-契約-  
 
「そういえば、答えを聞いてなかったね」  
”うずしお”の中のベッドルーム?には、使われた形跡の無い簡易ベッドがひとつあるだけだった。ロマンチックの欠片もないけど、時が時だし場合が場合だ。贅沢は言っていられない。僕は構わないけど、嵩月に申し訳ない気がした。  
ちゃんと契約をしないと嵩月の命に関わるとはいえ、コトの前に嵩月の口からはっきりと聞いておきたかった。  
「僕は、こっちに来て初めての夜に・・・・・・保健室で言ったよ」  
「あ・・・・・・」  
何の事だか思い出したらしい。とぼけていたわけじゃなく、本当に忘れていたんだろう。そういうところがいかにも嵩月らしくて、僕は少し落ち着きを取り戻した。  
「僕は、悪魔であろうがなかろうが嵩月が好きだ。。。  
嵩月は、どう?」  
何時に無く真剣な顔だったと思う。そういう風に心がけたけど、うまくいったかどうかは判らない。  
でも、嵩月には伝わったみたいだ。色白の整った嵩月の顔が、真っ赤に染め上げられたんだから。  
「あっ・・・・・・す、好きです。夏目くんのこと・・・・・・初めて会った時から・・・・・・・」  
初めて会ったって・・・・・・入学式の後のトイレの前での事だろうか。それほどいい印象じゃないと思うんだけど。  
そんな風に考えて、思案顔になっていたのだろう。嵩月が続けた。  
「あーー、夜。です」  
そうだった。入学式の前の夜に、例のトランクを奪いにやってきた時に初めて会ったんだった。  
「本当は・・・・・・殺してでも、イクストラクタを奪うつもりでした。でも・・・・・・できなかった」  
 
まさか、そこからとは思わなかった。てっきり佐伯会長との一件から、義務感で守ってくれているとばかり思っていた。これじゃ、操緒にヘタレ童貞呼ばわりされても言い返せない。  
「ごめん・・・・・・ホントに、気がついてあげられなくて、ゴメン」  
僕はもう、嵩月を抱きしめてあげることしかできなかった。  
「僕は、本当にニブいみたいだ。だから嵩月。君の口から聞きたい。  
僕は、悪魔だろうがなかろうが、君が好きだ。嵩月はどう?」  
抱きしめた嵩月の耳元で、僕はささやいた。嵩月の、真っ赤なうなじが目に入る。僕の顔も真っ赤なんだろうな。  
「好き・・・・・・です。夏目くんが、悪魔だろうが演奏者だろうが・・・・・・」  
「操緒がついてるよ、それでもいいの?」  
「いい・・・・・・です」  
その答えだけを聞いて、僕は自分の唇で嵩月の唇をふさいだ。初めてだった。  
キスが気持ちいいのか。嵩月だから気持ちいいのか。たぶん、その両方だろう。  
 
ついばむように嵩月の唇を貪りながら、僕はベッドに嵩月を腰掛けさせた。  
一度離れて、嵩月に再度確認をする。  
「じゃあ、いいね」  
顔を赤らめ肯く嵩月。その目は、少し潤んでいる。  
「僕も、こういう事は初めてなんだ。だから、イヤだと思ったら言って。してほしい事を言って。乱暴にしちゃうかもしれないから・・・」  
「いい・・・・・・夏目くんなら。何をされても・・・・・・好きなようにして欲しい」  
嵩月は、すべてを受け入れてくれる。こんな僕でも・・・・・・そう思ったら、もう頭の中は真っ白になった。  
僕も、君のすべてを受け入れるよ、嵩月。君が好きだ。誰にも渡したくない。  
 
「ごめん、嵩月。制服を脱いでくれるかな」  
時間があれば自分でやってみたいけど、今回は時間が無い。がっついてるように見えてしまうけど、諦めるしかない。  
「はい・・・・・・、でも」  
嵩月が潤んだ目で僕を見上げてくる。  
「僕も、自分で脱ぐよ。でも、こっちを向いていて。  
嵩月から目を離したくない」  
そう。目を離したら嵩月が居なくなってたなんて、考えたくない。目を離したくなかったんだ。  
「えっと、・・・・・・はい」  
お互い、向き合ったまま服を脱ぎ始める。自分で言った事とはいえ、これは自分でも恥ずかしかった。  
嵩月は恥ずかしいのか、僕と目を合わせようとしない。それでも、僕の言った事に従って、服を脱ぎ始めた。そうか、嵩月は下から派か。  
嵩月はスカートを足元に落とすと、制服の上着を脱ぎにかかった。ブラウスの裾から見え隠れする淡いピンクの薄い布地に目が奪われる。トロいわりにテキパキと制服を脱いでいく嵩月に目を奪われ、僕の制服を脱ぐ手が止まってしまう。  
「あの・・・・・・夏目くん、も、脱いで・・・・・・」  
それに気がついた嵩月が、僕を咎める。  
「あ、ああ。ゴメン・・・・・・綺麗だから、ちょっと」  
ただでさえ色白の肌を恥ずかしさで紅に染めているのを、さらに紅くする。顔を伏せて、ブラウスのボタンを外しにかかる。  
僕も慌てて服を脱いだ。そういえば嵩月には、一度パンツの中まで見られてるんだよな、と旧い話を思い出した。あの時は、こんな事になるなんて思ってもいなかった・・・・・・はずだ。  
 
「これ、も?」  
ブラウスを脱ぎ捨て下着姿になった嵩月が、僕に問い掛けてきた。  
「おねがい。正直、初めてなんで巧く外す自信が無い。  
情けないでしょ」  
男としては情けないかもしれないけど、僕だって女の子とこんな事をするのは初めてなんだ。ゆっくりできる時ならともかく、今は時間がおしい。  
真っ赤な顔をした嵩月が、それでも自分でブラを外してくれた。  
水着姿は何度も見たことがある。けど、こんなシュチュエーションで嵩月のストリップを見られるなんて・・・・・・させてるのは僕だけど。  
片腕で胸元を隠しながら、器用にブラを脱ぐ嵩月。だけど、由璃子さんいわく「Fカップ」の嵩月のバストには役者不足も甚だしいだけで、本人としては隠しているつもりでもぜんぜん隠れていない。  
 
最後の一枚を残して向き合った僕たち。喉がカラカラだ。  
生つばをひとつ飲み込むと、僕は思い切って嵩月に近付いた。  
「嵩月・・・・・・」  
「奏・・・・・・って、呼んでください」  
名前を呼んで抱きしめようとした時、嵩月がそう言った。  
僕は、それに答える。  
「奏・・・・・・、いいね」  
「はい、夏目くん・・・・・・」  
「智春、だよ。奏」  
奏は軽くうなずくと、言葉を紡いだ。契約の言葉だ。時間が巻き戻る前に一度交わした言葉。僕たち二人にとって、永遠の誓約の言葉。それをもう一度繰り返し確認する。  
「夏目智春―――、汝は我、嵩月奏の生涯の契約者となることを誓うか?」  
何度訊かれても、答えは決まってる。もう、あんな、嵩月を失う事なんて考えられない。  
「誓う。何度でも誓うよ。奏・・・・・・・、もう君を離さない」  
その誓いを言い終えるやいなや、今度は奏の方から唇をあわせてきた。  
「許します・・・・・・」  
 
誓約の言葉のあと、僕は奏を優しく抱きしめながらベッドに横たえた。  
その奏に、僕は覆い被さった。軽い口付けをしたあと、今度は閉じられた唇を割るように舌でつついてやる。少し開いた隙間に、僕は舌をねじ込んでいく。  
「んっ、ん〜〜〜」  
唇を塞がれた奏が、可愛らしい声をあげる。そのすきに、僕は奏の舌を求めた。僕の身体にまわされた奏の両腕に力が入る。  
奏から求められてる・・・・・・と思っていいんだろうか。でも、息が苦しくなってきた。  
鼻息を荒くするのも恥ずかしいので、一度口付けを離そうとする。  
「「はあ・・・・・・」」  
離れる唇の間を惜しむように、潤いの橋がかかる。  
目を閉じた奏の目元に、涙が浮かんでいた。  
「泣いているの?」  
僕の問いかけに、奏はくびをふる。  
「うれしい・・・・・・です。夏目く」  
「智春、だよ。奏」  
「智春、と、こういう風に、なれて・・・・・・夢、でした」  
 
好きになった人と思いが通じる。それがこんなに幸せな事だったなんて、知らなかった。  
「夢じゃないよ。これからも、ずっと続くんだ」  
頷く奏を抱きしめる。  
もう一度僕たちは口付けをする。唇を貪りながら、僕は気になっていた奏のバストに手を這わす。  
驚いたのか、奏の口内に入り込んでいた僕の舌に歯が当たる。けれど、それに気付いた奏は、すぐさまそれを戻す。  
 
柔らかい。  
 
誰だ、マシュマロなんて例えたヤツは。そんなもんじゃない。例えようなんてないじゃないか。  
推定Fカップの奏のバストは、力を入れると押し返し、力を抜くと吸い付いてくる。  
滑らかなのにしっとりとした手触りに、僕の思考は麻痺をする。  
「と、智春・・・・・・」  
僕の身体に廻した腕を、僕が奏のバストに置いた腕に添える。  
「いやなの?いやなら辞めるよ」  
泣いてるような、困ったような顔で、それでも奏はくびを振る。  
「いい・・・・・・好きな、ように、していい・・・・・・です」  
「そう?もっと、するよ」  
そういう奏に、僕は先に進むことを告げる。  
 
僕は身体をずらすと、手を添えたバストと反対側の山の頂に口付けた。  
そこには、淡いピンクの乳輪と小指の先端ほどの乳首が、その山頂を主張していた。  
その先端を、僕は躊躇いなく口に含む。  
「ああ・・・・・・。とも、はる。。。」  
切れ切れに僕の名を紡ぐと、奏は僕を抱きしめてくれた。  
そういえば、初めて会ったあの夜もこうして胸に抱かれたんだった。あの時は、このまま眠りについてもいいと思ったっけ。  
そう。すべては、あの時から始まっていたんだ。  
そのバストを、いま僕は貪っている。舌で転がし、唇で甘噛みし、優しく弄んでいる。  
「あっ、ああぁ・・・・・・んぅ、はぁ。。。はっ・・・・・・」  
そのたびに、僕の頭の上で奏のため息が聞こえる。他の男になんか聞かせたくない、僕だけに聞かせてほしい。そんな極上の音色が奏でられている。  
だけど、その声はまだ奏らしく、控え目で大人しい。  
僕は、口と手の攻撃を少し強めた。  
「声、もっと聞かせて。奏」  
今までより大きく首を振る奏。そう言えば、意外と頑固なんだった。  
ソレを思い出した僕は、痛いかな?と思うくらい、手で弄んでいた乳首をつねり上げた。  
「あっ、あ〜〜〜、ダメ・・・・・・です」  
この「ダメ」は、「いやじゃない」でいいのかな?そこまで力を入れたつもりはないけど。  
操緒がみていたら、「だから智春は・・・」って言われそう。  
 
なんて考えていたら、奏ににらまれていた。  
操緒の事を頭から追い払う。そんな僕の考えに気がついてにらむくらいだから、大丈夫って事なんだろうなあ。  
さっきの力加減で、再びバストを攻め始めた。  
「あん・・・・・・いま、だけは・・・・・・操緒さん、の・・・・・・事は、忘れて」  
「ごめん、奏。僕はほら・・・・・・自信が無いから。情けない話だけど」  
「そんなこと、ない・・・・・・です。私が、好きになった人、だから。  
もっと・・・・・・んっ」  
奏さん?その「もっと」は、「もっと自信を持って」ですか?それとも、「もっと愛撫を続けて」ですか?  
とりあえず両方のバストを弄んだ僕は、徐々に身体の下へと舌を這わせる事にした。  
声は控え目でも、先ほどから奏の膝が擦りあわされるように動いている事はわかっていたのだから。  
 
自分でも拙いと思う。でも、そんな僕の愛撫でも、奏は感じてくれている。そう思うと、少しは自信が湧いてきた。  
悪魔の力を使えば、大の大人ですら翻弄する奏が、僕の一挙動で翻弄されているんだもの。そんな奏の姿を客観的に見る事ができて、僕は少し・・・ほんとに少しだ・・・落ち着きを取り戻した。  
感じすぎるバストから愛撫が離れた事で、奏の息も落ち着きを取り戻しかけていた。僕は奏の身体の上を這い上がり、キスをしようとした。  
驚いた。奏のほうからキスを求めてきたんだ。  
「「んっ、ん〜〜〜っ」」  
鼻から抜けるふたりの荒い息が重なる。  
 
始めた時は洗いたての・・・というか、未使用っぽい感じだったベッドが、何ともいえない甘い香りに包まれている事に気がついた。化粧っ気のない奏の体臭だと気付くのに、それほど時間はかからなかった。  
それと同時に、自分の匂いが気になった。  
「ねえ、僕・・・・・・臭くない?いまさらなんだけど。  
ほら。あれだけの戦闘をしたあとじゃない?だから・・・・・・」  
時間の巻き戻りと共に、ホコリっぽさは消えている・・・・・・はず。だけど、新陳代謝はどうしようもない。一度生命の火が消えてからリセットされた奏と違って、僕は昨日からそのままだ。  
そんな僕の杞憂を、奏はくびを振って否定してくれた。  
「そんなこと、ない・・・・・・です。私は、好き。  
この匂いに、つつまれていたい・・・・・・つつまれているのが、うれしい」  
えっと、匂いは否定されなかったけど、臭う事も否定されなかったんだよね、これ。もっとも、どうしようと思ったところでどうにもできないんだけど。  
だから、僕は言葉と行為で反撃に出た。  
「奏もいい匂いだよ。優しい感じがする。甘い感じがする。儚い感じがする。  
僕も好きだ。離したくない、離れたくないよ」  
軽く口付けてそう言うと、落ち着きを取り戻しかけていた奏の身体がふたたび真っ紅に染め上げられる。それも全身だ。  
反射的に離れようとする奏を抱きしめ、その奏の手を僕の下腹部へ導く。  
「あっ・・・・・・」  
奏さん。あなたは僕のパンツの中まで見ているハズなんですけどね。もっとも、あの時はこんな状態じゃなく・・・・・・対極ともいえるくらい縮こまっていましたけど。  
と思ったのもつかの間だった。  
「おおきい・・・・・・」  
最初はビクッと震えてるのがわかった。そのあと、おずおずと。形や大きさを確かめるように手を這わしてきた。もちろん、まだパンツの上からだ。  
 
気持ちいい・・・・・・。  
 
下着の上からなのに。いかにも恐る恐るの柔らかい力しか入っていないのに。女の子の手がこんなにも気持ちいものだったなんて、知らなかった。  
「奏・・・・・・気持ちいよ」  
僕の言葉に、真っ赤になった顔で肯くと、奏がさらに密着してきた。胸元で奏のFカップがひしゃげる。  
柔らかく形を変えるバストにも関わらず、その先端で主張する乳首が、僕の乳首を擦れあう。  
「あっ、ああぁ・・・・・・」  
僕の肩口に顔を埋め、奏が可愛らしい声を発する。先ほどまでは膝だけだったモジモジが、全身に渡っているのに僕は気がついた。  
というか、気がつくまで忘れるくらい、奏の手が気持ちよかったんだ。身をゆだねてしまったと言ってもいい。  
だから僕もお返しをする事にした。  
奏を守る最後の砦。服を脱いだ時から気になっていた薄いピンクの小さな布地、ショーツに手を伸ばす。  
僕は驚いた。  
 
女の子の身体が、興奮すると濡れるという事は知っていた。けれど、ここまで濡れるものだとは思わなかったんだ。  
「いやっ」  
反射的に身体を閉じようとする奏。そこに僕は、強引に手をねじ込んだ。  
「すごい・・・・・・濡れてる」  
「いや、・・・・・・言っちゃ、だめ・・・・・・です」  
表地からでもわかるくらいビショビショだった。  
「・・・・・・いつから?」  
意地悪く僕は訊く。奏は大きくくびを振って、答えるのを拒もうとする。  
「はあ〜〜〜っ、くっ。。。」  
僕は、女の子の下着特有の二重になっている部分のその中心に指を立てて、前後に引っ掻くように動かした。効果覿面とはこの事だろう。面白いように奏の身体が跳ねる。  
「言わないと、もっとするよ?」  
それでも唇をかみ締めてくびを振る奏。恥ずかしさと快感を我慢する奏のその顔が可愛くて、僕はさらに攻撃の手を強める。  
「はっ、あぅ・・・・・・ダメ。。。。。。だめ、です」  
僕の肉棒の形をなぞっていた奏の手は、もう止まっている。そのすきに、僕は奏の身体から離れて足元に移動する。  
もう、奏のショーツはその役目を放棄していた。ビショビショに濡れ、身体に張り付き、淡く翳る陰毛の形から性器の形まで浮き上がらせていたんだ。  
 
「ねえ、いつからこんなに濡らしていたの?」  
意地悪く僕は訊きつづける。  
「知りたいんだ。奏が感じてくれた事を」  
足元側に移動した事によって、奏を下から見上げる格好にった。目標を目に収めた事で、ねらいがつけ易くなる。  
しなやかでカモシカのような奏の右足を担ぎ上げ、左脚の内腿を膝からなぞりあげる。  
「うーーー、うーーーっ・・・・・・」  
身体を跳ねさせながら、両手でシーツを握り締めながら、それでも奏はくびを大きく振って答える事を拒んでいる。  
恥ずかしがり屋でおしとやかな上に頑固さが加わって、必死に抵抗している奏。でも、その時の僕は嗜虐的になっていたんだと思う。どうしても奏の口から聞きたかったんだ。  
だから僕は、女の子の一番感じる部分を責める事にした。  
 
「言わないなら、こうだよ?」  
内腿を撫でていた右手を、ショーツの舟底へと向ける。その中心を引っ掻くようにしながら前身ごろの方向へ掻きあげる。左右の唇が縒りあわさった部分に肉芽を感じた僕は、そこを押し込むように力を加えた。  
「はぅっ、あぁあ〜〜、いいっ、いいっ・・・・・・ますっ。。。  
はぅっ、はじめっ・・・・・・から、ですっ・・・・・・っっく」  
翡翠や薔薇輝に弾き飛ばされた時も、イングリッドやヴィヴィアンに攻撃を受けた時も、自信の非在化が進んでしまった時ですら上げなかった悲鳴ををあげている。  
これほどまでとは思わなかった。でも、そんな奏の乱れようが面白くって、僕は手をはなすことができなかったんだ。  
「はじめから、って?キスして、舌を弄んだ時から?」  
意地悪く、僕は続きを促す。もちろん、右手は肉芽を弄んだままだ。  
「くっ、くちの、なか、でっ・・・・・・なつ、めっ、くん・・・・・・っのっ、舌っ、、、がっ、あっ、ばれっ、っえっ・・・・・」  
言葉にならなくなってきたので、僕は力を少し弱めた。その代わり、空いてる方の手を、すでにひと回り大きく勃起している乳首に向けた。  
「あっ、あっ、あぅーーー。されるぅ、、、、ことを・・・・・・」  
呼び方が前の「夏目くん」に戻っていたが気にしない事にする。奏も、すでに思考が逝きかけているんだろう。  
つまり・・・・・・ディープキスで、これからされる事を想像して濡らしちゃったって事?  
奏が乱れていくぶん、僕の方はそれだけ落ち着きを取り戻していった。でも、そんなに期待されても困るんだけどなあ。僕だって初めてなんだし。  
だから、期待してくれたであろう事を、やってあげる事にした。  
 
右手で弄んでいた肉芽の部分に、僕は口付けをした。  
「はぅう・・・・・・、なんいっ!?」  
今までと違う感触に、奏が戸惑った声をあげる。  
「奏が想像したこと、だよ。大丈夫、ちゃんと期待に応えてあげるから」  
「えっ、えっ、えっ、・・・・・・いやぁ〜〜」  
シーツを握り締めた手を離し、顔を覆うようにイヤイヤをする。でも、やめてなんかあげない。奏にはもっと気持ちよくなって欲しい。  
だって、この先、きっと、痛い思いをさせてしまうから。  
ショーツの股ぐりから指を指し込み、その部分を捲り上げる。舌を伸ばして、その肉芽をつついてやる。  
「んっ、んっ、んっ・・・・・・」  
奏は脚を閉じようとするものの、僕の頭が邪魔になって閉じられない。結局、僕の頭を挟み込んだだけだった。  
「いゃっ、いやっ・・・・・・はぅ〜〜っ」  
奏から発せられる声が、可愛らしい声から、艶かしい喘ぎ声に変わっていくのが楽しくて、僕はもっと夢中になっていった。  
その声が、だんだんと大きくなっていく。  
「っん、ダメ・・・・・・やめっ、てっ。。。っなつめっ、っくんっ!」  
脚の力を抜いて、僕の頭を押し戻そうとする奏が、叫びに近い大声をあげた。力は入っていないが、両手で僕の頭を押し、身体を上にずりあげさせようとしている。  
「あっ・・・・・・、ごめん。やりすぎた」  
その声に、僕は我に帰る。かなり夢中になっていたみたいだ。  
でもさ、考えてもみてよ。健全な15歳の男子高校生が、初めて好きになった娘と想いが通じてセミヌードでベッドインしてるんだよ。夢中にならない方がオカシイでしょう?  
 
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・・・・・・・・・・」  
僕が離れると、奏は身体を弛緩させるようにぐったりと四肢を投げだした。呼吸が浅く、速い。  
もしかして、と思って訊いてみる。  
「奏・・・・・・、もしかして、イッたの?」  
僕の問いかけに、少しの間をおいてから奏がわずかに肯いた。  
「たぶん・・・・・・でも、はじめて、だったから」  
僕のほうに軽く視線を流したあと・・・これがまた、普段の奏からは想像もつかないような艶っぽさで、ドキリとしたのは内緒だ・・・照れたように、拗ねたように、僕から顔をそむける。  
その耳元に、僕は囁くように問いかけを続けた。好奇心もあったし、奏の羞恥を煽るためもあった。  
「奏は、その・・・・・・自分で弄ったりした事は?」  
案の定、奏は顔を真っ赤に染めてくびを振る。  
「たまには・・・・・・でも、こんな風に、なるまでは、しません」  
うん。僕もあまり奏が自分で慰めているシーンを、巧く想像できない。だけど、奏だって15歳の女の子だし、全然やった事が無いとは思っていなかった。「たまに」って言ってるし、今度どんな時にするのか訊いてみよう。  
 
そうしているうちに、奏の息も落ち着いてきたみたいだ。僕の方も、かなり限界に近い。  
奏じゃないけど、僕だってそうそう自分で処理れきるわけじゃない。操緒は一応気を利かせてくれるけど、たびたびだとやれ「エロはる」だの「スケベ童貞」だのとしつこく文句を言うんだ。  
ましてや、アニアが同居してからは、ほとんど処理できなかったと言ってもいい。  
それに、自分の爆発を抑えるために奏を責めてたけど、奏の乱れる姿を見て抑えもきかなくなってきていたんだ。  
「いいかい?奏・・・・・・」  
僕の言葉に何の事か察した奏が、天使のような微笑みでうなずいてくれた。  
「やさしくしてください・・・・・・でも、何があっても、躊躇わないで」  
その言葉に、今度は僕がうなずき返す。  
「わかった・・・・・・じゃあ、始めるね。。。  
脱がすよ」  
お互い、最後の一枚が残っている。僕は、先に自分のトランクスを脱ぎ捨てると、奏の腰に残ったショーツに手をかけた。  
「少し、腰を浮かしてくれる?」  
うなずいて腰を浮かせる奏。めくり返すようにヒップから抜き取った奏のショーツは、僕の唾液と奏の愛液でかなり重くなっていた。  
 
僕は、一度ベッドサイドに立って、奏の全身を見渡した。少女としての奏の最後の姿、それを目に焼き付けるために。  
美しかった。この世の物とは思えないくらい、美しかった。  
期待と不安を込めて僕を見つめるふたつの瞳。甘い吐息を届かせる軽く開いた唇。浅い呼吸に上下するバストは、仰向けになっていても形が崩れない。  
どこに内臓が入っているのかと思わせる細いウエスト。大きさを感じさせない滑らかな曲線を持ったヒップ。カモシカのような脚と引き締まった足首。  
その総てを包み込む少女という名の殻を、これから僕が破る。  
それが、とても神聖な儀式のように思えた。  
 
奏は、両腕を脇に降ろして身体を開きながらも、片膝を立てて大事なところを隠そうとしている。  
僕は、その両脚の間に身体を滑り込ませる。そして、両膝を持ち上げて身体を開かせようとする。  
「奏、力を抜いて」  
僅かにうなずくと、脚から力が抜けた。僕は、両の腿を両脇に抱えるようにして、身体を前へ押し進めた。  
僕の肉棒が、奏の肉芽と触れ合う。あまりの気持ちよさに、アタマがクラクラした。奏も瞬間、身体に力が入ったのがわかった。  
きつい体勢になるのはわかっていたけど、僕は奏の腿を脇におろすと、のしかかるように奏に顔を近づけた。  
「大丈夫。怖くないよ。僕に任せて」  
気休めでしかない事はわかっている。女の子の初めてがどれだけ痛いかなんて、男の僕にわかるはずなんかない。  
それでも、僕は奏に何かを言わずにはいられなかった。奏が肯いてくれた。  
 
僕は、上体を起こすと、奏の秘裂に指を添え、左右に開く。穢れを知らない処女腔が顔を出した。そこはもうじゅうぶんに潤っていて、僕の侵入を待ちわびているように見えた。  
いきり立つ肉棒を押さえつけるように角度をあわせ、その処女腔へと導いてやる。  
 
にゅるん  
 
肉棒の先端が膣口に飲み込まれた。いや、単にハマっただけと言ったほうが近いかもしれない。  
でも、それだけで僕には腰の奥から全身へと快感が広がった。  
「うっ・・・・・・」  
「あっ・・・・・・」  
僕は、ゆっくりと腰を前へ進める。程なくして、渋い抵抗にぶつかる。  
奏はもう一度肯いて、身体の両脇に投げ出していた腕を僕の首にまわしてきた。少女の、逃げないという意思と覚悟なんだろう。  
「そのまま、もっと、ずっと、奥まで・・・・・・  
私は、何があっても大丈夫だから。なつ・・・・・・智春、だから、大丈夫」  
その言葉に、僕も覚悟を決める。  
「一気にいくよ」  
僕は、一度軽く腰を引くと、勢いをつけて奏の身体に腰を進めた。  
 
ビッ!  
 
聞こえるはずのない、何かが裂ける音が確かに聞こえたその時、僕の首にまわされていた奏の両腕に力が入った。  
いや、両腕だけじゃない。僕の両脇に投げ出された両脚も震え、細く締まったおなかも波うっている。  
顔を見ると、両目をきつく閉じ、唇は一文字に閉じられ、歯を食いしばっているのが窺える。  
僕はというと・・・・・・  
 
きつく、硬く、締め付けられていた。それなのに・・・・・・それ以上に気持ちよさが先走り、勝手に腰が動きそうになる。  
どうなっても構わない。すぐに果ててもいいじゃないか。  
そう思って、奏の顔を見たんだ。見たら、動けなくなった。  
奏が、全身で僕を受け止めてくれている。全霊で受け入れてくれている。  
必死で。だから。僕は。動けなかった。  
 
必死になって受け入れてくれている奏に、何かしてあげたいと思った時には、もう身体が動いていた。  
きつく閉じられたふたつの瞳にキスをする。食いしばられた唇にキスをする。汗をにじませた額にキスをする。長い髪から覗かせた耳たぶにキスをする。  
震えている乳房を優しく撫でる。揉みこむ。起立した乳首を優しく弾く。つまむ。  
 
「もう、・・・・・・だいじょうぶ、・・・・・・だから」  
奏はまだ痛そうにしているけど、少しづつ息遣いももどってきているようだ。  
「うごいて・・・・・・いいです」  
そうは言われても、いまだ強張っている奏の顔を見ていては動けないでしょ。  
「大丈夫、動かなくても気持ちいいから」  
これは本当だ。というか、いま動くと本気でヤバい。  
確かに先端・・・奥の方は硬く握られているように締め付けられている。だけど、根元・・・入り口は別なんだ。  
強く、優しく、柔らかく、しっかりと、包み込むように抱いてくれている。  
最初はほんの入り口だけだったその動きが、少しづつ奥の方に広がってきている。奏の息遣いが戻るのとあわせるように・・・・・・。  
「ありがとう、ともはる・・・・・・だいぶ、らくに、なりました」  
顔の強張りはだいぶ治まってますけど、まだ身体には力が入ってますよ、奏さん。  
それがわかっているから、僕はキスの嵐と愛撫をやめなかったんだ。  
だけど、まさかこれが・・・  
 
どのくらい、一番奥まで挿入したままそうしていただろうか。  
奏の息遣いも落ち着いて、全身の力みも程よく抜けた頃。その前兆があったのは気付いていたんだ。だけど、奏の痛みや力みをどうにかする事の方を優先した僕は、それを疎かにしてしまっていた。  
 
ゾワん・・・・・・  
 
奏の胎内に入っている僕の肉棒から、とてつもない快感が伝えられてきた。  
なんだ、これ  
思ったのは一瞬だった。気持ちよすぎる。ヤバい。  
今度は僕が慌てる番になった。  
動けない・・・・・・いや、マジで。  
僕も奏も、まったく動いていないはずなのに、奏の膣内だけがゾワゾワと煽動を繰り返している。  
「あっ・・・・・・、かんじ、ます・・・・・・ともはる、を」  
そんな奏の言葉ですら、胎内を伝わって微妙に煽動が変化してるんですよ、奏さん。かと言って、喋らないでとも言えないし・・・  
僕は全身全霊をもって堪えるけど、正直、自信がない。  
肉棒ごと奏に食べられる。そう思った時、僕は動こうとした。  
「動くよ、いい?  
っくっ・・・・・・」  
肉棒を飲み込もうとする煽動に逆らうように腰を引こうとした。  
「あん・・・・・・ん」  
僕の動きにあわせた奏の小さな嬌声が引き金になった。溜まりに溜まった僕の欲望が、一気に爆発した。  
「ヤバッ!・・・・・・ヱっ!」  
「ダメっっっ!」  
僕は奏の胎内から肉棒を抜こうとしたんだ。  
だけど、力みの抜けた奏の両腿が、僕を逃がしてくれなかった。両脚を僕の腰に巻きつけられたら、僕は逃げられない。  
先ほどまで達していたと思われていた膣奥のさらに奥まで、奏は貪欲に僕を求めてくれた。  
僕の肉棒が、今度こそ本当の最奥、突き当たりまで差し込まれた時、僕は自分の欲望を放出した。  
「「あっ、ああぁ〜〜〜〜〜〜ぁあっ」」  
 
これが操緒だったら、なんと言われただろう。  
「判子、スリー(半こすり)」とか「中田氏(膣内だし)」とか「候(そうろう)」とか・・・・・・なんにしても情けないこと甚だしいよね。  
でも、僕だって初めてなんだから、仕方ないだろっ!  
 
そんな事を考えてるさなかにも、僕の放出は止まることを知らなかった。  
自分で処理した事は、何度もある。だけど、こんなに長い時間、続いた事なんてない。  
奏の嬌声が、さらに大きくなった。  
「あっ、あっ、ああぁあ〜〜〜〜〜んっ」  
膣内で僕の精液が奏の子宮口を勢いよく叩いているのが、僕にすら感じられる。  
それにあわせて、奏の身体がビクン、ビクンっ、と痙攣する。  
「ダメっ、だめですぅ〜〜〜ぅ」  
僕の射精の勢いが弱まると、さらに搾り取ろうとするように膣内の煽動が激しくなった。強制的に吸い出されるような感覚が、肉棒から腰の奥まで伝わってくる。  
僕の腰にまわされた奏の両脚にも力が入る。  
「あぅ、かっ、奏ぇ〜〜〜〜」  
もぅ、名前を叫ぶ事しかできなかった。いや、それができただけでも僥倖だと思う。  
その叫びにあわせるように、僕のアタマにまわされていた奏の両腕が、僕を抱きしめるように動いた。  
僕も奏を抱きしめる。  
 
長い、長い放出がようやく終わった。奏も僕も、脱力している。なるたけ奏に負担がかからないように、僕は奏に覆い被さった。  
「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・」」  
二人とも、息が荒い。全身も汗でびっしょりだ。  
全身に倦怠感が残る。フルマラソンを走ったって、こんなに疲れはしないはずだ。  
それなのに、清々しい爽快感がある・・・・・・ただ一ヶ所を除いて。  
奏の胎内に残った僕の肉棒。これだけが、さっきほどじゃないにせよ「まだ働き足りない」と言わんがばかりに主張してるんだ。  
「ああーー、夏目くん、を感じます」  
微笑みながら、奏がそう言ってくれる。奏にとって僕はやっぱり「夏目くん」なんだね。  
倦怠感もあって、僕は呼び名なんてどうでもよく感じていた。  
「奏も。まだ僕を離したくないって言ってる」  
「えっ、えっ!?」  
「だって、奏の膣内で力なくしている僕を、また飲み込もうとしてるよ」  
そう。奏の言葉ひとつひとつに呼応するように、膣内ではその膣壁が僕を飲み込もうと、奥へ、奥へと導こうとしているんだ。  
その言葉に、奏は顔を真っ紅に染め上げる。  
僕はというと、奏の胎内で再び力を漲らせ始めていた。  
 
二人の呼吸がようやく落ち着いたところで、僕は一番気になっていた事から、いくつか奏に訊くことにした。  
「ねえ、膣内出ししちゃったけど、大丈夫?」  
僕の質問に、奏は指を折って何かを数える。  
「・・・・・・・・・、あーーー、だいじょうぶ、です」  
・・・・・・ちょっと、奏さん?その間は何でせうか?僕は、先ほどの爽快な汗とは違う冷たい汗が吹き出るのを感じた。  
「だいじょうぶです、夏目くんと、ですから」  
マテ・・・・・・大いにマテ。それは「危険」って事では?  
「だいじょうぶです、夏目くんは、逃げませんから」  
いや、その、、、天使のような微笑みで言われましても。。。  
「あ・・・・・・」  
悪魔ですか、アンタはっ!と突っ込みそうになって思い出した。嵩月家は名門悪魔の一族でした。  
僕は脱力した。もう、どうでもいいや。それに、奏とはもう、離れるつもりは無いんだし。  
だから、もうひとつの疑問を奏に問い掛けたんだ。  
 
「さっき、奏もイッてた?」  
醒めかけてた奏の顔色が、さっき以上に紅く染まった。  
「あーーー、たぶん。あたまの中・・・・・・真っ白になりました。。。あっ」  
その返事を聞いて、奏の膣内に納まった僕の肉棒がビクンと震えた。最後の「あっ」は、それを感じたんだろう。  
「でも・・・・・・・・・」  
奏が言葉を続けようとするんだけど、その語尾はごにょごにょと曖昧になってしまっている。  
僕は、とりあえず謝っておく。  
「ごめん・・・・・・その、、、早過ぎだったよね。ごめん」  
「しかたない、です。その。はじめてですし・・・・・・」  
慰めてくれるその言葉の最後に、小さな声で「だから」と聞こえたのは気のせいですか?奏さん。  
もっとも、僕もこのまま終わるつもりはない。だいたい、ジュニアとも言える肉棒くんは、さっきから主張してやまないんだ。  
だから、奏に確認する。  
「このまま、いい?」  
慎ましやかに、でも、しっかりと奏が頷いた。それを見て、僕は上体を起こして腰を動かしだす。  
 
「痛かったら、言ってね」  
そう言いながら、僕は最奥まで埋まりこんでいる肉棒を、入り口ギリギリまで引き戻した。  
ゆっくりと引き出し、ゆっくりと挿入する。  
引き出す時は留めるように、挿入の時は抵抗となって、なのに僕の動きを阻害しないように、僕に快感を与えるように。。。奏の膣壁が蠢く。  
「セックスに溺れるなんて、自制心が無いからだ」  
そう思っていた。  
ごめんなさい。これはヤバい。奏の身体に溺れそうだ。  
みるみるうちに射精感が昂ぶってくる。  
「はあ〜〜〜〜〜〜ぁ、はぁ〜〜〜〜〜〜あっ、はあ〜〜〜・・・」  
奏はというと、僕の腰の動きにあわせてフイゴのように呼吸をしている。  
感じ始めているのか、最初は顔だけだった紅潮が、だんだんと全身に広がってきている。  
 
「これからも、ずっと一緒だよ、奏っ」  
「いつまでも、一緒です、夏目くん」  
これが、僕が16年生きてきた中で、もっとも長い2時間の最初の出来事だった。  
 
 
 
-契約- 番外編  
 
直貴に追い出された、アニアと操緒。直貴のあとについて、操作室の方へ向かう廊下で、操緒がアニアに問い掛けた。  
『さっきから、感覚が変なんだけど。ニアちゃん、何か知ってる?』  
「どんな風にだ?」  
『ん〜〜、消えようと思っても消えられない、とか?』  
その答えは、前を歩いている直貴から返ってきた。  
「ああ、ちょっと設定をさっき変えたから。大丈夫、帰還する時には戻すよ。  
基本設定と安定装置の設定をちょっといじくった」  
『え〜〜、なんで〜〜』  
操緒は、頭の上にハテナマークを浮かばせているような顔で、直貴に問い詰めた。  
 
「操緒ちゃん、消えてどうするつもりだったの?」  
当然の質問を操緒にする。  
『そりゃ、もちろん・・・・・・』  
語尾を濁すその答えを聞いたアニアが  
「どうせ、智春と奏の情事を覗き見でもするつもりだったんだろう」  
と割り込んだ。  
操緒の顔の上半分に縦線が走る。図星だったようだ。  
「あのねえ、操緒ちゃん。安定装置のついた演操者の副葬処女が、その演操者の情事に意識を重ねたら、どうなると思う?五感がモロにフィードバックするんだよ?」  
「操緒、おまえは女の身で男としてのセックスの快感を感じたいのか?」  
直貴の言葉を引き継いで、アニアがそのものズバリの言葉で答えた。  
操緒の顔が「ボンっ!」と音を立てたような早さで真っ赤になった。  
『そっか、感覚が共用できるって、こういう事なんだ・・・・・・』  
 
操作室で、直貴はK鐵の修理にとりかかっている。アニアが機巧魔神のスペシャリストとはいえ、手伝う事など何も無い。  
操緒とアニアは、だから壁際の椅子に座ってただ見ているだけだ。  
直貴に聞こえないように小声で、アニアは操緒に語りかけた。  
「だから、さっき『いいのか?』と言ったんだ。気になるんだろう?」  
『ん〜〜、そうなのかな。わっかんないんだよねー』  
はぐらかしてるのか、まだちゃんと理解していないのか。アニアは後者だと思った。  
「この際だから言っておく。私は智春が好きだ。一巡目の、ではなく二巡目のあの智春が好きなんだ」  
操緒が驚いた顔をする。  
『えっ、だって、ニアちゃんの好きな人って・・・・・・』  
「一巡目の智春は、いわば初恋だな。惹かれているのは、二巡目の方だ。  
だから、奏もお前のライバルだと思っている」  
『ライバル、って。あのねぇ。嵩月さんはともかく・・・・・・』  
何で自分も含まれているのか、心底わからないといった操緒の顔だ。  
「わかってないならいい。私の気持ちだけ覚えておいてくれ」  
 
聞いていたのかいないのか。アニアと操緒の会話がちょうど一段落したとき、直貴が振り返ってこう言った。  
「操緒ちゃんには悪いけど、さすがに弟の情事を見せるのはねぇ・・・・・・  
でも、どうしても見たかったら、律都にかけあってみな。この”うずしお”は常にモニタしてるはずだから」  
その時の直貴の顔は  
「あれは、私たち以上の悪魔だ」(アニア・談)  
『そうだね〜、幽霊でもゾッとしたよ〜』(操緒・談)  
だったそうだ。  
 

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