「今日もお疲れ様です」  
 
 
そう言いながら今さきほどクエストを終えたミストルースの方に声を掛けます。  
その声に対して見せる皆さんの笑顔が私、アナことアナストラ・セルヴァテイカにとって何よりも掛け替えの無いものなんです。  
毎回出されるクエストをいつも全力で成功させ、疲れ果てた皆さんの一人一人違った笑顔で返してくれるその心遣いが、  
私の中では凄く嬉しいことなんです。  
 
 
 
 
 
 
『人気受付嬢の気持ち』  
 
 
 
 
 
 
今日ももうそろそろ仕事が終わる、そう考えながら私は知らず知らずため息をついていました。  
 
・・・・・・今日も遅いな、・・・また何かあったのかなぁ?  
 
頭でそんな事を考えつつ、私はあるミストルースの方の姿を思い出していました。  
 
・・・実は私、今どうしても気になる方がいるんです。  
 
その方はいつも無愛想な顔をしていて周りから見たら怖い人だと思われそうですが、  
本当は誰にでも優しく接してくれる、楽しい方なんです。  
 
最近、私は何故か彼の笑顔を見るだけで心にモヤモヤッとした気持ちが生まれちゃいます。  
フェニルに聞いてみると「そんな事も解からないの?あんたってホントに鈍感ねぇ。でも・・・、ふ〜ん、そう・・・」  
と、言って足早にその場を立ち去って行きました。  
・・・何だか、不機嫌そうな感じになっていたみたいだけど、何でだろう?  
 
 
「・・・アナ」  
 
 
それにしても・・・・・・、  
こんな気持ちのままじゃ彼にあったとき平常心を保っていられるか・・・  
 
 
「・・・おい、アナ。大丈夫か?」  
 
 
最近ではし、下着も見られちゃったし、しかも連続で二回も。  
・・・・・・ああ、思い出すだけで恥ずかしくなってくる。  
ま、まあ、あれは私が転んだのが原因なんだし、彼の所為じゃない。  
・・・それにしてもあのあとのフェニル、物凄く怒ってたなぁ。何でなんだろう・・・?  
私、フェニルに何か悪いことでもしたかなぁ・・・・・・  
 
そうやってさらに考えの渦の中へ入り込もうとしていると・・・、  
 
 
「アナ、しっかりしろ!」  
「・・・え?」  
 
 
前方から聞き覚えのある声が聞こえました。  
そこには特徴的な赤髪と背中に背負っている大きな剣がトレードマークのギルド期待の一流ミストルース・・・、  
エッジさんことエッジ・ヴァンハイトさんが私の前で心配そうに私の顔を見つめていました。  
 
と、というかど、どうして!?いつの間に!?ってそんな事より、ま、まずは平常心を保たないと・・・・・・  
 
 
「アナ・・・、本当に大丈夫か?」  
「は、はい!何でしょう、エッジさん」  
「・・・なんだか様子がおかしいが・・・、何か問題でもあったのか?」  
「だっ、大丈夫です!心配をお掛けして大変申し訳御座いません!」  
「ならいいが・・・」  
 
そう言いながらエッジさんはまだ私の事を心配しているのか、  
心配そうな目で見つめてきます。  
 
・・・エッジさんは本当に優しいなぁ。この優しさが彼の魅力の一つなんだろうな・・・、  
ってあれ?そういえば・・・  
 
 
「エッジさん、イリスさんとネルさんは・・・?」  
「・・・あの二人なら外でユラと一緒にいる。今ごろは三人で盛り上がってるんじゃないか?」  
「・・・?ユラ、さん?・・・・・・ああ!前にネルさんと一緒にミストルースを組まれていた・・・」  
「そうだ」  
 
 
確か以前、イリスさんが言ってました。  
ユラさんというのはネルさんのお姉さんで、  
ユラさんはネルさんと一緒に家を建て直すためにミストルースをなされていたとか・・・。  
脅威的なスピードでランクアップしていくその姿は、当時新人の中でも天才クラスとまで言われていました。  
 
そういえば、最初の頃のユラさんはどこか焦っているような・・・、そんな印象を受けていましたが最近のユラさんからは、  
焦りなど微塵も感じられず、以前よりなんだか言葉では言い表せない暖かな感じがします。  
 
私もあんな感じの雰囲気が出せる受付嬢になるよう頑張らないと・・・。そう心の中で決意を固めていると、  
 
 
「ところで、アナ。今回のクエストの報告をしたいんだが・・・」  
「え・・・、あ、はい!わかりました。少々お待ちください」  
 
 
そう言って私は今回のクエスト内容が書かれた用紙を見つけることにしました・・・。  
 
・  
 
・・  
 
・・・  
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
・・・  
 
・・  
 
・  
 
報告の手続きも終わってからふと気が付きました。  
 
そういえばフェニルに新しいお皿を買ってやらなきゃいけないんだった。  
明日は代わりの人が受付をしてくれるし、早速買いにいかなきゃ。  
・・・・・・そういえばエッジさんって明日もお仕事なのかな・・・?聞いてみよう。  
 
 
「あの、エッジさん」  
「何だ」  
「・・・あ、明日もお仕事だったりするんですか?」  
「ん?いや、明日は特にクエストを受けようという予定は無いが・・・、それがどうかしたのか?」  
「あ、いえ・・・、その・・・」  
 
 
明日暇なんだ・・・、そう、なんだ・・・。  
・・・そうだ!明日、一緒にお買い物に付き合ってもらおう。  
私だとまたうっかり落としちゃうかもしれないし・・・。  
エッジさんとはギルドの中ではこんなに一杯会うのに街では全然会わないもの。  
・・・一度は街中でのエッジさんにも会ってみたいと思う。普段どんな服を着ているんだろう・・・?  
 
・・・それに、この気持ちに気付くにはエッジさんの協力が必要不可欠。  
だったら・・・、今言うしかないよね!  
 
大きく深呼吸・・・、すぅー・・・、はぁ〜・・・、よし!!  
 
 
「あ、あの!エ、エッジさん!」  
「?だから何だ」  
「あ、明日わ、私と一緒にお買い物に付き合って・・・」  
「・・・あら、エッジくんじゃない」  
 
 
そこまで言いかけると、突如後ろから聞き覚えのある声が聞こえました。  
エッジさんを呼んでいるこの声・・・、まさか!!  
 
 
「ギ、ギルド長!!な、何でこんなところに!?今は会議の真っ最中のはずじゃあ・・・」  
「会議なら予定時間よりも早く終わっちゃったのよ。  
こちらが予想した以上に事がスムーズに運んでね。ホント、面白いくらいに話が進んで助かったわ。  
・・・・・・ところでさ、エッジくん。明日、暇?  
今の会議が予定より早く終わっちゃったから久しぶりに暇が取れそうなの。ね、一緒に付き合わない?」  
 
 
ギルド長、それ私が言おうとした事なんですが・・・。  
それにエッジさん、さっき暇って言ってたし、OKしちゃうんだろうな・・・。  
そうだよね・・・。はは、頑張って勇気を振り絞ったんだけどなぁ・・・。  
そんな感じで沈んでいると、前方から驚くべき言葉が聞こえました。  
 
 
 
「・・・・・・すまない、明日は予定があるんだ」  
 
 
・・・・・・え?  
 
 
 
「そうなの?残念・・・。じゃあ、今度、私が暇な時は有無を言わさず一緒に出かけてもらうわ。約束よ」  
「ああ、わかった」  
 
 
そう言うとギルド長は奥の通路に消えていきました。  
ギルド長、まだ仕事するのかな?あの方は仕事熱心ですから、体調には気を付けて欲しいです・・・。  
ってそうじゃなくて!  
 
 
「エッジさん、何でギルド長の誘いを断ったんですか?それにさっき、明日は暇だって・・・」  
「・・・・・・さぁな、何となくだ」  
「何となく、ですか・・・?」  
「ああ、何となくだ。・・・・・・ところで、アナは明日も仕事があるのか?」  
「え?・・・い、いえ、明日は代わりの者が受け付けをすることになっていますが・・・」  
「そうか・・・。なら明日、俺と付き合ってくれないか?」  
「・・・へ?」  
「実はな、急遽少しアイテムを買い足さなきゃならなくなったんだ。  
イリスとネルには、今日のクエスト、結構頑張っていたからな。久しぶりの休みだからしっかり休ませてやりたい。  
・・・それに一人で行くより二人で行く方が何かといいだろうしな」  
「エッジさん・・・」  
「駄目か?」  
「い、いえ!喜んでお供いたします!!」  
「そうか。・・・じゃあ、明日の朝、工房まで来てくれないか?」  
「は、はい。わかりました」  
「それじゃあ、明日な」  
「はい!!」  
 
 
そう言いながらエッジさんは足早にその場を去って行きました。  
少し顔が赤かったのは気のせいでしょうか・・・。  
 
 
 
 
それにしてもエッジさん、気を使ってくれたんでしょうか・・・?エッジさんの事だ、きっとそうなんだろうな・・・。  
・・・やっぱり、エッジさんは優しいな。私が言おうとしていた事をあえて自分から言ってくれるなんて・・・。  
 
 
 
・・・・・・こんな素敵な人と一緒にいられる二人が羨ましいな・・・。  
 
 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
 
家に帰ってきて、普段通りに過ごしつつ明日の事を考える。  
・・・まだ寝るには時間は早いが明日のために早く寝ようかな。  
はっきり言って、今日は眠れるかどうかわからない。でも出来るだけ早く寝るように努力しよう。  
またエッジさんに心配して、迷惑をかけちゃいけないし、ね。  
そう思いながらベットに横たわり、目を瞑る。  
 
明日は最高に御粧ししなくちゃ!・・・あと何着ていこうかな。普段着じゃ、駄目だよね・・・。  
・・・ここはやっぱり、露出の多い服にしようかな。あんまりそんな服持ってないけど、最近暖かくなってきたし・・・。  
あ、あと常に平常心も保たなきゃいけないし、お化粧もいつもより気合を入れて頑張ろう。  
それと下着は以前買った黒の勝負下着で・・・・・・・・・って、わ、私何考えてるのよ!?もう!!  
 
 
 
そんな事を考えながら私は、いつの間にか眠りについていたのでした・・・・・・  
 
 
<完>  
 
 
おまけ  
 
 
<深夜・ギルド通常受付カウンター前>  
 
 
『そうか・・・。なら明日、俺と付き合ってくれないか?』  
『・・・へ?』  
『実はな、急遽少しアイテムを買い足さなきゃならなくなったんだ。(中略)  
・・・それに一人で行くより二人で行く方が何かといいだろうしな』  
『エッジさん・・・』  
『駄目か?』  
『い、いえ!喜んでお供いたします!!』  
『そうか。・・・じゃあ、明日の朝、工房まで来てくれないか?』  
『は、はい。わかりました』  
『それじゃあ、明日な』  
『はい!!」』  
 
 
 
ガチャッ!!  
録音テープ終了・・・  
 
 
 
????「やっぱり、こんなこともあろうかとカウンターに音声録音機(イリス作製)を仕掛けといて正解だったわね」  
????「そうね。・・・にしてもあのスケベッ!何を企んでいるか知らないけどアナに手を出すなんてッ!  
     ・・・で、どうするの?」  
????「もちろん、私達も合流するわよ。ばったり会っちゃったみたいな感じで登場するの。  
     アナには悪いけどエッジくんは誰にも渡せないわ」  
????「ちょ、ちょっと!何勝手な事言ってるのよッ!彼は私が・・・」  
????「うん?私が?」  
????「ッ!?な、何でもないわよッ!・・・で、あの二人はどうするの」  
????「そうねぇ〜、面白そうだし、呼んじゃいましょう。じゃあフェニル、  
     この事をイリスちゃん達にも早急に伝えて。いいわね」  
フェニル「わかったわよ、ノエイラ」  
ノエイラ「ふふ、明日が楽しみね・・・」  
フェニル「・・・ええ、ホント楽しみ・・・」  
 
 
 
ノエイラ・フェニル「「うふふふふ・・・・・・」」  
 
 
 
 
男性警備兵「あ、あのっ、ギルド長・・・、それにフェニル。・・・・・・こんな所で何をやってるんですか・・・?」  
 
 
 
<おまけ・完>  
 

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