卒業式を終え、学園を出る時が近づいてきた。ヴェインも準備のために自分の荷物をまとめている。  
最初は小さなカバンに収まるはずだったのだが、アトリエの皆がどうせなら手持ちの素材で高価なものを  
ありったけ作っておこうと言って、金塊やら武器防具アクセサリやらを色々作ってしまったため、自分の  
取り分と言って押し付けられたそれらが一抱えほどの革のカバンにぎゅうぎゅうに詰まっている。  
 ちなみに校則に多少抵触するのでグンナルの手引きで非合法に持ち出される手筈である。と、そこに  
ノックが三回。  
「だれだろ……」  
 つぶやいたヴェインに、にゃー、とサルファが返す。大きめのノックでめがさめたのか、  
ご機嫌ナナメな声色だった。  
「はいはい。どなたですか……と」  
 いいながらドアを開ける。「よう」と気楽な挨拶をするその男は、  
「グンナル先輩? どうしたんですか?」  
 と言っても思い当たる事は一つしかない。  
「やっぱりあの荷物は持ち出せない、とか?」   
 危ない橋を渡ってまで外に持ち出す必要はあまり感じていないので、ヴェインとしてはそれでも問題ない。  
「ん? そんなわけなかろう。今日はな、餞別を渡しに来たのだ」  
「餞別、ですか」  
 餞別。別れ際に渡したり渡されたりする贈り物。  
 言葉は知っていたが、渡した事も渡されたことも無く。まして初めて餞別を受け取る相手が目の前のこの  
破天荒な先輩だとは。  
 予想外のこの事態にヴェインは胸の熱くなるものを感じた。  
「ありがとうございます。そんな、わざわざ……そうだ、僕からも先輩になにか、」  
「ああ、いらんいらん。お前はホレ、そこにぎゅうぎゅうづめになってる物の中身をほとんど作っただろうが」  
 確かに、一番高価な皆の装備品は、ヴェインがほぼ一人で作った。トールハンマーやら異次元バッグやら、  
高度きわまる装備品の錬金術を、しかも出発までにこなせるのはヴェインだけだったのだ。  
 と言ってもグンナルは自分の機械剣は自分で作ると言って、デウスエクスマキナを作っていたが。  
「ん……でも……」  
「うだうだ言うな。お前のこれからの生活に役立つものを選んだつもりだ。取っておけ」  
 そう言って懐から取り出したのは、一冊の本だった。  
 錬金術士らしいチョイスで逆に驚いてしまう。  
「これは……」  
 なかなか分厚い本の合成レザー革の間に見える紙質は白く、上質な紙であることをうかがわせる。  
タイトルは無く、こげ茶色ののっぺりとした表紙だけが見える。  
「お前はニケの故郷に行ってあいつの婿になるんだろう? だったら必ずやそれが役に立つ。  
 じっくりと目を通しておくようにな!」  
 いや、婿になるとは、まだ。  
 と言う間もなく、グンナルは、がははと笑いながら立ち去っていった。  
「……ありがとうございます、先輩」  
 本を抱いて部屋に戻る。荷物整理はすんだし、早速目を通してみよう、とベッドに腰掛けて本を開いてみると……  
 
 夜の生活・四十八景  
 
 閉じた。  
「はあ……まったく、グンナル先輩は……」  
 そりゃあ、婿、って言ったらこういうことは当然考えているだろうけど。  
 ニケだって、子供を作るため、って理由で婿探ししてたわけだし。  
 
 ニケとそんな風になっているのを想像して、赤面する。……まあ想像といってもヴェインの頭ではキス位がせいぜいだったが。  
この本には、確実にそれ以上の何かが記されているだろう。  
 ごくり。  
「……まあ、せっかく餞別をもらったんだし、ちょっと目を通してみようかな……」  
 ぼそりとつぶやくヴェインに、やれやれというように丸まっていたサルファのしっぽが床を叩いた。  
「なになに……一章、恋人編、二章、夫婦編、三章、性奴隷へ……え?」  
 二章と三章の間にものすごい隔たりを感じる。  
「ま、まあ、目を通せって言われたし、読んでみよう……」  
 つぶやく声もどこか上ずっていて、期待が隠しきれていない。  
「えー……なになに、序章……全てのプレイにおいて気をつけるべきことは、まず避妊です……  
 割りとマジメな内容なのかな? えーと……ただ、基本はナマ、膣中出しです……って、何かおかしいような……」  
 内容に突っ込みながらも読み進めていくと、早速絵入りのページが出てきた。  
 事前段階の雰囲気作りや前戯のあれこれや、舐め方、舐めさせ方、挿入れ方、挿入れさせ方(?)……  
 挿絵の女性をニケに置き換えてみると、顔が赤くなって胸がドキドキする。  
(やっぱり僕も期待してるのかな……)  
 読み進めていくうち、一章三十四節、アナルセックスの項にたどり着いた。  
「アナ……尻の穴でするんだ……なになに、避妊、中出しの両立という観点で見てアナルセックスは  
 一つの理想であり……って、すごい褒めてる……」  
 パートナーへの初めてのアナルセックスの持ち掛け方から事前処理、拡張の手順が事細かに記されていて、  
並々ならぬ情熱が感じられる。  
「……世界にはいろんなひとがいるなあ」  
 とりあえず今日は寝てしまおう。と思って、ベッドに横になり……結局そのまま一章を読みきってしまった。  
 
 
 
 翌日。ついにこの学園から離れる時が来た。それぞれが思い思いの方向へと散っていくのを、  
不思議と晴れ晴れと見送る事が出来たのは……やっぱり、隣に居るニケのおかげだろう。  
「じゃ、行こうか」  
「うん」  
 しばらく、無言であるく。  
「…………」  
「…………」  
 決して不快ではない。ないが、照れくさいというか……考えてみれば、これからしばらくニケと二人なのだ。  
ニケの故郷まで二人旅。道を歩くのも、宿に泊まるのも。  
(ううう……なんだか不必要に緊張しちゃうな。  
 ニケはどうなんだろ……)  
 ちらりと視線を横に逸らすと、ニケはそ知らぬ顔でてくてく歩いている。小柄なのに大またで歩くから、  
気を抜くとこっちが置いていかれそうだ。  
(ニケは気にしてないのかな……?)  
 自分勝手ながら、そんな事を考える。  
(あれ? だったらずっと黙ったままなのにどうして何も言ってこないんだろう?  
 あ、同じ手と足が前に出てる……)  
 まさか難波歩きではないだろう。つまり……  
(ニケも、緊張して……くれてる、ってことだよね)  
 そう思うととたんに気分が軽くなってきた。  
「ねえ、ニケ。ニケの故郷まではどのくらいかかるの?」  
「ふぇい!?」  
 ミミもしっぽも、ついでに前髪もピンと立ててニケが歩みを止める。  
「ニケの故郷まではどのくらいかかるの?」  
「そ、そそそんなにかから無いと思うよ!」  
 顔を真っ赤にして取り繕うニケがかわいくて、ふと微笑んだ。  
 こんなにすばらしい女性が、自分のことを婿にしたいといってくれているのだ。何を迷う事があるだろう?  
「……そうだ。途中で、いろんな町によるよね。  
 とりあえずこの大荷物を処分して、観光してみない?」  
 はた、と。ニケの動きが止まる。頭の中でぐるぐると考えているのがありありと分かった。  
「うん! しよう、観光!」  
 そういって、今度はちゃんと左右逆の手足を出して、ニケは歩き出す。  
「あ、ちょっとまってよ、ニケ!」  
「あはは! 置いてくよー!」  
 ヴェインも後を追い……サルファは付き合ってられないとばかり、ヴェインの荷物の上に乗って空を眺めた。  
 
 結局、最寄の町までたどり着いた時は夕暮れ前で、その日はとにかく休もうという事になった。  
まあ一日中でも走りっぱなしの学園生活だったから、そんなに疲れたということは無いのだが。  
「では、ツインとダブルのどちらにいたしますか?」  
 卒業記念という事で、初日くらいはいいホテルに泊まろう、という事にしたのだが……  
「あ、ツイ……」  
「ダブルで、お願いします」  
 
 とまあ、こんな事があったので。  
 
 さっきからニケは一言も口をきかず、ベッドの上に正座してうつむいたまま、指をもじもじさせている。  
もちろん、あんなことを言った本人であるヴェインも緊張してはいるのだが……ここまで見事な緊張ぶりを  
見せられると、なんだか逆に落ち着いてくる。  
(あの本の一章はちゃんと読んでおいたんだ……なんとか、やってみよう)  
 意を決して、ニケの隣に座った。  
 
 ベッドのきしみに、ニケが背筋をピンと伸ばして反応した。  
「ニケ……」  
 特に意味の無い呼びかけと共に肩に伸ばした手は、しかしニケに触れられなかった。  
ニケがわずかに身を引いたからである。  
 ヴェインの体がぎくりとこわばった。  
(も、もしかして……)  
 拒絶された? うつむいていたのも、嫌だったから?  
 そもそも最初にシングルを二部屋、ではなくツインとか言い出したのはニケだ。  
拒絶なんて、そんな事は無いと思う反面、もしかしたら、という思考を止められない。  
 伸ばした手をそのままに、ヴェインが固まっていると、  
「ね、ヴェイン……」  
 ニケが、部屋に入って初めてヴェインと目を合わせた。潤んだ瞳には、緊張と……  
(……怯えてる?)  
 ヴェインにはそう思えた。  
「ヴェインは、うちの事、どう思ってるの?」  
「え?」  
 虚を突かれたように、間抜けな返事が出た。  
「ヴェインは、どうしてうちの故郷に来てくれるの?」  
(あ……)  
 ヴェインの中で、なにかがつながった。  
(そういえば、僕は……ニケにはっきりとした言葉をあげてないんだった)  
 
 婿にしてあげないんだから!  
 
 心の檻の中での会話が蘇る。返事をして無いどころか、額面だけ取れば  
婿になるのを断ったみたいな会話だった。  
(あちゃあ……)  
 心の中でだけ、頭を抱える。アレから卒業までに機会はあったはずなのに、  
すっかり忘れてしまっていたわけだ。忙しかった、というのは言い訳にもならない。  
「好きだよ、ニケ。だから、君の婿に……いや、僕が君を妻にしたいから。  
 だから君の故郷にいくんだ」  
 簡潔に。はっきりと。心を込めて、ヴェインは言った。  
「あ、う……」  
 ニケの瞳が揺れて、涙がたまっていく。こぼれる前に、ヴェインはニケを抱きしめた。  
今度は、ニケのほうからも近づいてきてくれた。  
 
「ばかぁ……そういうこと、もっと早く言いなさいよぉ……」  
「うん……ごめんね。すっかり伝わってた気になっちゃって」  
「うちも、好き。ヴェインが好き」  
「ニケ……」  
 少々遅めの、初めての口付けは、今までの分を取り返すかのように長かった。  
(ええっと……)  
 ここからが、ヴェインにとって試練だった。  
 学園を離れたのだからお互いに制服ではない。ニケの服のセンスは意外なくらい  
女の子らしくて、そういえば制服以外の女性の服なんて自分の家があったあの村でしか  
見たことがなかったことを思い出した。  
 白のブラウスは柔らかく、その下にあるもっと柔らかいニケの体をはっきりと感じ取る事が出来る。  
肩を出すデザインなのがニケらしい、というところだろうか。  
 そっと肩に手を置いてみる。あの本には、コトに移る前に肩やら背中やらを触って緊張をほぐす、  
とか書いてあったような……  
 触れた瞬間ぴくりと反応したニケの方は、小さく、ひんやりとしている。滑らかな質感と、  
相反するような吸い付くような肌触りに、ヴェインのほうが逆に緊張してきた。  
(えっと次は……)  
 両手を肩に置いてしまったため、なんだか離すのが名残惜しくなってしまう。  
手がダメなら……と、ヴェインはおずおずと舌を伸ばしてニケの唇に触れた。  
「んっ……」  
 熱く、ぷるぷるとした弾力をもったニケの口内は、触れるだけでどうにかなりそうなほど  
気持ちよかった。  
 味わうかのようにねっとりとニケの口内に舌を這わせる。唇の裏も、歯茎も歯も、そして、  
「はむっ、んん……」  
 舌先が触れ合った時、ニケに抱きしめられた。背中に回った腕が震えているのは、なぜだろうか。  
 ニケに近づかれた事で肩に置かれた手は滑り、自然、ヴェインはニケの頭を抱くような姿勢になった。  
そのまま、今度は舌が触れ合うどころではなく絡み合うように精一杯伸ばしてニケの舌全体を愛撫した。  
「んんん! うんっん!」  
 ニケが鼻にかかったような、甘えた声を上げる。しがみつく腕に力が入るのとは逆に、それ以外の体全体は  
くたりとヴェインに寄りかかっていった。  
 その重みすら快感ととらえて、ヴェインは舌でニケと交わり続けた。ニケのほうからも積極的に絡めてきてくれるのが  
子供のようにうれしくて、ゆっくりとニケに寄りかかっていくと、力の抜けたニケの体はベッドに倒れこんでいく。  
 体全体にニケの体温を感じ、体格の割りに大きめの胸が倒れこんだヴェインのクッションになった時、  
ディープキスに夢中になっていたヴェインが我に返った。  
(そうだ……えーと、胸とか触らないと……)  
 
 何時までも吸っていたいのをこらえて唇を離す。つう、と銀の糸が伸びて、切れた。  
 長いディープキスを終えたニケの顔は、上気した頬、ぼうっとして焦点を結ばない瞳、  
二人分の唾液でつやつやと光る唇、半開きになった口の中に見える、かわいらしい舌……  
全てが美しくて、もう一度キスをしたい衝動に襲われた。  
 胸に手を伸ばしつつ、もう一度キスをする。今度はしただけでなく、上あごも含めて  
口全体をかき回す。  
 一方で、胸の感触にも新たな感動を覚えていた。柔らかく、どこまでも指が沈むかと思えば、  
心地よい弾力で押し戻される。服の上からでもかすかに分かる硬くなった部分を手の平で弄ぶと、  
ニケが体をくねらせる。  
 すぐに直接触りたくなって、脱がせてしまおうと思った。ニケの腰に手を伸ばし、服をあげていく。  
(ん……口を、離さなきゃ……)  
 肩が出るデザインのおかげで、かなり脱がしやすくなっている。一瞬口を離した後、ニケのバンザイした  
腕に引っかかった服が抜けるのも待たず、またむしゃぶりついた。  
 今度はちゅうちゅうと音を立てて唇を吸ってみるが、ニケにあまり反応が無い。不思議に思って  
口を離してみると、ニケはやっぱり反応を示さずに放心している。その目は夢を見るかのようにうっとりとして、  
頬は弛んで笑顔のようになっている。いや本当に微笑んでいるのかもしれない。  
 その頬を撫でてみると、感じ入ったようにニケは吐息を漏らした。  
 ヴェインはしばらくその顔に見とれていたが、ふと視線を落とすとあらわになったニケの上半身が映る。  
肩の辺りとははっきりと違うその肌の色は白く、しっとりと汗で湿っているように見える。  
 ためらわず、右手でその胸を揉んだ。服の上からとは比べ物にならない柔らかさ。吸い付くような肌触りの  
頂上についているそれを、親指で押してみると、こりこりとした赤い突起が胸の中に埋まる。  
 陥没したままで上下左右に弄ぶと、  
「あ、んっ……え? ヴェイン?」  
 ニケが目を覚ましたようだ。  
 
「何やって……ふ、ぅんっ!」  
 慌てて上体を起こしたので、ヴェインも同じく上体を起こす。胸だけは離さずに、乳首を指でくりくりと  
左右に捻ってやると、ニケが面白いように反応した。  
「や、だめ、だめぇ……」  
 あられもない姿を見られている羞恥と、隠し切れない快感から、ニケが顔を逸らす。ヴェインの目の前に差し出された  
うなじに吸い付くと、びくりと震えた。  
 ニケの手はヴェインの胸辺りに置かれ、ほんの少しの力で押し返そうとしている。今まで片方だった胸をいじる手を  
増やし、両方を遠慮なく揉み解してやると、  
「やだぁ、ヴェイン、だめ、だめだからぁ……」  
 声は大きくなって、手から力が抜けていく。ついに手が完全に離れて、つんと張った胸を突き出す姿勢になったところで、  
ヴェインは手を離した。  
「え……?」  
 ニケは不満そうな顔になって、逸らしていた顔を向けてくる。  
「だめ、なんでしょ?」  
 ニケの顔が爆発したように一瞬で真赤に染まる。  
「だって、だって、うちらまだ結婚もしてなくて、それで、」  
「一緒のベッドで寝るのはいいんだ?」  
「! それは、その……」  
 もじもじと人差し指を突き合わせる。ヴェインはもう一度手を伸ばし、今度はニケの太ももに置いた。  
淡紅色のロングスカート。ニケがそんなのを穿いている所は想像した事もなかったが、よく似合っていると思った。  
薄い生地のそれは、ニケの細い脚を浮き上がらせている。  
「あっ……」  
 ニケの顔がこわばる。だが払いのける仕草をしなかった。赤い顔のまま、置かれた手を期待と不安の入り混じった表情で  
眺めている。  
 触れたままつけ根のほうへ手を滑らせていくと、ニケはぎゅっと目を閉じた。ニケの大事なところに触れるギリギリで  
止まって、  
「ねえ、ニケ。僕は、最後までしたい。ニケの全部を知りたい」  
 スカートのホックを、もう片方の手ではずす。  
「うう……ヴェインてば意外と強引……」  
 真赤な顔で上目遣いにつぶやいたそれを、ヴェインはOKと解釈して、スカートと一緒にパンツまで脱がせてしまった。  
「ひゃわわ! ちょ、ちょっとヴェイン!」  
「あ、ごめんごめん。勢いあまって……」  
 もはや生まれたままの姿のニケに、一切服を脱いでいないヴェインが謝った。  
「こーなったらうちもヴェインの服脱がせてやるんだから!」  
 いい加減恥ずかしさの限界を通り越したのか、ニケは開き直って逆にヴェインを押し倒した。  
 
 
 

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