「……見ちゃったんだ」  
いきなりネクタイを引っ張られてバランスを崩したために黒い手帳を取り落としてしまったが、いまは手帳の行く末を気にしている場合ではない。  
放課後の閑静に包まれた教室には、僕と絢辻さんしかいない。それはそうだろう、絢辻さんは水着姿のまま僕と密着しているわけで、こんなところ誰かに見られたらそれはもう悲惨なことになっているに違いない。  
「あ……絢辻、さん?」  
僕は詰まりそうだった喉を必死に開いて、おどおどと声を出した。僕の言葉に、絢辻さんはネクタイをぎゅっと引っ張って、  
「勝手にしゃべらない」  
と日頃の彼女とはかけ離れた低い声音を発した。  
聞いたことのない冷たい声に、僕は思わず「す、すみません」と条件反射のように謝ってしまう。怜悧な顔立ちをしている絢辻さんに迫られると、なにか自分がいけないことをしたような気になってしまうのだ。  
水も滴る絢辻さんの胸が、僕の心臓あたりに押しつけられている。ブレザーとシャツは水をいっぱいに吸い込んでいて、少し気持ち悪いが、それ以上に感じるのはスポンジのように柔らかな感触だった。  
(む、むむ、胸が……!)  
すんでのところで声を抑えたものの、顔が紅潮して汗が噴き出しているのが自分でもわかる。緊張で心臓がはち切れんばかりに鼓動しているのを悟られないかと冷や冷やする。  
「橘くん……見ちゃったんだ」  
そんな僕とは裏腹に、あくまでも絢辻さんは冷静に声を紡ぐ。  
「そっかぁ」  
「き、気に障ったんなら謝るよ…………だから、とにかく離れて」  
僕は密着してる絢辻さんを引き剥がそうと、彼女の肩を押し返そうとした。が、彼女はその前に身体を引いていた。そのため、彼女の肩を押すつもりで伸ばした手が、あろうことか彼女の胸に触れていた。  
「「あっ……」」  
突然のことに、僕と絢辻さんは二人して動きを止めた。  
耳が痛いほどの静寂が、二人を中心に渦を巻いているようだった。  
「……ご、ごめん!」  
先に口火を切ったのは僕で、衝いて出たのはもちろん謝罪の言葉だった。胸に当たった手は、当然ながら引っ込めた。  
絢辻さんは自分と僕の間の空間――きっと伸びだ僕の腕に視線が釘付けになったのだろう――をじっと見つめて、  
「これから少し、付き合ってくれる?」  
にこりと笑みを湛えて、ビックリするようなことを提案する。いや、その前に僕は叱られるとばかり思っていたから、余計に呆気にとられてしまった。  
「え……でも」  
判断がつかず逡巡していると、絢辻さんは握ったままだったネクタイを今一度引き寄せる。顔半分ほど、二人の距離が縮まった。  
近くで見ると、濡れた髪の毛や水の滴る身体つきが艶っぽくて、聞こえないようにごくりと唾を飲み込んだ。  
絢辻さんは挑むような目つきで僕を見上げ、  
「付き合って、く、れ、る?」  
一音一音を言い聞かせるように、はっきりと告げた。  
僕が普段から見てる絢辻さんは、笑顔を絶やさない可憐な少女だった。誰からも好かれるような性格と、誰もがうらやむ容姿を兼ね備えた彼女に、まさかこんな一面があるなんて。  
強い語調で、ある種、憧れのクラスメートから言われると断りきれるはずもなく、  
「は、はい」  
従順な犬よろしく、僕はそう口にしていた。  
 
了承の意を、しぶしぶという感じだったが、伝えたものの、僕と絢辻さんは静寂にどっぷりと身を浸していた。まるで身体を圧迫するような重圧があって、おいそれと動き出せる雰囲気ではないように思えた。  
僕はまるでテープの巻き戻しをしたかの如く、絢辻さんと密着している。彼女のふくよかな胸の感触や、カルキの匂い、水の滴った髪や肢体にどうしようもなく反応してしまう。  
絢辻さんの白い肩や、そこから伸びて僕のネクタイを握っている手…………普段では考えられないような状況に、ますます僕の体温が上昇していく。  
あまつさえ、スクール水着という露出の多い恰好をしているのだから、なんとも思わない方がどうかしている。  
だからこそ、危機的な状態だ。  
彼女の太ももから腰をかけてに、僕の膨らんだ一物が、確実に当たっている。それを感じているから、絢辻さんも動くに動けないのだろう。  
「あ……絢辻、さん。その、そろそろ、放して……くれない、かな」  
僕は苦笑しながら、なんとも思っていない感じで言った。というか言えた。  
しかし僕の言葉は空気中にフェードアウトしていくだけで、絢辻さんはネクタイを引っ張ったまま微動だにしない。ずっと引っ張ってるのも、そのために腕を上げているのも結構疲れるだろうに、微塵も感じさせないあたり、力はそれなりに強いのかな。  
しばらく沈思黙考するような間を堪能させられた後、絢辻さんがゆるりと顎を上向けて嘲るような笑みを浮かべた。  
「……ねえ橘くん、私の脚に、なにか当たっているんだけど?」  
その顔はすべてを物語った上で、弱者を弄ぶ魔女の心情をはらんでいた。僕に問いかけて、言わせようとする辺りにそれを感じる。  
「え、いやそれは……と、とにかく、放して欲しい、な」  
さっと絢辻さんから目をそらし、僕は頬を人差指で掻き、恥じつつも応える。  
「なにか、当たって、るんだけど」  
聞き分けの悪い子供をしつけるような言い方だ。僕が応えずに黙していると、絢辻さんがいっそう身体を押しつけてくる。  
「あ、絢辻さ――」  
「しゃべらないで」  
遮るように言葉を制すると、絢辻さんは歩を進めてくる。僕としてはアレが当たらないように腰を引きつつ、後退する以外の選択肢を選べない。あっという間に窓際の手すりに腰が辺り、これ以上退けないところまで追いやられてしまう。  
「で、これ何かしら」  
絢辻さんは僕の耳元に顔を寄せると、息を吹きかけるように囁く。僕のモノが触れていた太ももで、きつくなってきたズボンの膨らみを押し上げてくる。  
誘惑するような行為、挑発するような物言い、軽蔑するような表情に、僕は何を言えばいいのだろう、とあたふたとしてしまって逆に何も言えなくなってしまう。  
その間にも、絢辻さんの脚は僕のモノを押し上げるように擦っていて、どうしても神経がそこばかりに集中する。  
スクール水着から伸びる脚は青磁のように白く、程よい肉づきでなまめかしい。僕は指の先まで、ぴりぴりと痺れていた。  
「なんか、心臓みたいに動いてるんだけど」  
絢辻さんはネクタイを握る力を弱めて僕から少し離れると、矯めつ眇めつ僕を下から上まで何往復か眺める。まるで身体の隅々を検分されているようで、意地悪そうな視線がこそばゆい。  
「ふうん…………付き合ってもらおうと思ったけど、この際ここでいいかも」  
「え、なに?」  
「あなた、私の手帳の中見たんでしょ? あの走り書きを、見ちゃったんでしょ」  
走り書き……? なんのことだろう。僕が見たのはスケジュール欄とメモを少し見ただけで、字だって流麗でとてもあれが走り書きには見えなかったんだけど。  
ぐるぐると自分の中で悶々としている間も、絢辻さんは迷いがなさそうに動く。  
「ねえ、走り書きのこと、誰にも言わないで忘れてくれるなら」僕に胸を押しつけるように身体を寄せ、絢辻さんは太ももを上げて股間を刺激してくる。「これ、慰めてあげても、いいけど」  
「え?」  
絢辻さんの言ったことがにわかには信じられなかった。彼女はなおも脚で見せつけるように、知らしめるように押し上げてくる。これを……慰めるってことは…………そんな、馬鹿なことが。  
「な、なに言ってるのさ絢辻さん。そんな馬鹿な――」  
 
「黙りなさい、変態」  
「へ、変態!?」  
「そうよ、クラスメートの水着姿を見て、ここをこんな風にしちゃうなんて、変態じゃない」  
じとーっと見上げてくる絢辻さんは、まるでけがらわしいものでも見るような目つきをしていて、それに奇妙な感覚を覚えてしまう。  
「他の生徒たちに、変態呼ばわりされたくないでしょ」にこりと絢辻さんが口を弓なりにするが、目は笑ってはいない。「それとも、このまま廊下に出て変質者扱いされたいの?」  
「そんなことは……」  
「私は手帳の中身を誰にも知られたくない、あなたは……まあ変態には違いないけど、このまま下校したくない。交換条件よ」  
けど、その交換条件はどうなんだろう。自問しても、正しい判断が下せそうにない。なんだって、あの絢辻詞が僕のモノを――――。  
本音と建前を天秤にかけて揺らしている間に、絢辻さんは意を得たといわんばかりに僕のネクタイを器用な手つきで引き抜いた。  
「あ、絢」  
「静かにしてて」  
そのままネクタイで僕の視界を覆う。目隠しのようだ。  
「な、なに」  
「…………見られたくないから」  
ぶっきら棒な声が聞こえる。きっと下唇を突き出すような顔つきをしているに違いない、と僕は確信していた。  
ここまで情報がそろえば判断は易い。  
絢辻詞はとんでもない猫かぶりだ。普段の彼女は表ではなく裏だったのだ。  
彼女がベルトを外そうとしているのが、ガチャガチャという音で分かる。ベルトが緩められると、ボタンを外されてジッパーを下される。なんともいえないもどかしさに、僕は落ち着きなく身じろいでしまう。  
視界が塞がれていることもあって、妄想が先の先ばかりを行ってしまい、股間の膨らみも余計に増す。  
ズボンと下着が一緒にずり下げられた。膝からずり落ちないということは、ベルトで縛っているのかもしれない。  
ともあれ、外気に自分のモノが晒されているというのは想像以上に恥ずかしいし、心もとない。ましてや、目の前には……あの絢辻さんが、水着姿でいるのだ。  
「……ぅ」  
絢辻さんが息をのんだのが気配で分かる。そりゃあ、いきり立った男性器を目の当たりにすれば当然の反応といえるだろう。  
「橘くん、私のことそういう目で見てたんだ」  
声が下から聞こえる。どういう表情をしているのかはわからないが、軽蔑されていることは容易にわかる。  
「いや、別に絢辻さんのことをそういう目で見てたわけでは……」僕は手すりを探って両手を置く。「絢辻さんが…………胸、押しつけてくるから」  
「別に押しつけてないわよ」  
絢辻さんはあらわになった僕のモノに触れようとはせず、意地悪に語を継いでいく。  
「……ねえ、これ、どうしたいの?」  
甘い声で訊ねられただけでも、僕は反応してしまう。大きく、自分のモノが脈打つのが恥ずかしい。先走りが出た気配もあった。  
「どう、したいって……」  
「私、どうすれば鎮められるのか、わからないもの」  
その声音は、絶対分かった上でやっていると証明しているような、悪戯さに満ちていた。僕は背中に汗をかきながら唾を呑んだ。  
「手……手で」  
「手? 手でどうすればいいの? お、し、え、て」  
絢辻さんが手すりに置かれた僕の手を掴む。僕はおずおずと彼女の手を掴むと、屹立したペニスを握らせた。  
彼女の体温が伝わってくるようで、天にも昇る気持ちとはこういう気分なのかと妙に納得してしまった。彼女の手が僕のモノを包んでいるというだけでも、達してしまいそうだ。  
「……熱い、それに、動いてる…………」  
絢辻さんの語調に驚嘆が含まれている。僕は握ったままの絢辻さんの手をそのままに、手ずから上下に動かせた。  
あの絢辻さんが、僕のモノをしごいてる!  
「こうすれば、いいの?」  
僕が手を離すと、彼女は自発的に手を上下に揺すった。搾り上げられるような感覚に、思わず呻き声を発してしまう。  
「……ふうん」  
ただ僕のモノがしごかれる音だけが、教室に響いていた。  
絢辻さんの手つきは覚束ないものだったが、彼女が与えてくる刺激はいままでに感じたことのない代物だった。  
 
「わっ、なんか垂れてきた」  
先走りだろうか、ペニスの鈴口からあふれ出る涎が彼女の手を汚していくのを想像すると、ひときわ大きく脈打った。  
「そ、そのまま……」  
僕は荒い息使いで彼女に言う。  
「……なに息荒くしてるのよ」  
うう、と絢辻さんが不満そうな声を漏らす。先走りによって、彼女の手の動きはスムーズなものになった。彼女にとってはうれしい事ではないだろうが、僕としてはぬるぬるとした感触が堪らない。  
「……ぅ…………ん」  
一定のリズムで絢辻さんが僕のペニスをしごいている。目隠しのネクタイの裏に、その映像が見えそうな気さえしてくる。  
頭がとろけてしまいそうな快感に、僕の思考は正常に働かなくなってきた。  
「……あ、絢辻さん」  
「なに」  
「その、な、舐めて、くれないかな」  
「……はあッ!?」  
さすがの絢辻さんも驚嘆したのか、素っ頓狂な声が上がった。それが少し、女性らしく思えた。  
「だから……舐めて、欲しいなって」  
絢辻さんの手の動きが止まる。  
「な…………舐めるって…………こ、これ、を…………?」  
先ほどまでの挑むような気強さが、しなしなと萎んでいく気配があった。代わりに湧きあがってきたのは、未知な行為に対する不安のようなものだろう。  
自分でもどうかしていると思ってはいた。しかし、男ならば、こういうときに一歩先の行為を妄想してしまうものではないだろうか?  
あの絢辻さんが男の性器に下を這わせ、咥える姿を想像してしまった僕は、引き際を大幅に遠くに置いていた。だから、とんでもないことを引き合いに出してしまう。  
「絢辻さんだって、手帳の中身、吹聴されたくないでしょ?」  
男とは単純なもので、優位に立てる要素があれば強気になる。僕もその口で、つい好戦的な態度をとってしまう。  
「そ……それは、そう、だけど」絢辻さんが逡巡しているのが分かる。実は、ネクタイの結び目が緩く、下方を見れば薄らと絢辻さんが見下ろせるのだ。「でも…………舐めるって」  
僕は絢辻さんの肩を探し当てて手を置くと、そのまま圧力をかけるように下へ向けて力を込めた。  
「あっ」  
片方にいきなり重みが加わって、絢辻さんが尻もちをつく。  
「う……」  
いま、絢辻さんは僕に跪いている。彼女の顔の目の前には、そそり立った性器がまざまざと見えているはずだ。  
「絢辻さん」僕は追い打ちをかけるように、少しだけ声を大きくした。「舐めて」  
僕の言葉を被った絢辻さんは、下唇を噛みながら視線を泳がせている。僕の視界には入らないと思っているのだろう、彼女はきっと僕を見上げてきた。柳眉を逆立てている彼女もかわいらしいが、心なしか震えているようにも見えた。  
「……わか、ったわ」ぺたんと座りこんでいた絢辻さんは、膝立ちになって僕のモノを片手で握る。「舐めれば……いいんでしょ」  
絢辻さんが小さな口をゆっくりと開きながら、それを僕の股間に近づけていく。  
「……すごい匂い」  
小さな呟きが聞こえると、少しばかり気が殺がれそうになった。けれども、彼女が僕のモノを舐めるというフルコースに、舌鼓を打たないわけにはいかなかった。  
舌がおずおずと伸ばされると、舌先が亀頭に触れた。  
正直にいえば、そっとしすぎていてあまり感じなかった。  
「もっと」  
「……も、もっと…………って…………?」  
絢辻さんは恥じらいから来るのか、顔を真っ赤にしている。  
「アイスを舐めるみたいにしてよ」  
「あ……あいす」  
絢辻さんがじっと僕のモノを凝視している。これから絢辻さんがアイスを食べる時、否応なしにペニスが想起されるに違いない。  
亀頭をつまんで大きく反らせると、絢辻さんは正面を向いた裏筋に舌を這わせる。  
「……ん」  
下から上へ向かって、舌がナメクジのように昇っていく。舌の動きに合わせて、僕も徐々に高まってくる。  
「んう……ん」  
アイスを舐め上げるように頭を動かす絢辻さんは、まるであかべこのようだ。  
「手も、さっきの要領で動かして」  
僕がお願いすると、絢辻さんは「……変態」と呟いて僕をいったん睨め上げてくる。勝気な少女を屈服させているような支配感が湧きたって、僕は以上にそそられた。変態かもしれない。  
 
それにしても、絢辻さんが猫を被っているのは明白だった。僕が絢辻さんを見れないから睨んできたのだろうが、これが目隠しされてなかったらもっと、こう男を手玉に取ってる女、みたいな態度を取ると思うのだ。  
さっきまでの挑戦的な物言いや、子供を宥め賺すような口調でもそれは明瞭だ。その絢辻さんが、悔しそうに僕のモノへ奉仕している――――。  
いっそこの目隠しを取って、Sな絢辻さんを堪能するという手もあるけど、慰めてもらってる間はちょっと嫌がっている方がそそられる。って、本当に変態みたいじゃないか。  
しかし絢辻さんの「慰めてあげようか」発言の毒牙にかかった男は、彼女の魔性の魅力にあてられてこうなってしまうんじゃなかろうか。  
絢辻さんは根元から亀頭を往復すると、手でしごいて亀頭をチロチロと舌先で舐めたりしてくる。もともと要領のいい委員長だ、手つきはどんどん洗練されてゆく。  
「あ、絢辻さん……巧いね」  
「別に……ん、ぺろ、そんなことは」  
「もしかしてやったことあるとか……?」  
「そ、そんなこと……こんなことするわけないじゃないの」  
「そうなんだ、じゃあ要領がいいのかな、素質があるのかもね」  
「……馬鹿、変態」  
ちょっとふざけすぎたかと自重したが、彼女の口から聞くと「馬鹿」と「変態」という詰りさえも、欲情を掻き立てるファクターになってしまう。  
「そろそろ……咥えて、もらえないかな」  
「……く、咥える…………って」  
絢辻さんがこちらをちらりと見上げてくる。僕からは見えないと思っているからか、その顔は不安げに歪められていた。彼女の視線が僕の顔とペニスを往復する。  
もごもごと口を動かしながら、決意したのか、絢辻さんは口を大きく開いて僕の一物を少しずつ含んでいった。  
「ん……ふ」  
勃起したペニスは彼女の小さな顔の半分以上の長さで、半分ほどが生ぬるい粘液に包まれる感触に、僕は背筋がぞくぞくとしているのを感じる。  
「そのまま、顔を前後に、動かして」  
「ふぇ?」  
絢辻さんが僕のモノを咥えながら上目づかいで見上げてくる姿に、先走りがあふれてくる。彼女の目は若干濡れていて、心細げな表情と相まって犬のようだ。  
「こう、だよ」  
僕は絢辻さんの後頭部に手を当てると、自分の方に押し寄せた。  
「……ッんぅ!?」  
反射的に、絢辻さんが顔を後ろへ引く。僕はペニスを吐き出される前に、すかさず頭を引き寄せる。  
「……こう、分かる?」  
三度ほどレクチャーした後、絢辻さんはむせながら僕の一物を吐き出す。  
「げほっえほっ…………! ……はあ、はあ、分かるから…………じっとしてて」  
他人にやられるのが苦しかったのか、目尻に涙を浮かべながら絢辻さんが懇願するように表情を歪ませる。僕は自分に潜んでいた加虐心が首をもたげるのを肌で感じ取っていた。  
「……ん、うぷ、じゅぶ……ちゅぷ」  
そろそろと、絢辻さんの頭が前後に振られる。生温かい口内からペニスが出ていくとき、上から下へ戻されていくときの唇の感触、彼女の口唇が与えてくる刺激は、非日常的な快楽を僕にもたらす。  
「舌も、動かして……ッ!」  
絢辻さんは僕の太ももに当てた手をスプリングのように使って頭を動かしている。前後運動が与える抽出の感覚に、裏筋で蠢く舌のざらざらとした刺激が僕のモノを悦ばせる。  
「ん、れろ、じゅぶ……じゅ、ぷっ、ぷぁ、あむ、んじゅ、んぐ」  
彼女の頭の動きに合わせて、黒絹のような髪がさらさらと揺れている。眉は寄せられて、苦しそうに、あるいは嫌そうな表情を形作っている。目はきつく閉じられていて、まるで僕が無理やり行為を強要しているような錯覚に陥る。  
「絢辻さん、手が休んでる……」  
「んじゅぶっ、ぷぁっ……手、手も使うの…………?」  
咥えながら手を動かすというのがどういうことなのか分からなかったのか、彼女は一度ペニスを吐き出すと手でしごき始める。  
やっているうちに行為の手順が分かったのか、手でしごきながら彼女は亀頭を口に含んで舌で転がした。  
絢辻さんの唾液でコーティングされたペニスを握る彼女の手は、ぬらぬらと唾液で光り卑猥な音を奏でている。ペニスを握ると匂いがついてしまうが、彼女はそれにも気付いているだろう、とても悔しそうな表情をしている。  
絢辻さんはペニスの根元を掴むと、奥まで僕の一物を含む。顔の動きに合わせて、手が上下する。ときおり、顔の動きとは逆の動きを手が交えるので、刺激が一律にならずに心地よい。  
 
「う……、絢辻さん、巧すぎるよ…………気持ち、イイ」  
「……じゅぶっんれろっぅぷぁ、んっんっんんっ」  
絢辻さんが僕を、憎らしそうな目で見つめてくる。目隠しは緩みきっていて、僕が少し頭を傾げればすとんと落ちるだろう。  
…………ここで外したら面白いかもしれない。  
僕は頭を、快感に呻いている風を装って動かした。案の定、ネクタイは首元に落ちた。  
「……ッ!」  
絢辻さんはあわてて目を閉じると、きつく目を瞑って行為に戻る。  
「絢辻さん……おいしい?」  
「…………んじゅぽ、う、おいひいわけ、ないれしょ」  
声が震えている、猫を被り始めたのだろうか、それとも泣いているのだろうか。  
「ぷあっ……女の子に、こんなことさせて…………変態」  
僕のモノを手で扱きながら、舌でチロチロとペニスを舐めたくっている。僕から見れば、彼女の方が淫乱だ。  
「いいように扱われて、男として恥ずかしくないのかしら」  
徐々に、絢辻さんが変貌していく。その顔つきは、仮面が剥がれたときに見せた、挑発的なものだった。  
猫を被った絢辻さんの口と舌は動きを増し、なんとも思っていない風にペニスをも弄ぶ。  
「……う、あ」  
「ふうん、ここがいいんだ、へえ〜……」  
冷めきった目で絢辻さんが僕を見上げる。さっきとは打って変わった、優位を見せつけるような態度だ。  
「ん、じゅぷ、じゅぷ、ンっ、んッ――ぷは、ねえなにか出てるわ、これってなんなのかしら?」  
絢辻さんが手でしごきながら、あいている手の指を鈴口に当てた。指と亀頭をつなぐように、先走りが糸を引いていて淫靡だ。  
「ん…………まっずーい…………こんなもの垂らして、恥ずかしくないの」  
「絢辻さ」  
僕の言葉を遮るように、絢辻さんが一気にペニスを頬張った。彼女の目論見通り、僕は言葉を失ってしまい、彼女は得意げに顔を綻ばせた。  
「……んぷ、しゃべらないで、変態の言葉なんて聞きたくもないわ」  
一転、不機嫌そうなしかめっ面。翻弄しているつもりなのだろう、彼女は猫の目のようにころころと態度が変わる。  
裏筋に舌を這わせ、僕が反応を見せると、したり顔で局地的に刺激してくる。手でしごきながら亀頭を舌でいじりまわし、ときには手を使わずに口と頭の前後運動だけで攻めてくる。  
まるで男を手玉に取る女で、僕が考えた通りだった。彼女は僕に弱音を見せるつもりはないらしい。  
なら、彼女の仮面が剥がれるように、僕は絢辻さんを犯したい。  
「……絢辻さん、そろそろ、出る…………ッ」  
「んむうッ!?」  
絢辻さんはさすがに一瞬、くぐもった声を漏らしたが、  
「へえ、ふうん……」  
口角を釣り上げて、嫣然と微笑む。  
勢いづいたのか、彼女の手と口による刺激はペースを上げ、搾り取るように僕を攻めたててくる。  
「うあ……ッ――」  
「――ぷ、はあぁッ…………」  
僕が思わず射精に見まがえた瞬間、絢辻さんはそれを見抜いていたかのようなタイミングで口からペニスを吐き出した。おろおろと彼女を見下ろすと、にっこりと彼女は相好を崩した。  
「なに、物欲しそうな顔しちゃって…………まだ、だめよ」  
絢辻さんはせせら笑いを浮かべながら、舌だけでチロチロと心細い刺激をしてくる。  
「う……絢辻さ、ん」  
「んふ、そんなに出したかったの……?」  
僕は絢辻さんの冷笑を買ってしまったようだ。彼女は仮面を脱いで本心を露わにしている。  
「まさか私の口の中に出すつもりだったの? そんなことさせるわけないじゃない、馬鹿じゃないの」  
昂りに昂った僕は、玲瓏な絢辻さんに冷ややかな目を向けられただけでも、果ててしまいそうな心境だった。さっきまで自分にはSの気があるかと思ったけど、Mの気も持っているらしい。  
「あとは、橘くんが自分で何とかして」  
 
「……え」  
「こんなことまでさせられたのに、素直にあなたの望み通りにするわけないじゃない。明らかに過剰要求よ、これ、下手したら脅迫よ?」  
絢辻さんが教師然とした態度で、僕を畳みかけようとする。彼女は唾液で濡れた口元を手でぬぐう。  
「……待って」  
立ち上がり、立ち去ろうとする絢辻さんの手首を僕は掴んだ。  
「なに、はやくそれ、なんとかしたほうがいいんじゃないかしら?」  
ちら、と汚物を見るように、僕のモノを見下ろす絢辻さんは、まさに男を手玉にとって操る女性だった。  
「あんなことされて、なんて生殺しすぎるよ……」  
「知らないわよそんなこと、ねえ、ちょっと、放してよ」  
「手帳の中身、どうなってもいいの?」  
「その前に、私はあなたに襲われたって言いふらしてやるから」  
「でも、絢辻さんが僕のモノを舐めたってことも、ばれちゃうよね?」  
「…………っ」  
僕がここまで言うとは思っていなかったのか、手を振りほどこうとしていた絢辻さんはぱたりと動きを止めた。どう出し抜こうか考えているのだろうけど、そんな時間は与えない。  
「――え、ちょ、きゃっ!?」  
僕は絢辻さんの腕を引くと、首元からほどいたネクタイで後ろ手に彼女の手首を縛った。  
「な、なにするの橘くん」  
「絢辻さんがいけないんだよ」  
縛り終え、彼女の口を片手でふさぐ。  
「んぐ! んむぅ!!」  
僕に身体を預けるように寄りかかる絢辻さんは、腕の中でじたばたと暴れる。僕は弥が上にも、高まってしまう。  
絢辻さんの胸に手を伸ばすと、いっそう彼女の動きが激しくなる。しかし、さきほどの行為で疲れているからかあまり力が出ないようだ。  
「んふ、んん!」  
絢辻さんの胸は、程よい大きさと弾力で、一度揉んだだけでも虜にされてしまうような、恐ろしい代物だった。形が歪み、それに合わせて絢辻さんが呻く。  
「すごい……絢辻さんの胸、すごい」  
僕は一心不乱に胸をもみしだいた。右、左、乳首…………触れるところはとことん触った。  
「ん、ンんんッ!」  
頭を振りみだしながら、絢辻さんが抵抗する。僕は強く胸をもむことで、それを制した。痛いのか感じているのか、荒げる声があえぎ声に変わるのには興奮した。  
「すごい乱れてるね」  
「…………」  
顔を見ると、こちらを鬼のような形相でにらみあげてくる。怒り心頭に達している風だ。  
僕はそろそろと、手を股間に伸ばす。手の行く先を察知したのか、絢辻さんが脚を閉じて頭を振りながら必死に抗う。けれど、か弱い女の子、ましてや両手を縛られているのだから、押さえつけるのは容易だった。  
太ももを間に入れて脚を無理やり広げると、あいた隙間から絢辻さんの股に手を入れる。  
とん、と少しふれると、絢辻さんの身体がびくん、と一瞬震えた。  
「わ、絢辻さん、濡れてる?」  
「ん、んん!」  
顔を横に振りながら、絢辻さんはなおも暴れる。僕は取りつかれたように、言葉と指で絢辻さんを責め立てる。  
水着だから、という理由だけではないだろう、絢辻さんのソコはじわりと暖かな熱と、湿り気を帯びていた。指でなぞったりつついたりすると、面白いように反応が返ってくる。  
ぐりぐりと、入口に指を押し付けると、前かがみになって耐えていた絢辻さんの細い身体が、弓なりにびくりと感応する。クリトリスに触れると、脚が激しく閉ざされて、口元を押さえる掌が熱い息で湿った。  
「絢辻さん、僕の舐めて興奮してたんだ……? どっちが変態なんだろうね」  
きつく目を瞑って、絢辻さんは耐えている。眉間に寄ったしわだけでは、心のうちまではのぞけない。僕はわざとらしく、後ろ手に縛られた絢辻さんの手に股間の一物を押し当てている。  
絢辻さんの耳を舐めると、これもまた激しく嫌がったものの身体は正直に反応していた。僕はむき出しのうなじや背中を舐めながら、股間をいじり続けた。  
それをしばらく続けると、抵抗が弱まって絢辻さんが肩で息をするようになった。  
 
僕は絢辻さんと立ち位置を変えると、口元に手をあてたまま窓に彼女の身体を押し付けた。  
「気持いいんだ?」  
「…………ッ」  
絢辻さんが濡れた目で僕を睨んでくる。  
僕は絢辻さんの水着を横にずらすと、直接彼女の性器に触れた。  
「ッッッ!?」  
ぬるりとした感触が指を絡めとる。絢辻さんも、涎を垂らしていた。  
「……男のモノを自分から舐めて、こんなに涎垂らしちゃって…………絢辻さんこそ、恥ずかしくないの?」  
さきほど言われた言葉を返すと、絢辻さんの顔は屈辱に満ちた表情を作った。  
ぴちゃぴちゃと淫靡な水音を、聞かせるように立てながら、僕は入口付近を執拗に指で往復した。垂れた愛液が太ももの内側を湿らせている。  
絢辻さんは息を止めてそれに耐えていて、震える方が切なげだった。  
ころ合いかと思い、僕は人差指を徐々に膣に入れていった。  
「――ッ!?」  
指を包み込むように、絢辻さんの肉壁がきゅっと収縮する。引き抜いてまた入れると、指の形に中が広がっていくように感じられた。  
「んむ、んふ、ンッっ」  
ぐじゅぐじゅと大きく音がたつと、絢辻さんの目尻から一粒の涙が頬を伝った。恥ずかしいのか、顔は熟れたトマトのように真赤だ。  
僕は指の動きを激しくし、ピストンに加えてぐいぐいと肉壁を押し広げるように中を刺激した。指は暴れまわり、一本から二本に変わってしばらくしたところで、ゆっくりとじらすように引き抜いた。  
「――――っん」  
抜かれると、掌に熱い息がこもった。  
僕は愛液にまみれた手を見せつけるように、絢辻さんの眼前に掲げた。  
「こんなに汚れちゃったよ絢辻さん、そんなに良かったのかな?」  
僕は笑顔で訊ねると、絢辻さんがくぐもった声を上げた。僕は口を解放してあげると、彼女の言葉が文章をなす前に、あいた口に汚れた指を突っ込んだ。  
「――ンぐぅっ!?」  
「ほら、自分で汚したんだから、掃除してよ、舌で」  
絢辻さんの顔が苦悶に歪められる。僕は指で舌を弄びながら、内頬や歯茎などに彼女の愛液を塗りつけていく。ときおり動く彼女の舌も、期せずして指から愛液を舐め取っていった。  
「ん、ええ、おえ、げほっけほ」  
不味いものを吐き出すように、絢辻さんはむせかえる。  
「どうだった、自分の味は」  
肩で息をしながら、絢辻さんが僕を見上げてくる。きつく寄せられた眉に、少しばかり興奮してしまう自分がいる。僕は肩で息をする絢辻さんを、手近にあった机に押し付けた。  
机に押し付けられた胸が、ぺたんと歪むのには男ならロマンを感じてしまうこと請け合いだ。後ろ手に縛られたままお尻を突き出すような姿勢を取らされている絢辻さんを、僕は後ろから眺めた。  
「絢辻さん……僕のモノこんな風にさせちゃったんだ、絢辻さんの身体で責任を取ってもらうよ」  
「せ、責――! や、いやっ、橘くん、お願い」  
押し付けられた顔を必死にこちらに向けようとするが、僕は髪を掴んで強く机に、絢辻さんの顔を押し付ける。頬が机に押し付けられて、声もどこか歪んでくる。  
「ま、また口でシてあげるから――ッ! 舐めてあげるわ…………口に出しても、いいからっ!」  
僕は絢辻さんの水着を押しのけて、ペニスの先端を膣口に宛がった。  
「あああ…………………いやぁ」  
僕の先端が入ったところで、ついに絢辻さんはうっそりと泣き始めた。それはささやかな泣き声だった。  
「うう、い、あああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!!」  
するり、と僕のモノは容易に絢辻さんの中に入って行った。どこまでも入り込めそうな中の感覚に、僕は思わず呻き声を上げていた。  
「絢辻さんの中――――気持ち良すぎる、よっ」  
言うが早いか、僕は腰を動かしていた。まるでスイッチが入ったように、無我夢中で自分のモノを彼女の奥へ奥へと突き出す。  
「うあっあ゛っ――ッッ!?!?!?」  
愛液のべっとりとした感触がペニスを包むと、ぞくぞくとした何かが背中から頭を駆け巡る。  
僕は絢辻さんの手を解放すると、その手をぐいっと引き寄せる。より深く、彼女の中に入り込むために。  
「うあっアあっぁぁあああっ――――――――――!?」  
奥をついて動きを止めると、彼女の身体が二度、三度と痙攣した。膣も収縮していて、絶頂を迎えたようだ。  
「――もしかしてイっちゃったのかな、絢辻さん」  
 
僕は絢辻さんの頭をなでながら、耳元で囁くように声を出す。  
「う、はあああ…………あ、んん…………ぬ、抜い、てぇッ、お願い…………ぬ、て」  
「大丈夫、絢辻さんが誠意を見せてくれたら、抜いてあげるから」  
「誠……意?」  
「そう。僕のモノさんざんいじめたくせにイかせてくれなかったんだから」  
「あ、あれは……」  
「とにかく、ねえ絢辻さん。自分で動いてよ」  
「……そ、そん、なこと」  
僕は腰を大きくグラインドさせて、一度強く腰を打ちつけた。  
「あぐ、うぅっ!」  
「ほら、腰を振ってよ」  
「……くぅッ!」  
絢辻さんは逡巡したあと、ゆっくりとお尻をこちらに突き出した。引いて、また突き出す。その単純行為をこなす絢辻さんは、ただみじめだなと思った。  
「もっと早く、ほら」  
「う、ひぁあっ! ま、動くから……突か、ないで」  
絢辻さんは机をぎゅっとつかむと、身体を揺するようにして腰を振った。もぞもぞと蠢く身体に合わせて、僕は腰を打ちつける。  
細い腰を掴んで、引き寄せたり押し放したりする。絢辻さんは無心で腰を振っている。  
「ああ、気持ちいいよ、絢辻さん」  
「最ッ低――! 変態、変態ぃ!」  
僕は腰を強く掴んで、突き出すスピードを上げる。  
「ああ、あっあうぅっあっぁああぅっ!!」  
声の感覚も狭まり、僕も絢辻さんもそろそろ果ててしまいそうだった。  
「絢辻さん、そろそろ、イく――!」  
「アっ――ふぇ!?」  
僕が激しく腰を振ると、絢辻さんは息も切れ切れに声を出す。  
「ま――ま、待って、な、中は、だ、駄目ッあああっ」  
「さっき意地悪した罰、だよッ」  
「ンあああああっ! だ、お願い、中は……中、だけは許して」  
「ふうん……自分がされるのは、嫌なんだ。身勝手だね」  
「ああっ、そん、な言い方ッ――」  
「じゃあ、言うこと聞く?」  
「聞く……聞くから…………外に、出して」  
僕は腰の動きを続けながら、絢辻さんに命令する。  
「じゃあまず、敬語を使ってもらおうかな」  
「は……は、い」  
腰を動かしながら、僕の手は彼女のクリトリスや胸を弄ぶ。そのたびに、絢辻さんは面白いように淫らに乱れる。  
「ッああッあ、や、やめて」  
「『やめてください』でしょ? 中で出されたいの?」  
「ぅぁぁあ、や、中は駄目…………あ、中は、い、嫌です…………やめて、ください。許して、ください」  
「中がだめって、じゃあどこならいいの?」  
「外ッ――外に、お願い、しますっ」  
 
「外って? ええと…………じゃあ、顔か口、どっちか選んで」  
「か……顔か、口!?」  
絢辻さんが身体をひねってこちらの顔をのぞいてくる。その顔は上気していて、頬には涙の線がくっきりとついている。  
「外がいいんでしょ?」  
「――――ッ! あなたって人は……どこまで」  
僕は彼女のお尻をぱちんとはたく。「あうッ!」と小さな悲鳴が聞こえた。  
「顔にかけられたいか、口に出されて飲みたいのか――ねえ、どっちがいい?」  
絢辻さんは下唇を噛みながら、ぷるぷると身体を震わせている。  
僕は「早く決めないと、イっちゃいそうなんだけど」としたり顔で言い、腰をどんどん打ちつけてゆく。  
「ッああっううっ…………ぁああああ! か、顔に…………出して、ください」  
ぽろぽろと絢辻さんからあふれる涙は、彼女のプライドだろうか。それがこぼれていく様は、見ていて愉快だった。  
「『顔にかけてください、お願いします』じゃないのかな」  
絢辻さんはこちらをすごい顔で睨みつけると、顔を伏せて震える声できちんと言った。  
「か、顔にかけてください、お願いしますッ――!」  
僕はその言葉を聞いて、より早く強く身体を動かす。絢辻さんはもう命令通りに動くのか、僕が彼女の手を使って睾丸をいじらせていると、手を離しても続けて刺激を与えてきた。  
「ああ、イく、イくよッ!」  
僕は腰を引くと、絢辻さんの身体をひねりながら引いた。正面を向いた絢辻さんに、「舌出して!」と命令すると、切なげな目をしながら舌を出した。  
僕は彼女の顔に向けて、白濁を吐き出した。額や頬、口元を、勢いよく精液が汚していく。だらしなく突き出された舌の上にも、どろりとした液体が降りかかる。  
絢辻さんは眉を切なげに下げ、目を瞑っている。ぱたぱたと顔に降りかかる男の汁に、彼女はどういう感想を抱いているのだろう。  
僕は熱心に自分のモノをしごきながら、最後の一滴まで彼女の顔の上で果てた。  
「っはあ、絢辻さん、最高だったよ」  
絢辻さんは顔を歪めたあと、舌に乗っていた精液を涎と一緒に吐き出した。  
僕はその最中に、絢辻さんの口にペニスを突っ込んだ。  
「んむっ?」  
目を閉じていて意表を突かれたのか、彼女がびくっと怖がるように身をすくませた。  
「掃除してよ、口で」  
絢辻さんはなにも言わず、従順に僕のペニスを丹念に舌で清めていった。僕は頭を無理やり動かして、奥へ奥へと突きいれた。  
満足してペニスを引きぬくと、絢辻さんの口角から涎が垂れたが、ぬぐおうともせず絢辻さんはひっそりと泣いていた。  
僕はペニスを終い、床に落ちていたタオルを絢辻さんの膝元に置いた。  
「手帳とこのことは、僕たちの秘密だよ。大丈夫、誰にも言わないから、このことも。…………『また』二人で会おうね」  
僕は絢辻さんを自由にできる権利を手に入れた。  
その事を誇らしげに胸に抱き、僕は教室を後にした。  
 
(了)  
 

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