彼は彼女に好意を持っていた。  
 
本が好きらしく私の雑然とした執務室と隣り合わせの書庫に瞳を輝かせたときの  
表情を今でもはっきりと覚えている。彼女はいつも私の執務室を訪れては本を  
借り、どんな本でも明後日には読み終えて私に本の内容について質問をしてきた。  
聡明な彼女は曖昧な答えを許さない。私の説明がつい長くなってしまう癖がついたのは  
その頃からかもしれない。  
 
彼は笑顔を浮かべた。  
 
そういえば私が緑茶を好きになったきっかけも彼女と一緒にいると喉が渇くためだった。  
そう、そして少し苦味のあるこの味は私と彼女との関係を変えた。  
 
「ディア、少しお疲れではないですか。  
新茶が手に入ったんですよ。一緒にいただきませんか?」  
 
彼はいつものようにやんわりと笑顔を浮かべ彼女に問いかけた。  
 
「ルヴァ様。いつもお気遣いありがとうございます。  
喜んでご一緒させていただきますわ。」  
 
彼女は清純な印象を与える笑顔で答えた。  
 
私にもいつから彼女に好意以外のものを覚えたのかはわからない。  
白百合のような彼女を手折ってしまいたいと思ったのは。  
そして私の手にはいつものあの薬があった。私の故郷では子供の頃から服用するため  
耐性がついているあの薬。私はあの薬の効能も副作用も全て熟知していた。  
 
彼は少しぎこちない手つきで新茶を入れた。彼女には小さめの湯呑で。  
彼女はやはり喉が渇いてたため、適温の新茶を彼の計算どおりに飲み干した。  
 
「ルヴァ様。今日の私はお行儀が悪いですわね。  
せっかくの新茶をよく味合わずにいただいてしまうなんて。  
でも、この新茶はほんのり甘くて少し苦いところがとても飲みやすいですわ。」  
「いいんですよ。喉も渇いていたのでしょう。  
それから今の新茶ではないのですが一緒に手に入った珍しい種類のお茶もいかがですか?」  
「ルヴァ様に入れていただけるお茶であれば喜んでいただきますわ。」  
「ディア、私もあなたにそう言われるととても嬉しいですよ。」  
 
彼は新たにお茶を入れた。そして彼女の目の前で自分の湯呑と彼女の湯呑にあの薬を数滴  
入れながら笑顔を浮かべて用意した言葉を口にした。  
 
「私の故郷に伝わる薬なのですが、とても疲れがとれるのですよ。  
私もあなたと同じくらい疲れているようなので・・・」  
「ルヴァ様、本当にありがとうございます。  
お疲れなのはご執務でお忙しいのに私の質問に丁寧にお答えいただいているから  
でしょうか?」  
「いいえ、そんなことはありませんよ。  
私はあなたとの会話をとても楽しみにしているのですからね。」  
 
一口、一口とお茶を飲む彼女を眺めながら彼はにっこりといつもの笑顔で答えた。  
少しずつ変化していく彼女の表情と様子を楽しみながら。  
 
「このお茶もとても美味しいですわ。新茶よりは少し苦いですけれど。  
それにとても身体が温まりますわね。」  
「そうでしょう?さっきよりも身体が温まるのは薬のせいかもしれませんね。  
いつも飲んでいる私もそうですからね。」  
 
彼女はゆっくりとお茶を味わった。そして彼は彼女の口元を眺めていた。  
ようやく彼女はお茶を飲み終わって、ふと時計を眺めた。  
 
「ルヴァ様、長居をして申し訳ございません。  
ご執務に支障はございませんでしたか?」  
「大丈夫ですよ。今日明日の分は午前中に終わらせましたからね。  
それよりも、私のほうこそこんな時間まであなたを引き止めてしまって申し訳なく  
思っていますよ・・・お送りいたしましょうか。」  
「ルヴァ様、ありがとうございます。でも、まだ明るいですから今から帰れば  
大丈夫ですわ。」  
 
彼女はソファーから立ち上がろうとして足元がふらついた。  
彼はとっさに彼女の身体を支えた。  
 
「ディア、あなたは疲れているのですよ・・・」  
「ル・・・さ・・・」  
 
彼女の返事は最後まで聞けなかった。そしてゆっくりとまぶたを閉じた。  
彼は彼女のまぶたが完全に閉じられるのを確認すると同時に笑顔を浮かべた。  
その瞳は艶っぽくゆらめいていた。  
 
彼は彼女の様子を手短に相手へ話した。  
 
「ディアは疲れていたのでしょう・・・今は眠っていますよ。  
私が本を貸しすぎたのではないでしょうかね。起きたら私の馬車で送りますよ。」  
 
相手は彼の普段の行動から彼女は安全と判断し心配するのをやめた。  
彼の執務室には書庫と一緒に執務に追われて私邸に帰ることができない時のために私室が  
設けられていた。  
 
そこにはベッドやバスルームなど快適に生活するには申し分ない設備が整っていた。  
私は滅多な理由でこの部屋を使うことはなかったが、この姦計にはここがふさわしい。  
彼女のほうを見ればほんのりと桜色に染まった陶器のような肌をしていた。そして目を開く  
様子はない。だが薬の効果は時間と共に薄れていく。  
 
彼は彼女をかかえてベッドへ向かった。  
 
私の故郷のあの薬とはいわゆる強壮剤と言われるものらしい。ただ、私の故郷では生きて  
いくために子供の頃から少量ずつ与える。あの薬があるから私の故郷の人々は忍耐強いと  
言われるのかもしれない。だが耐性のない者が多量服用した場合は・・・それは習慣性の  
ある媚薬となる。先触れとして出した新茶には念のため効果が高く短時間型の睡眠薬を  
入れた。  
 
私は彼女の着衣を丁寧に脱がした。一糸もまとわぬ状態の彼女からは花のような甘い香りが  
した。白百合め、まだ邪魔をするのか。私は一瞬香りに惑わされたがすぐに彼女の肢体に  
意識を集中させた。  
 
私は残された時間を確認した。この儀式は速やかに行われなければならない。  
まず軽く接吻をした。しかし彼女からの反応はない。ほんの少し開いた唇の中から私の舌で  
彼女の舌をからめとる。今度は深く長い接吻だったこともあって彼女から少し反応が  
返ってきた。耳元、首筋。鎖骨。そしてまだ硬さの残る二つの乳房・・・私はそれらの感触を  
心ゆくまで楽しみたがったが時間がない。今日は儀式のみでいい。彼女の身体はぐったりと  
していて死体のように重い。だが彼女は生きていた。そして彼女の身体は私の手の中にある。  
心は・・・どこにあるのだろう。  
 
彼女の足は乱れていてその奥にあるものの存在を知らせていた。その太股の奥から光る蜜。  
いとも容易く蜜を出すこの花を私は手折る。さすがにこの花に触れられれば彼女の声も自然と  
こぼれるだろう。だが今の私は彼女の艶声を楽しむことができない。私は彼女の和毛に  
隠された薔薇色の真珠に唇で触れながら、蜜で指を濡らし花芯へと進入させた。彼女の身体が  
更に大きく震えて跳ねた。  
 
私は花芯の状態を確認したかった。入り口こそ少し狭く感じたが中はしなやかに私の指を  
締め付けた。確かに男性よりも女性のほうが早く大人になるというが、その通りだ。私は  
花芯の中の指の場所や形を変化させて彼女の反応を観察した。  
 
もう潮時だ。彼女に楔を打つときがきた。私は彼女にこの楔と所有の跡を残した。  
彼女の花芯からは血が流れ、ついに白百合は赤く染まった。  
 
彼は彼女の着衣を整えた後ソファーに身体を寝かせ、いつものように馬車をよんだ。  
 
「執務室でディアとお茶をいただいていましたら、すっかり遅くなりましたよ。」  
 
彼は彼女の身体を支えながら馬車に乗り、仮住まいの家へ向かった。  
ほどなくして彼女は目を開けた。一瞬ここがどこだかわからなかったようだ。  
彼女の様子に彼の顔から思わずくすりと笑みがこぼれた。  
 
「ディア、よほど疲れていたのでしょうね。ソファーでうたたねをするなんて。  
あなたらしくないですよ。」  
「も、申し訳・・・ございません。ルヴァ様の前で・・・はしたないことを。」  
「あなたはとても静かでしたので私はおかげさまで本を一冊読めましたよ。  
だから気にしないでくださいね。」  
「は・・・い。」  
 
彼女は自分の意識と身体に違和感を覚えていたが、彼の前ではなんとなく口にするのを  
ためらった。そして馬車はほどなくして家の前についた。まだ足元がおぼつかない様子の  
彼女を支え、彼は彼女の帰りを待っていた者にわざと少し困ったような顔をした。  
 
「ディアは思った以上に疲れているようですね。  
2日ほど休んだほうがいいと思うんですよ。」  
「ルヴァ様、お気遣いいただき申し訳ございません。それではその様にいたします。」  
「彼女が本を読みすぎないように・・・これは私も人のことは言えませんけれどね。」  
 
彼はやんわりと笑顔を浮かべた。その表情に不安げだったこの者は安心した。  
 
「ルヴァ様・・・?」  
「私からはカティスとジュリアスに伝えておきますから安心して休んでくださいね。」  
「ありがとう・・・ございます。」  
「ディア、また来てください。楽しみにしてますよ。それでは私は失礼しますね。」  
 
そして彼の馬車は去っていった。  
彼女は用意されていた食事にもほとんど口をつけず、早々に寝支度をすませベッドに  
入った。  
 
彼女の意識はまだ混濁していた。この身体の違和感にも納得できなかった。  
身体が軋むように痛むのはソファーで寝てしまったため、バスルームで下腹部の痛みと  
どろりと流れるものに気がついたときは疲れから早くに月のものが起こる前触れなのかと  
ふと考えたが。  
 
でも、一つだけどうしても納得できないものがある。それは彼女の乳房の赤い印。  
見るほどになぜか解らないがそれは淫らな印象を与えた。  
毒を持つといわれる美しい蝶のように。  
 

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