-実りの森-  
「えーっと…。あの素材、どの辺にあるんだろう?  
 あっ!あの木の上にあるのが、そうかも!  
 結構、高いところにあるな〜。  
 よしっ!  
 小さい頃は木登り得意だったし  
 いっちょ、登ってやろうじゃん!」  
 
難なく木を登る姿は、年頃の乙女とは程遠い。  
 
「よっと…。  
 んしょ…よいしょっ…!  
 ふぇ〜〜…。  
 上から見ると、よけい高く感じるなぁ…。  
 だめだめっ!  
 下は見ないようにして、あそこまで行こうっ!!」  
 
アニーが素材を目指している一方、下では…  
 
「この辺も特に怪しい所はなさそうだ。」  
と赤い物体が呟いた。  
「おや?あの木の上に居るのはいつぞやのおじょうさんではないか。  
 何をしているのだ…?」  
 
「うーん…もう少し…枝が変な所にさわるよぅ」  
発育不良と思われていた胸は、子供の頃に比べると幾分か成長していたようだ。  
それでもアニーの周りの女性に比べるとまだまだだが。  
「あたしの周りにスタイルが良い人が多すぎなんだってば!」  
誰に聞かせるわけでもなく一人吼えてみた。  
 
「うーんしょっと…。もう少し……もうちょっとっ!」  
 
ずるっ!!  
 
「きゃっ!?」  
 
どしーーーーーんっ!!!  
 
「あいたたたた……。  
 う〜……。  
 この年で木から落ちるなんて…。  
 よっこいしょ……痛ッ!!  
 ねんざしちゃったかも…。  
 さいあく……。  
 しばらく立てそうにないな…。  
 どうしよ〜…。」  
 
「おや、お嬢さんが落ちたようだ。助けに…  
 !!  
 あの制服は、大会実行委員…今見つかるわけにはいかない。」  
一連の事を見ていた赤い物体が、赤や黄色の葉を付けた木々の陰に身を潜めた。  
 
「こんなところに座り込んで、なにをしてるんだ?」  
「うひぃあッ!? は、ハンスッ!?」  
「驚きすぎだ。やましいことでもしてたのか?」  
「えっと…。木の上になってる素材を採ろうとして落ちちゃった……あはは。」  
「あはは、じゃない。無茶しすぎだぞ、まったく!」  
「ごめ〜ん…。ハンスこそどうしたの?こんなところまで1人で。」  
「僕は採取場の見回りだ。委員としての義務だからな。」  
「へえ、委員会もちゃんと…いてて…!」  
「足、痛むのか?」  
「うん…。ちょっとねんざしちゃったみたい。」  
「結構、はれてるな。それじゃあ、まともに歩けないだろ。」  
「まあ、しばらくこうしてれば痛みも引くよ。」  
 
「ところで薬は持って来なかったのか?」  
「ここは楽勝と思い、持ってくるの忘れました…」  
「キミらしいな。」  
と、大会実行委員で各々に配られるカバンの中に手を入れた。  
カバンすら私物ではない所がハンスらしい。  
「あ、あれ…?すまない。僕も薬を忘れたようだ。」  
「あはは。カンペキ人間のハンスでも忘れることあるんだねー。」  
「むっ。僕にだってこういうこともある!!」  
 
「もぅ…いざと言う時に頼りにならないんだから…」  
アニーが呟いた。  
「……聞えているぞ?大体、無茶しすぎなんだ!」  
「むぅ…、なによ。怒鳴る事ないじゃない!」  
「僕はキミのことを心配して言ってるんだ!!」  
「担当だからでしょ?あたしの評価がそのままハンスの評価にもなるしね。」  
「そういうことじゃない。」  
「あたしは好きでこの島に来たわけじゃないし、  
 やったこともなかった錬金術で生計をたてなければならないし、  
 いざ生活してみると皆勝手にあたしの家でくつろいでプライバシーはゼロ、  
 町に出れば男の子と間違われるし、  
 ハンスの方が見かけ女の子ぽくてナンパされていたりするし、  
 他の女性では緊張しているのにあたしの前では一度もそんな事ないし!!」  
 
言って自分が惨めになってきた。  
足が痛い。  
こんなにイライラするのは足が痛いせいだ。  
きっとそうだ。  
 
「……怒るぞ?」  
「怒ればいいじゃないっ!どうせあたしなん……」  
 
言いかけて、突然ハンスに抱きしめられた。  
なだめるようにハンスが耳元でささやく。  
「アニー、落ち着いて…」  
 
抱きしめられたまま、どのくらいの時間が経っただろうか。  
 
「落ち着いたか?」  
「…う、うん……。ところでいつまでこうしているのかなあ…?」  
落ち着いた…。落ち着いたけど、置かれた状況に恥かしくなってきた。  
 
…パキッ  
 
「ほ、ほら、誰かいるみたいだし?」  
 
カサカサカサカサッ  
 
音がした方を見たら、リスが頬を膨らませこちらを見ていた。  
 
「リスのようだね。  
 それに先程見回ったとき、当たりに人影はなかったから。」  
ハンスが女の子と間違えそうな笑顔で答えた。  
しかし、その笑顔が今は怖い。  
「ほ、ほら、ハンスって女性より男の子のほうが好きなんでしょ!  
 リーズ姉さんが言っていたよ!!  
 ビュウだって似たようなこと言っていたし!」  
 
「その件については、否定したのだが。それに…  
 僕にだってこれぐらいはできる!」  
 
「え…ええええええぇぇぇぇ」  
 
 
 
森の背景と同化した赤い物体が呟いた。  
「小枝を踏んだ時は見つかるかと思ったが…ふむ。  
 おう!ぞくぞくしてきたっ!」  
 
 side_A  
 
何が起こったのか…  
気が付くとあたしの体は地面にあった。  
 
お、落ち着け、あたし。  
つまりは、ハンスに押し倒された…ということ?  
 
「え…ええええええぇぇぇぇ」  
 
「ハ、ハンス!?」  
「アニー…」  
ハンスの顔が近付いて来る。  
とっさに腕で顔をガードする。  
そして固く目を閉じた。  
 
「あっ…」  
耳を噛まれた。  
ため息ではないハンスの息が聞える。  
その息が一瞬遠ざかったと思ったら、首に暖かくて柔らかい物が触れた。  
「…んっ…」  
 
あたし、これからどうなっちゃうんだろう。  
なんで?どうして?  
あたしは?ハンスは?  
これでいいの…?  
 
今ならば拒絶する事もできる。  
かといって、流れに身を任せても…  
どちらにしろ今までのように顔をあわせる事ができないのは確かだ。  
 
不安。恐怖。  
 
「…うっ。うぅぅぅぅ…」  
 
涙が出てきた。  
 
「ご、ごめん。」  
 
ハンスの体温があたしの上から消えた。  
 
「アニー…すまない。僕がどうかしてた。」  
あたしは体を起こした。  
しかし涙は止まらない。  
 
「…うぅ、ひっく…」  
 
無言のままのハンス。  
涙が止まらないあたし。  
 
気まずい時間が過ぎていった。  
 
 side_H 
 
「え…ええええええぇぇぇぇ」  
 
え、えっと。  
なっ、なな、なんで僕の下にアニーが?  
抱きしめたあたりまでは覚えているのだが…。  
 
極度の緊張のあまり記憶が跳んでる。  
 
「ハ、ハンス!?」  
アニーの顔を見た途端、居ても立っても居られなくなった。  
「アニー…」  
僕は接吻しようとしたが、アニーの腕に邪魔された。  
行き場を失い、仕方なく耳を噛む。  
 
「あっ…」  
 
初めて聞くアニーの甘い声。  
もっと聞きたい。  
僕はアニーの首に吸い付いた。  
 
「…んっ…」  
アニーの声を聞くと、正気で居られそうになかった。  
いや、すでに正気を失っているんだろう。  
女性が苦手なはずの僕が、一人の女の子を組み伏せている。  
いつもの僕ならば、こんな事はできないはずだ。  
今は…、もっとアニーの声が聞きたい。  
 
「…うっ。うぅぅぅぅ…」  
 
くぐもった泣き声が聞こえ、はっと我に返った。  
ぼ、ぼぼぼぼぼっ、僕は一体何を!?  
 
「ご、ごめん。」  
 
アニーの上からあわてて降りた。  
 
「アニー…すまない。僕がどうかしてた。」  
これだけの言葉を発するだけで精一杯だった。  
 
「…うぅ、ひっく…」  
 
あ、あああ、アニーを泣かしてしまった。  
とっ、とと、取り返しの、つ、付かない事を。  
 
ど、どどどうしたらいいんだ!?  
 
 side_K 
 
泣くアニーと慌てふためくハンスを見守る赤い物体が呟いた。  
 
「うーむ。良い雰囲気だったのに一体何をしておるのだ?」  
 
 side_A 
 
「…ごめんなさい。」  
あたしは沈黙を破った。  
 
「ア、アニーが謝ることなんてない。」  
あたしから目をそらし、ハンスが言った。  
 
再び沈黙…。  
な、何か話さなきゃっ。  
 
「と…、ところで、ハ、ハンス。  
 採取場の見回りしていたなんて今まで知らなかったんだけど?」  
「いつもはアニーの採取の手伝いついでにしていたんだが、  
 最近、キルベルトやカイルとばかりで誘われなかったからな。」  
「…もしかして、やきもち?」  
「け、決して、そそ、そんなことはないっ!  
 たまたまだっ。たまたま、アニーの採取と僕の見回りが一緒だったというだけだっ!」  
「ふーん?」  
ハンスの態度がなぜか嬉しかった。  
「ハンス…」  
ハンスの顔を両手で無理やりあたしの方を向け、コツンとおでこをくっつけた。  
「い、痛っ。ア、アニー?」  
「あたしは大丈夫だから」  
そして、静かに目を閉じハンスの唇にあたしの唇を重ねる。  
 
「い、いいのか?」  
「…うん。ハンスが良ければ」  
「後悔しても知らないぞ?」  
「うん。何度も言わせないで…」  
 
あたし達は再び唇を重ねた。  
 
でも、先ほどの触れるだけのキスと違う。  
ハンスの舌があたしの唇を越えてきた。  
恥ずかしかったけど、あたしも応える。  
まるでお互いを確認するかのように舌を絡めた。  
 
キスしてるだけなのに変な感じ。  
体が熱い。  
頭がぼーっとする。  
 
「んんっ」  
 
ハンスが服の上から胸を触ってきた。  
 
「ん…んふぁっ、……んぅん……、はぁ……はぁ……」  
驚きと息苦しさで、あたしは唇を離す。  
「あ、あたし胸ないから。触っちゃイヤ。」  
「え…でも…」  
ハンスの声には未練が含まれている気がした。  
 
 side_H 
 
僕が解決策もなく無駄に考えをめぐらせていると、アニーが口を開いた。  
 
「…ごめんなさい。」  
 
はうぁっ。  
そうだよな。そうだよな…。  
 
僕は、もうアニーの目を見て話す事ができなかった。  
「ア、アニーが謝ることなんてない。」  
 
もう駄目だ…。  
本土に帰ろうか…。  
 
など考えていると、またアニーが口を開いた。  
 
「と…、ところで、ハ、ハンス。  
 採取場の見回りしていたなんて今まで知らなかったんだけど?」  
「いつもはアニーの採取の手伝いついでにしていたんだが、  
 最近、キルベルトやカイルとばかりで誘われなかったからな。」  
「…もしかして、やきもち?」  
「け、決して、そそ、そんなことはないっ!  
 たまたまだっ。たまたま、アニーの採取と僕の見回りが一緒だったというだけだっ!」  
「ふーん?」  
 
そ、そうだ。  
決して僕はやきもちなんか焼いてないぞっ。  
思えば、用事があってアトリエに行ったらぺぺが  
「アニーなら一人で実りの森に採取に行ったぞ。」  
って言うから、仕方なく本部に戻り、  
何となくだ。何となく見回り表を確認すると、  
実りの森に誰も行ってないから急いで…  
 
「ハンス…」  
なんて色々考えていたら、アニーに顔を無理やりひねられた。  
そして、アニーがおでこをコツンとくっつける。  
「い、痛っ。ア、アニー?」  
しかも、アニーの顔が近い。  
「あたしは大丈夫だから」  
アニーは目を閉じ、顔がどんどん近付いてくる。  
そしてついに僕の唇とアニーの唇が触れた。  
 
「い、いいのか?」  
「…うん。ハンスが良ければ」  
「後悔しても知らないぞ?」  
「うん。何度も言わせないで…」  
 
僕達は再び唇を重ねた。  
 
えーっと…この後…ビュウは何と言っていたっけ。  
 
『…キスしたら、まず、舌を入れてみる!』  
『し、舌をか?噛まれたりしないのか?』  
『噛まれる以外の反応があるはずだから大丈夫だって。  
 ま、もし噛まれたら辞めといたほうがいいな。』  
『そういうものなのか…』  
『そう!そして…』  
 
よ、よしっ。  
こっ、こうかな…  
 
恐る恐るアニーの口の中に僕の舌を進入させた。  
アニーの体がピクッと少し動いたが、  
少しの間を置き、彼女の舌が僕の舌に絡んできた。  
 
噛まれなくて良かった…。  
次は確か、  
 
『キスしたまま胸に触るっ!』  
『む、むむむむっ、胸っ!?』  
『ただし服の上からな。いきなり直接触ったら駄目だ。  
 物事には順番があるからな。』  
『なるほど…』  
 
僕はビュウのアドバイス?の通りにアニーの胸を触る。  
 
「んんっ」  
アニーが驚きの声をあげた。  
 
でも、実は僕も驚きだった。  
無いと思っていたアニーの胸…。  
意外と柔らかい。  
 
「ん…んふぁっ、……んぅん……、はぁ……はぁ……」  
 
夢中になって触っていたら、アニーが口を離した。  
 
「あ、あたし胸ないから。触っちゃイヤ。」  
「え…でも…」  
僕は情けない応答をした。  
 

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