音翅は両翅殿を利用しているだけでございます。
そんなことはわかっていたのだが、怒りが収まらない。
もともと好戦的な性格で頭に血がのぼりやすいのだ。
ずかずかと音翅の部屋に押し入るや、
月を見ながら翅をかきならす音翅を抱き寄せるその唇を奪った。
一瞬のことに対処できず、音翅は抵抗するも、
戦翅として個としての戦闘能力では
アトランディア最強の両翅の力に対抗することなど叶わなかった。
両翅は音翅の身体を第一の両腕でおさえつつ、
第二の腕で暗闇色のヴェールを剥ぎ取り、服を切り裂いた。
普段極端に露出の少ない音翅だが、その服の下では、
陶器のような滑らで、青みがかり透けるような肌が柔らかに、
意外にも大きなふたやまを作っていた。
小粒の真珠のようになまめかしい乳首が肌に当たるのを感じると両翅の理性は吹き飛んだ。
あらわになった乳房を口に含もうと両翅が音翅の口を解放すると、
音翅は身体の隙間に尾の先を差し入れ、やっとのことで部屋の隅に逃げ、
距離をとった。
「何をなさるのです!」
あらわになった乳房を隠す余裕もなく
怯えと興奮の入り混じった声で音翅が抗議した。
その姿に両翅の欲求は最高値に達した。
「このアバズレが!さんざんこの両翅をこけにしおって。
今その報いを身体で受けてもらうことにしたまでだ。」
オトハは唇の端を不敵に吊り上げ目を瞑る。
「ふっ、なにをおっしゃるかと思ったら、先ほど申したように私はトーマ様の恋人、
モロハ殿の自由にはなりませぬ!」
隙を衝いて反撃を試みる。
が、オトハが翅を震わそうとするよりも、モロハの腕がそれをおさえるほうが早かった。
「くっ」
壁にうちつけられオトハは低く唸った。
「その程度の演技でこのモロハを欺けると思ったか。甘い、甘いわ!」
両翅はさらにその腕をひらりと翻し、音翅を下に寝台にうつぶせた。
こうなってしまったらもはやオトハになすすべはない。
戦翅として鍛え上げられた両翅の腕力にかなうべくもなかった。
寝台に抑えられた翅が音を立ててきしんでいた。
これも宿命とばかりに音翅も四つの目を閉じ、抵抗をやめた。
唇を吸われそうになり、そればかりはと顔を背けると、
もはや我慢のきかなくなった両翅は山葡萄の濡れた如くつややかな
口元に執着することはなく首筋に舌をはわせ、それが徐々に下へ、下へと下っていく。
堪えるように眉をひそめつつも、意外な舌使いに徐々に息が速くなってゆくのを
まさかまさかと否定しながら理性を保っていた。
ちょうど翅無しの手のひらに収まるほどの乳房のふくらみの
はじまりまでで両翅の舌が止まった。
「な、なにを」
「なかなかいい声でなくじゃないか」
「ば、馬鹿なことを言わないでください!誰が両翅殿ごときに喘ぐもの…あっ」
音翅が最後まで言い終える前に両翅が乳のてっぺんを口に含んでいた。
それを飴を転がすように口の中で弄んでいた。
「やっ、あっ…」
意図せず大きな声を出してしまい、自らの声に音翅は青白い顔を紅潮させてしまった。
「心配せずとも、最後までいかせてやるよ」
両翅の無機質な手が音翅の柔らかな乳房を揉みほぐしながら、
黒い舌が音翅蛇のような下半身と人のような滑らかな肌のつなぎ目に這わせているころには、
この美しい天翅を拘束するのに力を入れる必要はなくなっていた。
抵抗していたことが嘘のように半開きになった口からは涎すら垂れていた。
四つの目から流れる涙は犯される悲しみ以上に快楽のためであることは
音翅自身がもっとも心得ていた。
認めたくはなかったが、翅と翅がこすれるたびに音翅のからだは経験したことのない快感に媚薬をかがされたかのように痙攣し、
その快感をもっと得んがために大きく広がっていく。
それをカヴァーしようと両翅の翅もさらに大きく大きく包んでくる。
翅がすり切れんばかりにこすり合わされ、
エクスタシーの絶頂に互いのからだの区別もつかないほどに快楽の泥にまみれ、
音翅は恍惚の中いつしか気を失っていた。
次の日アトランディアの薄暗い朝が訪れ、ぼやけた日の光が高くなりかけた頃、音翅は目覚め、そこに両翅はいなかった。
あれは夢
そう思いたかったが、翅にのこされた快楽の記憶はなまなましくそれを許さなかった。引き裂かれた服は一部が寝台にひっかかり大方が床を力無く漂っていた。
申し訳ありません…トーマ様
そういいつつも手を昨日両翅が執拗に舌を這わせていたトコロに手が行っていた。
翅で翅を抱きながら…