ヴィトスは自室で、先ほど拾ったアンブレラを眺めていた。  
 
つい持ってきてしまったが、誰のものだろう。  
アンブレラは美しいレースで彩られ、柄の部分には装飾まで施されている。  
造りから見ても、金持ち・・・貴族のものだと考えるのが妥当だ。  
ユーディーにそんな知り合いがいるとは到底思えない。だとすると、依頼か?いや、違う。  
ユーディーは酒場からの依頼しか受けていない筈だ。  
『ラステル・ビハウゼン・・・』  
その名がふと、脳をかすめる。ビハウゼン・・・どこかで聞いたことのある姓だと思った。  
それもそのはず、ビハウゼンといったら、このメッテルブルグでも有名な家柄である。  
数日前にユーディーの部屋に行った時には、とんだ邪魔者がいると思ったが・・・  
このアンブレラはラステル・ビハウゼン、彼女のものと見てまず間違い無いだろう。  
落ちていたということは単に忘れたか、何か忘れてしまうようなショックな事があったか・・・  
戸口の前まで来て、ノックもせずに帰っておいて単に忘れたなんて事はないだろう。たぶん  
後者の方だと思う。  
見られていたのか・・・  
「くくくっ・・・」  
思わず笑いがこみ上げる。どうやら面白い事が出来そうだ。  
「さて・・・、どうするかな・・・」  
心底楽しそうに笑い、傍らにあったグラスを傾けた。  
 
 
あの日からは数日が過ぎていた。  
 
あの夜以来身体がおかしいなんて事は無かったけど、なんだか気持ちは沈みがちのまま。  
しばらく部屋に篭りっきりだったけど、少しでも気分転換になればと庭を散歩でもしてみよう  
かと思う。  
今日は快晴。あの日とは真逆のお天気・・・  
何でもあの日と比較をするのが癖になりつつある。その度に思い出しそうで胸が苦しい。  
「そうよ、気分転換・・・」  
庭園に咲いている花でも眺めれば、少しは気分も晴れるはず・・・  
お気に入りの日傘をさして、庭へと出る。庭園へと足を運びながら、日傘越しの日光を浴びて  
ふと思い出す。  
「・・・私のお気に入りのアンブレラ」  
あの日、確かにさしていったはず。帰りはびしょ濡れだった。忘れてきたのに間違いはない。  
「ユーディーの部屋の前に・・・」  
ドアの前に忘れてくるなんて、わざわざ自分が来たと言っているようなものだ。  
しかし毎日とはいかずとも、あれほど頻繁に通っていたのに、ここ数日間ユーディーの部屋に  
行っていない。もしかしたら、それでも心配してくれているかもしれない。  
いい機会かもしれないと思う。  
「ユーディーに会いにいってみよう」  
 
今日はいいお天気。朝からおひさまが照っている。私はお気に入りの日傘をさして、ユーディー  
の部屋へと足早に向かう。  
 
・・・例え、どんな結果が待っていたとしても。  
 
 
どんな結果も、それなりに覚悟はしていたけれど。  
まさか、こんな事になるなんて夢にも思わなかった。想定していた最悪の結果よりも最悪だった。  
 
ユーディーの部屋のドアの前に立ち、一つ深呼吸する。  
中から声はしないけど・・・ぎゅっと握った右手で3回ドアをノックする。いつもなら「はーい」  
ってユーディーが出迎えてくれるはず。しかし、ユーディーの声は返ってこない。  
「採取にでも行ったのかな?」  
ちょっとドアの前で待ってようかな・・・そう思った瞬間、目の前でドアが開いた。  
そこに立っていたのは、ユーディーではなくヴィトスだった。  
あまりの驚きに、しばしの間ヴィトスを見つめてしまう。はっと我に返ると、慌てて目を  
そらす。先に口を開いたのはヴィトスの方からだった。  
「ラステル・・・さん?ユーディーなら留守のようだよ。採取にでも行ってるのかもしれないね」  
一度目をそらしてしまうと、もうまともにヴィとスの顔を見ることができなかった。  
「あ・・・あの・・・、私、いないなら帰りますから」  
俯いたままそう言って、踵を返そうとするとぐいっと片腕をつかまれる。  
「きっと、すぐに帰ってくるさ。部屋で待っていなよ」  
そう言うと、ヴィトスは私を部屋の中へと引っ張りドアを閉めてしまう。  
「な・・・私、帰ります!」  
少し声を荒げてドアの方を向くと、後ろの方でコツコツと音がした。  
「これをまた忘れていくのかな?覗きやのお嬢様?」  
振り向くと、ヴィトスが私のアンブレラを持っていた。  
「・・・どういう意味ですか?」  
少し恐かったけど、精一杯勇気を振り絞ってヴィトスを睨んでみる。  
「そのままさ。覗き見してたんだろう?」  
ヴィトスは口の端をつり上げた、嫌な笑みをこぼした。私は覗き見という単語にカッと顔を  
熱くした。きっと、耳まで真っ赤になっているだろう。  
「そっ・・・そんなこと!」  
「してないって言うのかな?」  
そう言うと、ヴィトスは私のアンブレラでもう一度コツコツと床を鳴らした。  
 
やっぱりお父様の言っていた事は正しかった。男の人はやっぱり卑劣で恐いものなのね。  
恐怖の対象を目の前にして思わず後ずさる。  
(逃げなきゃ・・・)  
背中がドアに当たる。ドアノブへと伸ばそうとした腕をヴィトスが掴みあげた。  
そのまま自分を床へと引き倒す。  
「きゃっ・・・!痛いっ・・・」  
痛みに思わず瞑ってしまった目を再び開くと、その真上にヴィトスの顔があった。  
覆い被さるような状態で、ヴィトスが自分の身体を押さえつけていた。  
(やだ・・・、この前のユーディーと同じ格好)  
目の前の人物を直視できずに、顔をそむける。  
「見ていたんだろう?この前、ユーディーと僕とがしていたことを」  
「し、知らない。私は知らないわ・・・だから、離して」  
もう相手には知られている・・・それでも恥ずかしさのあまり、否定せずにはいられなかった。  
「どうだった?友達のユーディーのあんな姿を見て?」  
軽蔑でもしたかい?と鼻で笑いながら、私へと問い掛けてくる。  
軽蔑?ユーディーにそんなコトしたりしない。軽蔑しているのは、あなた。  
でも、本当は・・・、本当は・・・自分自身も。  
涙が溢れ出しそうになるのを必死で堪えながら、答える。  
「私が軽蔑するのはあなたよ。ユーディーは嫌がっていたわ」  
「本当にそうだったかな?思い出してごらん?」  
私の心をいちいち揺さぶるように言葉を返してくる。まるで私の心を見透かしてでもいる  
ように。  
「だ、誰にも言ったりしないわ。だから離して。その手をどけて・・・」  
自分でも判るくらい、私の声は震えていた。堪えきれない涙が頬を伝った。  
「誰にも言わない・・・、ね」  
そう言うとヴィトスは私のドレスの裾をまくし上げた。ヴィトスの指が下着越しに自分の  
秘所をなぞる。身体がびくっと跳ねた。  
「きゃ・・・な、何するの!?いや、いやっ、離してぇっ!」  
ヴィトスが耳元で吐息と共に囁きかける。  
「あれから帰って、自分でしたりしたのかな?お嬢様でも?  
よく意味が飲み込めずに、一瞬きょとんとした顔をするとヴィトスが急に笑い出した。  
「くくくっ、ははっ。自慰も知らないとはね。まあ、知っていても笑えるけどね」  
教えてやるよと一言言うと、ヴィトスは私の下着を引き下ろした。  
 
「いやあっ・・・やめて、やめてよ!」  
このままでは、ますますユーディーと同じ状態になってしまう。ジタジタと暴れてみるが、  
何の苦もないような顔で、片手で押さえつけられたままだった。  
恥ずかしい場所を人に見られて、もう私に王子様は迎えにきてくれないのではないかと思う。  
「誰か・・・誰か助けてっ!王子様・・・、ユー・・・ディー!」  
「王子様はユーディーか・・・」  
ヴィトスは楽しそうに笑うと、私の秘所を今度は直になぞる。  
「ひゃ・・・っ、あっ・・・」  
びっくりして、思わず声が出てしまう。ヴィトスの指はそのまま近くの突起へと移動して、  
刺激を始めた。  
「あんっ・・・んんっ・・・あっ・・・ふっ・・・」  
出したことのない、恥ずかしい声が自分の口からこぼれ落ちる。下唇を噛んで堪えようとするが、  
その声は止まらなかった。  
「ユーディー・・・か。感じている割に、なかなか濡れない理由はそれかい?」  
そう言うと、ヴィトスは私の耳元で再び囁き始めた。  
「あの時のユーディーの顔は見えたかい?思い出してごらん?そして、この指、この動きが  
彼女のものだったとしたら・・・君はどう思う?」  
考えてはいけないと思いつつ、囁きかけられるままに想像してしまう。  
(この指が・・・動きが・・・、ユーディー・・・のもの・・・)  
そう思い始めた途端に身体中が熱くなっていくようで、ぴくぴくと身体がさっきよりも一層  
震えだすような感覚だった。  
とろとろと、数日前と同じように自分の秘所から蜜が溢れ出すのがしっかりと判った。  
「凄いな。あんな一言でこんなに濡らせるとはね。お嬢様のくせに淫乱なのかい?」  
くちゅくちゅと、わざと音を響かせるように私の秘所の周りを刺激していく。  
「あっ・・・ちが・・・っ、んんっ・・・ああんっ・・・」  
屈辱感と同時に身体中の歓喜をめいっぱいに噛み締めさせられる、そんな気がした。  
 
「いやぁ・・・あっ、ああっ・・・やぁ・・・んっ・・・」  
ヴィトスの指が秘所の中へと進入していった。あまり深くには進入させずに、入り口付近を  
出し入れしている。  
ヴィトスは溢れ出している蜜を指に絡めて掬い取ると、私の目の前まで持ってきた。  
「恥ずかしいとは思わないかい?こんなに溢れさせて」  
そう言うと、その指を私の口内へと押し込んでかき回す。  
「んんっ・・・んっ、ふっ・・・んっ・・・」  
飲みきれず、口から溢れ出た唾液が顎を伝った。  
ヴィトスは口内から指を抜くと、再び秘所へと指を進入させた。今度は本数を増やし、さっきより  
も深く進入させている。そのまま乱暴に中をかき回す。  
「あっ、やあっ・・・痛い・・・痛いよ・・・あっ、んっ・・・」  
僅かな痛みと共に快感の波が寄せるのは、不思議な気持ちだった。  
ヴィトスは指で中をかき回しながら、その上の突起を舌で転がし始めた。  
ぴちゃぴちゃという音が、私の羞恥心を一層刺激した。しかし、それよりも強く感じる快感に  
飲み込まれそうだった。  
「あっ、あっ・・・あっ・・・」  
何か、登りつめるようなそんな感覚がした。身体が痙攣を始める・・・その時にヴィトスは舌での  
刺激をやめ、指を引き抜いた。  
「あんっ・・・っ・・・ふぅ・・・」  
もの足り無そうな、そんな声が口から漏れる。  
「やり方は概ね判っただろう?ホントは最後まで教えて指導料金でも頂きたいが・・・ホラ」  
そう言うとヴィトスはユーディーのベットの陰の方を見て顎をしゃくった。  
少し身を起こしてベットの陰を見ると、そこには長い銀髪がのぞいていた。  
「・・・ユー・・・ディー・・・?」  
目を見開いて凝視する。顔は見えないが、ユーディーにまず間違いはないだろう。  
「ん・・・っ」  
微かにユーディーが身じろぎをする。  
「・・・や、・・・い、い・・・や・・・」  
私はユーディーを見つめたまま身体が硬直し、動くことができなかった。  
「彼女の方も実は途中なんだ」  
ヴィトスはそう言うと、ベットの陰で床に転がっているユーディーを抱きかかえてベットの上  
へと腰掛けた。そのまま、ユーディーを後ろから抱きすくめるようにして膝の上へと乗せる。  
ヴィトスは相変わらずの嫌な笑みを浮かべて、ユーディーの脚を開かせた。  
 
ユーディーの秘所が私の目の前に露になる。  
ユーディーは目を閉じていて眠ったままのようだったけれど、確かにそこは私と同じくらいに  
湿っていて、蜜がユーディーの太股を濡らしていた。  
「ごめんよ、ユーディー。とんだ邪魔者が入ったからね」  
ヴィトスはユーディーの秘所へと指を潜り込ませた。そのまま中をくちゅくちゅとかき回す。  
「んっ・・・っ、ん・・・っ・・・」  
目は覚まさなかったけれど、ユーディーはヴィトスの指に反応を示していた。  
「覗き見よりも、直接見た方がいいんじゃないのかい」  
「な・・・、ユーディーを離して・・・」  
私の声を無視して、ヴィトスは自分のものを取り出す。初めて見た男の人のそれを見て、  
私は思わず息を呑んだ。  
ヴィトスは蜜を溢れさせているユーディーの秘所にそれをあてがうと、一気に中へとつき  
入れる。ヴィトスが腰を動かす度にユーディーの身体が揺れた。  
二人の結合部がぐちゅぐちゅと音を立て、擦れ合っているのを眺めていると自然と私は  
自分の指を秘所へともっていっていた。  
「・・・ディー、ユーデ・・・ィ・・・」  
熱にうかされたように、ユーディーの名前を呟きながら自分の一番敏感なところを弄ぶ。  
「あっ・・・んっ・・・、ユーディー・・・」  
少し抵抗があったが、自分の割れ目の中へと指を少しだけ入れてみる。  
そのまま動かして内壁を刺激すると、指にきゅっと絡みつくいてくるような感覚だった。  
ヴィトスが動きを早めるのを見て自分の指を増やし、指の動きを一層激しくする。  
「あんっ・・・あ・・・、ああああっん・・・っ」  
ビクンとヴィトスが震えるのとほぼ同時に、私は初めての絶頂を迎えた。  
快感の余韻からか、ヴィトスがユーディーの中から引き抜き、どろりと白濁したものが  
流れるのをぼんやりと眺めていると、ヴィトスが私に声をかけた。  
「そんなに良かった?」  
その言葉ではっと我に返る。自分のしたことへの罪悪感が再び蘇り、真っ赤だった顔から  
血の気の引いていくのがわかった。  
ユーディーが相変わらず、目を覚ましていないのが唯一の救いだった。  
 
脚に引っ掛かっていた下着を引き上げると、力の入らない脚で立ち上がる。  
バランスを崩して倒れそうになった私をヴィトスが支えた。  
「さ、触らないでっ!」  
ヴィトスの腕を振り払うと、涙が溢れてぐしゃぐしゃになった顔でヴィトスを正面から  
見据える。  
「人間じゃないわ、悪魔よっ!最低・・・、最低だわ・・・」  
言葉の最後が小さくなる。最低なのは自分もだった。  
床に転がっていたアンブレラと日傘を慌てて引っ掴み、踵を返して部屋を逃げるように  
して後にする。そのまま、よろよろとおぼつかない足取りで走りだした。  
黒猫亭の扉を開けて外へと出ると、あれほど良かった天気が曇っていた。  
ポツリ、ポツリと雨が少しずつ降り始める。小雨ではなく、雨はザァーザァーと強くなって  
いった。  
まるで私の心を現してでもいるかのように。  
 
ドアを開けっ放しで部屋を出て行った少女の後ろ姿を見送る。  
ドアを閉めると、ヴィトスは肩をすくめた。  
「借金の取り立て以外で、初めてあんな事を言われたな」  
けっこう強い薬を嗅がせてあるから、ユーディーはもうしばらく目をさまさないだろう。  
さっき目を覚ましても面白かったが、それは少しばかり避けたい出来事だった。  
ユーディーとの関係はあえてこのままでいた方が都合がいい。  
「これは貰っていくよ、ユーディー」  
先ほど出来たばかりだと思われる祝福のワインを一本手に取ると、ヴィトスは部屋を後にした。  
「あのお嬢様は、これからどうするかな・・・」  
嫌な笑いを含んだ、そんな一言を残して。  
 
 
(おわり)  
 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル