[ユズヒコファンクラブ]  
 
「山下、ユズヒコファンクラブのメンバーを集めない?」  
「どうしてまた?」  
「だって、あの人が好きな人を集めれば、それだけユズピをあたしのものにできやすくならない?」  
「(集めたメンバーの一人がユズピの好きな人だったらどうするんだろう?)」  
「ん?何か言った?」  
「ううん、何でもない。じゃあ、まずはこのクラスの女子に呼びかけてみようか。」  
「うん!」  
 
 かくして、川島と山下(と言ってもほとんど川島の一存)はファンクラブ拡大への活動を開始した。  
「実は、私もユズピのこといいなって思ってたの。」  
「え〜っ、実はあたしもなんだ〜。」  
「ユズピが好きなのは私だけじゃなかったのね。」  
 なんと、クラスの女子のほぼ全員がユズヒコファンクラブに入会してしまったのである。  
 つまり、学年のアイドル里奈までもがファンクラブの会員となる始末。  
 しかし、これはクラスの男子には極秘裏に行われたため、クラスの男子の嫉妬によるユズヒコへの攻撃は起こらずに済んだ。  
 男子のいない放課後、ユズヒコファンクラブの会員は全員教室に集合した。  
「あと声をかけていないのは、…須藤さんと、石田さんだけね。」  
「ねえ川島、彼女達はあんまり関係ないと思うんだけど。」  
 
 すると、新たに入った女子達の間でざわめきが起こった。  
「え〜っ、ケンまで誘う気?スドーは別に構わないけども。」  
「う〜ん、でもスドーはこのところいつも石田と一緒だから、声をかけるの難しいよねぇ。」  
「じゃあ、スドーとケンは抜きにするか?あ、でもスドーは隙があったらさりげなく誘うようにしてさ。」  
 いろいろな意見が飛び交う中、須藤は石田がいないときを狙うということでその日の会員会議は終了した。  
 
 数日後、ユズヒコが登校すると、ユズヒコの机の中に一枚の券が入っていた。  
『入浴特別招待券 一枚で入浴並びに入浴後の食事がつきます。』  
 そして、裏を見ると  
『事前予約制です。御来場の際には下記の連絡先まで。秘密厳守のこと。』  
と手書きで書いてあった。  
 
 この入浴券はユズヒコファンクラブの中の一人の女子がお風呂屋さんの娘で、そこをうまく使おうという魂胆であった。  
 ユズヒコはその入浴券を訝しげに眺めていたが、家の狭い風呂よりはのびのびしていいだろうと思い、その日のうちに連絡した。  
 その日の放課後、ファンクラブ緊急会議が開かれた。  
「やったー、ユズピが今日うちの銭湯に来るのよ!」  
「ええーっ、本当?」  
「でも、うちのクラスの女子だけ貸切なんて、御両親に叱られない?」  
「大丈夫よ。うちのパパもママも、売り上げが伸びて喜ぶから。」  
「じゃあ、あの作戦でね。」  
 どうやら浴場内でユズヒコを射止める作戦を練っているらしい。  
 
「行って来ま〜す。」  
「あらユーちゃん、どこへ行くの?」  
「ちょっと、…温水プールに。」  
 『秘密厳守』という言葉をユズヒコは遵守しているようだった。  
 こうして、ユズヒコは待ち受けている罠とも知らずに銭湯に出かけていった。  
 
「ねえ、石田。」  
「ん、何?」  
「今夜さあ、久しぶりに銭湯に行かない?」  
「何で?」  
「いつも、家の風呂ばかりだと変わり映えのしない景色でしょ?」  
「いいよ。じゃあ、スドーが先頭で銭湯に戦闘に行こう。フフーン。」  
「プッ、あ〜はっはっはっは〜、石田って、おっかしい〜!」  
 よりによって、石田と須藤までもが銭湯に行くことになった。  
 
「川島、ユズピが来たわよ。」  
「あ、本当だ。ああ…ユズピ……今夜あなたはあたしの中に…」  
「川島、早く作戦通りに、ね。」  
「うん山下、わかった。じゃあ、みんなよろしくね!」  
「おーーっ!!」  
 ユズヒコは銭湯の暖簾をくぐった。  
「いらっしゃいませ、男性お一人ですね。」  
「はい。」  
「じゃあ、こちらの方へどうぞ。」  
 ユズヒコは「男湯」と書かれた方へ入っていった。  
 そして、ユズヒコが完全に入るのを見届けてから、銭湯の女の子は男湯と女湯の暖簾をすり替えた。  
 それから、表の看板には「貸切」という張り紙を貼った。ユズヒコのクラスの女子以外は女湯に入るのを禁止したのである。  
「お、オレ一人か。ラッキー。それにしても、随分女湯っぽい感じだなあ。壁がピンクだし。まあいいか。」  
 ユズヒコは気にせず、腕から洗い始めた。  
 
「山下ぁ〜、あの人が体を洗い始めたよ。写真写真。」  
「大丈夫だよ。準備は万端だから。」  
 やがて、浴室内は湯気が立ち込めてきた。  
 ユズヒコが体を洗い終わり、湯舟に入ったときに入り口付近でざわざわと騒ぎが起こっていた。  
「みんな、いい?今ユズピは湯舟につかっているから、みんなで輪になって囲むのよ。」  
「ユズピへの一番乗りは川島さんね。」  
「ありがとう、みんな。思えばウォータースライダー以来だわ〜、あの人のことを思ったのは。」  
 ユズヒコは、人影が見えるのを感じた。  
「ん?…やっぱり人が入ってきたか……ええ〜〜〜〜っ!?」  
 無理もない。入ってきたのは、川島を先頭にした、ユズヒコファンクラブの会員の集団だったのだ。  
 
 そして、ユズヒコの前にはクラスの女子全員マイナス石田&須藤の顔ぶれ。無論、みんな何もつけていない。  
「みんな、何で男湯に入って来るんだよ!」  
「ユズピ、実はユズピの入っているのは女湯なのよ。あたしたち、どうしてもユズピが好きでたまらなくて…」  
 そう言って川島は自家製のユズピマスコット人形を取り出した。  
 ユズピの顔から血の気がサァァっと失せた。今度は自分のクラスの女子に輪姦されるのか…。  
 実は、ユズピの逆レイプ歴は凄まじく、母&みかんから始まり、みかん&ベア研、みかん&しみ&ユカ&ミエなどがあった。  
 唯一の救いは、同い年の女性とは今回が初めてということくらいだが、そう思ってあきらめるしかなかった。  
 
「さあユズピ、あたしたちの思いを全てあたしたちの中に受け取らせて!」  
 20人近い女子を相手に勝ち目はなかった。ユズヒコはなすがままに浴槽の床に手足を押し付けられた。  
 川島がユズヒコの前に立ちはだかった。川島は全体的にぽっちゃりめだった。  
「ユズピ、あなたのハートはあたしたちのものよ。」  
 そう言って、川島は既に屹立しているユズヒコのモノを自分の唇の中に頬張った。  
「ああ、これがユズピの分身なのね。こんなの入れたらあたしのアソコ、裂けちゃわないかなあ。」  
(うっ、川島うますぎる…)ドピュッ!!ユズヒコは川島の口の中で果てた。  
「うれし〜ぃ、ユズピがあたしの口の中でイッてくれたよ〜。う〜ん、ユズピのって変な味だけどうれしい〜。」  
 
 そうこうしている間にも、他の女子達がユズピの顔の前に自分の女子の部分を押し当てた。  
「ユズピ〜、あたしにもして〜。舐めてちょうだい〜。」  
 それは里奈の声だった。  
(藤野はスドーちゃんファンだからまだしも、他の連中がこれを知ったらオレ袋叩きにされるな。)  
 しかし、据え膳食わぬは何とやら。ユズピは里奈の大切な部分を舐め始めた。いつもの香水の匂いとともに、少し生臭い匂いもした。  
「タチバナ君、うれしい。後で私の処女ももらってね〜。」  
(なぬぅ〜、オレはそんな責任まで取れねえ〜。こうなったら皿の淵まで毒を舐め取ってやる〜!)  
 
 次の瞬間、ユズヒコの下半身にいつもの柔らかい襞の感触が走った。  
「痛ぁ〜い、ユズピのってやっぱ大きい〜。でもいいわ〜。」  
 川島の処女は、予想よりもはるかに良かった。ユズヒコはもう一度イッてしまった。  
「やった〜、みんな。あたしがユズピの童貞を奪っちゃったぁ〜。ユズピのモノが、あたしの血で染まってるぅ〜。」  
 これまでの行動は全て写真及びビデオに収められている。無論ユズヒコはそんなことは知らない。  
 そして、それが口火となり、山下、里奈、その他の女子が順番にユズヒコを犯していった…。  
 
「石田と銭湯なんて、初めてだねぇ。」  
「うん。」  
 
 石田と須藤が銭湯の入り口に着くなり、「貸切」の張り紙が立ちはだかった。  
 …が、二人ともユズヒコのクラスだったので、この関門は難なく通過することができた。  
 ファンクラブの女子達の中に、石田と須藤の存在に気づいた人がいた。  
「あ、須藤に…どうしてケンが?」  
「ええ〜〜〜っ!」  
 ファンクラブの会員達は石田の出現に驚いていた。  
「え、…だって、今日はうちのクラスの女子の貸切ってあったから入ってきたんだけど…あれぇ、ユズピ!」  
 石田と須藤が目の当たりにした光景は、ほとんど屍状態になっているユズヒコとその周りを囲んでいる女子の姿だった。  
 
(まずい…このままじゃ、あたしたちの目論見がばれちゃう…どーしよどーしよ……)  
 首謀者(?)の川島はおろおろするばかりだった。しかし、次の瞬間、石田が口を開いた。  
「あれぇ、ユズピがなんで女湯にいるの?ひょっとして、私の裸が見たかったの?」  
 須藤を除く女子は全員石田をキッとにらんだ。  
(図々しい女ね。ユズピがケンの裸なんか見たがるわけないじゃないのよ!)  
 しかし、それまで半分死人だったユズヒコは、石田の姿を見るなり元気になった。  
「あれぇ、石田じゃん。…石田って、胸ぺっちゃんこだなあ。オレのアネキもおめえの胸には負けたぜ。」  
「そうなの?私の胸って、洗濯板みたいだから、いつでも洗い物OK。」  
 
「ぶわっはっはっは〜。あ、そうだ。石田の背中洗おうか?」  
「本当?ユズピって優しいんだね。ありがとう。」  
 周りの女子は呆気に取られている。そして、石田はトドメの一撃を浴びせてきた。  
「♪オンナ〜ユ〜(only you)…ユズピが女湯にいる。だから、男はオンリーユズ。それと女湯をかけてる。…寒いよね?」  
「ぶわっはっはっは〜〜!」  
「ぷっ…あ〜はっはっはっはああ〜。石田っておっかし〜い!」  
「スドーちゃんの背中も洗おうか?」  
「本当?ありがとう。私はユズピに裸を見せるのってそんなに恥ずかしくないわよ。前も洗ってくれる?」  
 
「え?いいけど…じゃあ、石田の前も洗うか?」  
「ますますオンリ〜ユズ〜になったね。  
 これまで順調だったユズヒコの肉体征服作戦は、石田と須藤の闖入(?)により、またしても失敗に終わってしまった。  
 
 今回一番衝撃を受けたのは、実は川島ではなく、里奈であった。  
「あたしなんか、ユズピに処女まで捧げたのに、何でケン如きにィ〜?」  
 こうして、ユズヒコファンクラブの女子は、打倒石田の思いが強くなり、より団結力が強まったという。  
 
(Fin)  

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