「それじゃあ……そうですねえ、ロゼさんはどんなことを練習したいですか?」
「って、俺が指定するのか?」
お互い、小さな椅子に腰掛けて、正面から向き合う。
こうして覚悟を決めてみれば、ロゼもウィムの裸体を見るのに抵抗はない。
メイド服の隙間から毀れていた肌の白さは、こうなっても変わるところはないようだ。
そして、先ほど十分に愉しんだ、胸の膨らみ。
両手をちょこんと膝の上に置いた今の彼女の体制からは、その膨らみもよく見える。
「……やっぱりでかいよな」
「はい?」
「ああ……いや」
呟いてしまうほどに、それは印象に残る光景だった。
まあ、学園在学時は、エトのようなものもいたのだから、ウィムだけが目立つものではなかったが。
こうしていつもの生活に戻ってみると、リリアが……まあ、あれなだけに。
強調されてしまうのも、ロゼとしては仕方が無い。
「ええと、さっきから私のおっぱいばかり見てますよね、ロゼさん?」
「う……ま、まあ……気になるだろ、それは」
「でも、ここはあんまり、お嬢様の場合の練習にはならないんですよね。ほら、お嬢様は……」
「……それもわかってる」
当人が聞いていたら爆発しそうな会話であった。
「まあ、でも、全然参考にならないってこともないでしょうし……
そうだ、ロゼさん。これ、吸ってみます?」
「……あ、赤ん坊じゃないんだぞ」
「もう、そういうボケはいりませんって」
誘われるように。
ロゼは、頭を近づける。そして一定の距離まで近づいたその時に。
「はい、ロゼさん捕まえました〜」
「……ぷっ」
ウィムの方から接近してきて、ロゼの頭をその膨らみに押し付けた。
顔を包み込むその量と、そして柔らかさに、少年も一瞬耽溺しかける。
が、そこで溺れては、わざわざ学園で戦闘術を学んだ意味もないというものだ。
いや戦闘術とあまり関係ないのだが。
そこは冷静に対応して、ロゼは密着した乳房の、その左の先端――乳首を、口に含む。
「そ、そうです、そんな感じです、ロゼさんっ……ん、歯は、立てないでくださっ……ひっ」
唇を使って、念入りに嬲る。
同時に、舌を使い、触れるように舐めた。
更に吸い上げるように口を動かすと、ウィムもびくりと身悶えた。
「そ、それ、いいです……ぅ、んっ……敏感になってますからぁ、そういうやり方で……
お嬢様にも、して、あげっ……ひゃうんっ」
ロゼとしても、そうやって彼女の胸を味わっていると、不思議な安らぎを感じるのだ。
こう見えて包容力のある……性格的にはまあ。あんなウィムではあるが。
ともあれ、そうやって彼女の乳首から、全て味わい尽くすと、そっと少年は口を離した。
「はあ……なんだかロゼさんが可愛く見えましたよ」
「そう言われてもな」
「……ん、とにかく」
ウィムが、そっと足を開いた。
そのまま身を後ろにそらして、自身の濡れた秘所を晒す。
「そろそろ、こっちもいじってもらえますか、ロゼさん」
「…………」
答えず、ロゼは息を呑む。
こうしてみるのは、当然初めてになるだろう。
ウィムのそこは、まばらに生えた髪と同じ色の恥毛に囲まれて、緩々と肉の孔を開きつつある。
僅かに見えた襞の奥を思い、ロゼは妙に力が入るのを感じていた。
ただ、こうして見るに、少し気になることもある。
「一つ、聞きたいんだが」
「ん……はい?」
「そこってその……今までのところ、見た目なんかはその……マナでも、人間と同じ感じだったけど」
「そういう姿になってますからねえ」
「……中も、そうなのか?」
マナと人間とは当然、存在自体異なっているのだ。
そうなると、そもそも交わることすら出来るものかどうかと、それはロゼも不思議になる。
「それは大丈夫ですよ。この姿をしている時は、大体同じですから、はい」
「そう、なのか。そういうもんなのかな」
「凄いでしょう?」
胸を張ってウィムは誇る。その際にたわんだ乳房が揺れたが、それはまあ、いい。
指先を彼女の膣口に伸ばす。
触れると、そこの温度はやはり他と違い、微かな温もりが感じられた。
とはいえ、やはり冷たい方であるのに変わりはなかったのだが。
「あう……」
それだけでも悶えるウィムの顔を見ながら、ロゼは指を奥に差し込む。
たちまち、少年の指はむっちりとした肉の厚みに包まれた。
緩やかに思えて、なかなかどうしてぐいぐいと、力強い締め付けが感じられる。
それに逆らうように、指先を上下させると、ウィムが僅かに腰を浮かせて、吐息を漏らす。
その反応を確かめると、ロゼはさりげなく、もう一本彼女の膣内へと指を入れる。
「はぁ、うっ!」
ウィムの声が溢れた。
それを聞いてもなお、ロゼは遠慮をしない。
どうやら反応としては悪くなさそうだと踏むと、思い切って勢いよく、二本の指を突き刺す。
「はぁ、あっ……ロゼさんの指、熱いです、う……」
相対的に――ロゼの体温とウィムの体温とでは、当然ロゼの方が高い訳だ。
だからこそ、そんな風に感じられるのだろうが、それだけでもないのかもしれない。
とにかく、思うが侭に、ロゼは、指を暴れさせる。
天井の部分を擦ってやると、それだけでウィムは悲鳴のような喘ぎをあげた。
「そこ、そこは敏感なんですっ、ひんっ……ロゼさん、遠慮なさすぎっ、い、ひあっ」
そう言われても止まるものではない。
こうして彼女を悶えさせるのがなんとも言えず満たされると感じ、ロゼは躊躇いもなく指を動かす。
間断なくあふれ出るウィムの喘ぎ声と、同時に見える彼女の全身の痴態。
そして指先から感じる膣肉の誘いに、ロゼもそのペニスを極限まで滾らせる。
――そうして。
「ロ、ゼっ……さん、もう、そろそろっ……いい、んじゃ、ない、ですか……?」
「そうだ……な、ああ……もう、俺も我慢が……できそうにない」
「ん……はい、来て下さい、ロゼさん……」
ただ、風呂の小さな椅子に腰掛けたままでは、行為に至るのも難しい。
そこでウィムは、浴室の壁に寄りかかると、立ったまま挿れるようにロゼに願った。
「お風呂でするっていうのが、なんだかそもそも難しかったかもしれませんね」
「今更言っても遅いけどな。……よし、いくぞ」
ウィムの片足を持ち上げて、開いた膣口をより見えやすくする。
はじめてとも思えない大胆さだが、ロゼとて単なる少年ではない。
とにかく、彼女の体重は壁に預けて。
ロゼの、熱く滾ったペニスを、ウィムのほのかに暖かい膣内へと――
ゆっくりと。
「はぁ……あ、ロゼさっ……凄っ、ロゼさんの、熱っ……熱すぎっ、でっ……んはっ、あっ!?」
「く……うっ……」
指先で感じていたよりも、なお、ウィムの肉襞のざわめきは凄い。
太さが違うのだから、それも承知できることではあるだろう。
しかし指では感じ取れなかった、奥へ、奥へと誘い込む、その肉の歓待には、ロゼも身を振るわせた。
「じ……実際にやるとなると、凄いな、これっ……!」
「あう……熱い、熱いです……身体が解けちゃいますぅ……」
「……だ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……いえ、ちょっと、思ってたよりロゼさんのが凄くって……」
そんなことを言われると、ロゼの気合も入り直ってしまうというものだ。
そのまま、腰を突き上げる。
ウィムの身体は、より強く壁へと押し付けられた。
「くはあっ、熱っ……ん、太、あ、ロゼさんの、みちみちって、私蒸発しちゃうかも、んっ!」
「く、う、ぐっ」
これでもなお、冷えた感触のあったウィムの膣内が、ロゼが押し入ることで僅かに熱を帯び始めている。
水のマナをして、沸騰させてしまう程の熱さが、ロゼのペニスからウィムの膣奥へと、伝わっていでもいるのか。
体勢が体勢だけに、より深く突き刺そうとすると、ロゼとウィムの肌もまた密着した。
ロゼの胸板によって、ウィムの胸がひしゃげて、潰される。
そこから伝わる柔らかな感触と、そして、飲み込もうとする貪欲な肉の招きによって――
「かは、あ、ロゼ、さっ……ん、なんか、急に膨れてっ……え、ちょ、まさかっ、ロゼさっ……!」
「う……あぐっ!」
ウィムの最奥に。人と同じようになっているというのならば、その子宮口を小突いたその時に――
ロゼのものの、その先端が、跳ねた。
腰のあたりに溜まっていた何かが、一気に駆け抜ける。
喪失感と、開放感とを同時に味わいながら、ロゼはウィムの奥へと――
止めることさえ出来ずに。その精液を、打ち出していた。
彼女の肉壁に包まれながら、どくどくと、勢いよく放出する。
「ロゼさん……あの、これは……」
「く……うぐっ……」
自分でも、これでは言い訳もできないと、そうロゼは思う。思うのだが。
しかし、出してしまったものは、もう止めようがない。
どうにか落ち着く頃には、床に向けてぽたぽたと、繋がった部分から液が毀れていた。
「…………」
「ロゼ、さん?」
言葉も出ない。
ロゼは、なんとも言えない表情で、うつむいてしまっている。
「あの、気にしなくても大丈夫ですよ。こういうのは、やっぱり、最初から上手くいくとか。そう都合よくはいきませんって」
「…………」
「むしろ、ここで失敗したからこそ、お嬢様と臨む本番にはきっと上手くいくと……はい?」
「挽回って、出来るかな」
「え、ええ。まあ、すぐには復活しないとは思いますけど、ロゼさんなら二回くらいはなんとか多分……」
幸いなことに――とても幸いなことに。
ロゼは、あの学園での経験がまったく無駄ではなかったと、今、本気で教師達に感謝していた。
そう。ロゼには、この事態を挽回する切り札があったのだ。
「ちゃんと勉強しておいて、本当によかった……」
「はい? だから、えっと何が……ふあっ!?」
ウィムの膣内で。
力を失い、半勃ちの状態におさまりかけていた、ロゼのペニスが――
急激に力を取り戻し、再び滾ってウィムを貫いている。
「ロ、ロゼさん!? これは……一体、どういう……」
「光の祝福のお陰っていうか……こんな時にまで役に立つとは思わなかったけど」
「え、ええ!?」
一度だけ戦闘不能になっても復活できるという。なかなかに便利なアレだ。
しかしそれが、こういう局面で発動とはなんというか。
「べ、便利ですね……ひ、あんっ!」
「今度は、失敗しない……最後までやってみせる!」
かっこよく決めるところでもない。
「ひあ、はう、くあ、やだ、ロゼさん、なんだか復活前より……深くて、熱くて、ほんとに溶けちゃいますよ、んっ」
「そのつもりだ!」
「いやそんな……あ、ふあああ!」
一度、途中で果ててしまったことの気まずさをごまかすためか。
復活したことで最初から全力で飛ばす、ロゼの腰使いである。
ウィムの身体は、その激しい突き上げに踊らされて、もう完全に足が浮かんでしまっている。
壁にぴったりと押し付けられてしまっているのだ。
そしてロゼは、自身とウィムの間で潰れる豊かな膨らみの感触までも味わいつつ、激しく攻め立てる。
「お、お嬢様にここまでしたら駄目ですよ、ロゼさん、激しくて、激しっ……私バラバラになっちゃ、あ、ひあああっ!?」
「手加減は、する……さっ、その時は……でも、今は違うだろ……!」
ウィムに対しての遠慮はない。
といっても、ウィム自身それを望んでいる節もあるのだから、問題はない。
ロゼのペニスの先。くびれた彼女の膣肉の、その天井をこするたび、水のマナはすすり泣くような声をあげる。
「ひぃっ……ん、ふう、そこ、感じすぎるとこでぇっ……や、なんでそんな的確なん、で、すかっ、ひあっ」
「そういうのが得意なんだよ、俺としては……く、きついなっ……!」
二人とも――相手の能力には、驚かされていた。
経験のないはずのロゼに、やけに的確な攻めをされるウィムは、翻弄される意外さと悦びに震える。
女の肉を味わったことのないロゼは、ウィムのその想像以上のよさに、理性を飛ばしながら貪る。
「こ、これをいきなりお嬢様にぶつけてたら大変なことにっ……ひあ、なってましたよ、ロゼさぁんっ……!
だって、こんな、これはまずいです、まずいですってば……ああ、うあ、あうっ」
「何がまずいのかちっとも……わからないけど、なっ! つ……くうっ」
ロゼの動きが小刻みになる。
ウィムのなかも、それに応えるように蠕動が激しくなる。
そうして。やがてロゼのペニスが、再びウィムの奥を突き、全身に響かせたその直後。
「ひ……や、ロゼさ、嘘っ……あ、ふああああ!」
「あ……ぐ、また、出るっ……!」
もう一度――今度は、自らの望む通りに。
溜め込んだものを、ロゼは開放する。それも、一斉に、だ。
ロゼの子を作る為の液が、ウィムの胎内へと、注入されていく。
「また、私……中に……あ……う、ロゼさん……これは……はう……」
「……く、ぐっ……」
出し切る頃には、二人とも、完全に弛緩して――
抱き合うように、床へと崩れ落ちていた。
ウィムは壁によりかかる。
ロゼはそうもいかないが、とりあえずはひやりとした大理石の床に腰掛けて、息をついた。
「そういえば。これ、後になってから聴くのも悪いとは思うんだけどな」
「はあ……はい?」
口元に手を当てて、ロゼは少し考え込む。
「つい、その……中に……あの、なんだ……抜かないで出して……」
「ああ。はい、別にそれは大丈夫ですよ。人とマナの間に、子供は出来ませんってば」
「……いやな。一般的にはそうなんだろうが、ほら、この間の話を思い出すとどうも……」
「この間の……ああ、学園の時の」
「……出来たら、マズいんじゃなかったか?」
学園で巻き込まれた、一大騒動のことだ。
全ての発端は、そう。ロゼとウィムは、この期に及んで思い出す。
「人とマナの間に、出来ちゃったんでしたっけ……」
「だったはずだよな……」
「……ま、まあ、大丈夫ですよ! それだって多分何か凄い偶然が重なったはずですし!」
「けど、やっぱり……俺もその。流されてやっちまったけどこうして考えると……」
「と……というかですね、あくまで精液を注入されただけということで、子作りをした訳ではないという方向性ならなんとか……」
「よく、わからないけどな。そう言われても」
ウィムは、ははは、と若干乾いた笑いを見せた。
「た、多分大丈夫ですよ。それにほら……そうです。
本来、これはお嬢様に行うための、予行演習みたいなものというか。
私はマナですから、妊娠しな……いんじゃないかなあと思うんですけど、これがお嬢様だったら……
もっと妊娠する確率は高いんですから、気をつけないと駄目ですよ、ロゼさん」
「あ、ああ。それはそうだな。勢いでしてしまったら、お嬢様はともかく旦那様に申し訳立たないな」
ですよ、と言って、ウィムはため息をつく。
そんな彼女の姿を見ながら、ロゼは立ち上がる――と。
丁度、ウィムの目の前に。
「あ、ロゼさん……うわあ。なんだか、まだ残ってませんか、これ?」
「これって……お、お前なっ」
ウィムがじっと見つめている視線の先。そこには丁度、射精しきって、うなだれていたはずのロゼのものがあった。
ただし。
この短い休憩の間で、既にもう、半ばまで起き上がっているという有様だったが。
「これなら、別に光の祝福がなくてもイケたんじゃないんですか?」
「……かもしれないけど」
「はあ……これはもう、しょうがないですね。ちょっとサービスしてあげましょうか」
「サービス……んっ!?」
ウィムが膝立ちとなる。
そのまま、自分の溢れるばかりの膨らみを、両側から押し上げて。
目の前にある、硬度を増しつつあるロゼのペニスを――押し潰すように、包み込んだ。
「ウィム、そんな……ことまで、してくれなくてもっ」
「……ふふ。ロゼさん、私の妊娠とか、そういうの心配してくれましたから。
よっぽどのことが無ければ大丈夫だとは思いますけど……それでもそうやって心配されるの、結構嬉しいんですよ?
だから、これはそのおまけです」
「いや、それは……その、心配はそう……く、う……」
ウィムの胸の柔肉が、射精直後の敏感なペニスを包む。
そして、緩やかに。膣肉の締め付けとは違う質感で、責め苛むのだ。
「ロゼさん、なんだかいい顔してますよ?」
「ぐ……そ、そういうのを見るなよ……」
動きが前後に勢いを増す。
その感触から、ほぼ全開時の大きさを取り戻しているロゼのものが、ちらちらと先端を胸の中から覗かせた。
ウィムは、それを見て――ぺろりと、舌を這わせる。
「はう、くっ! みょ、妙に上手いな……」
「マナですからね。ん、ちゅっ」
そのうちに、ロゼも腰を動かすようになる。
彼女の膣肉を貫いていた時よりも、流石に動きは鈍い。
が、突き刺すように、精妙な腰使いで、こぼれんばかりの乳房の感触を愉しむ。
するとウィムも、ロゼのペニスを舐めるだけではなく、出てきた時に咥えてやって――
口をすぼめて吸い込む事で、あたかも膣内に飲み込むような。そんな味わいを生み出すのだ。
「ぐ……く、うっ……」
「ん、ロゼさん……ん、ふふ、んっ」
やがてロゼの動きが一際激しさを増し、次に腰を思い切り突き出したその時に――
ウィムは、ペニスの先をすっぽりと口に入れて、吸い立てた。
それが、少年の堰を切る。
三度目。三度目にして、衰えを知らぬ勢いのまま、ペニスが弾ける。
ウィムの口内へと、それは流れ込んでいき。マナの喉を焼きながら、飲み干されていった。
「んっ……ん、んん、んっ……!」
やがて勢いが弱まり。ロゼは、今度こそ力尽きて腰を引く。
「ぐ……ホントに、凄いな……これ」
「……ふふ」
こくんと、ウィムも喉を鳴らして全て飲み干したようだ。
僅かに口元から、白いものが零れ落ちている。
「あんまり……その。美味しいものじゃないですけど、全部もらっちゃいました、ロゼさんの」
「ん……そ、そっか」
再びロゼは床に腰を置いた。流石に、立ってはいられないのだ。
「この調子なら、お嬢様としても問題なさそうですね。
ロゼさんとお嬢様と、幸せになってくれれば私も嬉しいです」
そう言うウィムに。
「……あのな。俺は、その、言った通り。お嬢様も……なんだ……そうだけどな。
……お前のことも、えっと……長い付き合いだし……あの。なんていうか。
……今日のことはそんなお嬢様のためだけって割り切るような……」
ロゼが――彼にしては。というか、彼らしく。
やたらに口ごもりながら何事か言おうとするのを見て、ロゼはにっこりと笑う。
「大丈夫ですってば。ロゼさんも。あとお嬢様も。二人とも口にして言えないタイプだってこと、わかってますからね」
「し、仕方ないだろ、そういう性分なんだから」
「ですよねー。まあ、だから、そんなお二人と一緒にいられて、私も幸せですから。……ふふ。
これからもお互い、従者としてしっかりやっていきましょうね、ロゼさん」
「あ、ああ……」
ふう、とお互い息をつく。
「……でも本当に妊娠しちゃってたら、責任取ってくれますよね?」
「責任以前に重大なことになるだろうけど……最悪、光のマナの奴と闇のマナ、両方締め上げてでもなんとかする」
「わ、それは頼もしいかも」
余談。
ちょっとした錬金術の材料を探しに、リリアと出かけたウィムとロゼであった。
そして今。眼前には、いかにも弱そうな敵が複数存在している。
「ウィム、任せたわ!」
「はい、お嬢様! 新必殺ホワイトミストブリザード!」
ウィムが、その手から白い霧状の吹雪を放射する。
激しく敵にまとわりつく、その霧のような吹雪は、たちまちに相手の体温を奪い取る。
相手は死ぬ。
「ほら見てくださいお嬢様、新しいスキルですよ!」
「まあ、いつの間に!?」
驚くリリアに、ウィムは自慢げに胸を張る。
「ちょっとした液体を注入されたお陰で編み出しちゃいました!」
「液体ね。どんなものを注入された……された? ウィム、誰に何を注入されたの?
そんな、わたくしに断りもなく……」
リリアの追求の眼が光る。
びく、とウィムは震えて、失言だったかと少し後悔した。
「あ、いえ、その、白い溶液というかそんな感じの……」
「……何、それ」
「あ、あはははは。いいじゃないですかお嬢様、パワーアップできたんですから!」
「……何か胡散臭いわね。というかウィム。胡散臭いというかこの吹雪、妙に栗の花臭いわ」
「あはははははは、お嬢様栗の花のにおいなんてよく知ってますねー!」
笑いながら、ウィムは傍で知らない振りを決め込むロゼにアイコンタクトを送る。
――っていうか、さっさと告白してくださいよロゼさん! なんか針の筵ですよ私!?
けれどもロゼは、遠くを見ながら、こう思うのだ。
もうちょっと、このままの関係を楽しんでいようかなあ、などと。
いろんな意味で、酷い男ではあった。まったく。