「トーマ!」
妖精達の飛び交う光が瞬く夜――幻想的なかつての
天翅達の都アトランディアの奥深くでは小天翅
フタバがトーマの姿を見つけると勢いよくその背
に飛びついた。
「フタバ…勉強は終わったのかい?」
「ううん、退屈だから抜け出してきちゃった」
えへへと笑うフタバにトーマは仕方が無いなと
困ったように笑いかけた。そうしてフタバの手
を優しく引きながら他愛も無い話をしてくれる
のだった。
フタバは自らの周りにいる大人たちの中では特
にこのトーマが大好きだった。美しく銀の髪をは
ためかせる彼女は両親もいない自分にとってオ
トハと並んで、ある意味母親のような存在なの
かもしれない。
それだけに時々トーマが寂しそうな顔をしている
のを見る度何だか悲しくなる。オトハの話ではか
つて自分達を裏切った男アポロ二アスが原因らしい。
シルハに聞いても多くは語ってくれなかったが
「あの二人の間にせめてお子様がいれば…」
と暗い面持ちで首を振った。
「子供…?トーマは子供が欲しいの?」
それを聞いたフタバはぽかんとしながらも、やがて
いいことを思いついたように手を叩いた。
「そうだ!僕がトーマに赤ちゃんをあげよう。そ
うすればトーマ喜んでくれるかな?あはははっ!」
「ねえオトハ、子供ってどうやって作るの?」
あまりにも無邪気な顔で訊ねてくる幼子にオトハ
は驚きを隠せなかった。そして少しためらいながら
あなたにはまだ早いとだけ告げると早々に退散した。
せっかく教えてもらおうと思っていたのに当てが外れた
気がした。
仕方がないのでフタバは翅無しの赤子をあげようと
収穫し植えられている"実"を抜こうとしたがシルハ
に見つかり咎められたためそれもやめた。
どうしようかと考えたフタバは普段滅多に寄らない
書庫に入ると何かヒントはないかと探し始め、よう
やくそれらしき記述の本を見つけると部屋に戻った。
しかし実際本を読んでみてもフタバにはよくわからない。
そこで本を片手にケルビム兵を駆り出したフタバは
逃げ惑う人々の中から手近な翅無しの男女を捕まえ
ると、無理矢理本に書かれた通り交尾させてみた。
そうして自らはちょこんと腰を下ろすとその様子を
面白おかしく観察するように眺めていたのだ。
「そうかあ〜こんな風にするんだ」
ようやく本を閉じて立ち上がったフタバの足元には
先ほどまで彼によって交配させられていた男女が冷
たくなって横たわる。それに目をくれることも無く
フタバは光に包まれるとアトランディアへと戻っていった。
これでトーマに子供があげられると嬉しそうに…。
すっかり暗くなったアトランディアの宮中、トーマの
居所を尋ねたところもう休んでいるので用なら明日に
しなさいとオトハに言われた。仕方ないので諦めようと
したが少しだけトーマに会いたくなりこっそり彼女の
寝室へと向かうと扉をあけた。連日翅無し達との戦いの
ためかトーマは疲れたようにぐっすり眠っている。
しばらく寝台の傍らに佇みじっとトーマの寝顔を眺めて
いたフタバの耳に微かな思念が聞こえてきた。
「…アポロ二アス……」
夢でも見てるのか悲しい音と共にトーマの閉じた目から
は涙が流れている。
「トーマ…」
可哀想なトーマ…でもすぐに僕が子供をあげる。トーマ
が寂しくないように、もう悲しまないように。
意を決したようにフタバは素早く服を脱ぎ散らすと寝台
の上にのぼりトーマが羽織っていた絹の布をとった。
「えっと…まずはここを広げて…」
トーマが眠ってる今のうちにと急いでトーマの下着をずら
すと、脚を開かせさっきまで間近で見ていた翅無し達の交
わりを思い出しながらフタバはトーマの脚の間の割れ目を
指で開いた。くぱっと開いたそこは綺麗な肉色をしており
先程フタバが見た翅無しのそれとは随分と違っていた。
「うわートーマのここってこんなのなんだあ。でもあの
翅無しのはもっと黒くて変なビラビラがついてたのに」
急に鼓動が早くなるのを感じながら吸い込まれるように
指を入れてみると柔らかな感触と共にあっさりと入って
しまった。驚いて引き抜くとトーマが呻いた気がした。
もう一度寝てるか確認するとやはり眠っている。安心した
フタバは再び指を入れてみる。面白いことに指を出し入れ
する度に透明の液体が少しずつ溢れ出てまとわりついてくる。
「あははっ何これ面白ーい」
調子にのったフタバは二本、三本と増やし、ついには小さな
手の先、五本全てを差し込んだ。
「あ…っ…ん」
さすがにこの圧迫感に目を覚ますかと思われたトーマだった
がフタバが指の動きを止めて様子を伺うとまた寝息をたて始
めた。安心したフタバは急いで次の作業へととりかかった。
「えっと、次は僕のこれを…わあ、もうこんなになってる」
自らの下半身を確認したフタバは小さいながらも雄の証として
そそり立って主張するそれを見た。
フタバは既にここが快楽を与えてくれることは知っていた。
何度か自慰をしたこともある。が、本来何に使うかなど知る
由もなく、今回初めてそれが生殖するための器官だと知った。
「トーマのここと合体するためにあったんだあ」
嬉しそうに笑ったフタバはさっそくトーマの入り口に押し付け
入れようとした、がトーマの蜜壷から溢れた液体で滑り上手く
入らない。
「えいっ…あ、あれ…?」
何度も何度もチュクチュクと音を立たせながら滑る小さな自分
自身に最初は焦っていたが何だかこうしてトーマの入り口に擦
りつけるだけで気持ちがよかった…。つい夢中になって腰を押
し付けるフタバだったがその時ついにトーマが目を覚ました。
「ん…フタバ…?何を……えっ?」
「あっトーマ…っ…!」
トーマが起きたことに動揺したフタバが体勢を少し崩した
せいか勢いでフタバの小さなな性器はトーマの中に飲み込まれた。
「うあ…っ!痛…フタバ…!?え…そんな…まさか…」
「あはっ入っちゃったあ…あ…?うあ…あ、すご…」
目の前の光景と体を襲う感覚に信じられないとばかりに
トーマは息を呑んだ。自分の上に全裸のフタバが覆いかぶさり
その下半身は自らのものと結合され今や恍惚の表情でいるの
だから。
「あ…トーマの中気持ちいい…は、早くこすると皮がむけて…」
「フタバ…何故……」
これは夢なのかと思うトーマの体に抱きついたフタバは初めて
味わう感覚に夢中になっていた。今まで自分で慰めるのとは
大違いの快楽が全身を駆け巡る。もはや子供のことなど頭から
吹き飛び夢中になって腰を動かし続けた。
「ふ、フタバ…!やめ…駄目だ、ぬ、抜いて…っ」
「はっはあっ…うあぁっトーマ…僕、もう…」
フタバの体をどけようとした瞬間それは少量ながらも確かに
トーマの中へと熱い体液となって放たれてしまった。
「あっああっトーマっトーマ、僕止まらな…!」
「え…?あ…そんな…そんな嘘だ…」
息を弾ませてトーマにもたれかかるフタバを抱えながら自らの
胎内に流れる熱い感覚にトーマは言葉を失った。何故、何故
こんなことに…。
「トーマ、トーマこれで赤ちゃんできる?嬉しい?」
「赤、ちゃん…?」
呆然としたまま聞き返すトーマにフタバは嬉しそうに語る、何故
自分がこんなことをしたのか。聞き終えた時、トーマの紫の目
からは涙が溢れ頬を伝いそれは止まることはなかった。
「トーマどうしたの?何が悲しいの?痛かった?」
もはやフタバの声も何処か遠くに聞こえてしまう。全身から力が
抜けたトーマは快楽の味を覚えたフタバが再び取り戻した猛りを
トーマを使うことで解消しようとするのを止める気にもならなかった。
「トーマ、ねえ僕を見てよ。僕達の赤ちゃんできたらいいね。
そしたらトーマもう寂しくないよね?ねえトーマ―――」
――それから数日後、小天翅フタバは人類側に捉えられその翅を
切り落とされ命を失った。悲しみに暮れる聖天翅の腹に新たな命を
残したまま…。