いろいろとアクシデントが重なって、なんでか僕と薫は一緒に露天風呂に入っている。  
後ろに裸の薫がいる……そう考えるだけで、僕の心臓はバクバクだ。  
「絶対にこっち見ないでよ!」  
「わ、わかってるよ」  
とは言ったものの、実際はわかってない僕がいる。  
見たい。薫の裸が見たい。  
というか、よくよく考えたら不公平な話だ。  
薫はさっき、僕のアソコを見てるわけだし、僕にも見る権利があるだろう。  
そもそも、薫が悲鳴を上げたりするから、心配で駆けつけたというのに  
アソコは見られるわ、桶はぶつけられるわ、変態呼ばわりされるわ……  
ちょっとくらい、いい思いをしなきゃ、割りに合わない。  
「あのさ、薫」  
「な、なによ……」  
「見ていいかな」  
「な、何をよ……」  
「薫の裸」  
「は、はぁ?」  
僕のストレートすぎる提案に、薫は面食らったようだ。  
冗談だと思っているのかも知れない。でも、僕は本気だ。  
薫の返事を待たずに、僕は後ろを振り返った。  
月の明かりに照らされた薫の後ろ姿が見えた。  
その背中は小さくて、肌は眩しい程に白かった。  
普段の男勝りな薫からは想像できない、女の子の姿だった。  
「……きれいだ」  
つい、口から感想が漏れてしまう。  
「えっ?」  
振り返った薫と僕の目が合った。  
薫は驚いた表情で固まると、恥ずかしいのか、それとも、怒っているのか、顔を紅く染めた。  
「何見てんのよっ!ヘンタイ!」  
そう言って、僕にお湯をかけてきた。  
両手でバシャバシャとやるたびに、バスタオルに包まれた胸が弾む。  
僕の視線はその胸に釘付けになった。お湯なんか全然気にならない。  
薫もお湯攻撃が効いていないことと、胸を凝視されていることに気がついたらしく  
大人しくなって、両腕で胸を隠した。  
「な、なにジロジロ見てんのよ……あっち向いてよ……」  
薫は小さい声で、お願いするように言った。さっきの迫力はどこへやらだ。  
僕は知っている。薫は押されると弱い。  
普段は攻撃的だが、その一方で守備力はザルなのだ。攻められることに慣れていないから。  
エッチなことになると、それが顕著になる。  
僕が胸を凝視したことが、薫の弱点にクリティカルヒットしたようだった。  
行ける。  
このまま押して、押して、押しまくって、薫の裸を見せてもらうんだ!  
 
「薫、バスタオルとって」  
「そ、そんなことできるわけないでしょ!」  
「温泉の中にタオルを持ち込むのはマナー違反だぞ!」  
「……」  
僕が大声で正論を言うと、薫はうつむいて黙ってしまった。  
本当に押しに弱いやつだ。  
「僕が男湯に戻るついでに脱衣所に持って行ってあげるから、早くとって」  
「わ、わかったわよ……じゃあ、あっち向いてて……」  
「薫の方を向いていないと、タオルを受け取れないじゃないか」  
「で、でも……」  
「でもじゃない!早くタオルをとって!」  
普段は大声を出さない僕が、声を張り上げることで、薫は怖がってすらいるようだった。  
「わ、わかったわよ……」  
視線を逸らしてそう呟くと、薫は体を肩までお湯に浸かり、お湯の中でバスタオルを外した。  
「……はい……これでいいんでしょ……」  
横目で僕を見ながら、お湯を含んで重くなったバスタオルを丸めて僕に手渡した。  
これで薫はお湯の中では一糸纏わぬ姿になったわけだ。  
しかし、温泉の水面は暗く、月明かりがキラキラと反射するだけで  
薫の体を見ることはできなかった。  
裸をじっくり観察するには、お湯から出てもらう必要がありそうだ。  
ならば……  
「じゃ、タオルを脱衣所に置いてくるから」  
「う、うん……」  
僕は露天風呂を出ると、バスタオルを絞って、脱衣所へ向かった。  
そのとき、僕のお尻を見た薫が「きゃっ」と小さな悲鳴をあげていたけれど、気にしない。  
薫には後でお返ししてもらうんだ。  
脱衣所にタオルを置く。  
一旦、男風呂の脱衣所へ戻り、素早く服を着る。  
服を着たのは、僕だけが服を着ていて、薫だけが裸のほうが、より恥ずかしがってくれるんじゃないかと思ったから。  
そして、女湯へ向かい、脱衣所から薫に声をかけた。  
「おーい、薫―」  
完全に油断していた薫は、驚いたのか水しぶきを上げながら胸を隠して、僕の方を向いた。  
「な、な、な……」  
僕を指さす薫。顔は真っ赤だ。  
「なんで戻ってきてるのよー!」  
「なんでって、薫の裸を観察しようと思って」  
「じょ、冗談言ってないで、出てって!」  
「冗談なんかじゃないよ。だって、薫、僕のアソコ見たでしょ」  
薫はうつむいて、小声になる。  
「そ、それは……見たくてみたわけじゃ……」  
「でも、見たよね」  
「……」  
「僕たち、付き合ってるのに、僕ばっかり恥ずかしいところを見られて、不公平だよね」  
「で、でも……私は、女だし……」  
「男も女も関係ないよ。男女平等参画社会。そんなセリフ、男勝りの薫らしくない」  
冷たいトーンで突き放すように反論すると、薫はシュンと大人しくなってしまった。  
「……で、私はどうすればいいのよ」  
「簡単だよ。しっかり温まったら、お風呂から出るだけでいい。僕はそれをじっくり観察させてもらうから」  
「そんなこと……」  
「のぼせない内に、早く出た方がいいと思うよ」  
「……」  
僕の決意が固いとわかって、薫は観念したらしかった。  
しかし、やはり裸で僕のいる脱衣所に向かうのには抵抗があるのか、すぐには湯船を出ようとしない。  
このままでは薫がのぼせてしまう……  
僕は、薫にお風呂を出る踏ん切りをつける、サポートをしてあげることにした。  
 
一旦、脱衣所の中に入り、薫の着衣が入ったかごを持って戻る。  
「薫」  
「な、なによ……」  
「薫が温まってる間、暇だから……」  
そう言って僕は、薫の着衣を物色し始めた。  
「あ、あんた、何やってんの!」  
薫に声のトーンが戻った。  
そんな声に動じることもなく、淡々と着衣の入ったかごを漁る。  
ハーフパンツと上着をかき分けて、薫のブラを引っ張り出す。  
「こんなの見つけたよ」  
ブラを指でつまんでヒラヒラさせる。  
「や、止めてっ!」  
薫が叫んだ。自分の下着を弄ばれることは、やはり相当恥ずかしいみたいだ。  
「それから、それから……」  
さらにかごを漁ってみせる。探しものはもちろん……  
「あ、見つけたよー。薫のパン……」  
「止めてっ!触らないで!」  
薫は勢い良くお湯から上半身を出し、僕に向かって叫んだ。  
「わかったから……」  
「ん?なにがわかったの?」  
「もう出るから!だから、それには触らないで!」  
ようやく、決心してくれたようだ。  
お湯から出て、脱衣所までの数メートルで、薫の裸をじっくり観察してやろうと、僕は身構えた。  
薫は少しの沈黙の後、はぁっと溜息をついた。  
「このヘンタイ……」  
小声でそう呟くと、柔らかそうな胸の膨らみを、両腕でしっかりと守りながらゆっくりと立ち上がった。  
そして、左手で両胸の先端が隠せていることを確認してから、右手をまだお湯に隠れている股の方に持っていく。  
どうやら、すんなりと裸を見せてくれるつもりはないらしい。  
でも、必死に恥ずかしいところを隠している薫は、とても可愛くて、それはそれで興奮した。  
ゆっくりと岩の段を登り、太ももまでが見えた。  
そして、まずは右足、次に左足と慎重に湯船を出た。  
そこでは月の光がわずかで、薫の表情や、体の全部を見ることはできなかったが  
特徴的な癖っ毛と、美しい体のラインが星空をバックにシルエットとなって浮かび上がっていた。  
そのシルエットがゆっくりとこちらへ向かってくる。  
胸と秘部をかばいながら、クネクネと歩く姿からは、普段の薫には見られない乙女の恥じらいを強く感じさせた。  
こちらへ向かうほどに、月明かりが薫の体を強く照らし、徐々にその姿が露わになっていく。  
薫は頬を紅く染め、視線は不安げに自らの胸を見つめていた。  
膨らみがそれを守る左腕からこぼれ落ちることが無いようにだろう。  
月明かりに照らされた肌は透き通るように白く、スレンダーな体はとても美しかった。  
ヴィーナスの誕生という名画があるが、まさにそんな感じだ。  
「綺麗だ……」  
自然と僕の口から漏れた言葉に、驚く薫。  
薫の体を凝視する僕と視線が合うと、恥ずかしそうに顔を逸らした。  
「ジロジロ見すぎよ……」  
こんなに綺麗な裸を見るななんて無理な注文だ。  
「普通じゃないとは思ってたけど、純一がこんなにヘンタイだったなんて知らなかったわ」  
ちょっと怒ったように言われてしまった。  
でも、なんと言われようが、薫の裸から目を逸らすつもりは毛頭なかった。  
もっと近くで見たい。もっとじっくり見たい。隠されているところも見たい。  
「早くこっちへ来なよ。風邪ひいちゃうぞ」  
そう言って急かすと、薫は  
「……馬鹿。風邪ひいたら、純一のせいだからね……」  
と言い、またゆっくりとこちらへ歩こうとした。  
その一歩目で滑った。  
「きゃあっ!」  
薫は絵に描いたような転びっぷりで、仰向けに倒れた。  
 
「薫!」  
僕が駆け寄る。  
「あいたたた……」  
軽く頭を打ったらしい薫が、右腕で後頭部をさすっている。  
左腕で受け身をとったらしく、大事には至らなかったようだ。  
しかし、僕が見下ろす薫の体は、何に守られることもなく、全てをさらけ出してしまっていた。  
先ほどまで左腕に守られていた胸は、仰向けに寝そべる上半身で柔らかく左右に流れ、その頂点にあるピンク色の突起が露わになっていた。  
そして、脚はM字に開かれ、右手に守られていた秘部もバッチリ見えた。  
イメージよりも少し濃いめの恥毛は、それでも整えられているようだった。  
そして、その下にある恥ずかしい縦線からは、ピンク色のヒダが少しはみ出していた。  
最初は転んだ薫が心配で駆け寄ったのだが、いつの間にか安否そっちのけで裸を観察する僕。  
ふと上半身に目をやると、きょとんとした顔の薫と目が合った。  
「あ」  
「え?」  
一瞬、時間が止まった。  
そして、薫はズザザーと後退り、うずくまって、こっちを見た。  
「……見たわけ?」  
「……な、何を?」  
「全部見たわけ?!」  
「……見ちゃいました……」  
すごい剣幕で言われて、思わず本当のことを言ってしまった。  
これは蹴られる、殴られる……そう思って目をつぶって覚悟をしていたが、いっこうに襲ってくる気配がない。  
「薫?」  
薫を見ると、薫はなんと泣いていた。  
うずくまりながら、肩を震わせて、すすり泣いていたのだ。  
「な、な、な」  
うろたえる僕。  
「何泣いてんだ?!」  
「何って、恥ずかしいからよ!純一のバカ!ヘンタイ!」  
そう叫ぶと「うわーん」と声を上げて泣き出した。  
こんな薫は初めてだ。  
自分の欲望のために、薫を泣かせてしまった。  
途端に後悔の念が押し寄せる。  
僕はゆっくりと薫に近づくと、裸の薫をそっと抱きしめた。  
「ごめん、薫」  
癖っ毛をとかすように撫でる。  
「恥ずかしい思いをさせてゴメン」  
「……ほんとよ……」  
グスンと鼻をすすりながら、薫が言った。  
「薫が好きで……その、好きだから、裸がどうしても見たくて……」  
「……バカ」  
「ほんとにバカだよ、僕は。薫を泣かすなんて。ほんとうにごめん」  
「謝ったって許さないんだから」  
「どうしたら、許してくれる?」  
「……純一のも……見せなさいよ……」  
 
思わぬ提案に、僕はギョッとして薫から離れた。  
「見せるって……」  
「そこで脱いで、見せて」  
薫の目は真剣だった。  
「さ、さっき僕がここに飛び込んできた時、見たろ?」  
「あんまりよく見えなかったもん」  
「いや、でも……」  
「私の裸全部見たんだから、純一も見せなきゃ許さないんだから」  
いつの間にか形勢が逆転している。  
裸でうずくまり、涙目で僕を見つめる薫に、押されまくっている。  
涙は女の武器とはよく言ったものだ。これには敵わない。  
「わ、わかったよ……」  
仕方なく、僕はズボンを脱ぎ始めた。  
そんな僕を目を丸くして見つめる薫に、僕の羞恥心は高まった。  
じっくり見られることが、こんなにも恥ずかしいとは……  
さっき薫にしたことを、そっくりそのまま返された形だ。  
ズボンを脱いで、トランクス姿になると、僕の興奮したアソコが薄い布を押し上げていた。  
薫は「わぁ。すごい」なんて素の声で言った。  
「さ、さっさと脱いじゃって」  
もう完全に主導権は薫にあった。  
僕はしぶしぶトランクスに手をかけて、足から抜き取った。  
手でアソコを隠そうと思ったが、いきり立った僕のアソコは両手をもってしても完全には隠れなかった。  
「純一。手は後ろ」  
薫が命令する。  
かなり抵抗があったが、さっき僕が薫にしてしまったことへの罰だと思って、従った。  
僕のアソコが、薫の目の前に晒された。  
「……へぇ〜、すごい」  
「……すごいって、なんだよ……」  
「すごい、可愛い」  
なんだそりゃ。可愛いはこの状況では褒め言葉じゃないぞ。  
僕の羞恥心は限界を超えた。  
「もういいだろ!」  
そういって、手で隠そうとすると、裸の薫がタックルしてきた。  
「うわあっ」  
仰向けに倒れる僕。そこに乗りかかる薫。  
そして、薫の手が、僕のアソコに触れた。  
「っつ!」  
全身に電気が走るような感覚が僕を襲った。  
「まだ良くない。もっといじめなきゃ気が済まない」  
そう言うと、薫は細い指で僕のアソコを握ると、上下に動かし始めた。  
とたんに僕の下半身に痺れるような快感が押し寄せる。  
「うあっ!ちょっと、薫!それ、マズいよ……」  
「何がマズいの?気持ちよさそうな顔して」  
いたずらっぽく笑う薫。  
薫の柔らかな胸の感触が僕の胸に伝わり、僕の脚と薫の脚が絡みあい体温を共有する。  
そして薫の細い指が僕のアソコに絡まり、リズム良く刺激する。  
開始から30秒。早くも僕は限界だった。  
気持ちいいけど、なんだか悔しい。イキたくない。でも……  
「で、出るっ……!」  
情けない震えた声と共に、僕のアソコは脈打ち、精液を吐き出した。  
その勢いに、薫は最初は驚いていたようだが、全てを吐き出し、しぼんでいく僕のアソコを見るとニヤニヤ笑ってこう言った。  
「女の子に一方的にイカされちゃうなんて、はっずかしー」  
 
屈辱だ……  
途中までは薫を攻めていたはずだったのに、なんでこんなことに……  
なんだか体に力が入らず、仰向けでぼーっとしていると、薫は立ち上がり、僕を置いて脱衣所へ向かった。  
このままじゃ負けだ。何か反撃しないと。何か……  
そして僕はこう呟いた。  
「薫って、あそこの毛も癖っ毛なんだな」  
僕の視線には満天の星空で、薫の顔は見えない。  
でもきっと、僕の呟きに驚き、怒って、僕の方に向かってきているんだろう。  
今度こそ蹴られるか、殴られるか。あるいは桶を投げられるか。  
くだらないことで争って、くだらないことで笑いあって、僕らの関係は付き合う前のものとあまり変わっていないのかも知れない。  
でも、ちょっとずつ「友達」じゃできない、「恋人」だからできることをやっていく。  
今日のこれもそう。  
そんなことを考えていたら、星空を遮る黒い影。薫だ。  
「純一ぃ!」  
僕の顔面に、薫のげんこつが振り下ろされた。  
 
完  
 

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