昨日のバレンタインデーは収穫だった。
義理であれ、結構沢山貰ったからだ。
ふとユズは石田の事を思い出しす。
「石田ー、お前誰かにチョコ渡さないのかー。」
「やらない。」
即答。
「チョコは明日買う。安くなるから狙い目なのだ。」
「え、それって、自分に?」
「うん。」
当たり前かのような返事。周りに居た友人は一同爆笑だった訳だが…。
そんな事を考えていると、公園に石田の姿が。ブランコに座っている。
「石田ー、何してんのー。」
彼女はくるりと振り返る。チョコを食っていた。
「お前…、昨日の、本気だったのか。」
チョコを頬張りながらコクンと頷くと、
丸い大き目のチョコをユズに差し出した。
「食べる?」
「ああ、サンキュ。」
ユズは一つチョコを貰い、半分かじった。
デロっと液状のものが飛び出し、手が汚れる。
「石田、中身溶けてるんなら言えよな!ああー手がべとつくー。」
「ウィスキーボンボン。大人の味ー。」
「…。洗面所、洗面所どこだ。」
「ちょっと待って。」
ユズがあたふたしていると、石田が彼の汚れていた手を取り舐め始めた。
手のひらにじかに伝わる舌の感触。手のひらを舐め終えたかと思うと、
今度は指をしゃぶりだした。指にしたたるジャムを丁寧に舐める。
経験した事の無い感触に、ユズは気が動転した。
と同時に、指を舐める石田がいやらしく見えて気分が高揚する。
「い、石田!」
と、襲いかかろうとした瞬間。
「ごちそーさまー。お手洗いはあっちだかんねー。じゃ。」
石田はするりとユズを避け、そのまま公園を去った。
「おいおいおい、このまま放置かよー。」
―ユズ、性欲をもてあます。
<了>