[母のイケてない日]
「こんな本の書いてあることを信じてたらロクな人間にならないよ!」
料理がうまいのは自分のおかげ、うまくないのは本のせいにする母。
みかんがいくらフランス料理の本を見せても、書かれてある通りにしない。
これでは出来るものも出来ない。
ある日、父がみかんの買ってきたフランス料理の本を手にとって眺めていた。
「おい。今夜はこの”ビーフ・ストロガノフ”っていうのを作ってくれ。」
「あ、はいはい。」
無論、母は本に書いてあることを守る気はなかった。
そして、出来た料理は、牛肉のしぐれ煮の失敗作のようなものだった。
「ただいま〜。」
「おかえりなさい、お父さん。ちゃんと作ったわよ。」
「おお、作ってくれたか…ん?…なんだこれはぁ?」
「見ての通り、ビーフストロガノフよ。」
「嘘をつくな!ただの牛肉のしぐれ煮じゃないか!」
そこにみかんとユズヒコが来た。
「ああ!それはあたしが買ってきたフランス料理の本!」
「もしかして、お母さんがケチつけた本?」
「そうそう。『本の通りにしてたら何も出来なくなる』とか言ってさ〜」
「なんだなんだ?お前は本の通りに作ることをしないのか?」
母が返答する前に、みかんはこの前のことを父に話した。
「本の通りにならないと、すぐ本のせいにするんだよ、お母さんて。」
「ああ、み…みかん…」
「お前は本に書いてあることもできんのか?」
「いや…だってぇ、トマトなんて、いつ入れても同じでしょう?」
「ブワッカモ〜〜〜〜ン!」
父の雷が母に落ちた。
「お前は有名な奴のことしか信用せんのか!ったくも〜情けない…。出前取れ出前!」
父とみかん、そしてユズヒコは出前を取り、母は”自己流ビーフストロガノフ”の全責任を負う事になった。
当然のことながら、母のビーフストロガノフは本来のビーフストロガノフの味のかけらもなかった…。
「ったく、少しは本の通りにすることを覚えろ!」
母のすご〜くイケてない日である。