「しっ、縛られて……裸に剥かれただけで……もうそんなに大きくしちゃったの……っ?」
蔑みというより、羞恥に満ち満ちた口調だった。本来ならその立場は僕が立つべきところだろうが、今この場に常識という概念は見当たらない。
「……恥ずかしい、男……。そんな貧相なモノをぶら下げて……の、罵られて興奮するなんて」
か細い声が震えるのはその羞恥からか、それとも男を知らぬゆえの緊張か。
寝具の上に仁王立ちしたひかり先輩は、薄暗いなかでもそれとわかるくらいに赤面している。ここで冷笑と共に思い切り見下した視線が欲しかったが、ちらちらと目線をよこすだけで精一杯らしい。
僕は全裸でベッドに横たわり、死にかけの虫のようにうごめきながら股ぐらの棒を膨らませている。後ろ手を縛られ仰向けに転がる様は蛙のようだ。
「もっと……もっと罵ってください……」
僕が豚のごとく言うと、ひかり先輩の表情は泣き出しそうに歪む。無理もないとは思う。
すでに事前の台本からは外れ始めている。それでもひかり先輩は懸命に僕を責め立て続けてくれる。
いつからこんなことになってしまったのか、そんな僅かな思考は嗜虐的な快感に押し流されて掻き消えてしまう。今はただ、操緒が眠っているうちの逢瀬を楽しんでいたかった。もっとも、楽しんでいるのは僕だけかもしれないが。
責め語に涙の気配が混じりだしたようだが、僕は近づきつつある絶頂に対して抗う術を知らなかった。
ひかり先輩の言葉が途切れた瞬間、
「ひ、ひかり様……踏んで下さい……!」
身の内に猛る欲望のままに言い放っていた。
絶句したひかり先輩が、黒光りするボンテージに包まれた肢体を縮こまらせた。が、そんなことには構わず、腰を突き出すようにしつつ、
「その脚で、この汚い僕めを踏みにじって――おおおっ!」
「へ、変態っ!! 夏目くんの変態変態変態!!」
容赦のない勢いで降ってきたおみ脚が、潰れよとばかりに股間に食い込んだ。
もはやひかり先輩は本心を口走っているだけだ。元々SMプレイには真っ向から反対していたのだから。しかし、本音からくる罵りだからこそ、感情のこもりようはひとしおだ。肉棒が痛みと歓喜に震え快感は激しく高まっていく。
「イッ……ク……!」
情けない声が搾り出すように漏れたと同時、踏まれてひしゃげたペニスから精液が吹き出した。
「ひゃっ……」
突如足下で起きた反応にひかり先輩は逃げるように脚を引くが、むしろ射精は勢いを増す気配すらあった。
下腹部から胸に至るまで自らの生暖かい子種に汚されてなお、僕の心に訪れるのは満足感と幸福感であった。
「……な、夏目くんの……馬鹿……!」
鳴咽まじりの言葉が虚しく響いた。とうとう泣き出してしまったらしい。
さすがに罪悪感が湧き出るのを感じた。しかし、崩れ落ちた彼女に僕が最も掛けたい台詞は、またお願いできますかという一言だった。