど感情は昂ぶり、抑制が効かなくなる。  
 
「どうしたんですか、せんせい?」  
無邪気すぎる彼の笑顔に彼女は誘われそうになる。  
「なんでもないわ、あなたも早く自分の部屋に戻りなさい」  
心とは裏腹の言葉。  
問題となるヴェインが目の前から消えればきっと湧き上がる情欲は姿を消すとイゾルデは思っていた。  
「もう少し待ってください。僕もまだ試験の途中なんで……でもおかしいなぁ、先生なにも感じませんか?」  
ヴェインの言葉でイゾルデは自分が置かれている状況が理解できた。  
不意に込み上げてきた情欲の正体。  
彼の笑顔の奥に隠された感情。  
「試験って……」  
「僕が願いを叶えることができるのは先生も知ってる通りですが、人の感情を望んだ通りコントロールできるかどうかですよ」  
予想通りの答えが彼の口から返ってくる。  
ヴェインがイゾルデの元にやってきたのは彼女の怪我や体を治すためではなかった。  
もはやイゾルデが彼の手に堕ちるのは時間の問題だった。  
彼女は昔に幾度とテオフラトゥスの作った媚薬の試験体になったことはあったもののこれほどまでに情欲を燃え上がらせられたのは初めてだった。  
それほどまでにヴェインの力は強く、イゾルデの意思は自分で抑えれるリミットを迎えていた。  
平常心を保てず彼女はベッドの上で激しく身悶えしていた。  
普段冷静な彼女から予想すら出来ない醜態。  
その姿を見ながらヴェインは悦に浸りながら彼女に言葉を落とす。  
「やはりこういう使い方もできるんですね。早く楽になったほうが良いんじゃないですか?イゾルデ・シェリング・せ・ん・せ・い」  
「お、お前なんかにぃ!」  
ヴェインの襟を掴み罵声を浴びせるイゾルデ。  
しかし突然見えない力によって彼女は取り押さえられベッドの上に張り付けられてしまう。  
ヴェインは軽く一言願っただけだった、彼女を取り押さえれるようにと……  
今はまだ彼は自分の力が増幅していることに気がついていなかった。  
「う、うぅぅ……」  
イゾルデは気高き自尊心とわずかに残った理性で必死に堪え続けていたが、最後の砦が音をたてて崩れ落ちていくのを自覚した。  
「も、もうだめぇ!我慢できないぃ、早く、早く!私を犯しなさいよ!」  
彼女は言ってしまった。  
乾ききった大地が水を求めるがごとく、ヴェインに救いを求め、彼の手中に堕ちてしまった。  
 
「せんせい、勘違いしていますよ。僕は貴女に興味なんてありませんから…」  
蔑んだ眼差しで見下ろし、彼女を突き放す。  
「それに主導権を持っているのは僕です。貴女が命令する立場でないことぐらい弁えてもらわないと」  
「うぅぅぅ……」  
悔しさに唇を噛締め身を震わせるイゾルデ。  
「貴女が僕にお願いすれば…少しは力を貸してあげますよ」  
ヴェインは目を細め、口元を歪める微笑でイゾルデに顔を近づける。  
彼が発するオーラは狡猾で残忍なヘビを思わせていた。  
「お…お願い、助けて……もう、やめて……」  
涙混じりに訴えるイゾルデだったが言葉とは背反に体が動いていた。  
太腿を擦り合わせ、少しでも快感を得ようとしている。  
「そうですね、少し助けてあげましょう」  
ヴェインはイゾルデの四肢の拘束を解き、彼女に自由を与えた。  
イゾルデの頭の中にはひとつしかなかった。  
 
快楽への到達……  
 
自由になった手を秘所に延ばすと、荒々しくそこを撫ぜ回した。  
身が蕩けるような甘美な飛沫が脳髄を直撃する。  
媚薬など比較にならないほどの悦楽に彼女は至高の喘ぎを上げていた。  
「あぁああ───!あっ、ああぁん!はぁあん!!あっ、あっく、あう──ん!」  
欲望に溺れる醜い獣のようだったがヴェインにはそうは映らなかった。  
頭を振り、髪を乱して悶える様は淫猥を通り越し美しい姿に映っていた。  
目の前の人物が自分の教え子で復讐相手であろうが今のイゾルデには関係なかった。  
ひたすらに絶頂を求め、自ら手で快楽のヴォルテージをあげていった。  
「ああぁん!あっ…はぁん……あぁ、ああああっく、はあぁ───ん」  
彼女の嬌声はますます大きくなり、次第に息遣いも荒々しく、切羽詰っていく。  
その様子を見つめるヴェインは口元をゆがめ不適な笑みを浮かべた。  
知り尽くしたであろう自分自身の体。  
彼女は昇り詰めるために肉芽を秘唇をひたすらに愛撫していた。  
 
すでにイゾルデは最高潮に達し、歓喜の頂きに到達していくはずだった……  
が、一向に自身の体に到達の兆しが現れなかった。  
イゾルデは薄目を開け、狭い視界にヴェインを捉える。  
彼は自分を見て嘲笑しているのが分かる。  
その様子から彼が自分の体に細工をしているのがはっきりと分かった。  
「お、お願い…イカせてぇ、イキたいの……イキたいのよぉ!」  
休むことなく自身を責めながら傍観を決め込む男に懇願する。  
「せんせいは我侭だなぁ……自分だけおねだりするなんて」  
カチャカチャ…  
冷たい金属音を奏で、ヴェインは自分のベルトをはずした。  
ズボンのフォックをはずし、ファスナーを開けると、スルリと音も無くスラックスは床に落ちた。  
下着越しだが逞しく滾る男の象徴がイゾルデの目に映る。  
「ほら、望みを叶えて欲しいならそれ相応のことをしてもらわないとね…せんせ…」  
ヴェインが何を望み、何をさせようとしているのかは今のイゾルデにも理解できる。  
ベッドの上で自淫に耽っていた彼女だったが、虫が光に誘われるようにヴェインの股間のものに手を伸ばした。  
布越しでも感じることの出来る熱。  
イゾルデに触られることによって、さらに堅く反り返ったようだった。  
「あぁ……」  
熱っぽい吐息を溢し、両手でヴェインの下着をずらす。  
中から男の香りを漂わす怒張が姿を現した。  
 
ごくり……  
 
彼女はそれに顔を近づけ、大きく口を開けて頬張ろうとする。  
怨恨、憎悪の対象、自分にとっては排除すべき人物であるヴェインのものを……  
しかし快楽を擁し、絶頂を望む体の彼女にとってはそれすらどうでも良くなってしまっていた。  
ところがイゾルデの思惑を阻止するヴェイン。  
「せんせい、ちゃんとおねだりしなきゃいけないですよ。欲しいなら欲しいと……ね?」  
ヴェインはにこやかな笑顔を浮かべ彼女に忠告する。  
少なくとも今のイゾルデには彼の笑顔の奥に隠れた狡猾な面魂が見て取れた。  
 
「これが…欲しいの……ねぇ?いいでしょ?」  
掴んだイチモツをしごきながら彼女は訴えた。  
圧倒的な力の差を見せ付けられた以上イゾルデは彼の要求に答えるしか道は残っていないのだ。  
いくら彼女でも相手を逆なですることなく穏便にことを進めたほうが良い事ぐらい分かっている。  
「まだ自分の立場を理解していないようだね。さっき言ったように僕は貴女が欲しいわけじゃない。…分かる?」  
優しい物腰に隠れた脅迫。  
ヴェインの口調はあくまでいつも通りを装いながら、イゾルデを陥れようとする。  
「もう一度やってみますか?」  
滴る愛液で床を汚すイゾルデの顎を取り、自分を仰ぎ見るように促す。  
「お、お願い…します。私に……させてください…」  
彼女のつりあがった目はすでに生気を失っているようだった。  
「なにをしたいって?」  
すでにイゾルデという名の城はヴェインによって陥落しようとしていた。  
堀を埋め、城壁を壊し、最後まで抵抗する兵士(プライド)を崩していく。  
「私に、奉仕……させてください。お願いします…」  
消え入るようなか細い声だったがヴェインは聞き逃すことなく最後まで聞きとると彼女を制止させていた手を離す。  
悔しさ、憤りをイゾルデは感じたが、一瞬にしてそれは快楽という欲望の渦に飲み込まれ消えていく。  
初めから委ねていれば苦しむことの無かった享楽の世界に……溺れた。  
最初は様子を見るようにチロリとしたでヴェインの怒張を一舐めし、先端に口付けをする。  
そこには無色透明の粘りを帯びた液が分泌されており、イゾルデは口の端をすぼめて吸い取った。  
彼女は覚悟を決めると大きく口を開けてヴェインの佇立したモノを咥え込む。  
口腔内に納めた亀頭を下腹で舐め、、自分の唾液をまぶしていく。  
次々と止め処なく湧き出る唾液は、自ら男を欲していたことを具現していた。  
舌先の妙手、イゾルデにはまさにその言葉が当てはまった。  
「さすがせんせ……上手いですね……誰かに、仕込まれた、のですか」  
彼女は奉仕を続けたままコクリと頷いた。  
両手を使い、竿をしごき、袋をまさぐり、そして会陰を指で刺激する。  
口や手だけではなく彼女は目を使うことも忘れていない。  
ヴェインを仰ぎ見て惚けるような目つき、そして時折媚びる様に、惑わす様に見つめてくる。  
「誰に?」  
 
ヴェインの問いかけ。  
しかしそれには首を左右に振って否定、つまりヴェインの質問に答えたくないと示した。  
「せんせいは物分りが良いと思ってたんですが、まだ……」  
ヴェインを見つめるイゾルデの顔に困惑、いや懇願の目つきに変わる。  
「父さんに?」  
ヴェインは彼女に再度問い詰める。  
「……」  
男の怒張を咥え込んだ口からは何も返事は返ってこない。  
その代わりイゾルデは見つめるまぶたをゆっくりと閉じ、深く頷いていた。  
「名前は?」  
彼の責めは止まなかった。  
この時になってイゾルデは彼の目的が自分の体でなく心なのだと悟った。  
「ねえ、誰に?」  
ヴェインの手が奉仕をしている彼女の髪を掴み、返事を強要した。  
睨みつける彼の表情には普段の温厚さを感じることができなかった。  
「テオ……テオフラ…トゥスに」  
彼女は自分の最愛で人、テオフラトゥスの名を紡ぎ出した。  
途端に溢れ出る涙、体から汲み出る嗚咽を止めることが出来なかった。  
「うぅ……うっ、うっ、うぅ……」  
辛かった…彼を思い出すことにではなく、思い出を曝かれること、踏み込まれることに彼女は苦しみを感じていた。  
「ほら、続けて」  
泣き崩れるイゾルデに容赦なくヴェインは求める。  
彼女はこの場から逃げ出したかったがそれも叶わぬこと。  
涙に濡らした顔でヴェインの欲求どおり奉仕を再開させられる。  
そんな中イゾルデの脳裏に昔の記憶が蘇りつつあった、最愛の人「テオフラトゥス」に仕込まれた性技。  
愛欲の日々、甘い夢、彼と交じり合った泡沫の幸せ。  
 
ぐちゅ…じゅぷじゅぷぶぶ……んはぁ……じゅぶじゅぶじゅりゅりゅる…  
 
吐息に混じり唾液が絡まった音が漏れる。  
 
彼女の口腔内でヴェインのモノがビクビクと脈打ち始めていた。  
「いいよ、せんせい…ほら、もうすぐ……」  
ヴェインが荒い息遣いのなか彼女に告げる。  
絶頂の兆し、彼の頂点が近いことをイゾルデも悟った。  
ならばとさらに動きに磨きをかけて彼女はヴェインを責める。  
この悪夢を早く終わらせたい一心でイゾルデはヴェインを絶頂へと導こうとしていた。  
えずくのを堪え、あらゆる彼女を押し留めて彼女は奉仕する。  
ビクビクと口腔内でヴェインのものが爆ぜようとしていた。絶頂が近いのだ。  
「あ……」  
イゾルデの口から自ら怒張を抜き取り、ヴェインは彼女の前髪を梳いた。  
「達しそうなのが分かった?」  
コクリと頷いてイゾルデは彼を見上げる。  
ヴェインの勝ち誇ったような表情、イゾルデは彼の考えが読み取れなかった。  
「じゃあ、お願いして。飲ませてくださいって」  
「え!?」  
「えって、分からない?嫌なら良いんだよ、僕は帰るから…」  
彼が帰る、狂った宴が終わる、彼女の頭の中でいろんな言葉が浮かび混ざり合い、一つにまとまりはじめた。  
「サルファ、帰ろうか」  
ヴェインは佇立している怒張を下着にしまい、ズボンをあげた。  
「にゃおん」  
彼の親友は短く一鳴きすると我先にと扉に向かって歩き始めた。  
そのまま凌辱者は背中を向け、自分の前から去ろうとしている。  
再び安息が戻る、これで良い、これで良いはず…  
…  
……  
………  
「まって!飲ませて、飲ませてください…」  
違う、違う違う違う違う違う!  
イゾルデの頭はそう言いながらも四つんばいになって彼の元へと近寄っていった。  
「させて下さい、続きを…貴方の精液を私に飲ませてください…」  
 
イゾルデは彼の元に辿り着くとズボンに手を掛け、脱がしにかかった。  
「すごいね、先生。まるで飢えた牝豹みたいだよ」  
「……」  
イゾルデの手で剥ぎ取られた下着の中から先ほどから衰えていない怒張が元気良く飛び出してくる。  
彼女は再びそれにむしゃぶりつくと、喘ぎ声を交えながら一心不乱に奉仕を始めていた。  
先ほどリミット寸前まで堪えていたヴェインは早くも絶頂へと達しかけた。  
「っく…いくよっ!」  
射精の瞬間ヴェインは彼女から腰を引く。  
口腔を犯していたそれから白濁色の粘りを帯びた精液が勢い良く噴出した。  
それは彼女の顔を、黒髪を汚し、口の中へと噴きつけた。  
ドロリと独特の臭気を放ち舌を出し迎え入れる口を満たしていく。  
それでも若い欲望は収まりきらず口の端から溢れ垂れる。  
「まだだよ…まだ飲んじゃだめだからね」  
ヴェインは出し尽くした怒張をイゾルデの顔に擦りつけ、上下関係を決定付けた。  
自分の放ったものの匂いを浸み込ませるように、丹念に何度も、何度も…  
「もういいよ」  
その一言を待っていたようにイゾルデは口腔に溜まった彼の物を嚥下した。  
苦くねっとりと食道を伝い、胃の中に染み入る彼の分身…  
彼女はまだ気がついていないが、この時から暖かくも冷たい堕落と言う渦の中に呑まれ始めのだった。  
悪夢のような夜はまだ始まったばかりなのだから…  
 
□END□  
 
 
 

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