掴みかからんとする相手の腕をかわして手首を取る。体を返すと同時にその手首を逆にひねり、そして……
相手のエンジェルの体がぐるりと空中で車輪のように輪を描き、レイヤーに叩きつけられた。
『 決まった〜〜!! 白姫win〜〜〜〜!! 』
“ウォ〜〜〜” 歓声が地鳴りのように響く。これだけならヒカルや鈴鹿と一緒だが……
『 きゃ〜〜〜っ!! 最様〜〜〜〜〜!! 』
その後に“愛してる”と続きそうな勢いで黄色い声援が飛ぶ。
そんな声にも“白姫”のデウス“城之内 最”はにこりともしない。キャッチフレーズと同じく氷の雰囲気を纏ったままだ。
その美人だが、愛嬌といったもののないクールな態度に、男は引け目を女の子はたまらない魅力を感じる。
年上なのに、お姉様と呼ぶ者までいるほどだ。
「 アイスマシーン………か、 」
レイアーを見下ろすその顔には、いつもどうりの無邪気な微笑みが浮かんでいる。
「 氷が解けたら、どんなを顔するんだろう……♪ 」
子供のような好奇心を疼かせて、王二郎は心底楽しそうに最の横顔を見つめていた………
試合が終わり通路を歩いていると、どこからか湧き出したような女の子達の集団にあっという間に囲まれる。
「 最様〜〜 今日も素敵でした 」
女の子は興奮して話しかけるが、答える最は。
「 ありがとう…… 」
言葉少なに、無愛想に答える。表情はピクリとも動かない。しかし、最ファンからしてみれば最と話した、それだけで一日をハッピーにすごせる。浮かれている女の子はこれならイケルと、思い切って聞いてみた。
「 あの…サイン!、貰えますか? 」
「 ごめんよ… サインはしないんだ…… 」
間髪なく断る。女の子は残念そうな顔を、周りの子はタイミングさえよければと、淡い期待をしていたのでフライングをしたその女の子を軽く睨む。
「 ふぅ〜 」
最は周りの子にばれない様に、軽くため息をつく。こんなときはいつも楓が助けてくれるのだが、いまは姿が見えない。
360度囲まれては、おいそれと逃げる事もできず辺りを見回すと、少し離れた所で似たような状況の知り合いがいた。
しかし向こうは笑顔で手早くサインをし、握手のサービスまでしている。
………器用なヤツだ………
感心と呆れの混じった目で見ていると、不意に目が合った。向こうも気づいたのか笑顔を返すが、最は咄嗟に目を逸らしてしまう。“三原 王二郎”が嫌いという訳ではないが、はっきり言えば苦手だ。
本人は気づいてないふりをしているが、不器用な自分と正反対な所に少なからずコンプレックスを感じている。
それに、その微笑んでいる瞳はなにを考えているかわからない。レイアーの上で戦う、デウスとしての勘が
危険だと告げていた。
あからさまな最の態度にも、王二郎の顔には微笑が浮いたままだ。
だがその目の光りは、獲物を弄ぶ猫のような妖しい輝きを放ちはじめていた。
“チュッ、チュッ“
少女の見ている場所からは距離が離れていて、そんな音が聞こえるわけがない。
でも少女の目線の先で、二人の唇が触れるたびに頭の中に響く。
こんなことはいけないことだとは、まだ少ない少女の人生経験でも十分すぎるほどよくわかっている。
だが兄と、その幼馴染のキスシーンから目が離せない。
「 虎太郎…… 」
テレビドラマなどでキスシーンのある度に、顔を赤くしていた、その兄のキスシーンに心奪われるとは…
早熟な妹、鳩子に見せつけるように、虎太郎と珠代のキスシーンは熱を帯びてくる。
オマセな幼稚園児の頬が朱に染まり、“ゴクッ”唾を飲み込んだ瞬間…………“ふわっ”身体が宙に浮いた。
「 いけないな、こういう事しちゃ♪ 」
鳩子の身体は後ろから抱き上げられ、優しく耳元に囁かれた。
「 んッ… 」
くすぐったさに、鳩子が可愛く首をひねる。子供特有の甘いお菓子のような匂いを王二郎は吸い込んだ。
「 子供が見るには早いよ 」
言って王二郎は自分の首だけをそっと覗かせた。
お子様の鳩子には刺激的だったかも知れないが、王二郎から見ると唇が触れるだけの、お互いの歯を気にする初々しくも微笑ましいキスでしかない。
「 お、おろして 」
腕の中の鳩子が抗議する。見られたことの恥ずかしさと、首筋に感じるくすぐったさに赤くなる顔は、
特別ロリコン趣味のない王二郎さえ妙な気持ちにさせた。
「 子供じゃないんだから 」
“一桁しか生きてないのに”と思うと、王二郎は笑みを抑えることができなかった。
その反応に馬鹿にされたと思ったのか“キッ”と睨みつける顔がまた可愛い。どんな表情をしても映える、
将来は美人を保証されている顔だ。
「 ふふ… ごめんね♪ 」
「 むぅッ 」
兄の虎太郎だったらせいぜい『おまえなぁ〜!』と言う程度で終わりだろうが、王二郎には軽くイナサれる。
どうやら兄とは役者が違う様だと鳩子も悟った。プイッとそっぽを向いてささやかな抵抗をする。
「 鳩子ちゃん… 」
「 な〜に〜 」
ふてくされた顔で振り向くと、“チュッ“ 唇が触れ合う音が、今度ははっきりと聞こえた。
……え!?…なに、今の……キ、キ、キス………
「 ごめんね♪ 子供扱いしたのはレディーに対して失礼だったかな 」
突然のショックに、鳩子は対処できず、しばしパニクる。だから王二郎の言葉に素直に従った。
「 鳩子ちゃん… 目を閉じて…… 」
この後、なにをされるか鳩子は知っている。それでも……瞼は、眠るようにゆっくりと閉じられた。
ドキッドキッと心臓の鼓動が早鐘のように鳴り響く。その小さな身体は、期待と不安に小刻みに震えていた。
緊張の為に固く結ばれた鳩子の唇に、温かく柔らかい感触がふれる。
……キス…してる……王二郎さんと………
長い…長い…優しいキス…… 鳩子の身体が、息苦しさと恥ずかしさと、恋慕の思いにプルプルと震えた。
「 ぷはぁッ ハアッハアッ 」
二人の唇が離れると鳩子は荒い息を吐くが、その瞳はキスをやめてしまった王二郎を淋しそうに見上げる。
「 鳩子ちゃん お兄さん達を二人っきりにさせてあげようよ♪ 」
そう言った王二郎の言葉に潤んだ瞳で“コクンッ”と頷く。
何秒か前にふてくされていた顔とは思えない。ダッコされたまま小さな手が“キュッ”と王二郎の腕を掴んだ。
しばらく歩いて会場の入り口までくると、王二郎は鳩子を腕から解き放つ。
「 はい、着いたよ 」
一瞬、“え!? なんで…”といった顔をするが、王二郎の手が頭を撫でると黙ってしまう。
鳩子は頭を撫でられるのが一番嫌いだ。子供扱いの象徴だとさえ思っている。
でもいまは、身体が熱くなるだけでイヤじゃない。もっともっと撫でてほしい………
「 続きは、また今度ね♪ 」
外はそろそろ夕暮れ時だ。
「 わかった… 」
虎太郎にだったら、絶対にこんなに素直には従わないだろう。でも王二郎をいたずらに困らせて子供だと
思われたくはない。
「 みさきちゃんもいるんでしょ 」
「 うん… 」
肩を落としてトボトボと歩き出す。いきなり“クルリッ”と振り向く。
「 また…今度、続き…絶対よ! 」
「 うん 今度ね♪ 」
「 絶対よ!! 」
そう言うと返事も聞かずに走り去ってしまった。
「 可愛いな。本当に…… 」
鳩子の背中が廊下の角に消えるまで見送くり振り向くと、いつもどうりの無愛想な顔で 城之内 最 が
こちらをじっと見ていた。目が合うと逸らすのはさっきと変わらない。
「 …たいしたものだな、まるで光源氏だ… 」
王二郎のほうから話しかける事はあっても、向こうから話しかけてくるのは珍しい。
「 鳩子ちゃんだったら、それも悪くないね♪ 」
「 ふぅ〜 気が長いのか、守備範囲が広いのか… 」
呆れたようにため息をつくが、目元は心なしか笑っている。王二郎はどこから見ていたか探ろうかと思ったがどうやら問題はなさそうだ。
「 十年後は鳩子ちゃんと行くとして、なにか食べにいかない? オナカへっちゃた 」
「 小林 鳩子 の代わりか… 楓も帰ってしまったようだし、いいだろう… オマエの奢りだぞ 」
そんな事を冗談めかして言ってくる。
いままでは身構えられる所があったが、さっきの鳩子へのダッコはよほど好感触だったようだ。
……そのぐらい…いくらでも奢るさ…すぐにご馳走して貰うんだから……
「 ん? なにか言ったか… 」
「 ううん なんでも♪ 」
電車はサラリーマンの帰宅時間にちょうどぶつかったのか人でごった返していた。
最初はドアの近くにいた二人も、次々に乗り込んでくる企業戦士達に隅へと追いやられる。
「 …くっ… 」
いつの間にか最は、王二郎と抱き合うような格好になっていた。二人の身長はさほど変わらないので、
さっきから王二郎が喋るたびに吐息が耳にかかってくすぐったい。
すらりとした長身の最は、胸こそ平均を下回るがモデル並みのプロポーションを誇っている。
その最のあまり豊かではない胸が、いまは王二郎に押しつけられる形になっていた。
これだけ人で混むと、そう簡単には体勢を変えることもできない。少しでも距離をとる為に、
間に腕を差し入れるのが背一杯だ。
柄にもなく最が赤面していると、お尻に妙な違和感を感じる。
これだけ混んでいれば、偶然当るという事も考えられるが、手は最の小さく締まったお尻をゆっくりと
上下に撫で続けた。
……痴漢だな…間違いなく……
目を鋭くさせた最は後ろを振り向こうとするが、この混みぐあいではそれも難しい。
手を払おうとするが、そこで気づく。いま手は、王二郎と自分の胸の間でロックされている。
……似合わないことをしたな……
後悔したが後の祭りだ。最が抵抗出来ないのをいい事に、指使いはどんどん大胆になっていく。
丸く円を描くようにしていた掌を広げ、尻肉をぐにぐにと揉みはじめた。
間にスカートとショーツを挟んでいても、お尻のふくらみに食い込む指の感触がダイレクトに伝わってくる。
「 …ンッ… 」
思わず鼻にかかった声が漏れてしまう。王二郎を横目でチラリと窺うが、あいかわらずなにが面白いのか
にこにこしているだけで気づいた様子は無い。
正体のわからない手の動きに翻弄されながらも、王二郎に悟られないようにもじもじとお尻を振てささやかな抵抗をする。
「 …ッ!? 」
指はそんな最を弄ぶ。スカートの裾を少しだけ持ち上げると、チョイッチョイッとからかうように揺らす。
最の顔色が変わった。動かない身体を必死に揺するが、無情にもスカートはゆっくりとたくし上げられていく。
この混み具合では誰にも見られる事は無いが、そんな事はなんの救いにもならない。
「 うッ… 」
すべらかな手触りを楽しむように太股を撫でまわし、指先が這いのぼって来た。
……気持ち悪い…触るな!……
心の中で罵ったが、指が身体に触れるたびに、敏感な神経が引き出されてくるかのような気がする。
自分の身体に裏切られて、その顔は羞恥に染まっていた。
「 どうしたの 」
「 あッ… 」
王二郎が耳元で囁くと、小さな悲鳴を上げて最が身体を堅くする。
お尻に意識がいっていた最には不意打ちだった。その女らしい声に、最はますます顔を赤くした。
「 恥ずかしい? 」
「 え!? 」
……気づかれたのか……
「 こうやってくっつくの? 」
「 い、いや…ンぅッ… 」
最が戸惑ってる間も、指の動きは待ってはくれなかった。ショーツの脇からお尻に直接触れて来る。
撫でられたり揉まれたりしているうちに、最のお尻は火照り、冷たい指先から屈辱的な快感を送り込まれた。
「 はぁッ……あッ……んふッ…… 」
自分にこんな声が出せたのかと思うほど、艶のある声が口から数珠つなぎにあふれてくる。
「 やッ 」
指はお尻の谷間をすべり、ついに最のもっとも触れられたくない部位に触れてきた。秘裂は指を迎えるように蜜をにじませている。知られてしまった秘密が、さらに深い羞恥に落とす。
最は下唇を噛み、恥ずかしさと、くやしいがおそらく襲ってくるだろう快感に身構えたが、
指はピタリと秘裂に当てられたまま動かない。
「 顔赤いけど、だいじょうぶ… 」
羞恥に震える最に、薄く笑いながら王二郎が話しかける。
「 なん… 」
はっとなった最はなにか言いかけたが、それを狙い済ましたように指が秘裂の上にある突起を嬲った。
「 んあッ 」
鋭い快感の矢が、下腹部から脳天へと突き抜ける。漏れる声を抑えることができず王二郎の肩に顔を伏せた。
「 んッ……ふぁッ……あ……やッ…… 」
最の口からは堪えた喘ぎ声が熱い吐息となって、王二郎の首筋に吹きかけられる。
突起をこねながら、指はぬかるんだ秘裂をかきまわした。指が蠢くたびに最の背筋に微弱な電流を走らせる。
膝はガクガクと震えだし、いまは本当に王二郎にすがりついていた。王二郎を横目で見ると、目が合う。
にっこり笑いかけられた。その瞬間、電車がガクンッと揺れ爪先が突起を引っかく。
「 んふぁッ!! 」
最は白いもやに包まれ、チカラなく王二郎の腕の中倒れこんだ。荒い息を吐き、身体は小刻みに震えている。
「 ちょっと、つまみ食いがすぎたかな♪ 」
耳元で囁かれる声が、いまの最にはくすぐったく……………心地よかった。
ドアのガラスに映る自分の姿に、最は頬が熱くなっていく。
王二郎の腕の中に庇護され、荒い息で顔を赤くする自分が、かよわい女のようでくやしかった。
逃げるように目を閉じても、太股を伝う蜜の感触にそれを思い知らされる。
こんな所を知り合いに見られたらと思うが、屈辱的な快感を味あわされ、蕩けている身体は動いてはくれない。
それに………涼しい顔をしているが、王二郎も自分と抱き合って興奮しているんだろうか?
さっきから下腹部に当たる固いモノは、やはりオトコの…アレだろう。
この状況なら、王二郎を責めるつもりはない。生理現象としてそうなるのは当然だ。
見知ったオトコが、自分を性の対象としているのは、いささか複雑ではあったが、それはいい。
わからないのは王二郎の腕の中で、切なく火照っている身体をすりつけている自分自身。
……これではまるで、オトコを誘っている痴女だ……
恥知らずな自分の行為がますます最を赤面させる。
「 次で降りるよ… 」
そんな、オトコの興奮をまったく感じさせない王二郎の柔らかい声が、最の耳に優しく響く。
早くこの状況から逃げ出したい最は、一も二も無く頷いた。
軽い揺れを伴って電車がホームに着くと、人の群れを掻き分け王二郎は最の手を引いて降りる。
最は知る由も無かったが、それは昼間の楓の姿とよく似ていた。
内股でよちよちと歩き、王二郎に付いていく最。いまの二人は誰が見ても恋人同士に見えるだろう。
最の顔に朱が差すが、手を握っている事だけが原因ではない。それも…もちろん恥ずかしいが……
「 ……王二郎…すまないが…今日は…… 」
声をかけられて、振り向いた王二郎の表情はいつもと変わらない笑顔。
羞恥に囚われている最は、その目を真っ直ぐ見れなかった。
「 どうしたの? 」
「 少し…めまいがして…… 」
「 ああ 化粧室はこっちだよ 」
遠まわしに帰りたいと言ったつもりだが、王二郎は気づいているのかいないのか、
最の手をぐいぐいと引っ張り先を歩く。足を踏ん張れない事情のある最はなすがままだ。
「 着いたよ 」
突然、王二郎が立ち止まる。転ばない事だけ注意していた最は、危うく背中にぶつかりそうになってしまう。
見ると確かに女子トイレの前だ。
……まあ…拭くだけでもちがうか……
「 じゃあ、ぼくはここで待ってるから、なにかあったら呼んでね♪ 」
「 …ああ 」
よく考えれば、女が男にトイレの前で待たれるのは相当恥ずかしい。
だが王二郎は自分の身体を心配してくれているのだ。それを無下には断れない。
……仕方ない…手早くすませてしまおう……
トイレに入ると、鏡に自分の姿が映る。横目で一瞬、“チラッ”と見えた自分の姿をあえて無視した。
三つある個室の一番奥に入り、洋式便器に腰を下ろすと、最はそろそろとスカートをたくし上げる。
予想はしていたが、最の秘裂は粘度の高い愛液をにじませ、ショーツの股布に恥ずかしいシミができていた。
こうもあからさまな欲情の証を見せつけられては、感じてないなどと自分自身をごまかす事もできない。
最は、それでも否定したい事実を追い出すように頭を振ると、必要な分だけチリ紙をちぎり、ショーツを
脱ぎ下ろす。
そこは、凛とした麗人めいた容貌とはアンバランスに、恥毛どころか産毛すら生えていない。秘裂を拭く為に足をひらいても、桃色の大陰唇は、ほんの少しはみだすだけだ。
その秘裂に、淫らなぬめりをぬぐおうとチリ紙をあてがうと、そっとふれただけなのに背筋を甘い痺れが走り、吐息まじりの声が漏れる。
「 んぅッ 」
ストイックな雰囲気そのままに、最は普段から自分を慰めることなどはあまりしない。
罪の意識を感じるほど潔癖症ではないが、ふれるのは、どこかためらわれる。
どうしても我慢できないときも若い身体だからあるが、そのときも軽くふれるだけ、いたって淡白だ。
いまも無用の刺激を与えぬように、優しくふれたはずなのに、いくら拭いてもあとからあとから愛液が
にじみ出してくる。
大きな声を出せばオトコが飛んでくるという状況に、最は知らず知らず興奮していたのかもしれない。
震える指先からチリ紙がすべり落ちると、寝かしつけたはずの感覚が目を覚まし、少し躊躇ってから秘裂に
触れた。
ネチャ・ニチャと湿り気のある淫靡な音に煽られるように、指使いは次第に大胆なものへと変わっていく。
固く閉じた、艶めかしい大陰唇をV字の指で押し開き、中にひっそりと鎮座する、包皮の下から半分だけ顔を出している小さな真珠をこすり上げた。
「 んンッ! 」
引き結んでいた口からは、堪える事ができずに快感を訴える声が漏れてしまい最はあわてて口を閉じる。
忘れてはいけない。ここは駅のトイレで、大きな声を出せば、王二郎は聞こえるほど近くにいるのだ。
しかし、そう思えば思うほど、快感は引き出されていく。
「 ンッ、あンッ、んン〜 」
狭い秘孔からは愛液がしたたり落ち、便器の水に幾つも波紋を作っていた。
快感に支配されている最は、あいている手も有効に使おうと、服の中に差し込み、ブラジャーのカップの
内側で勃起している乳首をつまむ。
「 ひんッ 」
鋭い甘さに突き刺され、甲高い声が口をつく。
身体の内奥から湧き上がる衝動に駆られ、最は親指と人差し指で真珠を挟み、ひねり上げる。
「 んふぁッ〜〜! 」
性急すぎた自慰行為にはそれがトドメだったのか、不意に目の奥でフラッシュが焚かれ、一瞬意識が飛んだ。
切なげに身悶えしていた肢体はピンと硬直し、一拍置いてから、手が力なくポトリと落ちる。
“カシャッ”
荒い息を整えている最の耳に、上からなにか、音が聞こえた。ノロノロと顔を上げるがなにもない。
気だるい余韻に浸っている最は、そんな事はすぐに頭の中から消えてしまった。
いつもの最ならそれが、携帯電話のシャッター音だと気づいただろう。でももう遅い……もう……遅い。
王二郎に連れてこられた店は、高級感はないが落ち着いた感じの、なかなか雰囲気のいいレストラン。
ただ多国籍料理を謳っているが、国際化が進みすぎて、どこの料理がベースなのか最にはよくわからなかった。
食事をあらかた終えて、いまはお茶を飲みながら、王二郎の話しに耳をかたむける。
話し役はもっぱら王二郎で、最はそれに相槌を返すだけだ。
あまりおしゃべりは好きではないが、王二郎の話は間の取りかたがうまく、最に苦痛を感じさせる事はない。
「 城之内さんはマンガとか読む? 」
「 ほとんど読まないな 」
そこで王二郎は“クスリッ”と笑う。いつも通りの無邪気な笑顔で。
「 お願いがあるんだけど♪ 」
「 うん? 」
話が急に飛んだので、最は戸惑う。
「 これ見て♪ 」
子供が自慢するように、得意気に携帯のディスプレイを見せる。イヤな予感がした。
人間の第六感とは、悪いときだけ働くようにできているんだろうか。そこには……最が写っていた。
「 よく撮れてるでしょ 」
携帯の中の最の手は、はしたなく股間をかきまわしている。
陶然とした顔は、静止画のはずなのに、荒い息づかいで快感に震えている様まで伝わってくるようだ。
「 ぼくのお願い、聞いてくれる♪ 」
ハッとなって王二郎の顔を見る。その笑顔は楽しそうだった。
王二郎が笑っているのを見たのはもちろん何度もあるが、その笑顔は作り物めいていて、最にはいつもどこか、まるでエンジェルが笑っているような違和感を覚える。
でもいまは……デウスが心から笑っているのだと初めて感じられた。
「 聞かなかったら、どうするきだ… 」
最は青くなった顔で、それでも睨みつける。視線で人が殺せるなら、もう王二郎は三回は死んでるだろう。
「 そうだなぁ マンガなら大体はネットに流すとか、ね♪ 」
「 !? 」
胃の入り口あたりを強くつかまれた感じがして、最は食べたばかりの料理をもどしそうになる。
「 ふふっ ウソだよ♪ あんな可愛い城之内さんを他人に見せるなんて、ぼくはイヤだよ… 」
……可愛い……
“カッコいい”や“きれい”ではなく“可愛い”……自分には向けられる事の無いと思っていた賛辞の言葉にどぎまぎしてしまう。
……なにを考えてるんだ…こいつは…こいつは、脅迫してるんだぞ……
不覚にも心が動きそうになってしまった。この短い時間の間に、王二郎に好意に近いものを感じていたから。
もともとそういった気持ちがあったのかもしれない。それがこんな形で裏切られた。
哀しみや怒りといったものが一気にやってきて、感情がコントロールできない。
最の切れ長の目からは、楓以外の、他人には決して見せる事のなかった涙がうっすらとにじんでいた。
「 でもそれだとお願いを聞いてくれないだろうから、一人だけ見せようかな♪ 」
右手を伸ばし、最の涙をぬぐう。そこだけ見れば恋人同士。揺れる瞳のまま手を払う最を楽しそうに見ながらしかしお願いを装った脅迫は続いている。
「 斉藤さんにだったら、見られてもいいかな♪ 」
……楓に…見られる………
それだけは、それだけはいやだ。
例え世界中の誰に見られても、楓にだけは、こんな浅ましい自分を見られたくない。そんな事になったら……
想像しただけで、最を包む世界が暗くなっていく。
「 お願い、聞いてくれるよね♪ 」
鋭い視線で睨みつける。今できる背一杯の抵抗。そんな事しかできない自分が、堪らなく悔しかった。
「 ありがとう♪ 」
虚空に浮かぶその美しさに、無粋な音を立てるのを躊躇うかのように、夜の住宅街はとても静かだった。
だがいまの最の心を占めているのは、空に浮かぶ石コロではない。
少し前を、最がついて来るのをまったく疑う様子もなく歩く、天使の仮面を被った脅迫者。
自分をどこに連れて行こうというのかはわからない。わからないが、あんな画像でお願いしてくるような相手がこのまま食後の散歩をしてサヨナラという事はないだろう。
質問すれば簡単に答えてくれそうだが、聞いたからといって、状況が良くなるとは思えない。
たとえそれが、いずれやって来る未来を、ほんの少しだけ先のばしするだけの行為だとしても、自分のほうからその到来を早める気にはなれなかった。
「 月がキレイだね…… 」
王二郎が、これから詩でも詠むんじゃないかというように、謳う様に、愛でるように、月を見上げる。
「 満月の夜は犯罪率が上がるんだって、城之内さんも気をつけないとね、女の子なんだから♪ 」
ヌケヌケと王二郎は言い放つ。にっこり笑顔で振り向いたその顔を、いちいち反応していては喜ばすだけ
なのはわかっているが、最は殺意のこもった瞳で睨みつける。
「 ここだよ♪ 」
「 え!? 」
十四、五階はあるだろうか、王二郎が足を止めたのはかなり立派な、ダークブラウンを基調とした上品な
外観をしたマンションだった。
「 ここは… 」
「 ぼくの家♪遠慮しなくていいからね、ぼくしか住んでないから♪ 」
そう言って王二郎はマンションに入っていく。
一人暮らしと聞いて益々気が進まないが、いまの最にはついていく以外の選択肢はない。
エレベーターに乗り、部屋につくまでの間に、このマンションの住人だろう、何人かとすれ違ったが
王二郎はいつも通りの、天使を装った微笑みで会釈をしたりする。
誰も、まさか一緒にいる女の子、最を脅迫しているとは、想像すらできないだろう。外面は完璧のようだ。
如才ない王二郎に半ば呆れ、半ば感心してしまう。と、急に立ち止まった。
「 ここがぼくの部屋 」
中に入ると、高校生の一人暮らしにしては、ずいぶんと広い。入ってすぐのところがダイニング・キッチンになっており、室内には大きなテーブルとイスが二つ、一人暮らしにしてはこれまた大きい冷蔵庫、それに反して食器棚にはあまり皿の類は置かれてない。シンクには洗い物がそのまま残っている。蛇口には簡易式の浄水器などがついており、こんなときだというのに、最は以外に生活感のある部屋が少し可笑しかった。
右手奥には洋間があるのが見える。机、回転式のイス、小さなテーブルとそのまわりにクッションが二つ。
机の上にはノートパソコンと、主人とは正反対の無愛想な顔のエンジェル“ウィザード”が最を見つめていた。
「 ちょっとやることがあるから、コーヒーでも飲んで待ってて 」
「 いい… 眠り薬でも入れられたら敵わない 」
最の返事がおもしろかったのか、王二郎はクスリッと笑う。
「 それは残念♪ いい薬があるんだけど、じゃあすぐに終わらせるから、立ってないでその辺に座ってよ 」
王二郎は言って制服の上着を脱いでイスに掛けると、パソコンを機動させた。
部屋の主人が自分をほったらかしにしてなにかやり始めたのに、ぼ〜〜っと立ってるのも馬鹿らしいので、
仕方なく最はクッションにお尻を下ろす。
よく考えれば、オトコの部屋に来たのは初めてだ。こんな形で来るとは夢にも思わなかったが………
落ち着きなく視線を彷徨わせる。洋間の奥にはさらに部屋があり、チラリッとベッドが見えた。
最の白い雪のような頬にサァッと朱が差す。
ある程度は最にも、王二郎のお願いの予想はつく。あんな方法でお願いしてくるような相手が望むことなど
決まっている。最はムリヤリ頭から不吉な想像を締め出した。
視線を奥の部屋から意識的に外すと、ウィザードがこちらを、最を見つめている。
主人とは逆に、愛想といったものは人形だから当たり前だがまったくない。
それでも、まるで人の心まで見透かすような視線は主人とそっくりだ。最はしばしウィザードと睨み合って
時間と暇を潰した。
「 これでよし、 お待たせ♪ 」
「 ……べつに…待ってない 」
振り向く王二郎に、ウィザードにも負けないくらい無愛想に最は答える。
エンジェルとにらめっこするなどという子供ぽい行為と、本当に待ちわびてたように顔を上げてしまった自分をごまかすように殊更つけんどんな口調で応じた。
「 それじゃあ、いこうか 」
「 …どこへ? 」
きょとんとして訊く最に、王二郎は薄く笑って答える。
「 トイレだよ♪ 」
「 トイレ? 」
王二郎は余程人の不意をつくのが好きなのか、微笑みを深くすると、立ち上がって、まだ意味が理解できずに座っている最の腕を取った。無理やり立たせると、最を引きずるように歩く。
「 城之内さんはベッドがいいみたいだけど、それだと不公平だからね♪ 」
「 な!? 」
背中にも目があるのか、ウィザードとシンクロでもしているのか、しっかり見られていたようだ。
不公平というのは、最には意味がわからなかったが……
「 でもけっこう刺激的でいいんだよ 」
トイレ・ベッド・不公平・刺激、この言葉のピースでできるパズルの絵は、不公平というのがわからないが。
「 イヤッ! やだぁッ! 」
いつもの最からは想像もつかない、駄々っ子のように首を振り、足を踏ん張って抵抗した。腕を掴んだ手が離れると、引かれる力に抗ってた反動で、最はフローリングの床に無様に尻餅をつく。
その拍子にスカートがまくれ上がり、横縞の以外に女の子らしいブルーのショーツが王二郎の目に晒される。
足をあわてて閉じようとすると、
「 ストップ! 」
王二郎の鋭い指示で、閉じられかけた腿が凍りついた。
「 我侭を訊くのは、一度だけだよ♪ 」
そう言って王二郎は、後ろポケットに入れていた携帯をふりふりする。最の我侭は、トイレがダイニングに変わっただけで、使い切ってしまったようだ。
「 ふふっ それじゃあ、どんなお願いをしようかな♪ 」
……我侭…だと……なにを言ってるんだ……
「 おまえはッ! 」
凍りついた身体が、怒りの熱さにより自由を取り戻す。王二郎の左手に持つ携帯を蹴り上げた。
素早く立ち上がると空中でキャッチ。どうだ!と、ばかりに王二郎を睨みつける。
最の予想では、慌てふためくとまではいかなくても、強請りのネタと一緒に、天使の微笑を奪えるはずだった。
それなのに……
「 嬉しいなぁ… 城之内さんはそうでなくちゃ♪でも…… 」
天使の微笑は増々深くなるだけ。
ポケットを探り、一枚のメモリーカードを取り出すと、最の目線の高さにかざして見せた。
「 城之内さんが欲しいのは、多分こっちだと思うよ♪ 」
最は手の中の携帯を砕けろとばかりに握り締める。
確かに、欲しいのは携帯ではなくその中身のデーター、これでは見得を切ってしまったのがひどく滑稽だ。
怒りと屈辱で顔を真っ赤にして睨みつける最を、王二郎は面白そうに眺めている。一々癇に障るオトコだ。
……その笑い…いつまでも続くと思うなよ……
握り締めていた携帯を何気なく、“ひょい”といった感じで、王二郎の胸元に投げる。
一瞬、王二郎が携帯を見た。その一瞬を見逃さず、最がフローリングの床を蹴る。
固めた拳の狙う先は、顔面。メモリーカードのほうは、うずくまる王二郎から奪えばいい。
……もらった!……
最が勝利を確信して、拳を突き出した瞬間、そのとき王二郎が動いた。
突き出された最の拳を軽くいなして手首を取る。体を返すと同時にその手首を逆にひねり、そして……
その動きは、まるで白姫を真似てるようだ。
最は操り人形のようになすがまま、後ろを取られて大きなテーブルに押し付けられる。
刹那の瞬間の出来事、それを証明するように、投げた携帯が“ゴトンッ”鈍い音を立てて床に落ちた。
「 できれば優しくしたいんだけど…… 力ずく、ていうのも嫌いじゃないよ♪ 」
「 あッ…… 」
耳に息を吹きかけるように囁かれるとと、ゾクリッとしたものが最の背筋を走り、女らしい声が漏れる。
だが最が、本人が認めたくない女らしい声を漏らしたのはくすぐったい感覚、それだけの所為ではない。
前屈みになってるせいで突き出し気味にされたお尻に、あまりにも露骨な欲情の証が、スカートの上から
谷間を抉るように食い込み、最の身体を堅くさせた。それは本能的な恐怖だったのかもしれない。
「 ふふッ くすぐったい? 」
「 ………………………… 」
くすぐったい。でも、くすぐったいだけじゃない。
今日一日の間、電車やトイレで味わった、味あわされた感覚を、身体が思い出しはじめている。
心はその感覚に抗おうとするが、そうやって抵抗すればするほど、じわりじわりと身体を蝕んでいく。
テーブルに顔を伏せ、下唇を噛む。そうしてないと、はしたない声がまた漏れそうで、最は怖かった。
自分の身体なのに、もう信用できない。涙があふれそうになる。
そうやって、最が自己嫌悪と悦楽の記憶に押しつぶされそうになっていると、王二郎の手が、
小さく締まったお尻をゆっくりと撫で上げた。
最が首だけ振り向かせて睨みつけるが、王二郎はお構いなしに、丸く円を描くようにしていた掌を広げ、
今度は尻肉をぐにぐにと揉みはじめる。
「 ……………………あ!? 」
「 気づいた♪ 」
気づかなかった。でも、いま気づいた。…………自分がバカだという事に……
潤んだ瞳から、涙が零れて、最の紅潮している頬を濡らした。
電車の中では見えなかった、オトコにしては長くて綺麗な指が、散々お尻を弄んだのを身体がよく覚えている。
そして身体は、そのときの感覚を欲するように熱を帯びていくのが、悲しいくらいはっきりわかった。
「 城之内さんがあんまりカワイイからイジメすぎちゃったけど、ああいうの嫌いじゃないでしょ♪ 」
「 ………………………… 」
ここでなにを言っても、王二郎を喜ばせるのはわかりきってるので、殊更無反応を装うが、それでも身体が
震えるのはどうしょもなかった。
「 ここだったら誰もいないから、声出しても平気だよ♪ 」
屈辱と恥辱に堪えるのに手一杯の最は気づかなかったが、耳に吹きかけられる吐息も熱っぽさを増している。
王二郎は髪の上から最のうなじに鼻を押し付けて匂いを吸い込むと、舌をのばして複雑な構造の耳朶をねぶり、耳たぶに軽く歯を立てた。
「 やめ………あッ…… 」
耳のほうに注意がいったせいか、力の緩んだ内腿を押し割って、王二郎の右手がスカートの中に入ってくる。
ついに王二郎の手が、最の秘められた、愛液に濡れた部位に直に触れた。
「 電車のがやっと乾いてきたのに、またびしょびしょになっちゃたね♪ 」
カァ―ッ……。
恥ずかしさで、顔に一気に血がのぼり、最は頬はもちろん、耳たぶまで赤くなる。
「 ごめんね ずいぶん待たせちゃったみたいで 」
待ってなどいない……。そう怒鳴りつけてやりたい。
でも快感という名の麻薬が濃度を増し、最の心をどんどん侵食していく。
ショーツの上から恥丘の曲面をさすっていた指先が、秘裂に食い込むと、
「 んンッ…… 」
鼻に掛かった声と一緒に、秘裂から透明な粘液が、じゅわりと滲みだすのが、最にははっきりわかった。
「 下着、汚れちゃうから脱がすね♪ 」
長いスカートを捲り上げて最の柳腰で止めると、形のいいお尻が露わにされる。
王二郎はその最の後姿を愉しんでから、お尻をそっと撫でて、ショーツに手をかけた。
「あッ…やめろッ……」
秘密の部位を覆う最後の一枚を守ろうと最はもがくが、それを嘲笑うようにゆっくりと、薄皮を剥くように、
ショーツは腿の半ばまで下ろされていく。
「ふっふふふ…… 城之内さんのはカワイイね」
「……クッ」
『カワイイ』それがどこを指しているのかはイヤでもわかる。だが、いま最に許されている抵抗は唇を噛むことだけだ。
「大人っぽい雰囲気なのに、ここだけは……」
「ひゃッ!」
愉しくて堪らないといったように含み笑いを漏らすと、最の股間を前から手を差し入れて撫で上げる。
そこに、成人女性ならば本来あるはずの草叢はない。親友の楓がわりと濃いだけに、その対比がまた王二郎にはおもしろかった。
見た目は幼稚園の鳩子と比べても遜色ない可愛らしさだろう。でもその身体の反応は、鳩子には、まだ子供には出来ない反応だ。
「んッ……ン……んふッ……」
柔肉の中で王二郎の指が蠢くと、喉の奥で押し殺されたうめきが熱い息となって、最の形のいい鼻孔から漏れる。
我慢しようと思っても、まるで弱い部分を知り尽くしたような指先は、最の敏感な秘裂を小刻みに震わせて恥辱の声を吐き出させた。
“くちゅくちゅ”とガムを噛むようなはしたない音が追いかける。部屋の中を満たしているのはその二つの“鳴き声”だけだった
「ハッ……あッ……あふぁッ!」
「城之内さん、もっと激しくてもだいじょうぶ?」
秘裂を弄っていた指先がソッと離れ、快感を溜め込んで肥大している包皮を被った真珠に添えられる。
「剥いてあげるね……」
最に反論させる間も与えず、王二郎は被さるフードを剥き上げた。
「んぅッ!」
いままでよりも大きな、痛いくらいの刺激が最の脊髄を走る。それも立て続けに……
「あッ、あッ……やめッ……うぁッ……ひッ…ぅああッ!!」
王二郎の指は真珠をこねくりながら、包皮を剥いては戻してを繰り返す。その度に最の快感もぶり返し、膝がガクガクと震えた。
「ひッ……くぅッ……ぅんぁッ!!」
わなないていた最の背がグッと反りあがる。静止画像のように、しばらくその体勢でプルプルと身体を震わせると、突然ガクリッと
力が抜けてテーブルに崩れ落ちた。
「……………………」
ハァハァと荒い息をつく最を、王二郎は酷薄な笑みを浮かべながら見下ろして、チャックをを下ろすと怒張した勃起を取り出す。
お尻を丸出しにしたまま、白いまどろみの中にいる最はそのことにまだ気づかない。
王二郎は指先を咥えて唾で濡らすと最のお尻の中心。秘裂の上にある小さなすぼまりに押し当てる。
“つぷッ”
「ひうッ」
異質な感覚に反射的に括約筋がすぼまる。そのきつい締めつけに逆らうように、指先が最の菊座に入り込もうとしていた。
円を描くように指で唾を塗りこめ、ゆっくりと揉みほぐしていく。
「ど、どこを触ってるんだ!」
排泄するための器官を触れるなどというのは潔癖症の最の常識では考えられない。そしてもっと考えられないのは自分の身体。
「あッ……う……はぅ……くぁ―――――ッ!!」
指先が後ろの穴をえぐると、女性器を嬲られるのとはまた違った得体の知れない感覚が熱いうねりとなって下腹部の芯を疼かせる。
堪えようとしても堪えきれないその声が、悲鳴ではなく歓喜の為であるのは、口元からよだれを垂らす麗人の顔と、ほんのりと上気して
いるお尻を見れば、誰の目にも明らかだろう。
「城之内さん、これ、気に入った?」
うねうねと指先を踊らせながら王二郎は囁く。最の菊座はすでに王二郎の指を二本、根元まで呑み込んでいる。
「うぁッ…は……ああッ……あ……ぅああッ……ふぅ……うぅ…あ、ひッ……うはぁぁッ!!」
「とっても気に入ってるみたいだね、これならもっと太いのもだいじょうぶかな♪」
すぼまりから指を引き抜くと、王二郎は腰を掴んで引き寄せた。最が逃げられないように……
「あ……」
不浄の穴を解放された最の口から出た声には、本人は決して認めないだろうが失望が滲んでいた。
「安心して……いじわるはもうしないから♪」
最の尻たぶに指を掛け、ぐいっと左右に限界まで割り開く。
「ぅぐぁああ!!」
後ろの穴の襞に感じる圧倒的な大きさ、指などは問題にはならない。
ズンッと鈍い痛みが走るが容赦なく王二郎の勃起はが直腸を蹂躙する。最のお尻は不埒な侵入者を押し返そうとするのだが、
それは王二郎をより一層愉しませるだけだった。
「やめろッ……そんなの、入るわけ……」
「もうちょっと、ここさえ入ればあとは……」
勃起の先端が菊座に浅く頭を潜らせると、王二郎はグッと腰に力を込めた。
菊座から全身が引き裂かれるような激痛に襲われる。王二郎の亀頭を呑み込む時、本当に張り裂けるかと思った。
「は、うぁああ!!」
直腸を満たす熱い肉の感触に、最は肺の奥から絞るように声を吐き出す。まだ純潔は守っているが、それでも最に“犯された”
という思いが圧し掛かる。
「動くよ……」
「あぁぁ!! くッ……ふぁッ!!」
微笑を浮かべながらも、強烈な収縮に眉をしかめた王二郎は腰を動かし始めた。動き自体は前後に揺するだけのささやかなものだが、
最にはまるで体内を掻き回されるようなうねりが襲う。
「僕もこっちは初めてだけど、城之内さんのすごく気持ちいいよ♪」
言いながら王二郎はストロークの幅を広げていく。そして何度も突かれていると、最のお尻にムズムズとした感覚が湧き上がってくる。
「ンッ、ンッ……ふぅッ……はぁ……んぁッ……ひぁッ!!」
「だんだん、よくなってきた?」
首筋に顔を埋めて、熱い吐息を吹きかけながら王二郎は囁いた。最はいま答えを返せる状態ではないが、テーブルにカリカリと
爪を立てる仕草がなによりも饒舌に物語っている。
「あッ、あッ、あぁッ!!」
排泄時の快楽を何十倍にも増幅したような感触に、いつしか最の口からは恐怖とも快楽ともつかない叫びをあげていた。
「このまま出すよ……」
“びゅぐ・ぶちゅ……”
「くはぁッ!!」
直腸で味わう不意打ちの熱さに、最はわなないてお尻を震わせながら、白い雪に染まった世界にその身を沈ませた。
最編 その一