暗い寝室で、エルクはリーザと絡み合っていた。
「エルク・・・エルクぅ・・・っ!」
何度も後ろから体を突き上げられるたびにリーザが鳴く。
「・・・っ」
そっと顔を後ろに向け、エルクの顔を盗み見た。
眉をひそめて目を瞑り、歯を食いしばっている。
いつもこうだ。
毎回エルクはリーザを目を閉じて抱く。
「あ・・・っ」
重力も手伝って大きくなった乳房をつかまれ、激しく腰を打ち付けられる。
「あっ、あっ・・・ああぁあっ・・・!」
いつものように中に射精され、リーザは前に倒れこんだ。
「はぁ・・・はぁ・・・。っくぁぁ・・・」
荒い息を整えているとエルクは隣に移り、リーザを胸に抱きしめる。
「ごめん・・・」
「・・・ううん。エルクが気持ちいいなら、それでいいの」
かすれた声で話し、リーザが微笑む。
エルクは申し訳なさそうに微笑み、それから眠った。
エルクはだれを見ているのだろう。
どうしていつも悲しそうに私を抱くのだろう。
「ねえ、エルク知らない?」
誰かが、自分の部屋にいると答える。リーザは礼も言わずに駆け出した。
白い家での一件が終わり、早くエルクを励ましたかったのだ。
何か食べた方がいいに違いない、と、手にはリンゴを持っている。
「えっ・・・」
薄く開いたドアを引かず、リーザは前で立ち止まった。
「・・・・・・?」
ベッドのきしむ音と、かすかに漏れた声が聞こえてくる。
エルクの歓声が耳に入った。
「ミリル、ミリル・・・!」
いつもの自分を抱くようにではなく、目を開けている。
そればかりか苦しそうな顔でなく、笑顔だ。
「ん・・・んっ・・・」
ミリルがかすかに喘ぐ。白い家で気絶し、そこを連れて帰ってきたのだ。
まだ体力が回復していないのだろう。
エルクがミリルと絡み合っていると理解するのには時間がかかった。
「・・・っあ・・・」
二人の性交を見てリーザは膝を落とした。涙が溢れ、頬を伝う。
エルクが・・・いつも見ていたのは、私じゃなかったんだ。
ベッドの上でミリルの顔がこちらを向く。
泣きながら見ているリーザと目が合うと、くすっと笑った。
繋がったままエルクを倒し、自分が上になる。
そして見せつける様に腰を動かした。
「はぁっ・・・はぁ・・・っ」
「エルク・・・っ」
二人は唇を何度も重ねた。腰の動きが激しくなり、二人が果てる。
もう耐えられず、リーザは身を翻して駆け出した。
その際に落ちたリンゴがドアを叩く。
その音に気づいてエルクは顔をドアに向ける。
「・・・?」
絶頂にいったミリルを寝かせ、廊下に顔を出した。
落ちているリンゴに構わずドアを閉め、ミリルを抱きしめる。
ミリルの体はとても冷たかった。
うす曇の中、エルクとリーザは墓の前にいた。
「ごめんなリーザ。傷つけちゃったな・・・」
背を向け、墓に花を添えながらエルクが言う。
「殴りたかったら殴ってもいいよ」
「・・・・・・」
「それとももう別れたほうがいいか、俺たち」
「エルクは・・・私のこと、好き?」
振り向いたエルクは、目を見開いた。
リーザがナイフで長い髪を切ったからである。 (了)