「もっと丁寧に洗え」  
「く…」  
今日も今日とて私とトーマの二人は浴室で仲良く湯浴みを楽しんでいた。  
トーマは私の背に自分の胸を押し付けると特殊な花から抽出された泡で  
滑らせるように上下に動かしていた。  
やはりこの柔らかく張りのある乳房で洗ってもらうのが一番気持ちいい。  
次に私は身を横たえる台の上に大の字に寝転ぶとトーマに向かって手招きした。  
「今度は全身を使って綺麗にするんだ」  
「何だって!?じょ…冗談じゃない!誰がそんなこと…!」  
「嫌なら逆でもいいんだぞ。私がお前の上に乗り隅々まで洗ってやろうか?」  
「うっ…」  
その光景を想像しぞっとしたのかトーマは渋々私の上に跨るとぬるぬると  
泡立つ全身を絡み合わせ始めた。  
「こ、こうか…?」  
「どうした、もっと激しく動いて擦りあわせろ」  
「…っ今やってるだろ…!」  
羞恥に耐えながらも早く終わりたい一心でトーマは必死に体を動かした。  
トーマの体は柔らかでとても気持ちがよく、胸の先が全身を滑る度  
くすぐったいような痺れるような刺激が全身を襲う。  
それに伴い同じように時々触れ合う私の下半身は次第に形状を変えだした。  
「…?」  
異変に気付いたトーマが下半身に目をむけた時には既に私の性器は痛々しいほどに  
反り返り、ちょうど真上にあったトーマの貝のように開いた性器と擦れあう形となった。  
 
「トーマの肌があまりにも気持ちよかったのでこうなってしまった。鎮めてくれ」  
「何を…あっやめ…っそんな…!」」  
性器にまとわりついた泡が潤滑剤になったせいか挿入は容易いことだった。  
更に私と肌を触れ合わせたせいか、トーマ自身の中も少なからず濡れており  
入り口を指で開いてやると微かにぬめりを帯びていた。  
より滑らせるように奥まで深く挿し込むと私は激しく突き上げた。  
「や…っ!駄目…そんなに激しく…ううっ!!」  
「落ち着け、ちゃんとトーマの体も洗ってやる」  
私は少し上半身を起こすとトーマの尻を揉みながらその中心にある穴に指を入れた。  
「ひっ…!そこは…っ」  
「前は私自身で綺麗にしてやってるからこっちは指で洗うか」  
私はもう一度泡を指ですくうと、トーマの尻穴に何度も差し込み中を弄りまわした。  
「ひあ…っあんっ!!そこは…ああっ駄目、後ろも前も…熱い…ジンジンするっ!いやああぁ!!」  
じゅっぽじゅぽと音を立ててトーマの熱い体の中を私の指と性器が何度も滑り  
最後は腹の中まで私の精液で洗浄してやった。  
「いい気分だ!さっぱりしたなあトーマ!」  
「うう…っ…はぁっ…はぁ…」  
のぼせたのか、ぐったり倒れたまま涙目でこちらを睨むトーマとの湯浴みも終わり  
身も心もさっぱりした私は良い気持ちで浴室を出た。  
そんないつもと変わりない日々が過ぎていこうとする中、ある出来事が私を襲った。  
 
 
ある日トーマが神妙な面持ちで宮殿の奥にある小部屋に入っていくのを見た私が後を追ってみると、  
そこは医療室だった。  
もしや新たな子でも孕んだのかと私が中を覗くと、何やらトーマと医師が激しく言い争っている模様。  
「またですかトーマ様?この前渡したばかりなのにもう使い切ったと?」  
「あの男は異常なんだ!日々繰り返し私の体をいいようにして…これでもたりないぐらいだ」  
必死で詰め寄るトーマの様子に医師は溜息をつきながら薬品棚から薬を取り出すと  
トーマに手渡した。一体何の薬かとその様子を見つめる私の疑問はすぐに消えることとなる。  
「しかしあまり関心しませんな、このような避妊薬を何度も…本来あなたは聖天翅として――」  
「もう何も言わないでおくれ医師殿、あんな男の子を孕むのは一度で十分だ」  
目を伏せたトーマの姿に医師はそれ以上何も言おうとはしなかった。  
 
一方私は酷い衝撃を受けていた。…避妊薬?今確かにあの医師はそう言った。避妊薬だと!?  
頭に響いた言葉が木霊するなかフラフラと部屋に戻った私の心は深い闇に襲われていた。  
避妊薬…医師の口ぶりからするとトーマはもうずっと前から使い続けていたのかもしれない。  
どうりであれだけ日に何度も種付けしてやってるのに中々次の子を身篭らないはずだ。  
「酷すぎる…」  
気付けば私の目からは涙が溢れていた。私の子種達はトーマの卵に辿り着くチャンスすら  
与えられないまま薬によって排除されたというのか…何て可哀想なんだ。  
 
そして何よりも許せないことはトーマが…あの女がまた私を裏切ったということだ!  
これまで何度も何度も躾をし、私に従順にしたつもりだったのに…。  
こんなことは許せない…絶対に許せるものか…!!  
泣きじゃくりながらどうしてくれようかと考えた私はあることを思いつくと  
さっそく実行に移すことにした。  
 
 
それからの数日間、私はトーマと交わることをやめ翅無し狩りに行くと称し  
宮殿をあけることが多くなった。  
初めは何を企んでいるのかと、疑り深い目で見ていたトーマだったが  
いつもの私の気まぐれと思ったのか何も言わず、むしろ解放されて喜ばしいと  
笑顔さえ浮かべるようになった。  
だがその実、私は翅無し狩りに行ったふりをしながらトーマの行動を影ながら観察していた。  
どうやらトーマは毎日朝晩とあの薬を投与しているらしい。  
私がトーマと交わることが比較的多い時間帯だからだろうか?  
いつまた私がその気になってもいいよう、前以って準備をしているということか…用意周到なことだ。  
今日も誰もいない部屋で一人使い終わった薬の瓶を棚に戻すトーマを物陰から見つめる私の心には  
復讐の炎が燃え滾っていた。  
 
 
そして半月ほど経った朔の日――。  
いつものように薬を取ろうと棚に手を伸ばしたトーマは、何かの視線に気付いたのか  
突然顔を上げると注意深く部屋の中を見渡した。  
「トーマ…」  
暗闇の中、バルコニーに降り立った私の姿を見たトーマは酷く驚いたようだった。  
今日も私が遅くまで戻らないと思い安堵していたらしい。  
「ア、アポロ二アス…!?驚かせるな…戻っていたのか」  
「何を探していたんだ?」  
私はトーマを無視して棚に目を向けた。  
「別に何でも…君には関係ない」  
私から目を逸らし白を切るトーマに怒りを押さえつつ懐からあの薬を取り出すと  
トーマの眼前に突き出した。  
「探しているものはこれだろう?」  
目の前に掲げられた小瓶を見たトーマは凍りついたように動きを止めた。  
「それは…何故君が…」  
「ふざけた女だ。私が何も知らないと思っていたのか?」  
沸き起こる怒りのあまり翼を広げた私が放った熱の篭る思念を浴びたトーマは  
思わずその場にしゃがむと苦しそうに咳き込んだ。  
「ぐ…!」  
「酷い裏切りだ…私だけでなく天翅族全てへのな」  
薬の入った小瓶を握り潰すと私はトーマを睨みつけた。  
「聖天翅ともあろうものが後継者の元となる子種を殺すなど罪深いとは思わないのか?」  
「うっ…く…私はもう世継ぎは産んだ!義務は果たした!!  
 これ以上君の子供を産むなんてごめんだ…!」  
たかが一人産んだだけで何を偉そうに…この女は自分が何を言ってるのか  
わかっているのだろうか?トーマの主張に私は呆れかえるばかりだった。  
 
「…ところでトーマ、避妊薬があるならその逆、妊娠を促す薬もあることを知ってるか?  
 お前も知ってのとおりアトランディアは子供の数が減っている。日々研究も進んでいるのだ」  
「そんな薬知るものか…っ大体私には何の関係も…」  
そこで初めてトーマは私の意味ありげな笑みに気付いたらしい。探るような目を向けてきた。  
「ま、まさか私にその薬を投与するつもりじゃ…」  
「お前に?まさか…私はそんなことはしない」  
それを聞いて安心したのかほっとした様子のトーマに私は一言付け加えた。  
「安心しろ、既にお前には投与しておいた。ただし…私ではなくお前自身の手でな」  
「な、何だと!?」  
「ふははは!気付かなかったか?だろうな。ここ数日お前が避妊薬として使っていた  
 あの薬、あれは私が殿医に指示してすり替えておいたのだ!」  
「…!…あの薬が?そんな…嘘だ!」  
トーマは大きな目を更に見開くとがたがたと机に置いた手を震わせ  
今まで見たことがないほど激しく動揺しているようだった。  
「嘘なものか、あいにく医師はお前と違い天翅族の未来のために協力的だったのでな」  
「嘘だ嘘だ!そんなの嘘だ…!私の体にそんな薬が…」  
「試してみるか?今ここで私と交わり子供ができるかどうか」  
信じられないといった表情でいたトーマも、私が一歩踏み出した途端今の状況を理解したらしく  
慌てて逃げようと傍らにあった寝台の布を投げつけてきた。  
目くらましのつもりだろうか?  
私が払いのけると既にその姿はなく、代わりに背後の気配に振り向くと  
そこには剣を突きたて切りかかってくるトーマがいた。  
 
どうやら逃げるわけではなく私を殺すつもりらしい。  
仕方なく私も相手になってやろうと構えた時、ただならぬ殺気を感じたのか  
隣の部屋から寝ているはずの子供の泣き声が聞こえた。  
その声に反応したのか一瞬トーマに迷いが生じたのを私は見逃さなかった。  
トーマが気付いた時には私によって腕をねじ上げられ剣は払い落とされた。  
 
「やはり、トーマは子供が可愛いのだな…そうか、私の子がそんなに…。  
 それでこそ母なる聖天翅だ」  
「離せ!触るな!」  
ぎりぎりと私に掴まれた腕を振りほどこうとトーマは必死で力を込めた。  
「まだ話は終わってない。いいかよく聞け、お前に与えたあの薬は妊娠を助けるため  
 より排卵を促す働きをするわけだが少々副作用もあってな」  
「副作用…?」  
「そうだ。あの薬を使い妊娠した者は大抵一度に双生児以上の子を孕むこととなる」  
「なっ…!!」  
私はトーマの下腹部に手を滑らせると静かに撫でながら続けた。  
「つまり今のトーマの腹は薬のせいで卵でいっぱいだ…とても精子を欲しがっている。  
 そんなところにこの半月、溜めに溜めた私の種を蒔くとどうなると思う…?」  
そう、私はこの時のためにこの半月、トーマと交わらず  
精を溜め続けていたのだ。  
「あ…やっ」  
「さぞやたくさんの子を同時に宿すこととなるだろうなあ」  
「そ、そんなこと嫌…嫌ぁ…」  
自分の体に想像以上の事態が起きていることを知ったトーマは半ばパニック状態だった。  
私はトーマの服の間に手をもぐりこませると、緊張を解くように  
乳房を後ろから優しく揉みほぐした。  
それでも頬に落ちた涙の筋を舐め取る間もトーマの震えは止まらず  
何度も頭を振りながら拒むばかりだった。  
 
「お前が悪いのだぞトーマ…私はそんな薬を使わずとも自然に子を成すつもりだった。  
 それなのにお前はそんな私の気持ちと子種を踏みにじった…」  
「や…っやだ…やめろ、離して…!」  
「お前が潰した受精のチャンスは一人や二人孕んだぐらいでは消すことはできない…!  
 今からたっぷりと償ってもらうぞ!」  
「いやああああ!!!」  
トーマの体を寝台に突き飛ばした私はその上に跨り服を引きちぎると  
本能のままに必死で抵抗するトーマの体を貪り尽くした。  
 
「あ…はぁんっ…痛ぁっ…痛い…そんなに…んっ…動くな…っ」  
「はぁはぁ…トーマ…トーマ……」  
射精を我慢するということは中々に困難なものだった。  
トーマの脚を大きく広げ、久々に繋がってみれば  
あまりの快感に今すぐにでも達してしまいたくなる衝動を堪えるのに私は必死だった。  
溶けるように温かく、吸い込むように飲み込み締め付けてくるトーマの内部は  
こちらの一切の思考を奪い、ただただ獣のように腰を動かしたくさせる。  
だがすぐに種付けしてしまっては面白くない。もっとトーマの反応を見て楽しまなければ…。  
「ほう…もうこんなに濡れているではないか、まるで洪水だ。トーマの体もよほど疼いていたのか」  
「ち…違…そんなわけ…っ」  
「そう、子供といえば――」  
「ひぎっ…!!」  
深く腰をグラインドさせて子宮口に届くほど突き上げると  
必死で呼吸をしようとするトーマの耳元で囁くように本題を切り出した。  
「確か以前の出産の時は難産だったのだろう?それが今回は何度も連続して続くのか」  
「ひ…っ」  
トーマの脳裏には出産時の酷い苦痛が蘇っているのだろう。  
額には冷や汗が滲み、その目には恐怖の色が映っていた。  
「今中で精を出したら確実に子供はできるだろうな…さて、一度にこの腹で  
 何人まで孕めると思う?トーマの体は細いからなあ、腹に収まりきるか私は心配だ」  
ぬちゅぬちゅと音を立てながらゆっくりと、しかし確実にトーマの中で抽送を繰り返す  
私の下半身は既にいつ破裂してもおかしくないほど膨張していた。  
もちろん挿入されているトーマも身をもってそれを感じ取っているらしく  
私の他愛無い話にすら、目の前に迫った妊娠の危機に怯えているようだった。  
 
「や…嫌だ…やめろ…」  
「それが人に何かを頼む態度か?」  
「う…っお、お願い…中は…中で出すのだけは…外にならどこでも…口でも顔でも…ひっく  
 ちゃんと受け止めるから…っだから…一度にそんなに妊娠したくない…ぐすっ」  
もはや私が聞く耳を持たないと知りつつもトーマは涙ぐみ、潤んだ瞳を向けて必死に訴えた。  
今度は泣き落としというわけか…どこまでも卑怯な女だ。  
だが心の広い私は最後のチャンスを与えてやることにした。  
 
「…ならば誓え。私を夫として認め、一生従い愛し続けると誓うのだ」  
「え…っ」  
「できないのか?ではやはりその気になるまで何度でも孕ませてやるしかないな。  
 おお…もう出そうだ…いや、少し漏れたかもしれないな」  
ぶるっと震えて笑う私を見てトーマは恐怖にかられようやくその気になったようだった。  
「ぁ…!?駄目!出しちゃ駄目…誓う…誓うから…!」  
「では耳に届く言葉で言ってみろ」  
胸を押し付けながら慌ててすがりつくトーマに私は腰を振り催促した。  
今度こそ二度と裏切ることのないように、この女の口から誓いを立てさせなければ。  
「わ…私は…私は君の妻として…」  
「妻として何だ?」  
「…っく、君に…付き従い…しょ…生涯、生涯君だけを……愛し続けます…」  
くすんくすんと泣きながら紡がれるトーマの誓いの言葉は今まで聞いた  
どの調べよりも美しかった。  
 
「誓うから…だから…」  
早く引き抜いてほしいと言いたげなトーマの泣き顔を見下ろしながら私は言葉通り  
ぱんぱんに膨れあがった性器を引き抜いた。  
そして再び勢いよく突き立てると、まさにトーマの体を貫くように激しく動き出した。  
「あううっ…!?ど、どうしてぇっ…?誓ったのに!?」  
「私を夫として認めたのなら従え!お前が今から私の子を孕むという行為にな!!」  
「あ…アポロ二アス!そ、そんな!!いやあ!やだやだ!やめてえええ!!」  
「うははははははは!!!!孕め孕め!!そして私の子を産み落とせ!!!」  
「やあああ!!あっ当たってる…!ごりごり当たってるよ!!子宮に…で、出来てしまう、  
 いやっいやっあ、赤ちゃんが…また…出来る、いやーー!!!」  
 
ぱつん、とトーマの中で何かが弾けたかと思うと、私は我慢していたものを  
吐き出すように勢いよく射精を開始した。  
どんなにトーマに泣き叫ばれ抵抗されてもかまわず直接子宮の入り口に鈴口を宛がうと  
最後の一適まで何度も何度も注ぎ込んだ。  
種はトーマの全身を侵す勢いで注がれあっという間に腹を満たすと  
結合部から逆噴射さえするほどすさまじく、その後も終わりなく延々とトーマの全身を犯し続けた。  
そしてその日トーマが正気でいられたのはそこまでだった。  
 
 
 
 
――それから…それからしばらくした穏やかなある日の午後  
私は一人部屋に篭ると、上機嫌に鼻歌を歌いながら作業に没頭していた。  
レンシほどではないが自ら手作りの人形や小さなケルビム兵を模した遊び道具を作っていたのだ。  
その時コツコツと資材を削る私の上空に扉が開かれると  
空の散歩に出ていたトーマが帰ってきた。  
 
「…何をしてるんだ?」  
私を見つけたトーマは嫌なタイミングで帰ってきたと目を細めたが  
床に散らばった石材や木片に少し興味を持ったのか物珍しそうに訊ねてきた。  
そこで私はついさっき完成したばかりの作品を披露することにした。  
「どうだすごいだろう、子供達のために作ってやったぞ」  
「子供達の?」  
「そうだ。何せ一度にたくさん産まれるのだからそれだけ遊び道具も必要だろう  
 さて…何人産まれるだろうな…二人か?三人か?それとも五人かもしれないな」  
トーマの腹に目を向けて私は満足そうな顔をした。  
当然といえば当然の結果かもしれない、トーマはまた新しい生命を宿したのだ。  
まだはっきりしたことはわからないが医師の診断では少なくとも二人以上宿っているそうだ。  
どうやら排卵誘発剤がよく効いたらしい…ざまあみろ。  
 
孕まされた時のことを思い出したのか、トーマの顔は屈辱に満ちていた。  
膨らみ始めた腹に顔を寄せる私の頭を撫でながらも  
必死に沸き起こる怒りを抑えているようだった。  
それでも気位の高さが災いしてか私に忠実にという己で立てた誓いは破れないらしい。  
愚かな女だ…これでトーマは一生私を愛し続けることになった。  
今まで私を散々無視し、馬鹿にしたトーマをついに跪かせることに成功したのだ…!  
実に清々した気分だった。  
「そう怒るな。ほらトーマにも作ってやったぞ」  
そう言って私は何処かトーマに似せた天翅の人形を手渡した。  
 
「この人形は服を着せ替えたり更に動いたりも――」  
「……器用なものだな」  
まだ説明の途中だったがトーマは特に感情の篭らない調子で一瞥すると  
私に押し返した。  
「忘れたのか?元々私は手先が器用なのだ」  
そのおかげで毎夜床でもトーマを楽しませてやってるだろうと囁いてやると  
射殺しそうな目で私を睨み、トーマはそのまま踵を返して部屋を出て行こうとした。  
仕方なく私が再び作業に戻ろうとするとふとトーマの気配が立ち止まり  
ぽつりと何かを思い出したように呟いた。  
「…そうか、君は元々はそういうことが得意だったのだな」  
「お前は気に入らないみたいだがな」  
「……」  
しばらくトーマは何かを考え込むように沈黙すると、再び顔を上げ私を見つめた。  
するとそこにはいつもと全く違う、怒りも憎しみも嫌悪も篭らない  
深く輝く紫色の瞳があった…。  
 
「…君が…」  
「ん?」  
「思えば君がそんな風になったのは私が…私があの時君を  
 ないがしろにしたせいなのかもしれないな……」  
「トーマ?」  
ふうっと大きく溜息をつき頭を振ったトーマはそのまま何も言うことはなく静かに飛び去り  
残された私の横では机の上の小さな人形がこちらをじっと見つめるばかりだった。  
 
 
私の名前はアポロ二アス――蒼碧の空に小さくなっていく  
トーマの後ろ姿をいつまでもいつまでも見上げていた。  
 
 
END  
 
 
 
 

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