ピーポーン。  
夜の9時、家のチャイムが鳴った。  
こんな時間に誰だと思って玄関の扉を開ける。  
家の前には、制服姿の紗江ちゃんがいた。  
 
僕の姿を認めるなり、紗江ちゃんはこっちに向かってダッシュしてきた。  
表情が険しい。  
雰囲気に余裕が無い。  
いつもの控えめな姿とまるで違う紗江ちゃんに、思わず気圧される。  
 
そして僕の目の前で立ち止まる紗江ちゃん。  
はあはあ、と荒い息。  
全身は震えているように見えた。  
瞳には涙が。  
 
一体紗江ちゃんに何が?  
原因は僕なのか?  
様々な悪い思考が頭を駆け巡る。  
そして、紗江ちゃんの口から悲鳴に近い声が発せられた。  
 
「先輩!」  
 
「は、はい!何でしょう紗江ちゃん!?」  
「お手洗い借りてもいいですか?」  
 
…………。  
 
「は、はい?」  
「お願いです!もう限界なんです!!」  
 
何だ、そういうこと……。  
トイレを我慢してたのか。  
ビックリした、何事かと思ったよ。  
よし、それじゃあここは……。  
 
1.後で耳に息を吹きかけさせてくれたら貸すよ。  
2.後で脇をくすぐらせてくれたら貸すよ。  
3.後でヒザカックンをさせてくれたら貸すよ。  
 

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