どうしてこんなことになったんだろう。
下半身に残る違和感と、鈍い痛み。
陰部がひりひりと熱い。
その感覚が、己の身の上に起こった出来事が夢ではなく現実なのだと思い知らせた。
それでも、一体何故こんなことになってしまったのか。
みかんには理解出来ずにいた。
まるで悪夢を見たかのように。
…本当に夢だったら、どんなによかったか。
「ど、して…っ」
泣き叫んでいたせいで、赤くなった瞳からまた涙が零れた。
それは唐突だった。
いつもみたいに、ふざけて、じゃれあって。
信用できる、仲の良い男友達だと。そう、信じてた。事実、吉岡はみかんにとってそういう存在だったから。
だから、突然押し倒されてもただふざけているだけなのだと思って。警戒心なんて起こりもしなくて。
笑って、己の言葉に吉岡も笑って返してくれるものだと理由もなく信じてた。
「や、だ…っ!吉岡、やめてよ!」
何もかもが突然すぎて、思考が回らない。ただ身体の上に圧し掛かる重みと触れ
る手に嫌悪感を覚えて必死で抵抗した。
けれど体重をかけるように圧し掛かられて、己の両腕はベルトで頭上に押さえ込
まれていて思うように身動きが出来ない。
吉岡はそんなみかんの抵抗を嘲笑うかのような笑みを浮かべる。
大きめで、少しだぼついたパーカーを一気に顎の辺りまで捲り上げると途端にみ
かんの身体が大きく揺れた。
「やっ、冷た…っ」
そろそろと擽るように素肌を弄る。自分とは明らかに異なる、柔らかな肌の感触
にごくりと生唾を飲み込んでブラジャーの上から控え目なみかんの胸に触れた。
「や、やだやだ!」
「…やわらけー…」
大きく首を振って、瞳いっぱいに涙を溜めながら抵抗するみかんとは裏腹に吉岡
はどこかうっとりとした表情でぽつりと呟く。
慣れない手つきでみかんの背に手を回して、ぎこちなくホックを外すとブラジャ
ーが浮いて白い胸が吉岡の目の前に晒された。羞恥の為か、目を瞑って震えるみ
かんなどお構いなしに露にされた胸に唇を寄せた。
迷わずに乳首を口に含んで舌先で嬲る。
「っん…ぁ!」
途端に今まで必死で抵抗していた力が緩くなった。吉岡はその隙を見逃さずに、
もう片方の胸も指で弄った。
舌と指で押しつぶすようにこねくり回して、軽く歯を立てて。
そのたびにみかんの口から熱い吐息と、普段は出さないような高い声が漏れる。
まるで自分が自分ではないように、今まで感じたことのない感覚に思考ごと支配されて流されてしまいそうになる。
それでも自分の胸の上を蠢き、撫で回している掌に感じる生理的な嫌悪感は拭いきれずにぽろぽろと涙が零れるのを止められない。
「やっ、だぁ…いわき、く…!」
無意識に。
ずっと想いを秘めていた相手に助けを求めた。
その名を聞いた途端、吉岡に動きがぴたりと止まる。人形のような無表情さが今はただ恐ろしい。
「…岩木は助けにきてくれねーよ。」
無表情のままそれだけ言うと、再び手を動かす。
胸ばかりを弄っていた手をジーンズにかけて、器用にチャックを下ろすと一気に踝のあたりまで引き下ろす。
瞬間、みかんの抵抗は一層激しいものになるけれど脱ぎかけのジーンズのせいで思うように動けない。
その間にも吉岡の手は下着越しに、今まで誰も触れたことのないみかんの陰部へとたどり着いた。
「や、いや!やめて!お願い!!」
「…胸だけでこんなに濡れちゃってるのに?」
そこは布越しでもわかるくらいに濡れそぼっていた。擽るように擦ると更にじっとりと濡れてくるのがよくわかる。
「あぁ…んっんぅ…」
切なそうな、高い嬌声。
自分がみかんを感じさせている、そう思うと仄暗い喜びが込上げてくる。
布越しの感触がもどかしく、ぎこちなく下着と共に脱ぎかけだったジーンズを脱がせる。慌てて足を閉じようとしたけれど、僅かに吉岡が素早く足の間に入り込んだ。
僅かな茂みの奥に直接指を埋めるとくちゅくちゅと水音が聞こえた。
淫猥な音は二人を聴覚から刺激する。
割れ目を押し開いて小さな若芽に爪を立てるとみかんの身体が大きく反応する。
「あぁっ!ん、あ…っ」
一気に滑りがよくなったそこに指を一本埋める。
「や、痛ぁ!」
「きつ…」
痛みにいやいやと首を振るみかんの気をそらすようにクリトリスを刺激する。痛みと快感と。両方を与えながら、膣内で指を動かして少しずつ慣らす。
「ふ、ん…ぅ」
中と外からの刺激で頭の中がとろとろに溶けそうになる。
快感のために抵抗がおさまった瞬間、引き裂かれるような痛みと熱さがみかんを襲う。
「や、痛い、いや、いったぁ…っ!」
「息、吐いて…力抜けって」
「いや、ムリ、いたい!」
己の内部に自分以外の熱を感じる。
痛みと熱と、それから僅かな快感と。
全ての感覚が交じり合って今どの感覚に支配されているのかもわからないまま、声だけが漏れる。腰を揺すぶられ、内部を突き上げられて裂けるような痛みは鈍い痛みへと変わる。
「も、や…め…っ!」
痛みで辛いのと、快感と。今感じているのがどちらの感覚なのかはわからないけれどただはっきりとしているのは一刻も早く悪夢のようなこの行為を終わらせて欲しいということだけだった。
何度目に腰を揺すぶられた直後に、吉岡が小さく呻き己の内部に熱が広がるのを感じてようやく終わりを知った。
はあはあと荒い息を整える吉岡はまるで見たこともない他人のように見える。
どうして。
頭の中を占めるのはその言葉。
どうしてこんなことになってしまったのか。
吉岡はみかんにとっては信頼できる男友達の一人だった。
仲の良い、クラスメイトだった。
それなのにどうしてこんなことになってしまったんだろう。
「ど、して…っ!」
泣き叫んでいたせいで、赤くなった瞳からまた涙が零れた。
頬を伝う涙を唇で吸い取りながら吉岡は笑った。
「岩木には黙ってる。橘がまたこうして俺と会ってくれれば、ね。」
「っ!!」
にっこりと、何事もなかったかのように笑う吉岡の言葉に抗う術は。
なかった。
(完…?)