月影に星が遠い夜は馬を駆り、そこを目指す。
人を寄せぬ荒野の先、太古の面影を残す森を望む場所にそこはある。
そこは一面には淡紫色のヒースが咲き、鈴のような可憐な花が夜風に揺れる丘。
セリアンは小川の縁の若い樹に愛馬を繋ぎ、ひとり丘へ向かった。
冷たい岩を背に天を仰ぎ、微かな星達の瞬きに想いを馳せる。
一体何度目であろうか…
夜の花園でひとり愛しい人に想いを馳せるのは…
こんな夜は月の白い輝きを酷く眩しく感じる。
静かに瞼を綴じると涼やかなヒースの薫りに抱きしめられているよう。
「セリアン」
薫りは自分をそう呼んだ優しい声を鮮明に想い出させてくれる。
耳の奥にまるで残響のように、愛しい声が響く。
いつか彼が自分の名を呼び、そうしてくれたように白い指先を唇に遣る。
指先が柔らかな肉に触れ、軽い音が生まれる。
その啄ばむ音が水音に変わる頃、舌先はその存在を確かめるように
指の腹をそっと舐めあげた。
「あっ…」
指ではなくセリアンの背筋に僅かな電流が走った。
肌に触れた舌先の熱さは頬は上気させ、人肌に触れた舌先は呼吸を乱す。
自分に与えた愛撫にたまらず、熱い舌はねっとりと指先に絡みつき
熟れた果実のような唇は親指を包み込んだ。
果蜜に濡れた親指は欲情し、更に紅い唇を貪る。
じゅるじゅると淫らな音を響かせながら、夢中で咥内を犯す指を味わう。
だらしなく果蜜を滴らす唇は口付けを求めるように愛しい名を紡いだ。
「…アポロニアス…」
熱い吐息の紡いだ言葉は、身体に刻み込まれた熱い想いを更に鮮やかに甦らせた。
高まる鼓動を確かめようと胸に当てた左手は
押し潰すように乳房を揉みしだき
豊かな乳房を鷲掴みにした。
圧迫された頭頂部は抵抗するかのように硬くなる。
手の中で乳房を転がす度に頭頂部は布との摩擦に疼いていく。
(ああ、もっと…)
疼きに耐えかねた頭頂部を親指と中指が捻りあげた。
「ん…」
そこに生まれた小さな痛みはセリアンの快楽を増長させる。
咥内を犯していた指先も、今は対になった乳房にあった。
既ににもどかしい存在でしかない布の下へと指先が潜り込む。
布は躊躇なくたくし上げあられ、夜風に豊かな乳房が露わとなる。
それを見下ろすセリアンは少しだけ満足そうに微笑んだ。
清楚な薄紅の乳頭を指先が一気に捻りあげる。
「はあぁん…」
セリアンの白い喉が仰け反り、うっとりと潤む蒼い瞳に月が映った。
指先は更なる快楽を求めそっと肌を滑り降りていく。
下腹部に降り立った指先は、そのまま肌を伝うことなく
布越しに肉丘を撫で下ろした。
快楽を求める花のつぼみは布越しに甘い痺れを発し
蜜蜂の指先を誘う。