僕は紆余曲折の末に、杏と結婚して、同時に実家である大原酒店を継ぐことになった。周りからは羨ましがられたり文句を言われたりしたが関係無い。今回のことは僕が自分で選んだ事だ。
「杏。愛してるよ」
呟いた僕の瞳は杏を見ていた。
「あたしもだよ。トモ」
呟いた杏の瞳は僕を見ていた。
「手を離さないでね」
杏がそう言って繋いだ手を強く握ると、僕は黙って握り返した。暗闇の中、月明かりだけが二人の体を明るく照らす。お互いに微笑を交わす。
僕は杏の首筋にキスを落とす。
「ちょっと……そんなとこに痕つけないで……見えちゃう」
「新婚だから、当然当然」
鎖骨にもキスマークをつける。
「ん、もう! くすぐったい」
キスマークをつけることに夢中になってる僕の頭を杏は叩いた。
「なんだよ」
「なんでそんなに痕ばっかつけるのよ!」
その問いに僕はにやりと笑って、
「杏は僕のって証拠だよ」
そう答える。それを聞いて、杏も僕の首筋にキスをする。
「そんな証拠なくたって、あたしはトモのなんだけどなぁ」
「そう言いながら杏だって僕に痕つけたじゃん」
僕の首筋には杏の首筋と同く赤く鬱血した部分ができた。
「おかえし」
「この、やったな〜!」
僕は杏に抱きつき、パジャマのボタンに手をかけた。
「きゃぁ、こら、んもう、トモ!」
怒っているが杏は楽しそうに笑っている。僕はこの笑顔を護りたかったのだ。それが今傍に居る。それだけで僕は嬉しくて。
「ここにもつけとこっかな。」
そう言って胸元にもキスマークをつけた。
「やん、もう〜トモばっかりずるい! あたしも」
杏も僕のパジャマを脱がし、同じく胸元にキスマークをつけた。
僕は昔は小さかったが今では立派に成熟した杏の豊かな乳房を掴み、そっと揉んだ。
「ん……」
杏の切ない吐息が聞こえる。
「杏、可愛いよ」
そう言って乳首を吸い始めた。
「んんん!」
じれったそうに身悶えする杏。
「ここもキスマークって残るかな?」
そう言った僕の頭に杏の拳が降ってきた。
「馬鹿なこと言わないでよ!」
「僕、けっこう本気だけど?」
本当に真面目な顔で言われて、杏はハーっと溜息をついてしまった。
「そうだ、下のほうにもキスマークを……」
「え? ちょっと、トモ?」
杏が慌てている間に僕は彼女のパジャマのズボンを脱がせて、太ももにもキスマークをつけた。
「もう、そんな所まで……」
「杏のパンツ、もうグショグショ。脱がせていい?」
答えが返る前に僕はスルリとパンツを脱がせた。
「あ……だめ!」
杏の口から制止の言葉が出る。たぶん反射的に出た言葉だろう。
「本当にダメ?」
杏の太ももの間から顔を出し、僕は聞く。彼女の顔は見る見るうちに赤くなり、僕を睨んだ。
「意地悪」
そんな杏を見て、僕は優しく微笑み、頭を撫でた。
「そんな目で見るなよ。ごめん」
恨みがましそうな顔で杏は僕を見つめる。
「本当に悪いと思うならキスして」
握り合った手をギュッともっと強く握って、僕は杏の唇を奪った。
「なぁ、もうそろそろ……我慢できない」
僕は握っていない方の手で杏の手を握り、自分の憤りに触れさせた。
「うん、いいよ。あたしも我慢できないから」
すでにかなり濡れていた杏の内部に僕が進入することは容易かった。
「あっあぁぁあ! トモがぁ……」
ビクンと体を震わせ、杏は僕にすがりつく。
「杏の中……気持ちいいよ」
大きく腰を振り、杏も僕の動きに合わせた。
「あっああぁぁん! いいよぉ、トモぉ!」
「杏、いつもよりもなんか……あ…感じてる?」
杏は唇を引き結び、潤んだ瞳でコクコクと頷いた。
「なんか…僕も……今日はすっごく……」
僕も呼吸を荒くし、快楽を追いかけて激しく動いた。
「あっ! あたしも・・・いやぁ! イッちゃうぅん!」
「ぼ……僕も……杏……好きだ」
「あたしもぉ……」
僕達は一気に頂点を登りつめた。
荒い呼吸を整えながら、僕達はしばらく止まっていた。
「トモぉ・・・。」
杏が切なそうな声で僕を呼ぶ。僕は強く杏を抱きしめた。
「好きだ」
僕の言葉に杏も頷く。
「トモ……、もっかいしよ?」
『トモ、そろそろ起きなよ』
頭上から聞き馴染んだ声が降ってくる。操緒の声だ。
―――夢か。でも、ああいうのも悪くないか。夢を見て、それを叶えたいと思うのは自然な事だし。
意識を切り替えてベッドを出る。期末試験の初日だ。頑張ろう。