アンジェリークが女王となって聖都で暮らすようになってから、一月ほどの時が経った。  
各地のジンクスやタナトスによる被害は痛ましいものではあったが、  
財団・教団を問わない人々の協力、何より女王の祝福によって  
アルカディアは確実に理想郷の名を持つにふさわしい大地へと近付いていた。  
 
その夜アンジェリークは、女王を護る騎士として最高の位―聖騎士であるヒュウガを自室に招いていた。  
 
 
「…あんなにかしこまった言葉で接さないでください」  
「貴女は女王陛下なのだから、公務中は仕方がない」  
「でも私達恋人です」  
アンジェリークは小さく呟くとすぐに申し訳なさそうにうつむいた。  
世界を導く女王と、忠誠を誓う立場の者。  
その関係を重んじてか、ヒュウガが恋人としての顔を見せることはこの一月ほぼ無かった。  
式典や公の席では当然のことだとしても、騎士団本部ですれ違ったり  
女王の執務室へ資料を届けに赴いた時も、彼はうやうやしい態度でアンジェリークに接していた。  
女王が誕生したばかりで互いに色々と忙しく、  
こうして以前のように言葉を交わすことができるのは偶の夜の逢瀬の時ぐらい。  
アンジェリークは流石に不安になっていた。  
 
「アンジェリーク、不安にさせてしまったか」  
広いベッドに腰かけてうつむくアンジェリークがヒュウガには酷く小さく見えていた。  
「いえ、我儘な事を言ってしまって…ごめんなさい」  
「構わん。……俺が上手く気持ちを伝えられないのが悪い」  
「そんなこと…んっ」  
顔を上げたアンジェリークに唇をそっと重ねると、ヒュウガは熱の籠った低い声で耳元に囁いた。  
 
「不安ならば、俺の気持ちを今一度確認してもらいたいのだが…構わないだろうか?」  
 
アンジェリークをベッドに倒す間もヒュウガは何度も甘いキスを繰り返していた。  
瞼に、耳たぶに、首筋に、舌先が触れたところから広がる甘い疼きは徐々に下降し、  
いつのまにか露わにされていた胸の粒に辿り着く。  
舌で丁寧に転がしながら豊かな胸を揉むと、アンジェリークはたまらないとばかりに体を捩じらせる。  
「あっ…、ん……はあっ…」  
「もう硬くなってしまった」  
ツンと立つ乳首から唇を離すと、ヒュウガはその硬さを確認するように  
今度は指でそこをくりくりと弄る。  
「やぁっ……ヒュウガさっ…恥ずかしいです…んっ」  
「敏感なところがか?俺は可愛らしいと思うが……こちらも、だな」  
そう言うとヒュウガの手は乱れてすでに半分脱げていたドレスをかき分けて太ももの間に伸び、下着の上から濡れた割れ目をなぞった。  
「ああっ!」  
一番敏感な場所に触れられアンジェリークは大きく喘いだが、  
指の動きは止まらず愛おしげにそこを撫ぜ続け、そのうち何本かは下着をずらし内部に侵入しはじめた。  
 
ぴちゃぴちゃと響く音がたまらなく恥ずかしくなりアンジェリークは覆いかぶさるヒュウガの胸を押した。  
 
「どうかしたか」  
「は、恥ずかしくて…」  
「そうでしょうか、ここを見た限り満足されていると思ったのですが…」  
「…!っヒュウガさんっ!」  
 
珍しいヒュウガの、よりによって敬語での“意地悪”で真っ赤になったアンジェリークの頬に、そっと唇を落としてヒュウガは続けた。  
「すまん、意地の悪い冗談だった。……久々なためか、くだらぬ事でも言わなければ余裕が保てそうにない」  
どう見ても余裕じゃないですかと反論しようとしたアンジェリークの腿にふとヒュウガの熱いものが当たって、彼女はびくりと固まってしまった。  
「あ…」  
「すまない、続ける」  
 
いつの間にかドレスはすっかり脱がされ、同じくヒュウガもその全てをアンジェリークの前に晒していた。  
後ろから抱えられる態勢にされ、左手は胸を、右手はくちゅくちゅと秘部を弄られた。  
更に股の間はヒュウガの熱いものが直に触れて、アンジェリークの身体を熱くさせる。  
 
「ひあっああっ……あっ…」  
「…はあっ……吐息が熱いな…」  
もはやさらさらと流れるヒュウガの髪が肩に触れただけでも感じてしまう。限界だった。  
 
「はあっ…ヒュウガさん…お願いします…」  
「…は…アンジェリーク、愛している…」  
 
熱っぽいヒュウガの言葉に思わず涙が溢れた瞬間、腰を引き寄せられて入口に熱い亀頭が宛がわれた。間髪入れずに丹念にほぐされたそこにヒュウガのものが一気に侵入する。  
「あつ…いっああっ…ひゃあああっ!」  
びりびりと繋がった部分が痺れ、うなじにはヒュウガの呼吸が当った。ふと、涙が優しく拭われる。  
「つらい…だろうか…」  
「いえ、ヒュウガさんの気持ち…全部感じられて…幸せです…」  
「アンジェリークっ…」  
 
ヒュウガは腰を大きく揺さぶるとアンジェリークの前身は大きく揺れ、そのたびに内壁がぐりぐりと刺激される。  
 
「あああっ、ああっ!ヒュウガさっ…!きもちいっ、ああっ、あっ!」  
「んっはあっ…アンジェ…アンジェリーク…っ」  
一気に押し寄せる刺激に、互いにもう何も考えられなくなる。  
もうここにいるのは女王と騎士などではなく、ヒュウガとアンジェリークという二つの存在だけだった。  
 
「アンジェリーク…っ!」  
「ひゃっ、ああああーっ!!」  
最奥を貫かれ、熱いものがはじけた時アンジェリークの頭は真っ白になっていた。  
ただ、白く霞む意識の中で愛しい人のひどく甘い告白が聞こえたような気がした―。  
 
「アンジェリーク、貴女を愛している。しかし女王陛下は尊いお方だ。だから…」  
ヒュウガは傍らに横たわるアンジェリークの髪を撫でながら申し訳なさそうに話した。  
「わかってます。ヒュウガさんは昔から女王を想い続けていたんですものね」  
「ああ。あまり俺が親しげにしてしまって、一人の騎士とこのような関係にあるなど皆に知れたら女王陛下の名に申し訳が立たん」  
「……え、あの、ヒュウガさんは騎士としての体裁のためにああいう態度をとっていたんじゃないんですか?」  
「無論それもないことはないが、一番は貴女の身を考えてのことだが」  
アンジェリークは数回、瞬いた。  
 
「あの…ルネさんやディオンさんはもちろん、騎士団の人も、聖都の人も…皆さん私たちの関係知っていると思います」  
「は」  
「だって私達、お付き合いしながらもオーブハンターとしてアルカディア中を回っていましたし、その、こうして夜にヒュウガさんを呼び出してますし……」  
あれでばれていないと思っていたのだろうか。  
そんなにも驚いたのか完全に固まってしまった恋人がなんだかとても可愛くて、おかしくて、アンジェリークは堪え切れず吹き出してしまった。  
 
 

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