…ああ、びっくりした。フェルトったら、いきなりあんな事言うなんて…  
 
フェルトが今さっきまで握ってくれていた手。  
その手はあたたかく、私を護ってくれる力強さを、内包しているかのようだった。  
内容はよく覚えていないけど、私は言い様のない不安な夢を見ていたんだろう。  
枕に残る涙の跡がそれを如実に物語っている。  
そして、それをフェルトが気付き、この手を握ってくれていたに違いない。…優しい人…。  
途中から覚醒していたけれど、彼の真摯な姿に声を掛けるのもためらわれた。  
私に出来たのは、寝たフリをしながら私の手を包んでくれている彼の手を、軽く握りかえす事だけ。  
 
…愛してる、ヴィーゼ…  
 
そして、今の言葉だ。  
私は嬉しさの余り、すっかり覚醒しのぼせ上がってしまった。  
だからかな?どうしても面と向かって言って欲しかった。  
私も女同士の話の流れで、フェルトとの仲の進捗状況を問われる事はあるけれど、  
今一つ気持ちをハッキリ伝えてくれないフェルトに、やきもきしてもいたのだから。  
 
…どうして、面と向かって言ってくれないかなぁ…  
待っているんだよ?  
こちらが眠っていると思って…、いくじなし  
 
だけどそれも仕方ない事かな?  
確かに私たちは、相思相愛なんだと思う。  
一線を越えそうになった事だって1度や2度じゃない。  
けれど、お互い何となく雰囲気を否定してしまうものだから、  
至らなかっただけの話なのだ。  
今更感が強くて、どうしても気恥ずかしさが勝ってしまうから。  
その度にさっきのように意気地なしとフェルトを責め、  
あるいは自分自身をなじるのだった。  
ノインさんもフィーさんもとても綺麗な人で、  
その上ノインさんはフェルトに気がある素振りを見せている。  
私が1番有利であり、その差は対抗する意識を、  
萎えさせるほどに強固なものだという自信はある。  
だがいつまでも進展がないと悟られると、いつ横槍が入らないとも限らない。  
彼女たちは頼れる仲間だけれど、私にも譲れないモノがあるのだ。  
 
けれど、多分フェルトのことだから、  
正にその「後押し」が無いと、いつまでもこのままな気がする。  
フェルトの行動は、ある意味で私に決断を迫るものだったのだ。  
 
だから、私はフェルトに声を掛けた。  
後で笑って誤魔化すなんて、そんなマネして欲しくない。  
そんな願いを秘めながら。  
少し意地が悪いけれど、ここが勝負。  
 
「ズルイね、フェルト。…ところで、今のはホント?」  
「!?…起こしちゃったか、ゴメン」  
 
まさか私から返事が返ってくるとは思ってなかったのだろう、  
フェルトは明らかに動揺していた。  
でも私はそんな事より…。  
 
「確かに少しビックリしたけど、そんなのは良いの。それより…フェルト、私はさっきの言葉は本当か聞いたんだけど?」  
 
困惑した表情のフェルト。  
私は息を呑み、フェルトの返事を待つ。  
…お願い…笑って誤魔化すなんてしないで…  
フェルトは私の手を取りながら  
「…愛してる…ヴィーゼ」  
と、そう言ったのだった。  
期待が確信に変わる喜びが全身を貫く。  
 
「嬉しい…。でも私が眠ってたからって、卑怯じゃない?」  
「…ああ。だが面と向かっては、ちょっと恥ずかしいからな…」  
 
フェルトは頬をかきながら、そうつぶやく。  
私は眠る事で、今の感動が夢であったかの様な錯覚に陥るのが不安で  
 
「ね、フェルト。少し…昔の話をしない?」  
 
少し話を続けることにした。  
イリスに配慮してフェルトのベッドに腰掛ける。  
予想以上に盛り上がり、くだらない理由でケンカした時の話も、  
2人の絆の深さを再確認するものになった。  
 
フェルトは深くベッドに腰掛けて、膝を開き、  
その間にスペースを作ると、私に向かって  
 
「ここにおいで」と言ってきた。  
「そこに座るの?」  
「ああ」  
 
私がフェルトの膝の間に座ると、  
途端にフェルトは優しく、後ろから抱き締めてきた。  
それがまるで甘えているように感じた私は、  
「…甘えん坊…」と返す。  
 
そして  
「…愛してる…ヴィーゼ」  
繰り返される言葉に身を委ね、フェルトのスキを突いて唇を奪う。  
…でも少しの時間だけ。  
 
自分でも、もっとフェルトと触れ合いたいという思いが、  
爆発する寸前で離れる。  
とても名残惜しいけれど、効果はテキメンだったみたい。  
 
フェルトは激しくキスを求めてきた。  
最初は触れ合うだけのキスだったのに、  
いつの間にかお互いの顔がベタベタになってしまっていた。  
 
フェルトは私の顔を覗き込む様に見つめている。  
私は喜びと驚き、その他の色々な感情が混じりあい、  
涙腺を刺激しているのを自覚していた。  
けれど、静謐な幸せな時間をフェルトと共有したくて、  
ジッとフェルトを見つめ返す。  
 
…フェルトの手が私の胸に添えられる…  
 
そしてフェルトの瞳が語る意味に…  
私は自然に頷いた。  
 
フェルトが私の胸を愛してくれている。  
あ!吸われているのが分かる…  
…ふふ、まるで赤ちゃんみたい…  
フェルトの頭を抱える様に抱き締め、愛しさを伝える。  
 
と、そんな時全身を雷が貫いたかの様な感覚。  
「あ!」  
思わず声が出てしまい、慌てて口に手をあてる。  
フェルト、何をしたの?  
 
…あ……ううん…、か、噛んじゃダメだってばぁ…  
 
決して嫌じゃない感覚だけど、その余りの恥ずかしさのために  
私はその刺激が貫くたびに、頭を振る。  
 
愛しいフェルトに触れられている喜びに、私も夢中になってゆく。  
フェルトに求められたキスを貪る様に応えた後…  
 
…にちゃ!…  
 
突然耳に響いた粘液の音。  
そして下腹部の異変。  
 
それの意味する事が頭の中を駆け巡り、  
私から一瞬にして思考能力を奪っていった。  
慌てて枕で顔を隠す。  
…む〜、フェルトのいじわる…  
 
「可愛いよ、ヴィーゼ」  
「…見ないでよぅ…」  
 
枕ごしに涙の滲んだ半目でフェルトをにらむ。  
フェルトが微笑んだかと思うと、新しい刺激が駈け登ってきた。  
 
…あ!?こらぁ…  
 
慌てて足を閉じようとしたけど、手を締めつけるだけで  
更にフェルトの手に愛されたのだった。  
 
それからどれ位経っただろうか?  
「…ヴィーゼが欲しい…」  
と告げられ、その意味を理解する。  
 
覚悟を決めた私はゆっくりと頷いた。  
そして穏やかに優しく一言。  
「私、ようやくフェルトに奪われるのね」  
 
それは私が幼い時から暖めていた気持ちそのもの。  
惹かれ合いながら、より深く繋がる事に恐怖していた  
お互いの時間を象徴する一言。  
進展をフェルトに任せきりにしていた私に対する、戒めの意味も込められている。  
 
私は「奪われる」瞬間に流れた涙を、  
フェルトがキスで拭った事を一生忘れないだろう。  
 
その後、朝までの事はよく覚えていない。  
だけどなんて動物的で、原初の体験だったことだろう。  
抱き締めあい、求めあい、  
何度も何度も意識が混濁する中で果てた気がする。  
 
翌朝、私はフェルトより遅く起きた。  
気恥ずかしさは確かにあるけれど、フェルトの腕の中は私だけの場所。  
私は起きてもベッドの中にとどまり、フェルトとキスを繰り返し、  
お互いの気持ちが再び高揚する様な感覚に酔いしれていた。  
そして時間を忘れてベタベタしてたら、イリスに見つかったのだった。  
 

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