その日、セイランは機嫌が悪かった。  
絵のモチーフが決まらない。  
絵の具のお気に入りの色が切れていた。  
気分転換に考えた詩の韻が上手く踏めなかった。  
そんな些細なことが重なって、今やその美しい顔には険悪な皺が寄せられ、いつもより更に人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。  
誰かに八つ当たりしたい気分にさえなっていた彼の元に、何も知らない女王候補生が訪れる。  
 
「セイラン様、こんにち…は……?」  
「やあ、アンジェリーク。相変わらず悩みがなさそうな顔で羨ましいよ」  
感性の教官はどうやらご機嫌が悪いらしい。  
開口一番、きつい挨拶を受けてコレットは微かに怯んだ。  
「……あ、あの前回の講義の続きをお願いしたいんですが」  
「悪いがアンジェリーク、僕は今とてもそんな気分じゃないんだ。他の教官の所に行ってくれないか」  
唇に皮肉な笑みを浮かべて綺麗に微笑みかけられる。  
元々内気な性格のコレットは辛らつなセイランのことが密かに苦手だった。  
いつものコレットならセイランの迫力に負けてここですごすごと退散してしまうところだったが、今日は事情が違っていた。  
「あの、でも、ごめんなさい。もう今日は他の方のところに行ってしまったんです」  
「へえ、じゃあ僕は後回しにされてたわけだ」  
「そ、そういう訳じゃないですけどっ。あの、セイラン様。お願いですからご機嫌直してもらえませんか?私、出来ることなら何でもしますから」  
「何でも?」  
不機嫌そうだったセイランの瞳が輝いた気がして、嫌な予感にコレットは既に一秒前の発言を撤回したくなった。  
だが、タダでさえ天才であるレイチェルとの勝負では分が悪いというのに、これ以上差を広げられては困る、という一心でセイランの言葉に頷く。  
「わ、私に出来る範囲でお願いします」  
コレットの言葉に、セイランは見る人を魅了する笑みを浮かべて彼女を見た。  
それは、オリヴィエ辺りに言わせれば何か企んでますとしか言いようのない、策士の微笑だった。  
 
「…………セ、セイラン様。やっぱりわたし……」  
「そこまで脱いでおいて、今更止めるなんて言わないよねまさか」  
「で、でもヌードだなんてっ」  
机の上にシャツ一枚になって恥らっているコレットを眺め、セイランははあ、と嘆かわしげにため息をついてみせる。  
「芸術を卑猥な発想で汚すのは止めてくれないかな、アンジェリーク」  
セイランがコレットにした「お願い」は裸になって絵のモデルになれ、と言うものだった。  
最初は恥じらい抵抗していたコレットだったが、セイランの額の皺がどんどん増えるにつれ反論は小さくなり、ついにはその制服に自ら手をかけた。  
既にスカートは床に落ち、裸足のコレットはセイランの視線を避けるようにシャツの裾を引っ張って隠そうと努力している。  
引き際を弁えている彼は、本当はもうここらで引いてあげても良いと考えていたが、すらりと伸びた柔らかな足やコレットの初々しいはずかしがりように、つい嗜虐的な気持ちが刺激されてしまう。  
涙目でコレットに見上げられると、宇宙を守る女王候補だというのに、もっと苛めて泣かせてみたくなってしまうのだ。  
「裸婦の像と言うのは伝統的なモチーフの一つだって、この前教えなかったっけ?」  
襟元で結ばれた赤いリボンをセイランの繊細な指が引き、はらりとコレットのむき出しの太ももにリボンが落ちた。  
「それとも、僕の生徒はそんなこと聞いてなかったのかな?」  
「き、聞いてました、けどっ」  
耳元で意地悪く囁かれコレットは真っ赤になって頷く。  
愛らしい生徒の反応にセイランは唇の端で笑って彼女の柔らかな髪を梳いた。  
もう機嫌は殆ど直っていたが、恥らう少女に被虐心をそそられ、セイランは甘い毒を注ぐようにコレットに優しく囁きかける。  
「じゃあ、僕の優秀な生徒は芸術に貢献してくれるよね?ああ、脱がせて欲しい、というのならそうしてあげても良いんだけど」  
どうする?アンジェ。  
コレットにとって絶望的な選択肢をかかげ、セイランは魅惑的な笑みで彼女を見下ろした。  
真っ赤になったまま言葉も出ない彼女を、セイランは喉で笑った。  
「脱がせて欲しいの?」  
「っ」  
セイランは笑いながらコレットのブラウスのボタンに手を掛ける。ゆっくりと一番上のボタンを外すと、少女の真っ白い肌が少し露になった。  
息を呑むコレットの喉をセイランの細く美しい指が撫でる。  
羽のような柔らかな愛撫にコレットが無意識に甘い息を吐いたのをセイランは見逃さなかった。  
「自分で脱ぎます、からっ」  
ようやく搾り出した声は羞恥に掠れ、コレット自身は気づかなかったが微かに艶を滲ませていた。  
微笑むセイランの視線から顔を伏せ、コレットは震える指先で二つ目のボタンに手を伸ばした。  
だが、緊張のせいか指が震えて上手くボタンが外せない。  
指先に感じる視線に、セイランに見られていると思うとコレットの思考は乱れた。  
 
「どうしたの?一人じゃ脱げない?」  
揶揄され、かあっとコレットの頬が赤く染まる。  
「そんなスピードじゃ時間がいつまであっても足りないよ?」  
「っ」  
俯いていたコレットがセイランの言葉に顔を上げうるんだ瞳で彼を睨んだ。  
純真無垢だと思っていた少女に滲む色香に奇妙な興奮がセイランの中に沸いてくる。  
「しょうがないから手伝ってあげるよ」  
声を押し殺して羞恥に耐えている少女のブラウスを、セイランはしなやかな指で器用に外す。  
可愛らしいデザインのブラジャーを着けた柔らかな胸が露になって、息を呑む音がセイランの耳に届いた。  
控えめな胸の谷間をごくさりげなく指先でなぞると、コレットの体が敏感に震えた。  
その感度の良い反応を唇の端だけで笑って、セイランの指は器用にシャツのボタンを全部外してしまった。  
ブラジャーをした胸や細いへそ、下着まで丸見えになる。  
「セ、セイラン様……」  
コレットが震える声で自分の名前を呼び、助けを求めるように彼を見つめる。  
それに言いようのない幸福感を感じながら、セイランはシャツを肩から払いブラジャーの肩紐も一緒に落とした。  
形の良い胸が露になる。  
「っ」  
「綺麗な体だ」  
汚される前の純真で無垢で、それでいて無意識の艶を含み上気するコレットの体は、  
美しいものを見慣れたセイランの審美眼を十分満足させるものだった。  
うっとりとセイランは少女の肢体を眺め、手でわき腹のラインをなぞる。  
「次は、下だね」  
今まで聞いたことがないほど甘い声で耳元に囁かれ、コレットの体が小さく震えた。  
 
どうしてこんなことになったんだろう。  
授業を受けに来ただけのはずなのに普段勉強している机の上に座ってほとんど裸をセイラン様の前に晒してるなんて。  
コレットは現状に死んでしまいたい程の羞恥を感じていた。  
胸を両手で押さえてなんとか隠してはいるが  
セイランの真っ直ぐな視線が自分の下腹部に映るともう何も考えられなくなりそうだった。  
いつも冷たい視線だと思っていたそれが、今は炎のように熱く感じる。  
ぴったりとあわせた足の付け根をセイランの形の良い指がへそからのラインを辿って触れられると、  
コレットはなぜか期待するようなため息をついてしまう。  
「ダメ、ですっ」  
言葉で否定しても、セイランがやんわりと膝を割るのを抵抗できない。  
ほとんど裸で足を開かされ、コレットは手で自分の顔を覆い隠した。  
セイランはあくまでも楽しげに目を細めてそんな彼女を眺め見ていた。  
「濡れているね、アンジェリーク」  
セイランが俯くコレットの耳元に囁きかける。  
コレットの白の下着は濡れてその部分だけ色が濃くなっていた。  
「悪い子だ。一体何を想像していたんだ?」  
「な、何も想像なんてしてません……」  
コレットが声を搾り出して首を振ると、セイランはふうん?と薄く笑って下着の上から割れ目を指先でなぞった。  
「ぁ、」  
「自分で脱いでいて感じたのかい?それとも僕に脱がされて感じたのかな」  
人差し指が何度も割れ目をやさしく撫でる。そのたび、コレットの小さな体がビクビクと跳ねた。  
「どんどん溢れてくるよ」  
「それはっセイラン様が触るからっ」  
反射的に顔をあげ反論すると、視線がぶつかったセイランはそう、とだけ呟いてコレットから手を離した。  
「君が触れて欲しくないというなら触らないよ」  
にっこりと笑って言われ、急に突き放されてコレットは戸惑った。  
セイランの指に感じていた体は急に刺激が止んで、高められていた熱が行き場をなくし不満を訴える。  
眉を寄せてセイランを見れば、彼は本当に傍観の姿勢をとってただコレットの体を眺めていた。  
真っ直ぐな目がかすかに細められ、突き刺さるような強さでコレットの一挙一動を観察している。  
浅い呼吸に上下する胸や、下着の上から物欲しげに沁みる愛液、つい刺激をねだってしまいそうになる唇の動き。  
かろうじてブラはつけているものの胸は露だし、服を脱いだだけで濡れているはしたない自分。  
浅ましい自分の姿をこの美しい人に全てを見られていると思うと眩暈を感じる。  
セイランの視線から逃れようとコレットは体をよじった。  
自分の中の熱がセイランの視線に晒されるたび高まっていることをコレットは確かに感じていた。  
ちりちりと視線がむき出しの肌を撫でていく。  
実際に触れられているわけではないのに、まるでさっきまで触れていた指と同じほどの感触で愛撫されているような錯覚。  
こんな恥ずかしい姿を見られているのに、もっと強く触れて欲しい。  
あんな刺激じゃ物足りないと体の奥はより一層の快感を求め彼女に訴えかける。  
触られてもいないのに下着の染みが大きくなっていることを、コレットは濡れた感触で感じていた。  
このもどかしい熱を何とかして欲しい。  
コレットは熱に浮かされた瞳で気まぐれな青年を見つめた。  
 
「どうかしたかい」  
全部わかっているくせに。  
セイランに首を傾げわからないという表情で見つめられコレットは唇を噛んだ。  
この人にもっと触れられたい。だけど、やっぱりそんなこと言えない。  
「……っ」  
もどかしさに頬を染めたままコレットはセイランから顔を逸らす。  
「ねえ、アンジェリーク」  
「……は、い」  
「僕は君の献身的な協力のお陰で大分気分が良いんだ。君がお返しにが出来たらいいんだけれど」  
「お返、し?」  
「君が望むことを、僕は出来る限り叶えてあげよう」  
そういってセイランはコレットに向かって艶を含ませた顔で笑いかけた。  
ぞくっとコレットの背中に震えが走る。  
「わたしがのぞむ、こと」  
「そう。君は僕にどうして欲しい?」  
悪魔の甘い誘惑のようにセイランの言葉がコレットの心と思考を痺れさせる。  
衝動に突き動かされて、コレットは濡れた唇を開いた。  
「……って…ください」  
「聞こえないよ、アンジェ」  
「触って、くださいセイラン様っ」  
かき消されそうな小さな声でコレットが叫ぶ。  
セイランはにっこりと微笑んだ。  
本当はどこに?と尋ねて少女を焦らして苛めてもよかったのだが、  
じっとこちらを見つめる少女の可愛らしい願いを叶えてやることにした。  
少女の上に覆いかぶさり、耳たぶを唇で甘く噛む。  
「可愛いアンジェの仰せのままに」  
耳への刺激にびくびくと震える少女の体を抱きとめセイランは優しく囁いた。  
刺激を待ち望むコレットの秘部を濡れそぼって透けている生地の上から撫でる。  
指先に透明な雫が滲むのを見て微笑んだ。  
下着の上からでもわかるほどぷっつりと立ち上がった花芯を指の腹で押すと腕の中のコレットが甘く喘いだ。  
「セイランさまっ、ゃ」  
「嫌じゃないだろう?」  
自分に縋りつく少女に薄く笑いながら  
セイランは下着をずらししとどに濡れた少女の秘部を明るい日差しの元に晒して見せた。  
「ほら、こんなに濡れている」  
「は、恥ずかしいです……ああっ」  
指先で赤く充血した肉芽をつままれると、体に電流が走ったような強い刺激が駆け抜ける。  
コレットの背がしなやかにのけぞった。  
 
「快楽に溺れる君は綺麗だ。恥ずかしがる必要なんてどこにもないね」  
セイランは言い切り、指先を割れ目の中に一本潜らせた。  
愛液に濡れたそこは用意に彼の細い指を受け入れ、コレットは侵入者に甘い嬌声を上げる。  
「僕の指が中に入っているのがわかるかい?」  
「んんっ、ぁ、あんっ」  
言いながらセイランは指をぐるりと回して内壁をなぞった。  
体の内側をなぞられる感触に背を震わせるコレットの耳を、ぐちゅり、と濡れた音が犯した。  
中に入る指先がもう一本に増やされても、痛みは感じなかった。  
ばらばらの動きでセイランの指がコレットの中を征服し、  
その度にコレットの白い裸体がセイランの腕の中で踊った。  
「ああっんっ、そんなに動かしたら、ゃ、おかしくなっちゃい、ますっ」  
ジリジリと焦らされてきたコレットの中の熱はもう最高潮まで高まっていた。  
くちゅくちゅとセイランの指が出し入れされるたび体に電流が走り、  
強弱をつけて胸をもまれれば熱が体全体に広がってコレットを甘く苛む。  
「どうして欲しい?」  
セイランはあくまでも優しい声で、息も絶え絶えのコレットに尋ねた。  
一瞬、コレットの目が正気の光を取り戻し自分を抱き抱える男を見る。  
乱れながらも、純粋な光を失わないコレット。  
その美しさに見蕩れながら、セイランはコレットが言葉を発する前に指を出し入れするスピードを速めた。  
「あっああっやっ」  
指が内壁をこする快感にコレットは再び溺れ、セイランにしがみつく。  
セイランはコレットの限界を悟り指を出し入れしながら空いたほうの手で存在を主張している肉芽を押しつぶした。  
「っ、あっ!!、それだめっ!いっちゃうっ、ぁ、あ、ん、んんっーーー!!!」  
ぐりぐりと肉芽を弄られながら、指で中をえぐられるという強すぎる刺激が体を駆け巡った。  
コレットは背筋をのけぞらせ達した。  
 
強烈すぎる快楽に翻弄され、ぐったりと自分にもたれかかる少女をセイランは抱きしめる。  
呆然とするコレットの頭上に、セイランは口付けを落とした。  
優しい仕草でコレットの髪を梳きながら、聞こえてはいないとわかっていてセイランは彼女に囁く。  
「ちょっと苛めすぎたかな?でも、これが僕の愛情表現なんだよ」  
わかりにくくてごめんね、アンジェ。  
セイランは囁き、唇の端だけで上機嫌に微笑んだ。  
それは、何も知らない人間が見れば天使と評するような美しい微笑だった。  
 

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