「智春、奏。少し話がある。悪いが奏、これから鳴桜邸まで一緒に来てくれ」  
放課後、帰り支度をしている時にアニアからそう告げられた。別に、今日は用事も無いし、科學部も顔を出さなくてもいいだろう。教室を出て行こうとしていた樋口に、ひと声だけかけておくか。  
「お〜い、樋口。ちょっと用事ができた。科學部には顔を出さないから、よろしく」  
その声に振り返った樋口が  
「なんだ?智春。おっきなチビっこと3ピーか?  
まあ、頑張れよっ」  
「そんなんじゃないよ・・・・・・アニアが何か僕らに用事があるんだって」  
察しのいい樋口は、そのひと言で魔神相剋者としての僕に用があると判断してくれたようだ。  
知っていて余計な詮索をしてこない樋口の性格は、こういう時は助かる。  
この時は、まさかこの後あんな展開になるとは思わなかったんだ。  
 
僕と操緒は、アニアたち科學部の尽力と和葉のおかげで、何とか元の世界に戻る事ができた。僕らも無事?進級して、いまは高校2年生だ。  
朱浬さんは3年生になり、科學部の部長と第3生徒会の生徒会長を兼任している。樋口がその部長代理だ。  
だから、樋口にひと言いっておけばサボりにはならないだろう。  
 
僕と嵩月は、クラス公認の仲となった。トロいせいもあって感情をあまり表に出さない嵩月が、僕の周りに寄ってくる女子生徒をあからさまに警戒したからだ。  
これはその・・・・・・・うれしくもあり、なんだけど、クラス(特に男子生徒から)の視線が痛かったりする。気軽に寄ってくる女子生徒は、アニアの他は科學部と生徒会関係以外では、杏だけだ。  
 
アニアは、いまだに鳴桜邸に下宿している。嵩月は、相変わらず潮泉の庵(超弦重力炉の起動の時、かろうじて被害を免れたらしい)に住んでいる。  
朱浬さんは、なぜか鳴桜邸に転がり込んできた。メカ朱浬さんの格納庫として地下の冥王邸を使うからという理由らしいけど・・・。たぶん、本当の理由は、自炊するのが面倒くさいだけなんじゃないかと思う。  
それに、僕の義妹の和葉。この4人(プラス1体)が、今の鳴桜邸の住人になる。  
 
学校からの帰りの道すがら。アニアは、思いつめた顔で一歩前を歩いている。  
朱浬さん(生徒会の仕事で帰りが遅い)や和葉(科學部や第3生徒会でいいように使われているのでそれなりに帰りが遅い)に声をかけていないという事は、科學部関連でありながら朱浬さんや和葉に聞かせられない話、という事になる。  
『なんだろうね、話って』  
操緒が呟くが、そんな事は僕の方が訊きたい。操緒の呟きに、僕と嵩月は首を傾げる事で答える。  
僕らは、それほど会話の無いまま、鳴桜邸へと帰宅した。  
 
話があると言うので僕らがリビングに行こうとすると、アニアが  
「すまん。私の部屋へ来てくれ」  
とひと言、短く言った。  
僕ら三人は、頭の上にハテナマークを浮かべた。  
「少々込み入っている。盗聴の心配じゃなく、大きな声で話したくないだけだ」  
盗聴って・・・うちは、そんな心配がまだあるのか?  
と、ツッこむべきアニアは、さっさと自分の部屋に入ってしまう。仕方なく、僕らもその後を追った。  
 
僕の部屋(元・物置)より広いが年頃の女の子らしい小物・・・中には運気を得る為の骨董品や古人形も混じっている・・・が多くあり、明るい感じがする。それに、甘いいい匂いも・・・嵩月、そんな顔で見ないで。本当の事なんだから。  
「適当に座ってくれ」  
小さな座卓を前にして、僕と嵩月が座る。それを待ってから、アニアがおもむろに話しはじめた。  
 
「いい話と、悪い話がある。順序からするといい話が先になるので、そちらから話すぞ」  
僕と嵩月は顔を見合わせ、アニアに向かって肯いた。  
「実は、先日ようやく副葬処女分離器(ベリアルドール・スプリッタ)が完成した。それが、いい話のメインだ」  
「え・・・・・・いま、何て?」  
僕は、一瞬耳を疑った。加賀篝とアニアの姉・クルスティナさんが造ったやつは、僕らがこの手で破壊したはずだ。それが・・・できた?  
「副葬処女分離器が完成したと言ったんだ。姉さまが造ったやつをモデルにして、な。  
お前たちが次元の狭間をうろうろしている時に、コツコツと造りあげたんだ。感謝しろよ。  
それが話の大元だ。判ったら、次へ進むぞ」  
「あ、、、ああ。頼む」  
僕は、呆然としながらもアニアに先を促した。  
 
操緒をこの世にまた戻す。その為に僕は今まで戦ってきた。その願いが、ようやくかなう?  
嵩月は薄々知っていたのか、顔色を変えてまで慌てているのは僕だけだ。  
「落ち着いたか?智春。続けるぞ。  
で、この副葬処女分離器で分離できるのが、だな。。。操緒、おまえはたぶん、大丈夫だ。  
それから、ちゃんと会わないとわからんが、亜鉛華の副葬処女は大丈夫だと思う」  
ああ、GDのマロ眉さん、ね。千代原はる奈さん、だっけ。そういえば、彼女の副葬処女には会った事が無いね。  
「問題は、元・第2生徒会の会長だ。姫笹とか言ったか?あの射影体」  
六夏会長にいつも寄り添っている、影の薄い射影体の姫笹さん・・・彼女が?  
「ああ。たぶん、分離しても自我の確保ができないだろう。元々病弱だったようだしな。  
一巡目の世界の時に”うずしお”の中でなら生きていられた奏のようなもんだ」  
そうか。。。何ともいえない・・・どうやって六夏会長に話せばいいんだ。  
 
「まあ、それはしょうがない。なんなら、私から話そう。というか、私から話した方がいいだろう。  
それに、問題はそこじゃない。もっと大きな問題があるんだ」  
アニアは副葬処女分離器を完成させた時に気付いていたのか。その話を軽く流して、さらに言葉を進める。  
「この副葬処女分離器を動かすのに問題がある。  
それが、悪い話の方だ」  
何の問題があるんだろう。今なら、僕と嵩月の魔神相剋者としての魔力があれば、加賀篝よりも大きな魔力になるはずだ。  
「いや、動力としての魔力は、お前たちの力で問題が無い。  
問題があるのは、私の方なんだ・・・・・・」  
アニアが力なく項垂れてしまう。何の事だ?  
「姉さまが造った副葬処女分離器は、姉さまが魔神相剋者の片棒という立場で確立操作をする事が前提なんだ。  
だから、同じ歳まで成長したとはいえ、私の魔力では全然足りないんだ」  
悔しそうにアニアが言葉を続ける。  
「だから、今の状態では副葬処女分離器を動かせない。  
これが、悪い方の話だ。理解してくれたか?」  
 
つまり、機械はできたけど動かせない、と。何か方法は・・・・・  
「ひとつだけ、方法がある」  
そんな考えに陥っている時、気丈にもアニアが言葉を続けた。  
考えてはあったんだ。なら、なぜそれを・・・・・・  
「あるんだが・・・・・・」  
言い澱む?  
「あるんなら、やってくれ。僕らの力が必要なら、いくらでも協力する」  
隣で嵩月も頷いている。操緒をまたこの世に呼び戻す。そのために僕らは命がけで戦ってきたのだから。  
「それはありがたいのだが・・・・・・いいのか?奏」  
なんで嵩月に訊くんだろう。足りない魔力を補う・・・・・・と考えて、僕はひとつの事に思い当たった。  
まさか。。。  
 
「ん?智春は思い当たったようだな」  
ニヤリと悪魔のような・・・・・・そういえば、アニアも悪魔か・・・・・・笑みを浮かべて、話を続ける。  
「私も演操者と契約して、魔神相剋者の片棒になればいい。そういう事だ」  
ちょっ、ちょっと待て、アニア。それって、まさか僕・・・・・・  
「智春と契約を結んで、私も魔神相剋者の片割れになる。  
どうだ、智春。私の契約者となるか?」  
なんで嵩月を呼んだのか、今になって判った。そりゃ、嵩月抜きで話はできないだろう。  
自他共に認める公認の彼氏に、他の女・・・しかも自分・・・を抱け、と言うなんて。  
 
この時。  
操緒はニヤニヤと・・・・・・  
僕は慌てふためき・・・・・・  
 
そして、嵩月は青ざめていた。  
 
 
立ち直ったのは、嵩月の方が先だった。  
「あっ、あの・・・・・・夏目くんじゃなきゃ、だめなんですか?」  
アニアが相手なので他の女生徒より控えめだけど、嵩月は僕の事になるとハッキリと拒絶をするようになっている。  
「うむ。これには色々と理由があるのだが・・・・・・」  
アニアの答えはこうだ。  
「まずひとつ。今、演操者は何人居ると思う?」  
逆に、問い掛けられた。僕らは指を折って数えてみるけど・・・・・・  
「私が知る限り、4人だ。  
まずは智春、お前だな。次に、お前の義妹の和葉、元・第2生徒会長の倉澤六夏、そしてGDの亜鉛華の演操者。  
この4人だ」  
とりあえず僕もその4人が出てきて、そこで止まったんだけど・・・・・・ホントにそれだけなのか?  
そんな僕の疑問にアニアは  
「他にも居るかもしれん。だが、私の接触する範囲にいるのは、この4人だけなんだ。  
なぜ私の接触する範囲かというと、私が契約しなければいけないからだ。  
見ず知らずの相手だと、鳳島氷羽子の二の舞になるからな」  
そうだった。演奏者なら誰でもいいって訳じゃないんだった。愛情に限った事じゃなく、嫌悪や憎悪といった負の感情でもいい。「好き」の反対は「嫌い」じゃなく、「無関心」だ。  
 
「あっ・・・・・・」  
そこで嵩月が何かに気がついた。そして、困った顔をする。  
「奏は気がついたか。  
そう。さらにもうひとつ。  
男性はお前だけなんだ、智春」  
部屋の温度が一気に上がった・・・・・・いや、僕の気持ち的には下がってるんだけど、なぜか暑い。  
最初に座った時より、嵩月が心持ち僕に寄り添ってきている。しかも、全身に陽炎を浮かべて・・・・・・怒ってますか?嵩月さん?  
僕のせいじゃない、と声を大にして言いたい・・・・・・  
「そして何より、一番大事な部分なのだが・・・・・・  
私は、どうも智春が好きなようなんだ」  
 
この状態でその爆弾発言か!?アニア。しかも、何だそれ・・・・・・自分の気持ちのクセに、「どうも」とか「ようなんだ」とかって。  
オカシイだろ、それ。いっつも自身満々でムダにエラソーなのに、その自信の無さは何なんだ!  
「お前、言うに事欠いて『どうも』とか『ようなんだ』って、何だよ、それ。  
なんか、告白されたっぽいけど、ぜんぜん嬉しくないよ・・・・・・」  
しかも、隣では「うーーー」と嵩月が唸ってるし。部屋の中の温度が急上昇して、暑いよ、ココ。  
それなのに、アニアは涼しい顔をして  
「落ち着け、奏」  
と、文字通り熱くなった嵩月を窘めている。お前はこの状態で暑くないのかっ!  
「夏目くんは、渡しませんっ!」  
あのー、嵩月さん。落ち着いてください・・・・・・。  
『結構、やきもち焼きだよねえ、嵩月さんって』  
「はっ!・・・・・・ごめん、なさい」  
ナイスだ、操緒。  
操緒のボソッとした呟きで、嵩月が落ち着きを取り戻してくれた。それでもまだ警戒してるのか、ゆらゆらと陽炎が立ってるけど。  
『相手、ニアちゃんだよ。そんなに警戒しなくても大丈夫だって』  
操緒は操緒で、相変わらずあっけらかんとしているし。  
「まあな。普段は家族なんだ、智春は。私にはもう、本当の家族も・・・故郷すら無いしな」  
 
アニアの言葉に、ようやく嵩月も落ち着いてくれた。  
アニアの故郷であるクラウゼンブルヒ領は、非在化してしまっていてすでに無いそうだ。もちろん、その時にソメシェル家も非在化してしまっている。  
僕らは後から話を聞いただけだけど、嵩月はアニアが故郷へ連絡しようとしているその場に居合わせていたらしいから。  
「だから、私にとって家族とは、もうこの鳴桜邸で暮らすみんなと、奏。お前も私は家族だと思っている。  
日本に来て、ここで暮らした時間と・・・・・・一巡目の世界での5年間が私のすべてなんだ」  
アニアが訥々と語り始める。  
 
「今思えば、一巡目に飛ばされた5年間がいい経験になっているのだと思う」  
そう。アニアは10歳の時に、R部長の策略に巻き込まれて僕や嵩月と一緒に一巡目の世界に飛ばされた。  
その時、僕と嵩月を離れ離れにしないように確立操作をしたその代償として、一人で5年先まで飛ばされていたんだ。  
そして、僕らと出会える5年後まで、たった一人で一巡目の世界を生き抜いてきた。  
「だから、本当の家族が居なくなった事は寂しくない。悲しくないわけじゃないが、今はお前たちが居る。  
だから、寂しくはない」  
珍しく、アニアが素直になっている。逆に言えば、それだけ切羽詰ってるって事なのか?  
「私にとって智春は、デキの悪い弟であり、要領の悪い兄であり、運の悪い父親みたいなものなんだ」  
なんだそれ・・・・・褒めてるのか、貶してるのか。貶してる方ばっかりじゃないかっ。  
『ニアちゃん・・・・・・それ、褒めてないよ?その通りだけどさぁ・・・・・・』  
お腹を抱えて笑いながら、僕の気持ちを操緒が代弁してくれた。嵩月も、肯いてばかりじゃなくって何か言ってよ。。。  
 
「ただな・・・・・・ここ一番で頑張ってくれる、期待に応えてくれる智春に、異性として惹かれてるのも事実なんだ。  
そう思うだろう?奏・・・・・・」  
その言葉に、それまで操緒の言葉に肯いていた嵩月が、一瞬止まってから顔を紅らめ、今度はアニアの言葉に肯く。  
「夏目くんに惹かれる、のは、わかる。  
でも・・・・・・」  
「そう。複数契約となると、それだけリスクが跳ね上がる。愛情で結ばれた契約行為だからな。  
どちらか片方に愛情が傾いた途端に、もう一方の契約悪魔は急速に非在化する。だから、複数契約になる契約を望む雌型悪魔は居ないと言っていい。  
複数の契約をした契約者が居なかったのはその為だ」  
『浮気のレベルじゃダメなんだよね、それって』  
「そうだな。それだと姉さまのように、一人との契約でも非在化が進んでしまう。  
そもそも、雌型悪魔は自分の純潔を捧げるんだ。軽はずみな契約をする訳が無い」  
 
アニアがさらに続ける。  
「智春と奏。  
お前たち二人を見てきて、姉さまの事を、なんてバカな契約をしたんだと再認識するようになった。その事は感謝する」  
ちょっと待って。アニアにすら僕たちはそんなにアツアツに見えてるって事?  
『傍から見てると、もろにバカップルだもんね〜、智春(トモ)たちってっ』  
操緒までそんな事を言う。  
僕と嵩月は、顔を見合わせる。  
『ほらほら、そんなトコ。いちいちツッこむのも面倒くさいからスルーしてるけどさ〜』  
アニアは、半分・・・半分以上か?呆れ顔だ。そんな目で見るなよ。。。  
「あーー、話を続けていいか?」  
大いに続けてくれ。この空気は、さすがに僕でも居心地は悪い。嵩月もゞ気持ちだろう。  
アニアが真面目な顔になった。  
「つまり、我々は選択を迫られる事になった。  
私は、智春と奏に命を預ける覚悟。まぁ、これは問題にしなくていいだろう」  
それは、僕らがどういう選択をしても覚悟ができているという事なのだろう。  
「奏は・・・・・・私の口から言うのも申し訳ないが、お前たちの間に私が割り込んでいく事を赦す心の広さを」  
アニアが嵩月を見る目は真剣だ。  
「そして智春には・・・・・・」  
それが何で僕を見る目は、そんな悪魔のような目になる?いや、アニアは悪魔だけどさ。  
「奏と等しく私を愛する覚悟だ。  
どちらか一方に愛情が傾けば、その時からもう片方の非在化が始まる。それをさせないだけの愛情を、私にも注ぐ事ができるか?」  
 
究極の選択だ。  
操緒を生き返らせる為には、嵩月と等しくアニアも愛さなければいけないのか。  
『ヘタレの智春(トモ)に、そんな事できるのかな〜』  
操緒の言う事ももっともだ。そんな甲斐性を僕に求めるのか。  
そんな時、玄関が開いた事を告げるカウベルの音が聞こえた。和葉か朱浬さんが帰宅したらしい。  
アニアがお開きの言葉を告げた。  
「朱浬か和葉が帰ってきたようだな。そろそろお開きにしよう。返事は急がん。  
奏。少し話の続きもある。今日は泊まっていけ。久しぶりに一緒に寝よう」  
嵩月が肯くのを確認して、アニアが席を立った。  
 
 
僕たちが階下へ下りると、キッチンの冷蔵庫の前で和葉が大きなスーパーのポリ袋と格闘していた。  
「今日の食事当番は和葉だったか。  
おい、和葉。奏が泊まる事になった。一人前、食事が増えても大丈夫か?」  
「あっ、嵩月先輩。いらっしゃい。  
晩御飯はカレーですから、一人や二人増えたところで大丈夫ですよ」  
冷蔵庫に入れるもの、これから使うものをより分けた和葉が、立ち上がりながら嵩月に挨拶した。  
「そうか。じゃぁ、料理の方は任せる。智春、部活を休んだんだ、手伝ってやれ。  
奏、久しぶりに一緒にフロでも入ろう。操緒、一緒に来い」  
休ませたのは誰だよ、と突っ込みたかったが話の内容が内容だけに、そう文句も言えない。  
アニアがフロに水を張りにいき、嵩月は地下へ着替えを取りに行った。僕は、和葉の用意した野菜を水で洗う。  
「あっ、ありがとう、お兄ちゃん。  
ニアちゃん先輩、おフロの用意してたんですか?でも、お水も張ってなかったような・・・・・・」  
和葉はアタマの上にハテナマークを浮かべているけど、嵩月にかかれば風呂の湯沸しなんて・・・・・・  
「大丈夫、嵩月が居るから」  
『おフロのお湯なんて、アッと言う間だよね〜』  
僕は野菜の水を切りながら、つとめて明るく和葉に言う。どちらかというと、水蒸気爆発の方が心配だったりして・・・というのは、和葉には内緒だ。  
 
カレーの下ごしらえとサラダの準備をしていると、キッチンに嵩月が顔を出した。  
「夏目くん。お風呂、いただきますね」  
『んじゃ、わたしも行ってくるね〜。智春(トモ)、覗くなら、見つからないようにねっ』  
にこやかに声をかける嵩月と、覗き云々を言って消えた操緒のセリフに、和葉の方からどす黒いオーラが感じられる。。。怨むぞ、操緒っ!  
「オ・二・イ・チャン・・・・・・わかってるわよね〜」  
頼むから、包丁を持ってその顔と気配は辞めてくれないかな。お兄ちゃんは、ちょっと怖いよ。  
綺麗な笑顔なんだけどさ。目が笑ってないですよ、和葉さん。でもって、その頃のお風呂場では。。。。。。  
 
 
カポーン・・・・・・  
鳴桜邸の浴室は、下手な民宿なみのお風呂場である。女子高校生が2〜3人一緒に入ったところで、手狭には感じられない。もっとも、操緒は湯船に浸かれるわけじゃないから、じゅうぶん広々としてはいるけど。  
「奏とこうして風呂に入るのも久しぶりだな」  
『いつ以来だっけ?みんなでお風呂に入るのって』  
「大原さんのペンション・・・・・アルバイトをした時?」  
「ふむ。姉さまが非在化する直前だったか・・・・・・」  
奏と操緒にとっては数ヶ月前でも、一巡目の世界へ飛ばされた時に5年余分に飛ばされたアニアにとっては、かれこれ6年になる。  
「私にとっては6年ぶりだな・・・・・・それなりに成長したはずなのだが。。。」  
奏と自分の、そして奏と操緒のバストを見比べるアニア。  
「ふっ・・・・・・」  
鼻で笑ったアニアを目ざとく見つけたのは操緒。  
『ふっ・・・・・・って、ニアちゃん。ちょっと失礼じゃな〜い?  
操緒と、そんなに変わらないじゃん』  
抗議の声をあげる操緒に、アニアは  
「終わっているだろう、操緒は」  
『ニアちゃんだって、もう打ち止めになる歳になってるでしょ』  
と、そんな罵りあいを尻目に、そそくさと奏は脱衣所を後にする。  
『嵩月さんが逃げたっ!』  
「あっ、まて、奏」  
慌てて残りの服を脱ぎ、奏の後を追うアニアと操緒。操緒はすりガラスをすり抜ける時に制服からバスタオル一枚へと早着替えを済ましていた。  
ホントにどうなってるんだろうね、操緒の服って。  
 
アニアがお風呂場へ足を踏み入れた時は、奏はすでに打ち湯を済ませ湯船に身を沈めていた。  
アニアも、来日してからは1年足らずだがすでに6年も日本で暮らしているので、日本式の入浴にも慣れたものだ。奏と並んで浴槽に身を沈める。  
操緒も、気分だけは味わいたいのか、一緒になって浴槽の中に浮かんでいた。  
 
打ち湯を済ませ浴槽に入ったアニアだったが、そこでピクッと硬直する。先に湯に浸かっていた奏の双球が、浮いていたからだ。  
操緒も同じくフリーズした。  
「『操緒(ニアちゃん)、いがみ合っている場合ではないな(じゃないよね)』」  
「えっ、えっ、ええ〜」  
『嵩月さんは、それで智春(トモ)を誘惑したんだ〜』  
「口ではいつも誤魔化しているがな。智春もまんざらではなさそうだし」  
二人は目線で奏のバストを射すくめながら  
「久しぶりに触らせてくれ、奏」  
まず、アニアが奏のバストに手を伸ばす。奏はとっさに両腕で隠そうとするが  
『えいっ』  
途中で金縛りにあったように、その腕の動きが止まった。  
「えっ?」  
『あはっ、巧くいったね〜』  
操緒の仕業のようだ。  
 
「何をしたんだ?操緒」  
不思議がるアニアに操緒が  
『う〜ん。身体憑依の応用?智春(トモ)の契約主だからできるかな、と思ったら・・・・・・できちゃった?』  
実際にやった操緒も不思議そうな顔をしている。  
「みっ、水無神さん、なんですか?これ・・・・・・」  
『智春(トモ)の意識の向こうにね。なんかボンヤリと・・・・・・朧げな?感じで意識があって、それを智春(トモ)の身体に憑依する感じで意識をあわせただけなんだけど』  
アニアは何か考え事のように、あごに手を当てて押し黙っている。  
『まあ、智春(トモ)の身体に憑依するみたいにハッキリとはしてないから、自由に相手の身体を動かす事はできなさそうだけどさ』  
そんな操緒の話にアニアが  
「ふむ。そもそも魔神相剋者(アスラクライン)自体が前例が少ないしな。冬琉にでも訊いてみれば、そんな事があったかどうかは聞けると思うが・・・・・・。  
あいつら(冬琉と氷羽子)は、どうもあまり仲がよくなかったようだからな。参考にはならんかもしれん。  
まあいい。操緒・・・・・・少々そのまま奏を押さえていてくれ」  
アニアは、そう言って両手をワキャワキャと・・・・・・見ていた操緒曰く『エロオヤジみたいだったね〜』だそうだ・・・・・・させながら、立派に育った嵩月のバストに手を向けた。  
 
「にっ、ニアちゃん・・・・・・目が、いやらしい、です」  
その目に少し怯んだ奏だったか、千載一遇のチャンスとばかりにアニアは奏のバストを堪能する。  
「むう・・・・・・智春が虜になるのも理解できるな。柔らかくって、張りがあって、スベスベで。  
同じ女性としてですら嫉妬するぞ、奏っ」  
アニアの細く白い指にすらひしゃげる奏のバスト。それを奏の肩越し見つめる操緒。  
『っわっ、柔らかそ〜〜ぅ。いいな〜、嵩月さん』  
「あっ、いっ、やっっ・・・・・・」  
力の加減がわかってきたのか、アニアのタッチに変化が見られるようになると、奏の声色もともに変わってきた。  
「っん、っっんっ、っんっっっ」  
「こんな感じか?奏」  
すでにアニアのタッチは、好奇心からのそれよりも愛撫に近くなっている。  
『勃ってきたね〜、乳首。意外と感じやすいんだ、嵩月さんって。  
おっきいのに、羨ましいな〜』  
操緒は奏の耳元で、そんな事を呟いている。奏の身体が紅く染め上げられてきたのは、湯に当たっているからだけではないだろう。  
「声を出してもいいんだぞ、奏。どうせ智春はキッチンだしな」  
そんなアニアの言葉にも、奏は首を横に振る。  
『そういう慎ましさが智春(トモ)の琴線に触れたんだよ、ニアちゃん』  
さすがに長年智春についているだけあって、操緒が的を射た言葉を紡ぐ。  
『でも、ちゃんと感じてるよ〜、嵩月さん』  
奏はすでに顔を真っ赤に染め上げて、酸欠の金魚のように口をパクパクとさせながら酸素を求めている。  
そんな奏に、アニアがトドメとばかりの刺激を加えた。奏の勃った乳首を捻りあげたんだ。  
 
その瞬間・・・・・・  
 
ボムっ・・・・・・  
 
「アチっ!」  
アニアが慌てて浴槽から飛び出した。水蒸気爆発とまではいかなかったが、湯船に張られたお湯の温度が一気に10度ほど急上昇した。  
「か、奏っ!」  
その一瞬のち、奏を浴槽から引き上げる。イッたのか、奏は気を失っていた。  
『あっちゃ〜、ヤりすぎちゃったね』  
「うむ。ここまで奏がビンカンだったとは・・・・・・」  
「ん、んん、、んんん、、、」  
最初の絶頂だったためかバストの刺激だけだったからか、奏はすぐに気がついた。温度の上昇が大きくなかったのもそのせいだろう。  
「まさか、自分が入っているお風呂で・・・・・・熱湯風呂をやるとは、思いませんでした。。。」  
そんな事を口走りながら、奏がアニアをにらみつける。それでも、「イッた後だったからな。怖いより艶っぽかったぞ」とはアニアの弁。  
 
「すまなかった、奏」  
バスマットの上に横たえられた奏が、落ち着きを取り戻して上体を起こすと、アニアが素直に謝った。奏はそれに対し、首を横に振る。  
「夏目くん、にも。。。よく言われますから」  
ポロっと零したそのひと言に、操緒が敏感に反応する。  
『あれ?いつの間にそんな事をしてるのかな〜、嵩月さん』  
「ほう。よく言われるほどヤッていると?」  
二人にツッ込まれてあたふたする奏だったが、そこに  
「どうしたの?何かあった?」  
大きな・・・・・・といっても、鳴桜邸にしては極めて小規模なのが情けないけど・・・・・・爆発音がしたんで、僕が様子を見にきたんだ。  
「なっ、なんでもないぞ。ちょっと奏が暴発しただけだ」  
暴発って・・・・・・嵩月に、何をしたんだ?アニア。  
『大丈夫、大丈夫。智春(トモ)が心配するような事はしてないから。  
女の子同士の秘密のお話をしてるだけだよ』  
浴室から操緒が上半身をすり抜けさせ(当然、バスタオルでしっかりガードしてるさ)て、僕が戻るのを促しに来た。  
「嵩月、だいじょうぶ?」  
それでも、僕は嵩月に声をかけた。原因が嵩月の暴走なら、それが一番気にかかるでしょ。でも、ちょっと呼吸は荒かったけど、しっかりと嵩月は返事を返してきたんだ。  
だから、僕は大人しくきびすを返したんだ。  
 
「だいじょうぶ、です。心配させて、ごめんなさい」  
奏は、心配そうに声をかけてきた智春に返事をした。智春が脱衣所から出て行く気配を感じながら、奏はアニアに声をかけた。  
「ニアちゃん。背中を流してあげます」  
この時不幸だったのは、アニアが熱くなった湯船の湯を水で薄めていて、嵩月の表情を見ていなかった事だろう。操緒も嵩月の後ろに居たので、表情までは見ていない。  
二人は忘れていたんだ。  
三人の中で唯一、エッチの経験者なのが嵩月だって事を。そして、やられたらやられっぱなしにしないで反撃する激しい気性の持ち主だって事を。  
 
奏はすでにタオルを泡立てている。だから、アニアは大人しく奏の前に椅子を持ってきて、背中を向けて座った。  
アニアの背中は、白人特有の白さときめの細かさで、湯に火照ってしっとりと濡れている。  
「大きく、なりましたよね。ニアちゃん」  
奏が優しくタオルを滑らせていく。肩甲骨の裏側、背筋の窪み、襟足・・・・・・1年前、10歳だった頃に比べると、ふた回りほど広くなり、女性的な柔らかいラインに変わっている。  
手を持ち上げて、脇の下をこすりあげる。  
「ひゃっ・・・・・・ま、前は自分で。。。」  
というアニアの言葉を無視して、奏がタオルを動かしていく。  
「こ、子供扱いするな、奏・・・・・・」  
そんなアニアに、奏はにこやかに  
「大人あつかい、していいんですね」  
 
「どうですか?ニアちゃん。バスト、気になっていたんでしょう?興味深そうに、揉んでくれましたものね」  
奏がアニアの背中に胸を押し付けてきた。  
「奏?なっ、なにを・・・・・・」  
「だから、大人扱い、です」  
脇の下から前に手を廻された奏の手が、アニアのバストに達する。いつの間にか、奏はタオルを捨て素手でソープを泡立てていた。  
「夏目くんが、してくれる事。。。ニアちゃんに、教えてあげます」  
 
「か、奏?さっ、さっきは、すまな、かったっ・・・・・・」  
「だめです。赦しません」  
脇の下から前に廻った奏の両手は、アニアの小振りなバストの裾野に届いていた。下から持ち上げて包み込むように、奏の掌が優しく包んでいる。  
「大きさを気にしてるようですけど。大丈夫です・・・・・・形もいいですし、ニアちゃん、ウェストが細いから」  
カリッ・・・・・・  
「あぅ!」  
アニアの耳元でそう言うと、奏はアニアの耳たぶを甘噛みした。  
「かなっ、かなでぇ、、、やっ・・・」  
奏の白魚のような細指が、徐々にアニアのバストを頂めがけて上がっていく。蠢くように、それぞれの指が微妙に力加減を変えて、それに従いアニアのバストは形を変える。  
「あっ、あっ、あっ、、、ぁはぅぅ・・・・・・ぅんむっ」  
奏の人差し指は、頂の手前・・・・・・淡く色付く乳輪から頂を掠めて上半分へ移動する。中指が、乳首の先端を掠めるように上下している。  
奏は、親指と人差し指で上半分を、薬指と小指で下半分を、上下からアニアのバストを攻め立てる。そうしながらも、背中では自らのバストを押し付けて刺激を与えている。  
「はぁ、はぁ、はぁ、、、、っん、、、はぁ、はぁ、っん、、、」  
耳たぶも忘れてはいない。時折、舐め、甘噛みして、アニアの息が落ち着く事を赦さない。  
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ・・・・・・・・・」  
逆に、呼吸が浅く、間隔が短くなる。その時  
「あっ、あぁ〜〜〜っ」  
それまで放置され、しかし周囲を攻められたために膨らみかけていた乳首を、奏の指が捻りあげた。  
一瞬で絶頂に達するアニア。奏が支えていた背中が仰け反り、全身に力が漲る。  
 
しかし、それでも奏は攻めの手を緩めなかった。アニアの縊れたウェストに腕を廻して片腕で支え、空いた右手をアニアの股間に差し込む。  
「はぅっっ・・・・・・」  
逆方向に力が入っていたアニアが腿を閉じた時には、すでに奏の指先は目的地へ達していた。  
「ニアちゃん。これからが、本番、です」  
「ひっ、、、っんぅんぅ・・・・・・」  
奏の言葉にアニアは首を激しく横に振るが、そんな事で奏が赦すはずはない。下半身に意識が行ってしまったアニアの右のバストを左手で攻め始める。  
「ぃっ、ぃひっ、っはぅ、っは、ぅん、ぃいっ、いぃぃっ・・・・・・」  
腿の間全体を撫でるように動いていた指先が止まる。バストを這い上がる指が一気に乳首に襲い掛かる。  
人差し指と薬指でスリットを広げ、まだ誰の侵入をも許していないアニアの内側の唇を奏の中指が蹂躙する。軽く登りつめた時から勃起しっぱなしの乳首に尖痛が走る。  
尿道口を中心に膣腔とクリトリスの裏側を右手の中指が撫であげられる。勃起しきった乳首が錐揉まれ押し込まれひしゃげる。  
アニアは両脚を突っ張りどうにかして奏から逃げようとするが、逆に奏に身体を絡め捕られてしまう。腰を引けばお腹で押し返され、上体を反らせば圧し掛かられる。  
「はひっ、はっ、ひっ、ひぃ、っくぅ、うぅむ、ふぅっ、ひぃ・・・・・・」  
初めて他人から愛撫されるアニアは、もう息も絶え絶えになっている。奏も、アニアが何度も達しているのはわかっていた。  
それでも、登りつめた意識から降りてくる事を許されず、さらなる高みへと昇らされる愛撫に、アニアは何度も全身を硬直と弛緩の間を往復させている。  
「そろそろ、逝かせてあげますね、ニアちゃん・・・・・・」  
その声が聞こえているのかいないのか、アニアは先ほどから大きく顔を左右に振っている。  
 
「ぃひっ!!!!!!!!!」  
奏は、それまで避けるようにアニアのスリットの中で蠢かしていた指で、パンパンに膨れ上がったクリトリスを捻り上げた。  
 
プシッ・・・シャッ、シャぁ〜〜〜〜〜〜ぁ  
 
アニアの尿道口から、弧を描くように黄金のミネラルウォーターが噴出する。そのままアニアは気を失った。  
「指だけで、こんな粗相をしちゃうなんて。ニアちゃんもまだまだ、子供ですよね。  
そう思いませんか?水無月さん」  
『・・・・・・・・・・・・』  
そのとき操緒は、完全にフリーズしていたらしい。。。目を血走らせて。  
 
 
手桶でアニアの股間を洗い流すと、奏はアニアをバスマットへ仰向けに横たえた。  
「まだまだ、続きはありますよ・・・・・・ふふふ」  
それは、気を失っているアニアに言ったのか、フリーズしている操緒に言ったのか。  
 
chuっ・・・・・・chu、chuっ、、、chu、chu、chu・・・・・・  
 
アニアの頤、鎖骨の窪み、脇の下、お臍の周り、わき腹、内腿、膝の裏、ふくらはぎ、足の指先・・・・・・奏がアニアの身体中にキスの雨を降らせていく。  
足の先から、また同じ道をたどって戻ってくる。  
「ぅ・・・・・・ぅ、、、ぅ、、ぅ、ぅん???・・・ぃひっ!」  
アニアの意識が戻ってきたところで、すかさず奏がアニアの乳首に吸い付く。  
「ぅぐっ、っくぅ、っぐぅ・・・・・・・・・」  
片方の乳首を啄ばまれ、もう片方は乳房ごと揉みしだかれ、さらに空いた手でパンパンに膨れ上がったクリトリスの包皮を剥かれ直接弄ばれては堪らない。  
アニアの身体が、陸に上げられた魚のように跳ね回る。  
 
『ちょっ、ちょっと・・・・・・嵩月さん。。。ニアちゃんが』  
「心配しなくても、だいじょうぶ、です。ちゃんと天国に、逝かせてあげます、から」  
『ちがっ、そうじゃなくって・・・・・・』  
傍観を決めていた操緒が、アニアの身体を押さえつける奏の口が空いたすきに問い掛けるが、それに応えながらも奏の両手は止まらないでいる。  
クリトリスを撫で回していた奏の指先が、爪弾くような動きに変わった。  
「ぃっ、いっ、ぅぐぅ!!!」  
アニアが二度目の気をやった時、今度は透明な潮が小さく吹いた。奏が身体ごとアニアの下半身側に移動して、喘ぐように蠢いているアニアのスリットに口付ける。  
「ぃひっ、ひっ!!!」  
強制的に意識を戻されたアニアが悲鳴をあげた。剥き出しにされ大きくなったクリトリスを吸い上げると同時に、奏は一番細い小指をアニアの膣腔に捻り入れていった。  
吸い込まれるように、奏の小指がアニアの腔内に飲み込まれていく。  
初めて異物を受け入れたアニアが、ブリッジをするように大きく身体を仰け反らせる。刺し込まれた奏の指を伝って、アニアの胎内から粘度の高い白濁した愛液が溢れ出してきた。  
手の指も足の指も握り締めるようにして、アニアが硬直する。ゆっくりと、奏がアニアの膣内から指を引き抜いた。  
 
『嵩月さん・・・・・・スゴいのね〜』  
いつもあっけらかんとしている操緒ですら、奏とアニアの痴態に目を血走らせて感心している。でも奏は  
「夏目くんは、もっと・・・・・・すごいです」  
顔を紅らめてそんな事を言う。  
『智春(トモ)って、そんな凄いの?』  
「なんども何度も、逝かされます、から・・・・・・」  
頷きながら応えるそんな奏の言葉も、普段のヘタレな智春の姿しか見ていない操緒には想像がつかないようだ。  
「水無月さんも生き返ったら・・・・・・夏目くんに、シてもらえばわかります、きっと」  
奏が微笑んでそんな事を言った。  
アニアの様子に気をとられていた操緒は、奏の言葉に一瞬反応が遅れた。  
 
『え・・・・・・』  
「ですから、生き返ったら、夏目くんにって・・・・・・言いました」  
操緒が、目を見開いて奏を見つめる。おフロに入る前、操緒を生き返させるためのリスクは説明されている。  
「それでも・・・・・・私は、水無月さんと一緒に、生きていきたい、です」  
操緒は涙を浮かべている。  
「一緒に、生きていきましょう。。。水無月さん」  
奏が、放り投げてそれっきりになっていたタオルを濯いで再び泡立てる。アニアを責めて汗にまみれた自分の身体を清めていった。  
『でもさ。今のままでも・・・・・・』  
そんな操緒の言葉も、シャワーで泡を流しながら  
「今のままでも、楽しいです。でも、生き返ったら、たぶんもっと、楽しいです」  
自分の泡を流しきると、気を失って横たわっているアニアに優しくシャワーを降りそそいでいく。  
 
 
「ん・・・・・・ん・・・ん、、、」  
奏のシャワーに、アニアが息を吹き返す。  
「ニアちゃん、だいじょうぶですか?」  
幾度となく迎え入れた絶頂に汗をまみれさせた身体を、奏が優しく洗い流していく。  
「ぁ・・・・・・かなでか。すまんな・・・・・・」  
のそのそとアニアが身体を起こそうとするのを、奏が手伝う。  
「からだ、自分で洗ってください」  
「ぅ、うむ・・・・・・」  
まだ少し意識は朦朧としているようだが、アニアは意外にもタオルを手にとって泡立て始めた。  
アニアが何とか身体を洗い始めると、奏は操緒を伴って湯船にゆっくりと浸かった。  
「さっきの話・・・・・・私から夏目くんに、話します、から」  
『ん・・・』  
奏の確認に、操緒は肯くのだった。  
 
アニアが身体を洗い終えると、三人はもう一度そろって湯船に浸かった。  
今度は横に並んで。  
そこで、情事の前にあった疑問を操緒が投げかけた。  
『そういえばさ。智春(トモ)と嵩月さんって、何度もシてるんでしょう?操緒が知らないのはなんでかなぁ』  
「あーー・・・・・・」  
操緒の問いに奏が答えようと言葉を捜すが、その前にアニアが反応した。  
「やり方は想像がつくぞ。奏、間違えていたら言ってくれ」  
アニアの言葉に奏が肯く。  
 
「これはK鐵・改だからできる事だと思うのだがな。  
まず、操緒。お前が寝入ったところで智春がK鐵・改を半呼び出し様態にする。そうすると、操緒の意識はうずしおの本来の身体に戻るな。  
その状態で右腕だけをほんの少し・・・・・・智春の身体を奏の居場所へ移すだけの大きさで動かす」  
『でも、K鐵・改を動かせば、操緒はわかるよ?』  
「そこだ。そこで、アスラクラインとしての力を使う。  
奏の悪魔の力で、ほんの少しだけK鐵・改の右腕を動かすんだ。それくらいなら、寝ている操緒の意識には感じないのだろう。魂にも影響は無いはずだ」  
奏は感心したように肯いている。  
「事をしたあと、同じようにして自分の部屋に戻る。している最中は、K鐵・改を起動状態でこちらの世界に出てこないように意識しているのだろう。  
そうすれば、操緒。お前が起きてくる心配も無いしな」  
『なるほどね〜。それで最近、妙に眠りが深い時があったんだ』  
操緒が奏の方を向くと、奏は真っ紅になって身体を火照らせている。  
「さて、そろそろ上がるか」  
 
 
晩御飯の準備もそろそろできた。朱浬さんも帰宅して、すでにリビングで寛いでいる。だから、女子が多いからって、そんな格好でウロウロするのは辞めてくれませんか、朱浬さん。  
そうして、僕が入浴中の三人に声をかけにいこうとしていた時、頃よく操緒が風呂上りの格好でリビングに戻ってきた。  
「あら、操緒(サオ)ちゃんもおフロだったんだ〜」  
『うん。嵩月さんとニアちゃんと三人で。二人とも、もう来るよ』  
言うか言わないかのうちに、二人がリビングに姿をあらわした。  
 
「長かったね、嵩月。何かされた?」  
僕がそう嵩月に訊いたとき、顔を紅くしたのはアニアと操緒だったのは何でだろう。  
「『な、何もなかったぞ(よ)』」  
そのアニアと操緒が声を揃えて返事をした。だから、何で僕を見るの?二人とも。  
朱浬さんはニヤニヤと笑っているけど・・・・・・あっ、朱浬さんが嵩月に何か耳うちしたら、嵩月が真っ赤になって俯いた。  
でも、僕には何があったかなんて、教えてくれないんだろうな・・・・・・誰も。  
「みなさ〜ん、ご飯できましたよ〜〜」  
キッチンの方から和葉のそんな声が響いたのは、そんな時だった。  
 
その日の夕食は・・・・・・多くは語りたくないよ。いわゆる、針のむしろ状態でさ。  
朱浬さんは憚りもなく下ネタ満載だし、そのたんびにアニアは僕の方を見るし和葉は睨むし。カンベンしてよ、もう。  
 
 
-第一章 完- 一応、続く予定  
 
 

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