・スチュアート=シンク
北地区・まとめ役の跡取り息子。 冷たい男で、美男子。 高飛車で、潔癖症。
・アイリーン=オラサバル
無法者の国とも犯罪国家とも称される、ギルカタールのプリンセス。
悪人ばかりの婚約者たちとの結婚を厭い、プリンセスを”辞める為”せっせとモンスターを倒してお金稼ぎ中。
「姫と婚約者候補のカンケイ」
何処までも続くかと思わせる灼熱の砂漠の中に、ぽっかりと現れた奇跡の空間。
蒼く澄んだ水を湛えたオアシス。
生きとし生けるもの全てが乾きを恐れる砂漠で唯一の安息所。
わずかだが草やナツメヤシが茂り、涼しい木陰を作る。
湖水も深さはさほどではないが飲み水にできる透明度だ。
このオアシスはアイリーンがモンスターを倒しに砂漠に入ったときにたまたま見つけたもので、一般人には
危険な場所な為、国民にはほとんど知られていない。 立ち寄る人はまずいない。
だから戦いに疲れたときや熱さでふらふらになった時はたまに立ち寄ってくつろいでいた。
なので失念していた。
たとえオアシスでも魔物は存在するという事を―――
☆★☆
水浴びしている湖水の透明さに紛れていつのまにかアメーバがアイリーンの足元に忍び寄ってきていたらしい。
「きゃあっ!」
「!?」
アメーバはそんなに強くない。
いつもなら難なく倒せるレベルのモンスターだ。
しかしアイリーンは思い出した。水浴びをするために服と一緒に武器もアイテムも全てを岸に置いてきた。
つまり、まったくの丸腰。
流石に か弱いとは言わないまでも、女の身で素手でモンスターを倒すなんて芸当はできそうにない。
慌てて岸に戻ろうと走るが水に足を取られて早く進めない。
そうこうしているうちにアメーバが水の中を魚のように音もなく素早く忍び寄ってきて足首に絡み付いてくる。
「きゃああ!」
両腕と両足に紐のように細くなったアメーバが絡みつき、水の中に転んで身動きが取れなくなってしまった。
アイリーンは焦ってあらん限りの声で悲鳴を上げた。
「スチュアート!! スチュアート、助けてっ!」
「……アイリーン!どうした!!何かあったのかっ!?」
今日はスチュアートを伴ってモンスターを狩っていた。 スチュアートは潔癖症で砂で自分が汚れるのを
嫌っているが、アイリーンが声をかければ、嫌そうな顔をしつつもちゃんと砂漠に付いてきてくれる。
ナツメヤシの木陰に腰掛けて寛いでいたスチュアートが慌てて飛び起きて湖に走りよって叫ぶ。
が、アイリーンの状態を見て、なんだバカらしい、と脱力する。
「何でアメーバなんかと遊んでるんだ」
「ちょっと、あんたにはこれが遊んでるように見えるわけ!?」
「私の忠告も聞かずに水遊びなんかしているからだ。 自業自得だな」
「そんな事言って、あんた、水が恐くて入ってこれないからそんな事言うんでしょ!」
スチュアートは泳げないのだ。 その事をプライドが高い本人は頑なに認めようとしないが幼馴染の私が
そんな事くらい知らないわけがない。
「べっ、別に……恐くなんか、ない」
「なら助けてよっ! このカナヅチ!!」
そんな言い合いをしている今も、アメーバの触手がどんどん絡みついて、ついに太ももまで這い上がってきた。
なのにスチュアートは湖の縁でただイライラと歩き回るだけでいっこうに助けにこようとする気配はない。
「ダメだ。 ………………服が濡れる……」
「何よ、やっぱり恐いんじゃないの!!このヘタレッ!!」
スチュアートがこの言葉を言われて怒らないはずがない。
すぐさま額に怒りマークが浮かぶ。
「……お前、本当に助けて欲しいのか? そうならもっと真剣にお願いするのが得策だと思うが?」
「お願い、スチュアート様。早く助けて〜」
「だが、王にもなるべく娘の成長の為に、極力修行に手出ししない様に、と言われていることだしな。
たかだかアメーバだろ。モンスターの中では最弱だ、自力でなんとかするんだな。戦闘レベルも少しはあがるぞ」
結局スチュアートは助けに来ないつもりらしい。
「こんな真っ裸に近い格好でどうしろっていうのよー」
自力で何とか手足を解こうともがくが、相手はぬめぬめのアメーバだ。力任せに引っ張ったところで伸びるだけ。
そのくせ戒めの力は少しも弱まらない。
それどころかアメーバの身体からまた新たな触手が現れてアイリーンの身体を這い回り始めた。
「ひっ」
何本もの触手がぬるぬると肌を這い回ってやがてビキニの水着の下にも潜り込み始めた。
何かを探すようにそれらはあちこちを無遠慮に這い回っている。
予想もしなかったアメーバの動きに先ほどまではどちらかというとまだ余裕があったアイリーンも怖くなって
顔が青ざめてくる。
「そういえばライル先生に聞いたことがある。 アメーバの中には人間の胎内に卵を産み付ける種類がいるって……」
アイリーンは顔を青くして鳥肌を立てる。
慌てて手足を動かして戒めを解こうとするのだがただ闇雲に湖面を蹴って水しぶきを立てるだけ。
「いやああああ、スチュアート!スチュアート!早く助けてぇーー!!」
「そうは言っても……くそっ」
しかしスチュアートは本当に泳げなくて、膝までの水たまりに入ることもできない水恐怖症だ。
このオアシスの湖が腰くらいの水深しかなくて、飛び込んだところで絶対に溺れるわけがないことは頭では解っている。
が、身体がまったくいう事をきかないのだ。 助けたくてもどうすることもできないらしい。
アメーバの触手がアイリーンの太ももを這い上がりきって、やがて足の付け根に触れる。
「っひ!」
慌てて足を閉じて進入を拒もうとするが、足を拘束する触手に阻まれて完全に閉じることができない。
「っ!?」
必死で束縛から逃れようと身体を捩っていたアイリーンだが気がついてしまった。
アメーバの触手が、脇腹や耳の後ろ、体中の感じる部分をこすり始めて―――嫌悪が次第に快感になり始めた事を。
それでもスチュアートの見ている前でそのような痴態を晒したくなくて理性で快楽を押さえつける。
邪魔とばかりに、ビリリと音がして水着の胸の覆いも股間の覆いも触手に破りとられた。
ついに完全に素裸にされてしまった。
さらに伸びた触手が今度は胸の既に硬くなった乳房に伸ばされる。柔らかい胸にグニグニと蛇のように触手が
巻きついた後、それの先がパックリと割れた。
「やっ!」
咬まれる!と思ったのだが、違った。それは優しく、幼子のように吸い付いてきたのだ。ちゅうちゅうと吸い付かれて
快感で胸の頂が固く尖り始める。
アイリーンはいっそ咬まれたほうがマシだと思った。 痛みのほうがまだ我慢ができるから。
「やあぁあああぁっ」
なのにこの下等生物に果てしない快楽をあたえられて、だんだんここが何処であるかも、スチュアートが見ている
ことすらも頭から消し飛んでしまいそうになった。
それでも歯を噛み締めて必死に堪えていたアイリーンだったが――
乳首を咥えているのと同じ触手が、アイリーンの股間のうっすらとした茂みを掻き分け、まだ包皮に包まれたままの
感じやすい紅玉に、ぷちゅりと吸い付いた。
「……ぁ……」
大きく見開かれた瞳から、涙がこぼれる。
今までの泣き叫ぶような声と違う。 必死で堪えたのに。 つい漏らしてしまった甘い声。
それはアイリーンの理性が快楽に負けた事を意味していた。
「あ……んぅ……や…」
一度出てしまった後はもう、声を止めることはできなかった。 快感が一気に体中を駆け抜けて、背筋がゾクゾクする。
もう完全に抵抗する気を無くしたアイリーンはアメーバのされるがままだった。 両足をアメーバに戒められたまま、
大きく広げられる。
「あ……」
アイリーンが気がついたときには他の触手とは形が違う凶悪なモノが、アイリーンの胎内にゆっくりと時間をかけて、
入り込もうとしているところだった。
場所を見極めたアメーバがゆっくりと中に触手を押し込んでくる。
その狭い場所に入りやすいよう、切っ先は細く、でもそこを押し広げようとするかのように次第に強く太くなっていく。
「いや、…いや…………や、やめて……はいらないで……入れないで……そんなモノ入れないでぇ!!」
まるでぐにぐにとヘビのように、強弱を付けながら奥へ奥へと進んでくる触手の動きに本人の意思とは関係なく快感が
身体を蝕む。
触手からは媚薬のような粘液が出ているのか、中で触手が蠢く度に、ジリジリと疼いて普段よりも少しの刺激で感じて、
おぞましい触手を締め付けてしまう。
快楽で薄桃色に染まり、火照ったアイリーンの身体が、アメーバに持ち上げられたまま空中でひくんひくんと反応する。
「い…やぁ……も……やめ……んっんーーーー!」
必死で懇願するがもう頭の中では解っている。スチュアートは助けてくれないし、自分は自力では逃げられない。
私はアメーバに好きにされている。 穢される。 スチュアートの目の前で。 好きな人の目の前で。
悔しくて涙が零れて頬を伝う。
と、その時。 ドスッと音がして、アメーバは急に拘束する力を弱めた。
アイリーンの身体はそのまま水の中にバチャリと崩れ落ちる。
顔まで水没しかけたアイリーンを誰かが力強い腕で抱き起こしてくれる。
「…………スチュア…ト……?……ど…して……?」
「……」
アイリーンの問に答えず、スチュアートは水の中に沈んだ透明なアメーバを探し、まだバシャバシャと剣で
水面を突いている。錯乱状態のような目つきだ。
「スチュアート? もうアメーバは死んだわ。スチュアート?……スチュアートっ!!」
傍によるのもはばかられる様な剣幕で、とっくに死んでしまったアメーバにいつまでも剣を突き立てるスチュアートに
ぞっとしながらアイリーンが大声で叫ぶ。
するとスチュアートは焦点の合わない目をしたままアイリーンを肩に担ぎ上げるとさっさと岸に向かった。
そして草が茂る岸につくと乱暴にアイリーンを肩から降ろした。顔面は蒼白なまま。アイリーンを睨みつけている。
「スチュアート、大丈夫?……ねぇスチュアート!」
「私……だけだ」
「え?」
スチュアートが何かをぼそりと呟いた。声が小さすぎて良く聞こえない。
「この肌に触れていいのは私だけだっ!何であろうとも、お前の肌を私以外のモノが這い回るなんて絶対に許せないっ!!」
突然スチュアートが大声で怒鳴りだした。目が完全にイっちゃっている。 アイリーンを見ているようでまったく見ていない、
そんな眼つき。
「許せないのはお前もだ、アイリーン。 あんな声をだして。……そんなに気持ちよかったのか?
あんな下等生物に犯されて」
言われたことの意味が理解できなかった。あまりの言い草に。 反芻してやっとその意味を理解し唖然とする。
「私が喜んでたとでも思ってるのっ!?」
「喜んでいただろうっ!」
「そんなわけないじゃない!! あんなもんに這い回られて、気持ち悪いだけよ!!」
「……ほう。 そうか? なら確かめてやろうか?」
「えっ?」
いきなり両手を捕まれて、草原に押し倒される。 呆然としているアイリーンの足を性急に押し広げ、スチュアートは指で
先程までアメーバの触手が潜り込み愛撫され、はしたない粘液で蕩けたままの秘裂を撫であげる。
「ひぅっ!」
我に返ったアイリーンは慌ててスチュアートを押しのけようともがくが、チュアートの片手で両手をいとも容易く拘束されて
しまい、またもや身動きができなくなっていた。
「見ろ、なんだこれは……。このぬめりはなんだ。 化け物に犯されて、感じていた証だろう」
ぬるぬるとした愛液を感じる突起に塗りこめくちゅくちゅとこする。
「やっ……そ、それは、アメーバのよ。 私じゃないわ」
アイリーンが顔を赤らめて視線を逸らすとスチュアートは強引に中まで指を進入させる。
「ウソをつけ。 中からこんなに溢れ出して……どんどん出てくる」
「それは……今、あんたが変なことしているからよっ!……やだ……もう、やめっ……あぅっ……は……ん……」
「あんなものでこんなに感じて……許さない」
アイリーンの言葉を遮り、わざと乱暴に中をかき混ぜられる。ぴちゃぴちゃと恥ずかしい音が響いて、耳を塞ぎたくなる。
「スチュアート、やめて……正気に戻って」
そう懇願するが、スチュアートはアイリーンの言葉を聞き入れるどころか、長い指をさらに三本に増やして蜜口に強引に
突き入れた。
「いやっ!……いま、かき回さないでっ……お願い、お願い、だか、ら……スチュアート、やめ……ん」
もう淫らなあえぎ声しか紡げなくなった唇にスチュアートがキスをする。
「んむぅ……ん……ん……」
蕩けるようなキスの間にも、媚薬が染み込んで熱く震える蜜壺に、指が何度も何度も勢いをつけて突き込まれる。
「や……、も、だ……ダメ、ダメェ、こんなのでイキたくな……いっちゃう、いや、いっちゃう……んんっ!!」
アイリーンの身体が草の上でびくりと跳ねる。
こんなわずかな愛撫で簡単に絶頂を迎えてしまった彼女を見て、スチュアートの怒りは更に増したようだ。
荒い息でぐったりと横たわる全裸のアイリーン。絶頂を迎えても、先ほどのアメーバの媚薬の効果はまだ終わっていない様で、
湖の水に濡れたまま、砂漠の明るい日差しの下で息を乱し、悶えている。
「まだ足りないのか……淫乱なプリンセス」
先ほどまでスチュアートに嬲られていた女陰の奥から、とろりと愛液が溢れ出し、その誘うような濃厚な香りにスチュアートは
コクリと喉を鳴らす。そして意地の悪い笑みを浮かべながら、自身の塗れた服を脱ぎだした。
シャツを脱ぎ、下ばきの紐を緩め、既に固く反り返った欲望を取り出した。
「これは……消毒だ。 この私が直々に消毒してやるんだからありがたく思え」
スチュアートから告げられた言葉が信じられない。
いつものアイリーンならこんな暴挙は絶対に許さないだろう。しかし、身体にはまだ力が入らず、スチュアートにされるがまま。
両足を抱えられ、熱い切っ先が既に潤い切った蜜口にあてがわれる。
「や……待って、入れないで」
「うるさい、だまれ」
いつもよりもずっと低い声で恫喝され、アイリーンの背筋がぞくりと震える。
結局何の抵抗もできないまま、強引に腰を推し進められると、まるで吸い込まれるかのように難なく肉棒がアイリーンの
胎内の濡壁を押し広げて奥まで収まってしまう。
「……く……んっ……」
熱い楔に貫かれ、壁を擦られる、また直ぐに登り詰めてしまいそうになるのを必死に耐える。
「こんなにトロトロに蕩けて……、まったく何てはしたないヤツだ」
そうアイリーンの事をなじりつつも、自分の欲望を包み込む感触に感嘆のため息をつきながら、腰を二三度軽く前後させ
蜜道に馴染ませる。
「……あふ……ん……いや……いや……スチュアート」
戒めが解かれ自由になった両手で、スチュアートの胸を何度か叩いて抗議するが、媚薬に置かされた身体では
大した抵抗もできず無視された。
アイリーンが悔しそうに唇を噛んで睨みつけるが、目尻には涙が溜まり、頬はピンク色に染め、
熱い吐息を漏らす。そんな快感に染まった様子をスチュアートは熱を帯びた眼差しで見つめ返す。
「……アイリーン。 お前、締め付けすぎだぞ。……く……何て淫らな感触なんだ……はぅ……」
今にも放ってしまいそうな快感を必死で抑えて、スチュアートは己の欲望のままに腰を突き動かした。
「……だめぇっ……激しくしたら……また……またぁ……」
「なんだ、もうイクのか? ……いいぞ、ほら、好きなだけイケ。何度でも付き合ってやる」
そう言い放つと、膣壁に熱い楔の括れを擦りつけるように、一層激しく突き動かす。
アイリーンの身体はゾクゾクとした愉悦に翻弄され、ひっきりなしにあえぎ声が漏れる。
「やぁ……動かさないでぇ……いやぁああっああーっ!」
「いや、じゃないだろ……こんなに感じておいて」
まるで罰するかのように激しく突かれ、肌と肌がぶつかる音が響く。
「いいか……今後、この私以外のものに肌を許すな……。絶対だ。この命令を違えたら、許さない」
「わ、わかったから、もう……わかったから……ぅむっ……!」
もう何も考えられず、ただ分かったと呟くアイリーンの唇を熱いキスで塞ぎ舌を絡ませられる。
「はぁ……これから、お前を抱いて、抱いて、抱きつぶして、私のモノをこの身体に覚え込ませて、私のでしか
イケけない身体にしてやる」
ごつりと最奥を太い切っ先で突かれたとき――アイリーンの身体はびくりと跳ね、また強烈な絶頂を迎えた。
その悦楽に震える膣壁にきゅうと締め付けられスチュアートも堪え切れずに直ぐに奥深く、子宮口に己の欲望を
押し付け熱を弾けさせた。
「ひゃあぁああっ……」
胎内で感じた熱に驚いてアイリーンが身体を捻って逃げようとするが、スチュアートが上体を押さえつけ、
さらに奥で何度も飛沫を放ちきる。
「……や……あぁ……ぁ……」
悲鳴をあげ続けるアイリーンの耳元で、小さくスチュアートが呟く。
「愛してる……愛している、アイリーン」
スチュアートが荒い息を吐きながらアイリーンの上に力を抜いて伸し掛かってくる。
アイリーンが瞑っていた瞳を開けると、苦しそうな顔のスチュアートがいた。
(どうせ我に返ってつまらない事を考えているのよね。……しょうがない人)
そのままそっとどちらともなくキスを交わす。
スチュアートのサラサラとした長い髪が、アイリーンの顔にかかって乱れた彼女の髪と混じり合う。
このまま永遠にこの砂漠のオアシスで、二人の全てが溶けあってしまえれば……そうアイリーンは願った。
☆★☆
アイリーンが目が覚めると、オアシスは闇に包まれていた。傍には薪をした後の燃え残りの火がチラチラと
揺れていた。
隣には同じように眠っているスチュアートがいる。
二人とも裸のままだったが、ブランケットにくるまれてその上、スチュアートの両腕の中で、
抱かれて眠っていたらしい。
夜のオアシスは昼と違って肌寒いが、スチュアートのおかげで寒くはなかった。
眠っているスチュアートの腕をそっと外し、アイリーンが起き上がる。
スチュアートは一瞬目を覚ましたが、アイリーンが「身体を清めてくる」と言うと、微笑みを返し、
また直ぐに眠ってしまった。
アイリーンにはやることがあった。
スチュアートが眠っているうちに。
(よかった、見つかってなかったみたい)
静かな湖に足を浸し、そのまま膝まで浸かりながら進んでいく。
そこは彼女がアメーバに襲われた所。そこで破れてしまった水着とその近くに沈む……小瓶。
アイリーンはそれを拾い上げて水着と一緒にまとめて自分の荷物の入っている皮袋の中に突っ込んだ。
☆★☆
スチュアートと私は幼馴染で、私にとって、スチュアートは初恋の相手だった。
スチュアートだって私の事を好きでいてくれていた。……はずだった。
でも彼はある日を境にまったく口をきいてくれなくなった。
彼は、過去のあることがトラウマとなって、自分が嫉妬に狂って私に危害を加えてしまう
ことが恐ろしくて、私から遠ざかった、と最近になってやっと話してくれた。
でも、そこまで。 その後は以前と同じ壁みたいなものに阻まれた。 何を言ってもダメ。
どんなにスチュアートに近づきたくても頑なに拒まれた。
そのくせ、私に近づこうとする者は陰で片っ端から暗殺していた。
(私の事好きなんでしょう? ならそうだって言えばいいじゃない。本当にイラっとするわ)
それで荷物の中に忍ばせておいた「即席アメーバの粉」を湖水に溶いて、アメーバに自分を襲わせてみた。
商人のユウがおススメと言っていたので買ったアイテムだ。
あんなエロモンスターになっちゃうとはまったく予想していなかったけど。
かなり高かったので今の私には痛い出費だったが、確かにそれだけの効果はあった。
「でも、まさか水の中にまで入ってきちゃうとは思わなかったな。 やってみた私自身も驚くわ」
なんの罪もないモンスターにはかわいそうだが、それでも人が死ぬよりはマシだろう、そう自分に
言い訳をしてみる。
あのアメーバに水着を破られたとき、粉が入っていた小瓶も水の中に落ちてしまったからちょっとだけ
ヒヤッとした。
この事をスチュアートが知ったらどう思うだろう。
本当は、もう、とっくに気付いているのかもしれない。
今はこうして私を愛していると言っている。 けど、またいつ気が変わるか解らない。
そんなことはないと思いたいのに思えない。
ただ、愛されているだけでは、足りない。
彼が本当に私のものになるまで、何度だってやってやる。
「さて……次はどんな手を使おうか」
空が薄紫色に染まる。地平線の向こうから光がやってくる。
もうすぐ砂漠の夜が明ける。
また熱い一日が始まる。
糸冬