日と場所を改めて、高級ホテルの一室。  
儀式を終え、環緒さんは別の場所に監禁し直した。  
事前に書物で自分達の大まかな経緯と目的を伝え、その為に環緒さんを人質にしている旨を伝えてある。  
高揚し続ける精神を必死に宥めながら、新しい未来に思いを馳せる。  
「まだかなぁ、ナオ君!楽しみだなぁ!」  
「まだみたいだな。ま、急がなければ環緒さんが壊れるし。最高に焦ってるだろうから、もうすぐだろ」  
待ちきれないのは、操も同じようだ。  
相棒と自分と全く同じことを考えているのに苦笑した時、ルームサービスの電話が待ち人の到着を伝えてきた。  
入室を許可する旨を伝えて、必死に自己暗示を重ねて平静を取り戻す。  
間も無く、待望の扉が開く。  
まず視界に入るのは、此方に警戒心をむき出しにしたもう一人の自分。  
そして、待ち望み続けていた想い人。  
「うっわぁ、スッゴイ美人じゃん!って、トモ!?泣いてるの?」  
操に指摘されて始めて、知らないうちに涙を零している事に気が付いた。嗚咽を必死に飲み下し、言葉を伝える。  
「はじめまして、もう一人の嵩月奏。俺の、愛しい人。ついでに久しぶり、直貴」  
 
「はじめまして〜!ナオ君も久しぶり!」  
格好悪い姿を見せたくないという見栄で、なんとか言葉を震えずに出せた。  
「えと、その、は、はじめまして……?」  
美声を聞いて、胸が熱くなる。  
「確かに久しぶりだ……。それで、どういうつもりだ……?操は何処だ!」  
この想いを十全に伝えるには、直貴が邪魔だ。交渉は早く済ませ、この場から退場してもらうに限る。  
「どういうつもりもなにも、説明は伝わってるだろ?未来で、俺は神を殺した。操がベリアルドール、奏が悪魔でな」  
「可能な限りその状況に近付かせたいのは分らなくも無いが、それならこのまま機会を待つのが最良だろう!」  
それは此方が不慮の事故で遡った場合の最良であり、自分の都合の良い未来が欲しい場合は当てはまらない。  
「手紙に書いただろ、一巡目と二巡目の区別無く奏が一番大切だと。それはまあ、そっちも当て嵌まるんだろうが」  
「お姉ちゃんはまあ、今の所は無事だよ。それで、奏さんの戸籍はどうしたの?」  
夏目直貴にとって、一巡目の水無神操緒こそが一番なのだ。それ以外は、比べようが無い。  
本来なら聞くまでもないが、念の為に確認することは操と事前に相談していた。  
「チッ!要求通り、R家の長女として偽造した!」  
「えと、R加奈にしています……。それで、その、私達の操さんの居場所を……」  
 
「オーケイ、これが環緒さんの居場所だ。おっと、加奈は置いていけよ。此方に攻撃するのも同様だ」  
「お姉ちゃん、今はまだちゃんと処女だよ!私達の目的の為に後ろの穴は私が貰ったけど、トモは全く入れてないよ!」  
操の発言に二人が絶句したが、構わずカードキーを投げ渡した。  
「……御前等……!」  
「あっれ〜、ナオ君急がなくて良いの〜?私言ったよ、今はまだって?あ、私達を攻撃してもアウトだからね?」  
当然、その手の対策を俺達が怠るはずが無い。操の挑発を受け、忌々しそうに此方を一瞥して直貴が身を翻す。  
「クソッ!」  
役者は揃った。  
「あっ……」  
指を走らせ、魔術を使って扉を閉める。オートロックは勿論、更に魔術で補強を行う。  
そして、望む状況も整った。  
ここで、必死に押さえつけていた理性を解き放つ。  
走り出すのを必死に堪えて近付き、戸惑い怯える一巡目の彼女を抱き締める。  
女性にしては長身の嵩月は現在の自分の慎重とほぼ同じ、既に豊かな乳房が仇になって抱き締めるのは難しいが関係なかった。  
「ずっと……、会いたかった……。抱き締めて、離したくなかった……。愛している、奏……」  
 
無意識の内に愛の告白をしてしまい、更に目頭が熱くなった。  
過去に遡って始めてみせる、完全な失態である。  
男の涙は見苦しいので、彼女に見せないように艶やかな髪に顔を埋める。  
「うそ……。夏目君は、いつでも、水無月さんが一番なのに……。そんな、嘘を……。言わないで……」  
緊張で身体を硬くしたまま、彼女が泣きそうなか細い声で否定する。  
直貴の一番近くに居て、その在り方を見続けなければならなかった彼女には言葉では届かない。  
理解し、余計な事を気にした自分を恥じた。  
より一掃力を込めて抵抗しにくい箇所を抱き締め、意志を無視して唇を合わせる。  
「ふくぅッ……ん!?んー、んー、んー!」  
反射で声を上げようとした瞬間、歯の間に舌を捻じ込む。  
持ち主同様に戸惑って動けない舌に絡め、十分に柔らかさを堪能した後に歯並びの良い歯も十分に味わう。  
渇望し続けた感触に、制限無しに高揚する。幾ら舌を絡めようと、全く飽きが来ない。  
そのまま続けている内に、酸欠が原因で奏から力が抜ける。  
すっかり失念してしまったが、慣れないディープキスが呼吸困難を招いてしまったようだ。  
しかし抵抗が無くなったので、それを良い事に服に手を掛けながらベットに運ぶ。  
 
美しい特上の女が自分の手で運ばれるこの瞬間、自分の鍛錬が無駄ではなかったと心から実感する。  
「ッ、ハァ。ハァ。ハァ」  
それが息苦しさから生まれた表情でも、清楚な顔を紅潮させて髪を乱すその姿は壮絶な色香を発する。  
───ドックン───  
こちらの心に直接響く心臓の音が、契約者の絆からもたらされた。  
視線を僅かにずらすと、此方の進行方向から少し外れた位置に操が浮いている。  
すっかり表情が抜け落ちているが、それが負の感情でない事は容易に伝わってくる。  
耐性が有る自分ならともかく、そうでない者は同性であろうが見惚れずにはいられないからだ。  
暫く見ていなかった操の歳相応な表情に微笑が浮かんだが、すぐに意識を切り替える。  
心此処に在らずと言った状態の奏を、ベットに押し倒す。  
「……あッ!?やめてっ……!」  
「お断りだ。やっと捕まえたんだ、止められるわけが無い」  
押し倒されたことで飛ばしていた意識を取り戻してしまったようだが、回答は一つしかない。  
だが計算外な事に、此方の忍耐が限界を迎えつつあった。  
このまま愛撫して処女を奪う予定だったが、環緒を調教した時から性欲を封印していたのが災いした。  
 
下手をすれば童貞のように、挿入前に果ててしまう可能性が高い。  
一度で終わるような軟弱な精巣は持っていないが、現状では逆効果になりかねない。  
奏を怯えさせたいわけではないので、方針転換をする事にする。  
「これから自分が何をされるか、分るだろ?」  
「……それは、その……」  
奏を抱き締めた時から自己主張し痛みを感じていた部分を、密着されていた本人が気が付かないわけが無い。  
言葉に詰り、目を伏せる姿に痛覚が耐え難い領域に達した。  
これからは痛みで萎えては奏で再勃起の繰り返しになるのは間違いなさそうなので、ズボンのベルトを外してトランクスと一緒に降ろす。  
「やっ!……その、しまって、下さい……」  
目を伏せて恥じ入る姿に、更に血が滾る。やはり、判断は間違っていなかった。  
「俺のは色々と強化したから、特別に大きい。初めてだと痛みが大きいが、奏を傷付けたくないんだ。だから、舐めて欲しい」  
マゾヒストとしての極めて高い素質を備える奏には許容範囲と見込んでいるが、自覚が無ければ更に心が離れかねない。  
慎重を心掛けるに、越した事は無い。  
「い、嫌です……。ゆ、許して、ください……」  
「駄目だよ。奏は今、俺に脅迫されているんだ。だから、仕方ない。舐めなければ、環緒さんが危ない。分るね?」  
 
実際には直貴が既に救助に向っている以上、環緒さんの解放は時間の問題だろう。  
これは言葉で逃げ道を与え、これは仕方がない事だと思い込ませる為の必要な会話だった。  
目を伏せながら、恐る恐る奏が亀頭にキスをする。  
「ン……。そのまま、口に銜えて。奥まで入れなくていいから、飴みたいに舐めるんだ」  
ゆっくりと、だが確実に告げた内容が実行されていく。  
端正でパーツが小さい顔が、口腔ギリギリの太さの男根で卑猥に歪んでいく。端が、涎で僅かに光る。  
お湯よりも更に熱いねっとりとした唾液の中、怯えを伝えながらゆっくりと這い回る舌。  
唇のサイズに合わない存在を押し込む事による、か細い呻き声。  
「うっ……えう……」  
視覚、触覚、聴覚、訴えてくる快感に禁欲して溜まった性欲が耐えられるはずも無い。  
「上手だな、奏。出すよ……」  
「うぶっ!?グホッ!ゴホ!ケホケホ……ガッ!ケホッ……」  
溜まりに溜まった精液はあっという間に奏の口腔を満たし、堪らず吐き出した奏の顔と髪を白く化粧していく。  
肉体改造を差し置いても、自分でも驚く量が射精されている。  
だが、当初の目論見は逆効果になってしまった。更に精液化粧で彩られた奏は、凄まじくエロい。  
むしゃぶりつきたくなる衝動は辛うじて自制したが、そう何度も出来るとは思えない。  
 
「ああ!もう無理!絶対に我慢なんか出来ない!エロ過ぎるよ!もう口は良いでしょ!入れるから!」  
「うぇ?……えぶう!?……うぐぅ!?」  
「って、おい!?……仕方ないヤツだな、全く……」  
先に操が限界に達した。マナー違反だが、それを咎めるのは余りに酷と言うものだろう。  
操は自力で実体化し、咽いていた奏を仰向けに強制する。その上で両肩を足で抑え、クリペニスを口に無理矢理突っ込んだ。  
どう見ても理性が飛んでいるので、此方で足を捕らえて服を取り除く。  
露になった女性器は控え目な茂みがあり、成人女性の大きさだがピッチリと閉じた割れ目がある。  
だが、清楚ではない。  
絶えず愛液を分泌してシーツに目の前で零れているし、成人男性の親指の先ほどもある肉芽は既に皮を押し退けている。  
「ふぐっ……!?えぐぅ……!?」  
「エロい!エロ過ぎるよ!こんなの!身体全部が犯される為にあるみたい!」  
流石というべきか。口腔を強姦されているにも関わらず、愛液は涸れるどころか溢れてシーツの染みを広げ続ける。  
とはいえ、操にばかり注意が行くのは面白くない。  
奏の弱点の一つである肉芽を、普通は悶絶するほどに抓る。  
「はぐうっ!」  
 
「すごっ!?噛まないで、喉奥で締めるの!?イックウウウ!……っ、まだまだ……。また良くなってきたぁ。すごぉぉぉい」  
事前に用を足してしまったようで小便は漏れなかったが、僅かに別の液体が噴き出る。  
これほどの責めを受けながら、それを軽く潮を噴く程の快楽に変換する。  
世界は違えど、やはり他者とは隔絶したマゾヒストとしての輝きは健在であると確信する。  
その輝きに自分と操も魅せられたまま、操は腰を改めて動かした。そして自分は契約書に己が印を押し込んだ。  
「ふぐうううぅぅぅ!」  
「ひう!?歯で擦るのぉ!?」  
「愛している奏!世界の区別無く、君は俺の物だ!絶対に!誰にも渡すものか!」  
契約の血が流れ、そして新たな物語が始まった。  
 
 

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