Fallen Angelic Layer
ビデオに映っていたのは金色の巻き毛をした小柄な、白いナース風の服に身を包んだエンジェルだった。
はっきり言えば、外見は有名な強豪エンジェル「ブランシェ」にそっくりといった方が早い。
本物と同じふわっとした金色の巻き毛をしたそのエンジェルは、石造りの古城を模したレイヤーの中央に立っていた。
レイヤーは薄暗い大広間がほとんどの空間を占め、境界付近に小部屋やパルコニーがあり、その中は真っ暗だった。
ビデオはよくあるAngelic Layerの試合記録とは少し異なり、ドラマ仕立てのようにカット割りされていた。エンジェルの立ち姿に重なって堂々と「エンジェル・ブランシェ」とテロップまで出る。
だがこれが本物のブランシェではないことは、よく見ればすぐに分かった。
顔が違うのだ。似ていないというのではない。本物のエンジェルよりも遙かに、本物の人間に似ているのだ。鼻や唇が立体的で、顔の動きがリアルに出るように作られている。
そのことを示すように、画面が顔のアップになり、唇が開いて舌が覗いた。
その「表情」は人形のスケールを反映して単純化されたものだ。しかし下品にならずに上手くデフォルメされているのは、制作者の熱意もあるのだろうが、最先端の技術が贅沢に使われた結果であろう。
唇を舐める「ブランシェ」のかわいらしい顔は上気し、どこか色香さえ漂わせていた。
やがて大広間に侵入者達が現れた。
全部で6体。大きさは小柄な「ブランシェ」の倍は優にある。簡単な腰ミノをまとい、土気色の肌と節くれ立った大きな手足をした鬼達だった。ファンタジー風の城の雰囲気からいえばオーガーと呼んだ方が相応しそうだ。
中に一回り大きな「オーガー」がいて、それが残りの5体に向かって腕を振ると、「かかれ!」とテロップが現れる。このビデオは人間の声は入れない作りのようだった。
「ブランシェ」と「オーガー」の戦いが始まった。
最先端のAngelic Layerを見慣れたものであれば、人形達の動きがやや遅いのに気づくはずだ。せいぜい初期型のAngelに迫る程度の速度でしか動けていない。
だがその中でも「オーガー」と比べた「ブランシェ」の動きは軽快を極めていた。ふわりと舞うような動きで5体の敵を翻弄する様は、まるで本物のブランシェのようだ。
そっくりな動き。そっくりな技。あり得ないことだが、動かしているデウスまで本物であるかのように。
何度もつかみかかり、そのたびにかわされて同士討ちまでさせられるオーガー達。「ブランシェ」は5体の追撃をかわし、リーダーの前に躍り出た。
「まて!」
リーダーは「ブランシェ」を制止すると、腰ミノを取り去った。その下から、なんと、そそり立つペニスが現れた。人間のペニスのようではないが、カリも張っていて、それらしい作りになっている。
改めてよく見ると、全裸になったオーガーの身体は人工皮膚で全身が覆われていて継ぎ目が露出していない。間接部の形などを見ると人形であることはすぐに分かるが、動きが自然でメカニカルな匂いはほとんど消えていた。
映画でこんなシーンを作ろうとしたら、現代でも普通ならCGを使わないと不可能なレベルだ。
「ブランシェ!このご主人様に逆らうというのか?」
「オーガー」のリーダーは「ブランシェ」の前で傲然と胸を反らして立った。
「おまえは昨夜絶対服従し忠誠を誓ったではないか!」
そして、そそり立つペニスを指さす。
「これに!このオレ様のチンポに!」
「ブランシェ」の動きが、この言葉を受けてぴたりと止まった。
リーダーの眼前で、拳を振り上げたまま、うつむき、何度も首を振る。しかし、全身固まったまま震えるだけで、攻撃を仕掛けることは無かった。
そのうちに、立ち上がった5体が「ブランシェ」に群がった。前後左右から掴みかかる。だが白い天使は、今度は逆らうことなく、されるがままだった。振り上げた右腕も袖を捕まれ、引かれるままだ。
「オーガー」1体ずつが天使の袖を、襟を、スカートを掴み、引いた。服が破れた。おそらく最初からそのように作ってあったのだろう。「ブランシェ」の服はバラバラにされた。
ナースキャップと、ブーツはそのままに。白衣の天使は素裸を晒した。淡い乳輪と小さな乳首、薄い金色のヘアを持った裸体が露わになった。
綺麗なバイオスキンで覆われた全身は、矢張りシームレスで、上手くデフォルメされた少女体型のプロポーションは清楚でさえあった。
だが、裸に剥かれても両手を垂らしたままうつむき、羞恥に頬を染めた天使の姿からは、人間のものとは違うものの、ある種の淫蕩さが確かに立ちのぼっていた。
このエンジェルは、一般に知られている Angelic Layer用の人形ではなかった。人の思考を受けて動く点は同じだが、これは特殊な目的のために作られたF・A−フォーリン・エンジェルと呼ばれる人形だった。
堕ちた天使「ブランシェ」は、項垂れたまま自ら進んでその場に跪いた。屈服と忠誠を態度で示したのだ。
「オーガー」のリーダーはその前に傲然と立ち、「ブランシェ」の目の前にペニスを突き出す。
「しゃぶれ」
ペニスと堕天使ブランシェの顔がアップになる。戦う天使から性人形へと堕した通称「白の天使」は、こくり、と頷くと口を開けて小さな舌を出し、ペニスを舐めた。
「おまえはもう正義のために戦う天使ではない。俺たちの卑しいメス奴隷だ」
フェラチオ奉仕する「ブランシェ」にリーダーが告げる。
「はい。私はあなた達の奴隷です。何でもおっしゃるとおりにします」
亀頭部にキスする画面に堕天使ブランシェの服従の言葉がかぶる。
フェラチオするブランシェの動きは、もちろん人間の動きなどよりもずっと単純化されたものだが、それなりに自然で無理がない。
舌や口、首などの動きなどはちゃんと「しゃぶっている」と感じさせるものになっていた。
裸ではいつくばり、フェラチオ奉仕する「ブランシェ」の画像に、さっきの戦いや Angelic Fightの様子らしい、戦いの様子がカットバックされる。
その中には本物の天使ブランシェの必殺技「ハイパー化」の様子や、他の有名な強豪Angelとの戦いらしい画像が混じっていて、あからさまに本物を想起させるものになっている。
このF・Aも思考で動かす人形だ。つまりこの堕天使のデウスは、いま這いつくばってフェラチオするイメージをこの「ブランシェ」に送っているのだ。
白の天使ブランシェのデウスは、マスコミから「美しきデウス達」などと呼ばれる数人の強豪にして美少女デウスの一人である。先刻の動きを見せたのが、もしも本物の、あの「斉藤楓」だったらと思わずにはいられない。
この画像を見るものは、必然的に、癒し系美少女と名高い、眼鏡の楚々とした佇まいの少女を思い浮かべる。彼女が悪の手に屈服し、陵辱される姿とダブらせて、この人形劇を見るのだ。
やがて堕天使ブランシェはリーダーの前に四つんばいのまま尻を突き出して掲げ、自ら犯して欲しいと懇願する。
「お願いです。私のイヤらしいオマンコにご主人様をください」
台詞と共に、堕天使の口が「オマンコ」と言ったように動いた。
「オーガー」が背後から「ブランシェ」を犯す。「ブランシェ」の性器はさすがに単なる割れ目だが、結合部にもサーモンピンクのスキンをかけてメカ部分は見せていない。
犬の格好で犯される堕天使ブランシェ。挿入されて自ら尻を振る様はどん欲な性の獣にも見える。
5体のオーガーが代わる代わるブランシェの口を犯し、手でペニスをしごかせ、小振りな乳房を愛撫した。ブランシェはその全てに応えて、真に性処理人形としての奉仕をした。
この人形が本当に使用者の意のままに動くなら、「彼女」は本気で輪姦セックスに燃えているに違いない、と思わせる動きだった。
「ああ、いい、いい、嬉しい…もっともっと、犯してください」
ブランシェの台詞も、もはやこの陵辱を心から受け入れ、発情したメスのものだ。
やがて、ブランシェの手の中のペニスの先端からちらりと光沢が覗き、そこから白い粘液が発射された。
フェラチオさせていた「オーガー」も口からペニスを引き抜き、ブランシェの顔に「精液」をかける。
そして、背後から犯していたリーダも身体を震わせ、性を放った。
「あああぁぁぁぁっ!」
それと同時にブランシェも身体を震わせて絶頂する。目を閉じ、口を開けはなった彼女の表情は確かに「逝って」いた。
ラストシーン、仰向けに横たわり、ペニスが引き抜かれた股間の分け目から白い粘液をしたたらせて、堕天使ブランシェは妖艶に微笑む。
「ありがとうございました。またいつでもブランシェを使ってください」
「…『裏流出』させちゃうものとしてはこのくらいかな?」
「そうだね。最初だし」
「会員向けと同じにはできないんだから良いんじゃない。でも、この次のはブランシェの『声』入れようよ。その方が萌えるから」
「そうだねぇ。聞いたら分かっちゃうかもしれないけど?」
「大丈夫だよ。サンプリングだと思ってもらえば」
乾いた笑い声。「組織」の構成メンバーの中でも若手の彼らは、いつもこうだ。罪の意識など無く、ゲームでもしているように悪事を働く。実際、彼らにとってはゲームなのだろう。
「楓も、いいよね?」
声をかけられた彼女は、いつもと変わらない微笑みを返した。大きな眼鏡の顔を傾け、両肩に垂らした半分だけ三つ編みの髪が揺れる。
「はい。ご主人様型のお好きなようになさってください。私は何なりとご命令に従います」