木の幹に背中を預けて、マリオは大きく息を吐いた。  
帝都……だった場所から、それほど離れていない森の中。既に日は暮れ、全身が疲れを訴えている。  
野営をするしか無さそうに思えた。幸いまだそれほど寒い季節ではないし、それでも問題は無い。  
眠らなければ、と頭の隅で考える。明日から、やらねばならないことがあるのだから。  
気だるい思いで、両耳のイヤリングをはずして、布にくるむ。  
……彼女はそこで動きを止めて、布を開いた。見慣れた1対の水晶檻。片方は暗闇に淡い燐光を放っている。もう片方は──  
得体の知れない感情が湧き上がってくる。帝都の中で感じたのと、同種のもの。  
あの時は、人目があったから耐えることができた。元より他人に涙を見せることは無かったし、それが彼女の誇りでもあった。  
だが、今では帝都に生きた人間は住んでいないし、近くに村も無い。  
そのことも手伝ってか、感情は制御できないほどに大きくなっていた。  
自分の体を強く抱きしめる。歯を食いしばる。目の端から涙が零れる。  
こらえようとするほど嗚咽は大きくなり、彼女は、同年代の少女のように泣いていた。  
不意に、自分の感情が何なのかを理解する。そして、彼女はかすれ声で呟いた。  
「寂しい……」  
自分の発した言葉が、ナイフのように体に突き刺さる。  
「寂しいよぉ……!」  
彼女は涙を拭って一息つくと、また手を開いた。  
光の灯った水晶檻。そっと念糸を伸ばして、触れる。  
呪文を口の中でつぶやいて、彼女は精霊の名前を呼んだ。  
「カリニス」  
周りの空気が張り詰めるような振動音が響いて、精霊が現れた。  
主人の命令を待って、中空に浮いている三角形の鋼に、マリオはそっと手を伸ばした。  
温度も重さも感じられない、硬質の感触。鋼の表面を撫でて、震える声で囁く。  
「慰めて……」  
 
精霊は、彼女にとって、戦友だった。唯一気を許せる友人であった。  
そして、夜の生活を共にする、恋人でもあった。  
戦闘訓練と一緒に、夜伽の訓練も受けた精霊は、少女に性の悦びを、そしてテクニックを教えた。  
寂しさを感じる日には──特に今日のように──時たま相手をしてくれることもあった。  
 
鋼精霊は歪な円柱形をとり、その側面から、猛々しく勃起した男根が生えていた。  
マリオはその前に跪いて、それの根元に手を当てて、軽く撫でるように扱き始めた。  
精霊が気持ちよさそうに振動音を高める。  
彼女はこくりと生唾を飲み込むと、顔を近づけて、先端を口に含んだ。  
顔を前後に動かして、肉茎に舌を這わせて、奉仕を始める。  
淫らな興奮に体の芯が疼く。瞳が潤んで吐息が熱くなる。奉仕しているのは自分だというのに……  
彼女は息を吸い込むと、ぐっと喉の奥までペニスを飲み込んだ。  
むせ返りそうになるのを堪えて、前後運動を始める。  
「んむっ……ん、ふっ……」  
奉仕の手は緩めずに荒く鼻で息をつく。じゅぷじゅぷと、いやらしい水音が周りに響いた。  
こうするのが、そしてされるのが、彼女のお気に入りの方法だった。  
口の中を犯されている感覚が、卑猥な興奮を高めてくれる。秘所がじわりと濡れるのを感じる。  
しばらく口内奉仕を続けていると、精霊は満足したように、口からペニスを引き抜いた。  
「はぁ……はぁ……」  
息を荒く喘がせて、マリオが服を脱ぎだす。この後も手順が決まっていた。  
ボタンをはずす時間がひたすらにもどかしい。下着姿になると、さらされた肌に冷たい夜気が触れた。  
既に下着には小さな染みができて、その部分だけ少女の淫肉の形をくっきりと浮かび上がらせていた。  
彼女は木の幹を背にして、M字開脚の姿勢になり、物欲しげな瞳で精霊を見上げた。  
 
一番卑猥な言葉で"おねだり"しないと、精霊は何もしてくれない。そういう風に訓練されている。  
それは分かっていたが、理性がどうしても邪魔をする。彼女は顔を紅くして、囁くような声で言った。  
「わ……わたしの、お……まんこに、いやらしいことして下さい……」  
精霊は動かない。じれったい思いに駆られて、彼女はもう一度言った。  
「わたしの、いやらしいあそこを一番太いので犯してください……」  
まだ動かない精霊を見て、泣きそうになる。体の疼きはもう限界を超えている。快感が欲しい──  
マリオは理性をかなぐり捨てて、助けを求めて哀願した。  
「おちんちんをしゃぶってるだけで濡れちゃういやらしいわたしのおまんこに、お仕置きしてください……!」  
普段の強気な彼女からは考えられないような台詞。プライドは欲情に取って代わり、  
相手に支配される快感に思考を捕らわれている。  
精霊が動いた。体から指ほどの太さの触手を生やして、少女の股間に近寄ると、  
それの先端で下着の上から秘裂をなぞり上げた。  
「ひぁっ……!」  
待ち望んでいた快感に背筋が震える。もっと欲しい。もっと──!  
精霊は何度も触手を擦り付けて、そのたびにマリオは悦びの悲鳴を上げた。  
新しい触手が伸びて、マリオの胸を掴んだ。ぐにぐにと形を変えるように揉みながら、先端の突起を擦り上げる。  
「ふぁっ!それ、いいの……!」  
固く充血した乳首をこね回されて、吸い上げられる。乳房に触手が巻きつき、絞り上げるように締め付ける。  
「やっ……いっ……っひぃあ!」  
これ以上ないほど敏感になった乳首に、触手が噛み付く。痛みと快感がない交ぜになった奔流の中で、  
マリオの意識は木の葉のように揺さぶられた。  
「いぎぃ!……ひっ、はひぃっ!!」  
股間の側の触手も休まることを知らず、布地の上から淫核を押しつぶし、尿道口と膣口に先端をぐりぐり押し付ける。  
もう秘所を隠す用を成さなくなった布地の端から、触手の一本が侵入した。淫液を漏らし続ける膣口に、  
容赦なく先端を突っ込んで、中をかき回した。  
すでに濡れそぼった秘肉は中指ほどの触手をスムーズに受け入れた。ほかの触手が、少女のクレヴァスに殺到してくる。  
触手の群れによって容量を完全にオーバーさせた下着は、悲鳴を上げて無惨に引き裂かれた。  
 
別の触手が丁寧に肉芽の皮を剥き、空気にさらされたクリトリスが痛々しいほど勃起して、空を向く。  
ヴァギナに突き立った触手の数が二本、三本と増えて、濡れた音を立てながら抽送をはじめた。  
「ぅあっ、あっ、ぁっ、あっ、あぁ──!」  
膣壁を擦りながらピストン運動をする触手の束。  
仕事にあぶれた触手の一本が、割れ目に沿って下に下りてくる。そして、ひくひく口をあけているアヌスを捉えた。  
愛液がとめどなく流れ落ちて、少女の菊門まで濡らしていた。触手はそこに先端を押し当て、潜り込もうとする。  
「うっ、後ろはやめ──」  
触手は彼女の静止も聞かず、ぬるぬるになった排泄器官を逆行して、少女の体内に潜り込んだ。  
「はひっ、嫌っ、やだ、抜いてっ!」  
今まで体験したことのない、不快な感覚に悲鳴を上げる。触手はそれも気にせず、より深くへと沈みこむ。  
その先端が腸壁を引っ掻くと、彼女は別の意味で悲鳴を上げた。  
自分の感じたものが分からず、一瞬呆然とする。そして、すぐまた全身をくまなく愛撫する触手の感覚に現実に引き戻された。  
また、触手が内側を引っ掻いた。前より強く、背骨の付け根から震わされるような感覚に、彼女は悶えた。  
膣口の快感にも似ている。だが、まったく違う。入れる快感ではなく、出す快感。排泄する快感。  
肛門を犯されて感じるという倒錯的な行為に、頭の中が真っ白になる。激しい羞恥心に彼女は顔を手で覆った。  
直腸の中の触手が突然動きを変え、膣道の裏側を擦り上げるように擦り付ける。  
「くひぃっ!いやっ、ナカっ!!擦れ……っ!!!」  
膣道の中の触手と連動して、薄い肉壁を挟んで扱くように触手が踊った。  
強い性感の波に翻弄され、高みに押し上げられ、マリオは涙を流しながら嬌声を上げた。  
「もうダメっ!もうっ、イクっ!イッちゃう……!!」  
触手がラストスパートをかけるように動きを強めた。子宮口を突き上げ、淫核を捻り、肛門の出口を擦りながら引き抜かれる。  
「っああああぁぁぁぁっっ!!!」  
少女がひときわ大きな悲鳴を上げて、びくんびくんと体を痙攣させて絶頂に上り詰める。  
彼女はそこで、意識を手放した。  
 
 
オルガスムが去ると、触手はマリオを開放した。  
力無く、少女の体が地面にくずおれる。全身が汗にまみれ、秘所の口はだらしなく開けられたまま、涎をたらしている。  
彼女に動きは無く、ただ荒々しく胸を上下させる様は、これ以上ないほど淫靡で、淫らな美しさを秘めていた。  
精霊は触手を体に収めると、ぐにゃぐにゃした流線型に形を変えて、主人を見守った。  
「…………うぅ」  
少しして、マリオがうめき声を上げた。ぼんやりと瞳に光が灯ると、ゆっくりと体を持ち上げて、起き上がる。  
火照った体に夜気が涼しい。だが、このまま裸でいては冷えてしまう。  
彼女はのろのろと自分の服を手に取った。そして目に入ったのは、精霊に破かれた下着。  
「もう、服は破かないでって、いつも言ってるのに」  
もっとも、破かれなくても彼女の体液に塗れて、洗わなければ穿けないような状態だったが。  
仕方がないので、替えの下着を穿いて、服を身に着ける。  
そして、水晶檻に目をやると、そのまま何も言わず宙に浮いている鋼精霊に顔を向ける。  
「……ありがとう」  
返事はなかった。口の中で閉門式を唱え、精霊を閉じ込める。  
目を閉じると、急速に睡魔が襲ってきた。  
彼女は、今度はどんなプレイを試してみようか、などと考えながら、眠りに落ちた。  
 

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