どうしてこんな事になったんだろう?
今更ながら思う。
目の前にいる彼、初めて会った時からいつも明るい笑顔と優しい声で、私を笑わせたり励ましたり
労ったりしてくれた、私の大好きな彼。今も、私の頬をなぞる指は優しいけれど。もう片方の手、恥ずかしいくらいに
溢れてしまっている私のそこを、人差し指だけでくすぐるようにいたぶるその手はどうしようもなく意地悪に思える。
私を見下ろしている彼の表情は、欲しかった玩具を手に入れた子供みたいだったり、切なそうなどこか苦しそうな
我慢しているような顔だったり…
その全部が今まで見たことのない、まるで知らない男の人のように見えた。不思議と恐いとは思わない。
もっと、彼の表情が見たい。
不意に、その指が私の中に浅く押し入って来た。
「あっ!……っん…」
私の入り口、複雑な襞の形を確かめるようにゆっくりと動かしている。
「エンジュ」
私の名前を呼ぶ声は、いつもの彼の声よりほんの少し甘い。
そっと引き抜いて、蜜の滴る指を私に見えるようにゆっくり舐める。気が狂いそうなくらい恥ずかしくて、
頭が白く焼けるようだった。
「どうして欲しいか、わかってるんやろ?」
彼の声に支配されていく。考えようとしていた事もどうでもよくなって、頭の中が一つの答えで埋まる。
「…もっと……欲しい」
「どうやって?」
私の上に覆いかぶさり、耳元で囁く。微かに彼の汗の匂い。首筋から背中へ、それから腰へ甘い痺れが走って
私の体の中心に行き着き、また新しい潤みを生み出す。
「エンジュの声で聞きたい。どれだけ俺が欲しいか…どんな風にして欲しいのか」
言葉を切って私を見つめる瞳は、彼の司る力の通り炎のようだった。
「言うだけでええ。俺はあんたの言葉やったら、どんな事でもできる。……でも」
再び、一本の指だけで潤み切ったそこをなぞられた。私は息が止まり、体中の感覚をそこに集中させる。
「…あんたが言わないなら、俺はこれ以上一つも動かへん」