「え〜」  
閑静な居住区に女性の悲痛な声が響いた。  
声の主は先ほどこの館を購入した齢14、5といった年端も行かない少女だった。  
「じゃあじゃあ、すぐに売ればいいんじゃない?」  
彼女の前に対峙する同年代の男は哀れみの視線を投げかけたまま深いため息を吐いた。  
「無理だね。なんせ、この館は俺が生まれた頃からずっと売り出されて買い手がつかなかったぐらいだからな」  
二束三文で購入したとはいえ、アルフは彼女に同情せざるを得なかった。  
ここ数十年人っ子一人入ることの無かった館である。そうそう買い手がつくとは思わなかった。  
アルフはいつもこの館の前を通って家に帰っていたがめずらしくも明かりが灯っていたので  
たまたま様子を伺いにきたところだった。  
彼が館の前に立つと同時に扉が開いたときの彼の驚き様は今思い出しても恥ずかしいものだ。  
 
 
 
哀れみ半分で彼女の素性を尋ねたところ、若干謎めいたところがあるものの彼女の目的は一つだった  
この国の住人でない、お金に困っている、元手が無い状態で一攫千金を目指している  
とリゼットはアルフに対して漠然なことしか話をしなかった。  
彼女自体、説明が下手なこともあり会話が長引けば長引くほど、話は困惑する方向へと向かうだけだった。  
「れんきんじゅつ?」  
耳にしたことも無い単語をリゼットは復唱していた。  
「ああ、うまくいけば頑張ったなりにお金は稼げると思うぜ。なんなら基本を教えてやろうか?」  
アルフの言った言葉にリゼットは興味を示し始めていた。彼女にとってまさに渡りに船だった。  
「それって簡単?」  
「ん〜...まあ、基本ぐらいなら簡単に覚えれるぜ。この町なら常識みたいなものだからな」  
うまい話とはおもいつつも今のリゼットは他に収益を得る当てもなく彼の話に乗るしかなかった。  
 
アルフによる錬金術のあらましの説明や禁忌、法則などを説明が終わり、いよいよ本題の技法についての解説が始まろうとしていた。  
リゼットは目を輝かせ一部始終、彼の説明を逃すことなく書き留めている。  
部屋の中央にある大釜の前でアルフは黙り込み、ゆっくりと彼女の方へ向き直った。  
「でも教えてあげる以上、ただってわけにもなぁ...」  
アルフはわざとらしく顔を歪め、考え込むしぐさをしていた。  
「えぇ〜でも、お金なんてもうほとんど残ってないよぉ」  
リゼットは懐から自分の財布を取り出し、中を覗き込み残り少なくなった金貨の数を目で数えていた。  
文字通りなけなしのお金を払って館を購入したところで  
正直、一月分の食費程度が今の彼女の全財産だった。  
館が安売りされていたとはいえ、一般人が買うには高い買い物だったに違いない。  
もちろんアルフは貧困に喘ぐ彼女を困らせる気は毛頭ない。  
見返りなど期待はしていなかったもののリゼットの真剣な悩みようについつい彼の頭の中で黒い悪魔が囁き掛けていた。  
彼女の当ては自分しか居ない。そうなれば多少の無理難題を突きつけたところで受け入れてもらえるのではないか...  
「お前を抱きたい...」  
顔を真っ赤に染めながらアルフはリゼットに要求する。  
軽い冗談のつもりだったが、いざ言葉に出すと予想以上に照れを感じずに入られなかった。  
思春期の少年というのはそういったものだろう。  
しかしアルフの照れた顔とは反対にリゼットは二言返事で彼の要求にこたえたのだった。  
「いいよ。それぐらい」  
ケロッといいのけるリゼット。  
彼女は大事な財布を懐に治すと、自らアルフを求めるように両手を開いて彼を誘った。  
二人の思考に食い違いがあったものの一晩で錬金術の虜になってしまうことをこのときリゼットは予想だにしなかった。  
 
 
リゼットは一人で生活をするには世間知らずという言葉がぴったりあてはまっている。  
何不自由なくすごしていた幼少期の彼女は教養、礼節こそ人並み以上の教育はされたものの  
世俗的な知識は皆無に等しいものがあった。  
今先ほどアルフが言った『抱きたい』と言った言葉を素直に受け取り抱擁を交わしているところだった。  
毎日のように父親、母親と交わしていた抱擁。  
しかし、彼の抱擁はそれだけでは終わらなかった。  
頭一つ分背の高いアルフの顔が彼女に近づき、抵抗する間もなく拗ねた子供の様にとがったアルフの唇がリゼットの口を塞いだ。  
「っ!?」  
驚きのあまり目を見開くリゼット。  
顔前の男は目を閉じ接吻に夢中になっている様子だった。  
「イヤーーッ!」  
館を揺るがすほどの悲鳴と共に力いっぱいリゼットに突き飛ばされたアルフは床の上に尻餅をついてしまった。  
「!??」  
アルフの頭に浮かぶのは対処のできない疑問符だけだった。  
「...お、お前。さっき抱いてもいいって言ったじゃないか」  
ズボンのお尻についたほこりを払いながら立ち上がるアルフ。  
彼が立ち上がると後ずさりしながらもまるで牙をむき出しにして反抗しようとするリゼット。  
「確かにそうは言ったけど...誰もキスしていいとまではいってないじゃないの!」  
リゼットは男に怒りを向けながらも悔しさのあまり目に涙が滲む。  
そのときアルフの頭の中に聞き覚えのある言葉がよぎった。知り合いの女性に言っていた台詞。  
『キスは本当に好きな人としかしないものよ』  
たとえ体を許してもキスは別物と言っていたロロットの言葉。  
「ごめん、悪乗りしすぎた。...その...キスはしないから続きは......いいよな?」  
「いやよ!」  
問いかけが終わるや否やリゼットは即、拒絶の言葉を発した。  
 
むしろ敵対心を抱き、彼女はアルフに向かってこぶしを構えていたのだった。  
「でってってよ!」  
なおも続けるリゼット。先ほどの出来事で彼への友好度は一気に『だいきらい』になってしまったのだ。  
「そっか...折角、錬金術の手ほどきもしてやろうと思ってたのに...残念だ...」  
ぼそりとつぶやいた彼の言葉にふと我に戻るリゼット。  
ショッキングな出来事に思わず彼女は当初の目的を忘れてしまっていた。  
一生懸命お金を儲けて、稼いで、借金を返済するということを...  
危うく一時の感情で降って湧いた儲け話をふいにしてしまうところだった。  
「じゃあな...」  
「まって!」  
気がついたときには扉に手をかけ、館を出て行こうとしているアルフを彼女は呼び止めた。  
金すら生み出すことができる技法、錬金術。  
たとえ金の作成はご法度といえどもそれに近いものを作れるようになればあっという間に大金を掴むことだってできる。  
それは今の彼女にとってはこれ以上ないほど魅力的なものだった。  
大事を成すには多少の犠牲も惜しんではいられない、彼女は自分の決意を決め再び彼に口を開いた。  
「い...い、いよ。キスしても...続きをしても......」  
ランデル王国のお姫様はアルフの言う続きの意味を知らずに彼の返事を待った。  
振り返るアルフ。彼の返事は即答だった......  
 
 
 
アルフに抱きかかえられたリゼットは部屋の奥にあるベッドの上へと静かに下ろされた。  
バフッと柔和な音をたて、白いシーツの上に彼女の体が沈んだ。  
人が住んで居ない館の割には埃っぽさを感じない、それどころか清潔さすら感じることに違和感を覚えていた。  
しかしそんな考えもベッドの上のリゼットを見たとたん情欲が湧き立つと共に消え去っていた。  
 
ロロットのような大人びた魅力は感じないものの、  
どこかしら感じる高潔さにアルフの理性のタガが外れるまで時間は要しなかった。  
「リーズ...」  
アルフはごくりと生唾を飲み下し、羽織っている青いベストを脱ぎ捨てるとリーズの上に体を重ねた。  
先ほど抱擁を交わしたときにも実感したがリゼットはロロットと比較しても華奢な体で、女性的な部分も未発達といったところだった。  
リゼットを組み敷き、アルフは再び彼女に口付けを求めた。  
逃げ場のない彼女はアルフの欲求に対して、無抵抗のまま従うしかなかった。  
唇を舐めまわす彼の口付け。先ほどは一瞬で感じることがなかった独特の嫌悪感。  
その感覚に苛まれながらも、男の責めては休まることなく彼女の体を弄っていた。  
「...んぅ......」  
リゼットの唇の隙間から吐息が漏れる。  
 
ぬちゅり...  
 
静かな水音をたてて、アルフの舌がリゼットの口腔内へと侵入をしていた。その中をアルフの舌は何かを求めるように這いずり回っていた。  
リゼットの舌にアルフのものが触れると同時にそれを絡ませ、唾液を交えて強く、強く吸い付いていく。  
稚拙な舌の動きとはいえ未経験の彼女にとって、それは十分な毒となりえていた。  
もはやリゼットの思考は薄靄がかかり、現状を理解する能力が欠如し始めていた。  
アルフの腕が下腹部にのび、腰につけている布をするりと剥ぎ取っていたことすら今のリゼットは気がついていなかった。  
 
ビクンッ!  
 
リゼットの体が小さく跳ねる。  
服の上からとはいえ侍女以外に触れることの無かった胸をアルフの手が触れたからだ。  
「んっ、ん!」  
 
口を塞がれながらも再びリゼットはアルフに対して拒絶の姿勢を見せる。  
しかし相手は男であり、体制が悪く、組み敷かれた状態では必死の抵抗も些細なものでしかなかった。  
「大丈夫だ...俺に任せな。ちゃんと...教えてやるって」  
アルフはわざと主語を言わずリゼットに耳打ちをした。  
彼の心の中では男が女を抱くという意味をと付け加えながら...  
再度、胸を弄るアルフの腕が動き始めた。  
リゼットは彼に心をゆだねるのは危険を感じつつ、平常心を保とうと努力していた。  
しかし最初のうちこそ胸を触られているのがくすぐったかった感覚が、徐々に今まで経験したことの無い感覚へとすげ変わり始めていた。  
拒んでいたはずが、いつの間にか受け入れ、さらにはそれを求めてしまっている自分に気づくと同時に  
彼女はもう一つの体の変化にも気がついていた。  
(なに...これ......)  
体の奥が熱くなるような気分、それに加え股間の辺りで滲み出るような何かを感じていた。  
それをごまかそうと内腿を擦り合わせる行為がかえってアルフの注意を引くものとなってしまった。  
「どうしたんだ?リーズ」  
知らず知らず剥ぎ取られた彼女の衣服、露になっている乳房にむしゃぶりついていたアルフが顔を上げた。  
わずかな起伏しかない胸だがその桜色の先端は己を誇示するかのようにツンと、天井を仰ぎ見ていた。  
アルフの仕業とはいえ恥ずかしさがこみ上げるリゼット。  
「そろそろいいよな?」  
アルフはベッドから立ち上がると、自ら上着を脱ぎ捨て、ズボンを脱いだ。  
股間には下着越しに隆々と佇立するものがリゼットの目をひいた。  
王国では侍女達に囲まれて生活していたリゼットにとって男性器を見るのは初めてといっても過言ではなかった。  
ましてやあのような大きなものとは想像だにしていなかったのだ。  
アルフはためらい無く下着を脱ぎ捨てると急角度に反り返るモノに彼女の視線が向いていることに気がつき少し気恥ずかしさを感じていた。  
「いくぞ?」  
呆然と見つめる彼女は問いの意味も分からず、答える言葉も持っていなかった。  
 
aアルフの手がミニスカートの中へ忍び込みリゼットのショーツを掴む。  
呆けていた彼女が我に返り拒絶しようとするものの、アルフの行動が一歩も二歩も早かった。  
再び彼の体が困惑するリゼットの上に乗り、両脚の間に割って入った。  
「入れるぞ...」  
アルフは彼女を組み敷いたまま片手で自分のものを掴みリゼットのスリットへとあてがう。  
言葉を失っているリゼットはただ首を左右にふって彼の行為を否定するだけだった。  
濡れた秘裂に彼のものが侵入を試みる...  
しかし、するりと筋をなぞるようにアルフのものが滑った。  
「あれ?あれ...?」  
何度も何度も同じことを繰り返し、性急さに任せて彼は何度もリゼットの秘裂へと自分のものをこすり付けていた。  
 
ずぶり......  
 
焦りながらも何度も挑戦し、ついにアルフの怒張はリゼットの中へと突入を開始した。  
ずぶずぶと徐々に腰を進めるアルフ。  
 
ぷちっ...  
 
とても小さな音がリゼットの中から聞こえた。  
快感に身を震わせるアルフ。しかし彼とは正反対にリゼットは痛みを堪えるために彼女もまた身を震わせていた。  
アルフは全神経がそこに集まったかのような錯覚を覚えていた。  
リゼットの中で暖かく包み込まれ、微かに蠢く肉壁は否応無く彼に快楽を与え続けていた。  
「リーズ、動くぞ?」  
アルフは彼女に確認する。しかし彼女の返事は否定だった。  
言葉無くすすり泣く彼女。まるで子供のようにイヤイヤと首を左右に振っていた。  
 
行き場の無い腕はシーツを強く掴み、その皺を見ればどれほどの力が篭っているかは想像に容易かった。  
「ごめん、でも俺止まっ、れない...」  
そう言うと同時に腰の律動を開始するアルフ。  
リゼットに悪いという気持ちはありながらもアルフは更なる悦楽を求めて腰を前後に動かしていた。  
「...っ、っく......ん、んぁ......」  
色っぽさのかけらも無いリゼットのうめき声。  
彼女は少しでも逃げるようにベッドの上へ上へと体を滑らせていた。  
やがて彼女は最端にたどり着くとベッドの宮に行動を阻止されてしまう。  
更にアルフが腰を進めるたびに頭をコツコツと打ち、この時間が少しでも早く終わることを祈るしかなくなってしまった。  
「ふっ...はぁ、はっ...はぁ...はぁ...」  
アルフの荒々しい息遣いが静かな部屋に響く。  
徐々にその息遣いは切羽詰ったものに変わり、同時に腰の律動も速度を増していった。  
「はっはぁっはっ、はっ...いっ、そろそ...ぉろっ」  
腰を打ち付ける速度は最高潮に達し、アルフはのけぞるように腰を突きつけるとブルブルと体を震わせ欲望の滾りをリゼットの中へ放った。  
 
ドク...ドクドク......トクン...  
 
熱い迸りがリゼットの子宮を満たし、収まりきらない精は彼らの結合部を辿り溢れ出ていた。  
破瓜の血と混じった白濁液はほのかに桜色に染まってリゼットの臀部を滴り、シーツの上へと零れ落ちていた。  
 
 
リゼットはまだ下腹部の痛みを感じながらアルフの腕の中に抱かれていた。  
事が終わった後、二人は会話無くただ相手の体に手を滑らせ、余韻の渦の中に身を投じていた。  
アルフの腕の中で彼のぬくもりを感じつつ、リゼットは徐々に空腹を感じ始めていた。  
 
ぐぅぅ......  
 
そう思った矢先、遠慮がちに低く空腹の知らせが届いた。  
幸いにしておなかの虫が鳴いたのはリゼットではなくアルフのほうだった。  
「ハラ、減ったよな?」  
彼は照れ隠しに髪を掻きながら、リゼットにまわしていた腕を解いた。  
コクリとうなずくリゼット。  
アルフは裸のままベッドから出ると、床に脱ぎ捨てた下着を履き、部屋の中央にある大きな釜へと向かって歩き始めた。  
自分の荷物を探り、中から食物を取り出す。  
「見てろよ...」  
アルフはいうが早いか、手に取った三種類の材料を釜へ投げ込み、大きなしゃもじでかき混ぜ始める。  
野菜のヘタをとることも無ければ、小さく刻みもしない、まして皮も剥かずに投げ入れた食材で調理ができるのだろうか?  
そんなリゼットの不安もよそに瞬く間に出来上がった完成品は皿の上に並べられ、えも言えない良い香りがリゼットの鼻腔をかすめていった。  
「ほらよ、これが錬金術ってもんだ」  
シーツに身を包んだリゼットは渡されたお皿を手に取り、錬金術による調理品をまじまじと見つめていた。  
彼女の視界を銀色のスプーンが遮った。アルフが持ってきたものだ。  
「食べてみなよ、味も保証できるぜ」  
彼は飛びっきりのその笑顔でリゼットの心を満たしていた。  
 
 
 
久しぶりに誰かと一緒に食べる食事は味はさるものながら、リゼットは心温まる思いで手を進めていた。  
アルフの話はどれもこれも興味をそそり、一時間程で町についてかなり情報を得ることができた。  
彼の親友、錬金術の在り方、材料について、販売について  
どれもこれも有意義な情報であり、かつリゼットの錬金術に対してのインタレストを高めていた。  
話を続けるうちに彼女の錬金術への興味はやがてアルフの自身にも向けられた。  
「質問...してもいいかなぁ?」  
いつもの調子にもどったリゼットは話し終えたアルフに問いかける。  
「ん?」  
アルフは彼女を見つめ言葉の続きを待った。  
「ほら、それ......さっきと...。違うよね?」  
もじもじ言いにくげに言葉を紡ぐ彼女。  
チラチラと覗き見る彼女の視線、男はそれが自分に注がれていることに気がついた。  
初秋といってもまだまだ夏の暑さは残っており、食事中も、今もアルフは下着姿のまま部屋をうろついていたのだった。  
言葉の意味を察したアルフは急に恥ずかしくなり思わずリゼットに背を向ける。  
「ばっ、ばかやろ」  
彼は瞬時に頬を朱色に染めつつ股間のものが熱く滾り始めたことを感じとった。  
瞬く間に欲望の固まりは硬化し、はちきれんばかりに反り返っていた。  
「な、なんだよ?もう一度したくなったのか?」  
背中越しに声をかけるアルフ。  
リゼットにそのつもりはなかったが男性の体に少し興味を持っただけだった。  
「そんなわけないよ!すっごく痛かったんだから......まだ痛むし...」  
リゼットは先ほどの行為を思い出し、ぷくりと頬を膨らませアルフから視線をそらす。  
あわててリゼットの元に駆け寄るアルフ。  
「大丈夫か?......そうだっ!」  
 
ねぎらいの言葉をかけようと口を開いたとき、彼は名案を思いつき小さく手を叩いた。  
アルフはリゼットのそばから離れると自分の鞄の中から小さな瓶を取り出した。  
慌しく動く彼の一挙一動を見つめるリゼット。彼の股間が中途半端に盛り上がっているのを見つけると思わず赤面してしまう。  
円柱状の小さな瓶をリゼットに見せつけ彼は問いかける。  
「なにか分かるか?」  
「ううん」  
リゼットは小さく首を左右に振る。  
「アルテナなんこうって言うんだけど、どんな傷もあっという間に治るってものさ。ほら、足を開いて」  
強引に詰め寄るアルフの考えが想像できたのか、リゼットは彼との間を開けるようにベッドの上を後ずさった。  
「何を考えてるのよ!」  
アルフの手が彼女の右足首を掴む。振り払おうと足をバタつかせるもののその力は容易に解けるものではなかった。  
 
ジュル...  
 
アルフは舌なめずりをして執拗にリゼットに襲い掛かる。  
必死に抵抗しようとするリゼットだったが、一瞬、彼女の目がそそり立つアルフの股間に刮目してしまった。  
先ほどまで静まっていたものが大きく変化していたことに驚き、彼女の動きにためらいが生じる。  
その僅かな隙をアルフは逃さなかった。自由だったリゼットの左足首を掴むとそのまま彼女をベッドの上に押さえつける。  
「だ、大丈夫だって。きっ、きっと...傷が治るはず...だ」  
血走った目で局部を覗き見るアルフ。言葉は緊張のせいかどもりがちになってしまう。  
貪欲な肉食獣のように彼はリゼットを見つめる。対する彼女はまるで草食動物のように彼の行動に怯えるしかなかった。  
「ア、アルフ...目が怖いよぉ」  
リゼットの束縛を解き、彼はアルテナなんこうが入っている容器の蓋を回して開けた。  
もはやリゼットは下手に逃げようとしなかった。抵抗したところで状況が好転するとは思わなかったからだ。  
アルフはたっぷりと手に粘り気のあるクリームを掬い、ごくりと喉を鳴らして唾を飲み込む。  
 
先ほど直に触れることの無かったリゼットのスリットに指を差し入れ、薬液を塗布するように内部を撫ぜた。  
まだ残っている彼の残滓が絡まり、抜き取られた指はとても淫靡なものに二人の目には映った。  
リゼットは恥かしさのあまり、すぐに両手で顔を覆いかくしてしまう。それでも指の間からついついその行為を覗き見てしまう。  
その行為は幾度繰り返されただろうか  
見るに耐えかねたリゼットは視線をそらし、やがて目をつぶって彼に身を委ねていた。  
最初のうちこそ痛みを感じていたものの薬の効果でそれは徐々に治まり、やがて彼の指の動きにぞくぞくとする甘美な感覚が体に広がっていった。  
「...あぁ......ん、...はぁ......ぁあん......」  
自然と口から零れるリゼットの甘い吐息。それに混じって喘ぎ声とも取れる小さな嬌声が紡ぎだされる。  
アルフも自然と息が荒くなり、指の動きが強く、出し入れするストロークが大きくなっていた。  
快楽の供給が終わると同時にリゼットはゆっくりと目を開けた。  
そこにはアルフの顔が眼前にあり、荒い鼻息が顔をかすめる。  
「リ、リーズ。塗りやすいように四つんばいになってくれよ」  
終わったと思った傷薬の塗布はまだ完了していなかったのだ。  
「え〜、は、はずかしいよぉ」  
甘い吐息をもらしながらもリゼットは彼の申し出を断る。しかしあまりにもその様は説得力の無いものだった。  
「リーズだって...。ほら、四つんばいになって...」  
しぶしぶ彼の言うとおりリゼットはベッドの上に四つんばいになり、彼のほうにお尻を向ける姿勢になった。  
局部に薬を塗られるというだけでも顔から火が出そうなほどだったのに、  
成り行きとはいえ今の体勢は恥かしいことこの上なかった。  
頭から湯気がでそうな、そんな気持ちをリゼットはシーツに顔を伏せて堪えるのだった。  
しかし、それはかえってアルフはお尻を突き出す姿勢になってしまう。  
 
ごくり......  
 
アルフは口の中に溜まった唾液を嚥下し、彼女の秘唇へと指を伸ばした。  
 
ぬちゃり......リゼットの中から溢れる透明な蜜がアルフの指を濡らす。  
それはアルフが塗った傷薬なのか彼女が出した分泌液なのか区別するのは難しいものだった。  
長い時間丹念に作業に没頭していた彼の指はふやけて皺を作っていた。  
「ん......あっ、あぁ......ん、はぁ...」  
アルフは指の腹で彼女の膣壁を優しく撫ぜる。  
徐々にその動きは力を篭めていき中をかき混ぜ、溢れ出る粘りを帯びた蜜を指に掬って舐めとった。  
「あ.....あぁっ、あ...あん......ん、んぁ...ん......」  
すでにリゼットは破瓜のときに味わった痛みは感じることは無かった。  
その代わり指が動くたび、中を擦るたびに、心地よい感覚に酔いしてれていた。  
今は自然と零れる喘ぎ声を我慢するのが精一杯だった。  
横で空になった薬瓶に手を運ぶことなくアルフはただひたすら彼女を責め続けた。  
自分の理性の限界を感じるまで、丹念に、執拗に、入念に......  
リゼットも先ほどまで押し殺していた喘ぎ声も、今では潤滑な動きと共鳴し静かな部屋に響き始めていた。  
ぬちゅ...ちゃぷちゃぷ、...ちゅく......  
アルフは彼女の秘裂から指を抜き取ると、そのままくびれのあるリゼットの腰に手をかけた。  
ぱくりと口を開いている秘唇にトクトクと脈打つ自分の怒張をあてがい、彼女の体を引き寄せながらも自ら腰を進めた。  
「ああぁああん!」  
一際甲高く、大きな嬌声が部屋を揺らす。  
アルフはリゼットの中に怒張を根元まで埋没させ、歓楽に身を震わせた。  
「リーズの、なか...すっげぇ、気持ちぃい...」  
声を上擦らせ、アルフは目を閉じ一点に神経を集中させた。  
「あ、あたしも...あん...」  
リゼットも呼応するかのように彼に告げる。  
彼女の荒い息遣いに連動して怒張を包み込む柔肉が収縮し、アルフに快楽を与えていた。  
その蠢きに満足しながらも、アルフは更なる快楽を求めリゼットに腰を打ちつけ始めた。  
 
「あ...あん、あん......ああっ、あぁん!」  
アルフの怒張が深く挿し入り、彼女の子宮孔をつつく。  
時に浅く腰を引いては、より深みを求めて男は腰を突き出した。  
「リ、リィズ...ど、どうだ」  
初秋の宵、秋の始まりといえ夏の暑さを引き継ぐこの時期に彼の運動量はそれ相当の汗を発していた。  
額に、胸に、浮かび上がる玉汗はポタポタとリゼットの背中に降り注ぐ。  
「ぁん...いいよぉ、ア、ルス...んぅ」  
パン、パンと体がぶつかると音と二人の息遣い、普段静かなはずの館に奏でる共演は欲望の限り続いていた。  
すでに眠りについていた館の中に居るもう一人の人物に聞こえるほどに...  
「リ、リーズ...おれ、おれっ...もう、くっ!だめだっ!!」  
アルフはリゼットに抽送のピッチを上げ、深く、より深く彼女の奥を目指して腰を突き入れる。  
目の前に走る白い閃光...  
そう、それが見えた一瞬...  
アルフは弓なりに身を反らせ、言葉にならない雄たけびを上げた  
 
ドクドクドクッ......  
 
一度目より多く、白濁した欲望の塊を彼女の中に解き放った。瞬時に満ちた熱いものを彼女は体内に感じる。  
「はぁぁあぁぁぁ...」  
ため息に似た長い息を男は吐き出す。  
彼女の腰から手を離して、ゆっくりと腰を引いて秘裂から怒張を抜き取った。支えをなくした彼女の体はごろんとベッドに転がった。  
栓が取れた秘唇から「ごぷっ」と鈍い音を立てて彼の吐き出した白濁液が零れ落ちた。  
 
 
「気持ちよくなる薬?」  
翌朝、アルフの作ったやさいもりを口に運びながらリゼットは尋ねる。  
「いや、あれはただの傷薬だよ」  
事を終え、どちらともなく眠りに落ちた二人はそのまま朝を迎えることとなった。  
二人は手元にある材料の加減でしぶしぶ一つしかないやさいもりをつついていた。  
「あるにはあるかもしれないけど...」  
むしゃむしゃと青野菜を口の中に頬張ってアルフは天井を見上げる。  
「なにが?」  
「ほら、気持ちよくなる薬。びやくっていったかな?」  
彼の発言にリゼットは食事の手が止まり彼の顔を見つめた。  
「教えて、教えて!」  
「いや、お、おれは知らないって!」  
身を乗り出し詰め寄るリゼットを沈めるアルフ。  
昨晩の行為がとても気に入ったのかとアルフは彼女の考えを読み取っていた。  
しかし、そんな彼の予想とは裏腹にリゼットの頭には『金』の文字が敷き詰められていたのだった。  
 
 
□おしまい□  
 
 
次回、媚薬開発に手を染める彼女に新たなる珍客が!  
『ロロット・ステイシル参上』  
乞う、ご期待!!(嘘です)  
 

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