夜中にふと目が覚めてしまった。  
 
(…きっとあいつが夢に出てきたからよ…汚らわしいっ…そうだ!お兄様と一緒に寝てもらおうっ!  
そして…キャッ)  
 
 お兄様との夜の過ごし方をシミュレーションしながら、お兄様の部屋で寝ることに決めて、  
自分の枕を持ってお兄様の部屋へ向かおうと廊下の窓の近くを通った時。  
 
 窓越しにあいつの姿が見えた。  
 
 下の階のバルコニーの手すりに、行儀悪く腰掛けたアポロの背中は、西に傾きかけている月の光に  
照らされて柄にもなく寂しそうに見える。  
 そんな丸まった背中を、私は、カーテンの陰からしばらく見つめていた。  
 
(?何で私が隠れなきゃいけないのよ。これじゃストーカーみたいじゃない!声。掛けてみようかな…  
でも、あいつ!さっき私のあんなところにあんなことを!…ってそれは私の夢の中の話か。  
あいつには関係ないわよね。…よしっ)  
 
 心の中で気合を入れてから、窓を開け下を見ると、いつの間にか現れた別の人影が、私より先に奇麗な澄んだ声で呼びかけていた。  
 
「アポロ…」  
 
 ちょうど薄雲から出てきた月の光に照らされたリーナの横顔は、女の私が思わず息を呑んでしまったくらい幻想的で、きれいだった。  
 
(あ…声かけ損ねちゃった…それになんとなく出て行きにくくなっちゃったじゃない…)  
 
「お?リーナじゃねえか。どうしたんだこんな夜中に?」  
 
「あなたを。探していたの。」  
 
 あのバカの声はともかく、つぶやくほど小さいはずのリーナの声も、不思議なくらいはっきりと聞こえてくる。  
 
「へ?俺を?」  
 
「…きれいな、月ね…」  
 
「お?おお。まぁな」  
 
 すうっと月を見上げたリーナにつられて、アポロも空に浮かんだ満月に目を向けて、そのまま二人で静かに月を眺めてる。  
 
(ちょっと、いい雰囲気じゃないの。気に入らないわね。)  
 
「約束…」  
 
「んあ?」  
 
 しばらく続いた沈黙を破って、リーナが静かにつぶやいた。  
 
「約束。覚えているかしら?」  
 
「……えーと…あぁ、血をすわせる話かぁ?」  
 
(…ほおぅ…あの野蛮人、私との約束は平気で忘れるくせにリーナのは覚えてるわけね?)  
 
「いいかしら?」  
 
「お、おお。かまわないぜ。こっちもすーっとするしな」  
 
 ほれ!という風にアポロが首元を近づける。ほんとに品がない。  
そんなあいつを見てリーナの顔が、かすかに微笑んだようにみえた。  
 
「そこに座って、膝に乗せてくれる?」  
 
「お。わかった。」  
 
 アポロはリーナが指差したあたりのバルコニーの床にあぐらをかいて座った。  
そのまま車椅子からリーナを抱き寄せて、自分の腰がリーナの脚の間に入るように  
して、リーナを脚の上に座らせてる。  
 
(なんでわざわざ向い合わせるのよっ!?お兄様の部屋の本で読んだわ。これって  
「座位」って奴じゃない!)  
 
「いいかしら?」  
 
「お、おう」  
 
(ちょ!ちょっと!アポロ!なに赤くなってんのよ!)  
 
戸惑いながらも目を閉じたアポロの首元に、月光に照らされたリーナの顔が  
少しづつ近づいて。  
 
「じゃ。もらうわね。」  
 
アポロの耳元でささやいて。  
 
 噛み付いた。  
 
(アクエリオンの中でも見たけど…なんか…アポロ気持ちよさそう…)  
 
 リーナを抱きしめる手に力がこもってきてるのがここからでも見える。  
あんなふうにぎゅっと抱きしめられたら…前世でアポロニアスに抱きしめられた  
記憶が頭をよぎる…やだ…背中がぞわっと…  
 
 私が自分の体の変化にとまどっているうちに、リーナはそっと口を離した。  
 
「お?もういいのか?」  
 
「えぇ。血はもういいわ。ありがとう。」  
 
 そういうと、リーナはもう一度アポロの首に唇を近づけて、今度はさっき血を吸った  
あたりを舐め始めた。  
 
「お?おい?リーナ?!」  
 
「お礼よ。」  
 
 アポロの首筋に手を回してぺちょ…ぺちょ…ちゅっ…と首筋や耳を舐め、吸う音が  
ここまで聞こえて来る。  
 
「クッ…はぁ…」  
 
「んっ…アポロ…だめ…動かないで…」  
 
 リーナが透き通った小さな声でアポロの耳元にささやいている言葉が全部わかって  
しまう。  
 丁寧に、いとおしそうにアポロの首筋をなめているリーナと、腰にリーナの身体を  
押し付けるように力強く抱きしめるアポロに、私の目はくぎ付けになってしまった。  
 
抱きしめあっているリーナとアポロの腰が小刻みにゆっくりと、押し付けあうように  
動いているのがわかる。  
 
(きっと、アポロとこすれて…)  
 
「…ん…ふぅ…」  
 
「くはぁぁぁぁぁぁ…」  
 
深いため息をついて二人はわかれた。  
 
(あ。ちぃぃっ…もっと見ていたいような…って早く離れなさいよ野蛮人!)  
 
「気持ち…よかった?」  
 
「お、おぉ…」  
 
「アポロ?」  
 
「…なんだよ」  
 
「もう一度吸わせてもらえるかしら。」  
 
「今かよ?さすがにちっとふらふらだぜ?」  
 
「いいえ…血はもういいの…」  
 
月の光が反射してリーナの目が怪しく輝く。  
 
(え、ええええええ?!)  
 
「ちょっ!ちょっと待てっておい!」  
 
「こっち。」  
 
リーナが目を向けたのは、白い手でズボン越しに握った、アポロの…あ、アレだった。  
 
「こっちのほうが、プラーナ。多いの。」  
 
「そ、そうなの…か?」  
 
「そう…。だから。…頂戴?」  
 
上目遣いに微笑むリーナ…  
 
(く…か…かわいいじゃないのよ…)  
 
「お、お、おう…わかった…」  
 
(わかったじゃないわよぉぉぉぉぉ!)  
 
「地面に下ろして?」  
 
アポロがリーナを脚の間に下ろす。  
 
そのままアポロのズボンとその…下着…を下ろして…  
 
(キャー!キャー!キャー!で、出てきた!)  
 
 とてもじゃないけど、正視できない。思わず目を手のひらで覆い隠してしまった。  
でも指の間からちょこっと見えちゃうのはしょうがない。  
 
(あんなに…大きいんだ…)  
 
「ふふ…アポロ…とっても硬くて…熱いわ。」  
 
「クッ…ちょ、ちょっと待てよ!」  
 
リーナの小さい手では、両手で握っても余るくらい…  
白い手がアポロのあれを確かめるように、上下にゆっくりと動いていく。  
 
(私知ってる…さっきの夢で見た…熱くて…硬い…)  
 
さっきの夢で見たのはアポロのだったけど、他にも私は知っている。  
…アポロニアスの感触を。  
 
(く…んっ!)  
 
過去生で体感したことの記憶と、さっきの夢、目の前の光景…3つが重なり合った  
瞬間、背中のぞわっとした感触が、増幅されて脚の間に下りてきた。  
 
「く…うっ。」  
 
眼下のリーナの手の中で、アポロのアレが益々猛っているのが見える。  
先から液体が出て、リーナの指を汚しているのまで…見える。  
 
(リーナ…あんなに強く握って…)  
 
いつしか、私も窓枠にすがるように、そして窓枠がアポロであるかのように  
強く握り締めていた。  
 
「ぐぅっ!リーナ!ちょっと!ちょっとまて!」  
 
「強すぎたかしら?」  
 
「いやその前に!こんなところじゃ誰か来るかもしれないだろうが。」  
 
「あら?誰も来ないところなら…いいのかしら?」  
 
「いや、そういう話じゃなくて!」  
 
「…ふふっ…しゃぶってあげるわね。」  
 
女の私でもぞくっとするような、笑いを浮かべたリーナのいたずらっぽい目と、  
一瞬目があったような気がした。  
 
(だめ…それ…わたしの…)  
 
思った瞬間、ジュル…と、音をさせながら奥まで、リーナがあれをほおばった。  
 
「おっ…くうっ」  
 
(んっ…はいって…くる…)  
 
夢と過去の記憶が目の前の光景と重なる。  
下着がいつの間にかびしょびしょに濡れているのが分かる。  
ぬれている奥に…アポロニアスの、アポロの、アレの存在感を感じる。  
 
深く。浅く。リーナの小さい口が上下している。リーナの頬が時々丸く盛り上がるのも見える。  
 
(あぁ…あんなにあたって…んっ)  
 
アポロが入っているのはリーナの口なのに、まるで私の中に入ってるみたい。  
 
「ん…ん…ちゅる…んっ!…」  
 
「くっ!いいっ!」  
 
あ…アポロも動き出してる…  
気のせいじゃない。じゅる、くちゅ…って水っぽい音がここまで…  
 
(あんっ…あんなに濡れて…そんなに…乱暴にしちゃやだ…んっ…)  
 
「くっ…リーナっ…」  
 
「んっ…」  
 
リーナ…感じてるアポロを見て喜んでる…  
アレをしゃぶったまま下からみあげて…なんていやらしい顔…  
 
 腰と脚に力が入らない。  
両手で窓枠を必死に握り締めて、内股で立っているのがやっと…  
 
(…全部…見られてる…)  
 
そんな自分をリーナに見られている気がした。  
 
「あ!あぁ!出るっ…」  
 
アポロが喘いだ直後、リーナの口とアポロの腰のペースが跳ね上がった。  
 
「んっんっんっ!」  
 
私の中も、乱暴にかき回されて…  
 
「お、おおっ」  
 
「んんっ!!!」  
 
中腰になったアポロが硬直した瞬間。私も…  
 
(ん…あふれるくらい…たくさん…私の奥に…ん…いっちゃった…  
 見てただけで触ってないのに…口。閉じてたけど、声…でちゃった…)  
 
まだアポロを咥えたままのリーナの口の横から白いものが流れて、リーナの白い喉に  
まで垂れている。  
そして、私の脚にも…まるでアポロのを受け止められなかったように、私のジュースが  
垂れてきているのを感じる。  
 
「ふふ…おいし。」  
 
アポロのを飲み終わったのか、アポロを見上げながらリーナが言った。  
あ、…垂れたのまで指ですくって…舐めてる…  
 
(いいな……って、なに考えてるの…私…)  
 
「…おいしいのかよ…その…それ。」  
 
「舐めてみる?」  
 
「…やめとく。」  
 
「ふふふ…プラーナの味よ?」  
 
「そういう…もんかぁ…?」  
 
少し二人とも落ち着いたのか、腰のあたりにあるリーナの頭をアポロが撫でながら、  
二人は話しはじめた。  
 
(…なに二人で甘いトークしてるのよっ!…うらやまし…くないっ!)  
 
「きもち…よかった?」  
 
下から見上げながら、リーナが尋ねる。ぬれた唇が…月の光でぬめるように光って  
…いやらしい…  
(やだ…また…)  
 
「お、おう…その…よかった。」  
 
全身真っ赤にして、そっぽ向きながらアポロ。  
 
(…本気で喜んでるわね。)  
 
「…そう?ふふふ。二人とも喜んでもらえてよかったわ。私も美味しかったし♪」  
 
「二人?そういえばさっき声が…」  
 
いたずらっぽくこちらを見上げたリーナと目が合った瞬間。  
私は部屋に逃げ帰った。  
 
 
 
「ううう…眠い」  
 
結局昨日は、眠れなかった。こう…ベッドの中でいろいろ思い出したり、  
…その…女の子だからいろいろあったり…その後シャワー浴びたりしてたらいつのまにか  
起床時間になってしまった。  
 
「あら。おはよう。」  
 
(げっ)  
 
向うからよりによってリーナが声を掛けてきた。  
 
「お゛、はよう…リーナ。」  
 
自分でも顔がこわばっているのがわかる。  
 
「顔。こわばってるわよ?寝不足?」  
 
「え、ええ、まぁね。」  
 
「そう。気をつけてね。」  
 
そのまま彼女はすーっと通り過ぎた。  
 
「……はぁぁぁぁぁ…」  
 
力が抜ける…気づいてなかったのかな…ありがたいけど…  
 
「あ、そうそう。」  
 
「!!?」  
 
ビクッっと「気をつけ」の体勢で振り返る。  
 
(まだ…いたわけ?)  
 
「な、なに?!」  
 
「南側の窓。ベランダの上のところ。…窓枠。つぶれてたわ。」  
 
「っ!!わ、私じゃないわよっ?!」  
 
「気をつけないと…握りつぶしちゃうわよ?」  
 
「な!なにをよっ!!」  
 
「ん。いろいろ♪」  
 
「いろいろって……!…だからっ!わたしじゃないってばぁ!」  
 
終  
 

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