「ようやく完成したわね」
神(デウス)に対抗するために造られた、中央渦界領域(セントラル・ボーテックス)とそこから次元をコントロールする次元潜行チェンバー“うずしお”。
夏目直貴という歳若い・・・・・・というか、幼い?天才が現れなければ、この次元では間に合わなかった事でしょうね。
私は潮泉律都。正真正銘、最強の悪魔。次元を股にかける事ができる唯一の存在よ。
「あのさ・・・・・・律都さんが”うずしお”に入っちゃったら、別次元の律都さんと意識共有できなくなるんじゃ?」
ようやくマシンが完成して皆が祝福の騒ぎをしている中、プロジェクトの中枢の一人となっていたその天才少年・夏目直貴が、私に声をかけてきた。
「ん〜〜、な〜に〜?」
「だから、律都さんが”うずしお”に乗っていっちゃったらダメじゃん、って」
ハッ・・・・・・そうだった。私には、この次元に残って他の次元の私がどういう状況なのかを観る役目があった。
とはいえ、私クラスの悪魔で”うずしお”のコントロールができる人なんて居ないし。。。
「ったく、アタマいいくせに抜けてるんだから。どうせパイロットの事なんて考えてなかったんでしょ」
言われて怒るのは図星を刺されているから、とは良く言ったものね。最悪、従姉妹の奏ちゃんに頼もっかくらいにしか考えてなかったのは事実だけど・・・・・・。
ちょっとこの子の言い草にムカっと来てたのは事実よ。だから・・・・・・
喰っちゃおっかっ!
と、思ってしまったのよね。
悪魔みたい?だって、私は最強の悪魔ですもの。
さて、どうやって誘おうかしら。この子が私に警戒しないでついてきて、なおかつ事ができる場所・・・・・・
味気ないけど、私の研究室の仮眠ベッドしかないかしら。あそこなら鍵も掛かるし、何かあってもすぐに呼び出しに応じられるでしょうし。
そんな事を考えてるとは億尾も出さずに、直貴くんをいつもの優しい笑顔(自分で言うなって?)で誘い出す事にした。
「お姉さんのミスね。ごめん。
一緒に人選してくれるかしら。リストは私の研究室にあるから。
ここじゃ騒がしいし、バレると恥ずかしいから、研究室で話し合いましょ」
「しょうがないなぁ。また尻拭いかよ。
最後の最後までこうなんだから」
一片の疑いもなく誘いに乗ってくれたわ。さあ、お姉さんが一から十まで、女の隅々まで教えてア・ゲ・ルからね。天国まで逝かせてあげるわ。魔界に行く前に、ね。